心理的デブリーフィング:トラウマケアの落とし穴
病院での用語を教えて
先生、「心理的デブリーフィング」って、どんなことをするんですか?
体の健康研究家
いい質問だね。 psychological debriefing を日本語にすると「心理的な報告会」という意味になるんだ。 つまり、大きな事故や災害などで怖い体験をした人に、その時の気持ちや状況を話してもらうことで心の負担を軽くする試みなんだ。
病院での用語を教えて
そうなんですね。でも、話すことで気持ちが楽になるんですか?
体の健康研究家
以前は効果があると考えられていたんだけど、最近は逆に辛い気持ちを思い出させてしまい、心の傷を深くしてしまう可能性も指摘されているんだ。だから、専門家の間でも意見が分かれる難しい問題なんだよ。
心理的デブリーフィングとは。
『心の整理』という意味の言葉に、『心理的デブリーフィング』というものがあります。これは、こころを深く傷つけるような体験をした人の心の負担を軽くするために、行われる方法です。つらい経験を詳しく話してもらい、その時の気持ちを聞いてもらうことで、心の負担を軽くすることを目指します。話を聞く人は、親身になって耳を傾けます。しかし現在では、この方法の効果は確認されておらず、反対に状態が悪くなる場合もあるという報告がされています。
トラウマ体験と心のケア
私たちは、人生において予想もしなかった困難に直面することがあります。大きな事故や災害、あるいは人との間で起こる暴力といった出来事は、私たちのこころに大きな傷跡を残してしまうことがあります。このような経験は、単なる嫌な記憶として忘れ去られるものではなく、心の奥深くに根を張り、長い間苦しめ続けることがあります。これがトラウマと呼ばれるものです。
トラウマを抱えた人は、常に不安や恐怖にさいなまれ、まるで昨日のことのようにその時の記憶が鮮明によみがえってくるフラッシュバックに悩まされることがあります。楽しかったはずの場所や出来事が、トラウマの記憶と結びついてしまい、日常生活に支障をきたすことさえあります。
このような心の傷を癒し、一日も早く穏やかな日々を取り戻せるよう、様々な取り組みがなされています。トラウマに対する理解を深め、適切なケアを提供することで、苦しんでいる人々が再び前を向いて歩んでいけるよう、社会全体で支えていくことが重要です。心の傷は目には見えませんが、その痛みは計り知れません。寄り添う気持ち、そして専門的な知識と技術を持った人たちの支援が、トラウマを乗り越えるための大きな力となります。
心理的デブリーフィングとは
– 心理的デブリーフィングとは心理的デブリーフィングとは、事故や災害、暴力など、心に深い傷を負うような衝撃的な出来事を経験した直後の人に対して行われる心理的なケアの方法です。1980年代に開発されたこの方法は、大きく分けて二つの目的があります。一つ目は、被災者の方々が経験した出来事に対する精神的な負担を少しでも軽くすることです。そして二つ目は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と呼ばれる、トラウマ体験によって引き起こされる心の病の発症を未然に防ぐことを目指しています。 具体的な方法としては、まず被災者の方々に、経験した出来事について詳しく話してもらいます。その際、ただ事実関係を淡々と話すのではなく、経験した出来事に対してどのような感情を抱いたのか、体にどのような変化があったのか、どんなことを考えていたのかなど、心の動きも詳しく話してもらうことが重要です。医療従事者は、被災者の方々の話に耳を傾け、相づちを打ったり、うなずいたりしながら、共感を持って話を聞きます。決して話を遮ったり、否定したりすることなく、被災者の方々が安心して話せる環境を作るように努めます。心理的デブリーフィングは、開発当初、トラウマ体験に対する有効な介入方法として大いに期待されていました。しかし、近年ではその効果に疑問を呈する声も上がっており、議論の的となっています。
項目 | 内容 |
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定義 | 衝撃的な出来事を経験した直後の人に対する心理的なケア |
目的 | 1. 精神的負担の軽減 2. PTSDの発症予防 |
具体的な方法 |
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注意点 | 近年、その効果に疑問視する声もあり、議論が続いている |
期待された効果と現実
「心の傷を癒やす効果がある」と期待されていた心理的デブリーフィングですが、近年の研究では、その効果に疑問符がつけられています。
心理的デブリーフィングは、事故や災害などで衝撃的な体験をした直後に、専門家が精神的なケアを行うことで、トラウマによる心の傷を小さくすることを目的としています。これまでは、早期にトラウマを処理することで、その後のPTSD(心的外傷後ストレス障害)の発症を防いだり、症状を軽減したりできるという考え方が主流でした。
しかし、近年の研究では、必ずしも心理的デブリーフィングが有効であるとは限らないことが明らかになってきました。一部の研究では、心理的デブリーフィングを受けた人の方が、PTSDの発症率が高かったり、症状が長引いたりするケースが見られるという結果も出ています。これは、トラウマ体験を無理に思い出させることで、かえって心の傷を深くしてしまう可能性があるためと考えられています。
心理的デブリーフィングは、状況や対象者によっては有効な場合もあると考えられていますが、その効果についてはまだ十分に解明されていません。そのため、現在では、心理的デブリーフィングの実施については慎重な判断が求められています。
項目 | 内容 |
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心理的デブリーフィングの目的 | 事故や災害などで衝撃的な体験をした直後に、専門家が精神的なケアを行うことで、トラウマによる心の傷を小さくすること |
従来の考え方 | 早期にトラウマを処理することで、PTSDの発症を防いだり、症状を軽減したりできる |
近年の研究結果 | 心理的デブリーフィングが必ずしも有効であるとは限らない。一部の研究では、PTSDの発症率が高かったり、症状が長引いたりするケースも見られる。 |
近年の研究結果の理由 | トラウマ体験を無理に思い出させることで、かえって心の傷を深くしてしまう可能性があるため |
現在の考え方 | 心理的デブリーフィングは、状況や対象者によっては有効な場合もあると考えられるが、その効果についてはまだ十分に解明されていないため、実施については慎重な判断が求められる。 |
心理的デブリーフィングの問題点
大きな衝撃を受けた直後に、その時の状況や気持ちを詳細に話す「心理的デブリーフィング」。以前は、心のケアとして有効と考えられていましたが、近年、必ずしも効果的とは言えない、むしろ逆効果になる場合もあるという指摘がされています。
一体なぜ、心理的デブリーフィングは期待された効果が得られないのでしょうか?
一つ目の理由として、トラウマ体験直後は、心の防御反応が働いていることが挙げられます。つらい出来事から心を守るために、記憶が曖昧になったり、感情が麻痺したりすることがあります。このような状態の時に、無理に体験を思い出すように促してしまうと、かえって心の傷を深くしてしまう可能性があります。本来は自然に心が回復しようとする力を妨げてしまうこともあるのです。
さらに、心理的デブリーフィングを受けるように促されることで、逆に「自分は特別なケアが必要なほど傷ついている」という意識が強まり、回復を遅らせてしまう可能性も考えられます。本来であれば、時間の経過とともに自然に回復に向かう場合でも、「特別なケアが必要だ」という意識が、心の傷を必要以上に大きく感じさせてしまう可能性があります。
このように、心理的デブリーフィングは、その人の状態や時期を見極めて慎重に行う必要があると言えるでしょう。
psychological debriefingの負の効果 | 理由 |
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心の傷を深くする可能性 | トラウマ直後は心の防御反応が働いているため、無理に思い出すことで、本来の自然治癒力を妨げてしまう。 |
回復を遅らせる可能性 | 「特別なケアが必要だ」という意識が強まり、必要以上に心の傷を大きく感じてしまう。 |
トラウマケアの新たな方向性
近年、災害や事故など、私たちが予期せぬ形で直面する心の傷、すなわちトラウマに対するケアのあり方が変化しています。以前は、トラウマとなる出来事を経験した直後には、心理的な負担を軽減するために、経験したことを詳細に話させる、いわゆる心理的デブリーフィングが有効だと考えられてきました。しかし、近年の研究により、心理的デブリーフィングは必ずしも効果的ではなく、場合によっては、トラウマの記憶を鮮明に蘇らせてしまい、心の傷を深くしてしまうリスクもあることが明らかになってきました。
そこで、現在のトラウマケアにおいては、トラウマ体験直後には、無理に体験を語らせるのではなく、まずは安心できる環境を提供し、十分な休息と心身の回復を優先することが重要視されています。そして、トラウマ体験後、不安や恐怖、フラッシュバックなどの症状が続く場合には、一人で抱え込まず、専門家による適切な治療を受けることが大切です。
トラウマという心の傷は、非常にデリケートな問題であり、画一的なアプローチでは十分な効果が期待できません。一人ひとりの状況を丁寧に理解し、その人に最適なケアを提供することが、トラウマからの回復を支援する上で何よりも重要です。
従来の考え方 | 最新の考え方 |
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トラウマ体験直後には、心理的デブリーフィング(体験を詳細に話させる)が有効 | トラウマ体験直後には、無理に体験を語らせるのではなく、安心できる環境を提供し、休息と心身の回復を優先する |
トラウマ体験後、症状が続く場合には、専門家による適切な治療を受ける |
心の傷に寄り添うために
人は誰しも、生きていく中で辛い経験をすることがあります。その中でも、心に深い傷を負ってしまうような経験を「トラウマ」と呼びます。交通事故や災害、犯罪被害といった出来事だけでなく、身近な人との離別やいじめ、虐待などもトラウマとなることがあります。
トラウマとなる出来事は人それぞれであり、同じ出来事を経験しても、その感じ方や受け止め方は大きく異なります。心がどれほど傷ついているのかは、外見からは分かりません。だからこそ、周囲の人たちの理解とサポートが何よりも大切になります。
トラウマを経験した人は、当時の記憶や感情がフラッシュバックしたり、不安や恐怖に襲われたりすることがあります。そのため、周囲の人に対して心を閉ざしてしまったり、逆に必要以上に周りに気を遣ってしまったりすることがあります。
もし、あなたの大切な人がトラウマを抱えていると感じたら、まずはその人の気持ちに寄り添い、じっくりと耳を傾けてあげてください。そして、決して無理強いすることなく、その人のペースで回復に向かえるように、温かく見守ることが大切です。
同時に、トラウマは専門家のサポートによって、症状を和らげたり、克服したりすることもできます。そのため、信頼できる医療機関や相談窓口などの情報を伝え、必要に応じて専門家のサポートを受けることができるように、適切な情報提供を行うことも重要です。
トラウマとは | 特徴 | 周囲の人のサポート |
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心に深い傷を負ってしまうような経験のこと。 (例:交通事故、災害、犯罪被害、身近な人との離別、いじめ、虐待など) |
・当時の記憶や感情のフラッシュバック ・不安や恐怖 ・周囲への警戒心や過剰な気遣い |
・気持ちに寄り添い、じっくりと耳を傾ける ・無理強いせず、本人のペースで回復を待つ ・信頼できる医療機関や相談窓口などの情報を伝える ・専門家のサポートを受けることを促す |