医療法人とは?その種類とメリット・デメリットを解説
病院での用語を教えて
先生、医療法人って病院や診療所と同じ意味ですか?
体の健康研究家
う~ん、いいところに気がついたね! 病院や診療所と同じ、ではないんだけど、 大きな関係があるんだ。 医療法人というのは、病院や診療所を運営するための 組織の形 のようなものなんだよ。
病院での用語を教えて
組織の形、というと?
体の健康研究家
例えば、みんなのお父さんやお母さんが、会社で働いている人もいるよね? 会社も、お店を開いたり、物を売ったりするための 組織 の形の一つなんだ。 医療法人っていうのは、病院や診療所を運営する時の 組織 の形の一つなんだよ。
医療法人とは。
「医療法人」は、病院や診療所、介護老人保健施設などを運営するために、「医療法」という法律に基づいて作られた組織です。2015年の調査によると、病院の約7割、診療所の約4割は医療法人が運営しています。医療法人は、1950年に導入された制度で、医療を行う場所として都道府県知事の認可を受けて設立されます。以前は国が複数の都道府県で活動する医療法人を監督していましたが、今は都道府県がその役割を担っています。個人で診療所を開くのと医療法人を作るのとは、いくつかの違いがあります。医療法人は、健康保険の診療報酬が医療法人に入り、そこから医師に給料が支払われます。メリットとしては、医師は給料から税金が天引きされなくなり、給料から控除を受けられるようになります。また、相続税が不要になる、分院や介護施設を運営できるなどの利点もあります。一方、医療法人は簡単にやめたり解散したりすることができず、厳しい監督を受け、書類作成も複雑になります。交際費にも上限があります。医療法人の種類には、「社団医療法人」と「財団医療法人」の二つがあります。社団医療法人は、会員が出資するタイプとしないタイプがあり、医療法人全体の99.1%を占めています。社員の他に、理事や監事などの役職があります。財団医療法人は、理事長の相談役として評議員会が必要です。また、設立資金はすべて寄付で賄わなければならず、税金面でも制約が多いことから、全国でも400ほどしかありません。
医療法人の定義
医療法人とは、病院や診療所といった医療機関や、介護老人保健施設などの医療に関連する施設を開設・運営するために、医療法という法律に基づいて設立される法人です。
医療法人は、株式会社などの営利を目的とする法人とは異なり、医療を提供することを第一の目的としています。そして、医療の質の向上や、地域への医療の提供など、公益性の高い事業を行うことが求められます。
医療法人は、厚生労働省の認可を受けて設立され、その形態は、社団法人や財団法人といった公益法人と、株式会社や合同会社といった持分のある法人に分けられます。
2015年の医療施設動態調査によると、全国の病院の約7割、診療所の約4割が医療法人によって運営されており、日本の医療体制において重要な役割を担っています。
項目 | 内容 |
---|---|
定義 | 病院、診療所、介護老人保健施設など医療機関や医療関連施設を開設・運営する法人 |
根拠法 | 医療法 |
目的 | 医療の提供(営利目的ではない) 医療の質向上、地域医療提供など公益性の高い事業 |
設立 | 厚生労働省の認可 |
形態 | 公益法人(社団法人、財団法人) 持分のある法人(株式会社、合同会社) |
現状 | 全国の病院の約7割、診療所の約4割を運営 |
医療法人の設立
医療法人は、医療行為やそれに関連する事業を行うための法人組織であり、1950年に制定された医療法人制度に基づいて設立されます。
医療法人を設立するには、単に法人としての要件を満たすだけでなく、都道府県知事の認可を受ける必要があります。これは、医療という人々の生命や健康に直接関わる重要なサービスを提供するため、厳しい審査が必要とされるためです。
認可を受けるためには、まず、設立しようとする医療法人の事業計画や定款などの必要書類を都道府県に提出します。提出された書類は、都道府県の医療審議会において、医療計画への適合性や、医療提供体制の確保、経営の安定性などの観点から厳正に審査されます。
医療審議会での審査を通過し、都道府県知事の認可が下りると、医療法人は晴れて設立となります。
なお、以前は複数の都道府県に施設を持つ医療法人の監督は厚生労働大臣が行っていましたが、2015年度からは各都道府県に移譲されました。これは、地域の実情に合わせたよりきめ細やかな監督体制を構築し、医療サービスの質の向上を図ることを目的としています。
項目 | 内容 |
---|---|
定義 | 医療行為やそれに関連する事業を行うための法人組織 |
設立根拠 | 医療法人制度(1950年制定) |
設立要件 | 法人としての要件を満たすこと、都道府県知事の認可を受けること |
認可プロセス | 必要書類(事業計画、定款など)を都道府県に提出 → 都道府県の医療審議会による審査 → 都道府県知事の認可 |
審査機関 | 都道府県の医療審議会 |
審査項目 | 医療計画への適合性、医療提供体制の確保、経営の安定性など |
監督機関 | 各都道府県(2015年度から) ※以前は複数の都道府県に施設を持つ場合は厚生労働大臣が監督 |
監督体制変更の目的 | 地域の実情に合わせたよりきめ細やかな監督体制を構築し、医療サービスの質の向上を図るため |
医療法人と個人経営の違い
病院や診療所を開設し、医療行為を行うには、医師免許に加えて、医療法に基づく設置許可が必要です。医療機関を開設する形態には、大きく分けて「医療法人」と「個人経営(個人事業)」の二つがあります。
個人経営とは、医師個人が開業資金を出し、経営から診療まで全て一人で行う形態です。一方、医療法人とは、医療の提供を目的とした法人で、厚生労働省または都道府県知事の認可を受けて設立されます。
医療機関は、患者からの窓口負担金に加えて、診療報酬を受け取ります。個人経営の場合、この診療報酬は直接医師の収入となります。一方、医療法人では、診療報酬は一度法人に入り、そこから医師個人に給与が支払われます。
医療法人には、税制面や社会的な信用度などで個人経営よりも有利な点があります。例えば、医療法人では、法人税率が適用されるため、個人事業に比べて税負担が軽減される場合があります。また、医療法人という法人格を持つことで、金融機関からの融資を受けやすくなるなど、資金調達の面でも有利になることがあります。
一方で、医療法人を設立するには、一定の手続きや費用がかかります。また、法人としての組織運営や会計処理など、個人経営に比べて複雑な業務も発生します。
項目 | 個人経営(個人事業) | 医療法人 |
---|---|---|
開設者 | 医師個人 | 医療法人(厚生労働省または都道府県知事の認可が必要) |
資金調達 | 個人資金 | 個人資金、金融機関からの融資 |
経営 | 医師個人 | 法人組織 |
診療報酬 | 医師個人の収入 | 一度法人に入り、そこから医師個人に給与として支給 |
税金 | 個人所得税 | 法人税 |
社会的な信用度 | 低い | 高い |
メリット | – 手続きが比較的簡単 – 経営の自由度が高い |
– 税負担軽減の可能性 – 資金調達しやすい – 社会的な信用度が高い |
デメリット | – 税負担が重い場合がある – 資金調達が難しい場合がある – 社会的な信用度が低い |
– 設立手続きが複雑 – 運営費用がかかる – 組織運営や会計処理が複雑 |
医療法人のメリット
– 医療法人のメリット個人事業として病院や診療所を運営する医師にとって、医療法人化は大きな転換期と言えます。医療法人化は、単なる組織形態の変化ではなく、様々な恩恵をもたらします。それは、医師自身の将来設計や、より質の高い医療提供体制の構築に大きく貢献する可能性を秘めているからです。まず、医療法人化の大きなメリットの一つに税務上の優遇措置があります。個人事業の場合、医師の所得は事業所得として扱われ、高額な所得税が課せられます。しかし、医療法人化すると、医師は医療法人から給与を受け取る形態になるため、給与所得控除を受けることが可能になります。これにより、所得税の負担を軽減できるだけでなく、社会保険料の負担も軽減されます。さらに、事業承継の観点からも医療法人化は有効です。個人事業の場合、医師が引退したり、万が一亡くなったりした場合、事業の承継は大きな課題となります。しかし、医療法人化されていれば、理事長を変更するだけで事業を承継することが可能です。これは、相続税対策としても有効であり、円滑な事業承継を実現することができます。また、医療法人化は、分院展開や介護施設の運営など、事業の幅を広げる上でも有利に働きます。医療法人として社会的な信用力が高まれば、金融機関からの融資も受けやすくなり、事業拡大のための資金調達も円滑に進みます。このように、医療法人化には様々なメリットが存在します。これらのメリットは、医療機関の経営を安定化させ、医師が治療や研究に専念できる環境を整えるとともに、患者様により良い医療サービスを提供することに繋がっていくと考えられます。
メリット | 内容 |
---|---|
税務上の優遇措置 | 医師の所得が給与所得となるため、給与所得控除を受けられ、所得税・社会保険料の負担が軽減される。 |
事業承継の容易さ | 理事長を変更するだけで事業承継が可能となり、相続税対策としても有効。円滑な事業承継を実現できる。 |
事業拡大の促進 | 分院展開や介護施設運営など、事業の幅を広げやすくなる。医療法人としての社会的な信用力向上により、金融機関からの融資も受けやすくなる。 |
医療法人のデメリット
医療法人化は、社会的な信用力や資金調達の優位性など、多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
まず、医療法人は、その名の通り「法人」であるため、容易に解散することができません。 個人事業であれば、自身の判断で自由に廃業できますが、医療法人はそうはいきません。医療を提供する機関としての社会的責任を負っているため、患者さんのため、地域医療への影響などを考慮し、簡単には廃業できないように法的に定められています。
また、監督官庁の指導や監査が厳しくなる点もデメリットと言えるでしょう。医療法は、医療の質を保ち、患者さんの利益を守るために、細かく規定されています。そのため、医療法人には、個人クリニックよりも厳しい指導や監査が入ります。それに伴い、様々な書類作成や手続きも増えるため、事務処理の負担が増加する可能性があります。
さらに、交際費に上限が設けられていることも、医療法人特有のデメリットです。個人事業であれば、事業所得から必要経費として交際費を計上できますが、医療法人では、社会保険診療報酬支払基金に認められる範囲内でしか、交際費を計上することができません。
このように、医療法人化には、メリットだけでなく、いくつかのデメリットも存在します。医療法人化を検討する際は、これらのデメリットをよく理解した上で、慎重に判断する必要があります。
項目 | 内容 |
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解散の制限 |
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監督官庁の指導・監査 |
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交際費の制限 |
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医療法人の種類:社団医療法人
医療法人には、大きく分けて二つの種類が存在します。一つは「社団医療法人」、もう一つは「財団医療法人」です。このうち、圧倒的多数を占めているのが「社団医療法人」です。2010年3月末の時点で、医療法人全体の99.1%が「社団医療法人」でした。
「社団医療法人」は、複数の医療従事者が出資をして設立する法人形態です。出資者である「社員」は、医療法人が提供する医療サービスから生まれる利益を分配される権利を持ちます。この利益配分の仕組みは株式会社と似ていますが、「社団医療法人」の場合は、出資額に応じて配当が変動するわけではありません。
「社団医療法人」には、「社員」の他に、「理事」「監事」「理事長」「社員総会」といった組織や役職が置かれます。
さらに「社団医療法人」は、「社員」が出資を行う際に「出資持分」を設けるかどうかによって、二つの種類に分けられます。「出資持分」とは、社員が出資した金額に応じて、医療法人の財産に対する権利を明確化するものです。「出資持分」を設ける「持分あり社団医療法人」と、設けない「持分なし社団医療法人」が存在します。
医療法人種類 | 説明 | 特徴 |
---|---|---|
社団医療法人 | 複数の医療従事者が出資して設立する法人形態。全体の99.1%を占める。 | 社員は利益分配の権利を持つ(出資額に応じて配当が変動するわけではない) 社員、理事、監事、理事長、社員総会といった組織・役職がある 「持分あり」「持分なし」の2種類がある |
財団医療法人 | – | – |
医療法人の種類:財団医療法人
– 医療法人の種類財団医療法人医療法人には、大きく分けて「社団医療法人」と「財団医療法人」の二種類があります。今回は、そのうちの一つである「財団医療法人」について詳しく解説していきます。財団医療法人は、その名の通り「財団」の形態をとる医療法人です。医療を提供することを目的とする公益法人であり、設立時に必要となる運営資金は、すべて寄付金によって賄われなければなりません。この点は、出資者である社員から出資金を集める社団医療法人とは大きく異なります。また、財団医療法人は、意思決定機関として理事会とは別に評議員会を設置することが義務付けられています。評議員会は、理事の選任や解任、予算や事業計画など重要な事項について審議し、理事会に意見を述べる、いわば理事会のチェック機能を担っています。このように、財団医療法人は公益性を重視した運営が求められており、その設立や運営には様々な制約が伴います。例えば、収益事業を行う場合でも、その収益はすべて医療事業に再投資しなければならず、利益を分配することはできません。また、税制面でも優遇措置は限定的です。このような制約の多さから、財団医療法人の数は全国でも約400ほどと少なく、医療法人全体の1割にも満たないのが現状です。一方、残りの約9割は社団医療法人が占めています。
項目 | 内容 |
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法人形態 | 財団 |
設立資金 | 寄付金のみ |
意思決定機関 | 理事会、評議員会(必須) |
収益金の使途 | 医療事業への再投資のみ(利益分配不可) |
税制優遇 | 限定的 |
法人数 | 約400(医療法人全体の約1割) |