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看護師の特定行為:進化する役割と専門性

- 特定行為とは何か医療現場では、医師の指示の下、看護師が様々な医療行為を行っています。従来、医師のみに認められていた医療行為の一部を、一定の研修を受けた看護師が、手順書に基づいて実施できるようにしたものが「特定行為」です。特定行為は、医師の診療を補助し、看護師の専門性と経験を活かすことで、より質の高い医療を提供することを目的としています。医師の業務負担を軽減すると同時に、患者さんにとっては、よりきめ細やかで迅速な医療サービスを受けることが期待できます。では、具体的にどのような行為が特定行為に該当するのでしょうか。例えば、点滴の管理や、傷の手当てなどが挙げられます。これらの行為は、患者さんの状態に応じて適切な判断と技術が求められるため、高度な知識と経験が必要です。特定行為を行うためには、看護師は所定の研修プログラムを修了し、試験に合格しなければなりません。これは、患者さんの安全を確保し、質の高い医療を提供するために非常に重要なことです。特定行為は、医療現場における看護師の役割を拡大し、医師と看護師がより緊密に連携することで、チーム医療を推進していくために重要な制度と言えるでしょう。
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診療記録のSOAPって?

- SOAPとは SOAPは、医療現場で患者さんの情報を整理し、共有するために広く使われている診療録の記載方法の一つです。特に、問題指向型診療録(POMR)と呼ばれる、患者さん中心の診療記録において重要な役割を果たします。 POMRでは、患者さんが抱える健康上の問題を明確化し、その問題解決に向けて診療を進めていくという考え方が基本となります。SOAPは、この考え方に基づき、得られた情報を以下の4つの項目に分類して記録することで、医療従事者間での情報共有をスムーズにし、より質の高い医療の提供を目指します。 * -S(Subjective Data主観的情報)- これは、患者さんから直接伝えられる情報、つまり患者さんの訴えや症状、病歴などを指します。 例えば、「頭が痛い」「昨日から熱がある」「過去に糖尿病と診断されたことがある」といった情報が該当します。 * -O(Objective Data客観的情報)- これは、診察や検査によって得られた客観的な情報です。 具体的には、体温や血圧などのバイタルサイン、血液検査や画像検査の結果などが挙げられます。 * -A(Assessment評価)- 主観的情報と客観的情報を総合的に判断し、患者さんの状態を評価した結果を記述します。 ここでは、問題の特定や診断名の記載などが行われます。 * -P(Plan計画)- 評価に基づいて、今後どのような治療や検査を行うのか、具体的な計画を立てます。 投薬内容やリハビリテーション計画、さらなる検査の必要性などが含まれます。 SOAPを用いることで、医療従事者は共通のフォーマットで情報を共有できるため、診療の継続性やチーム医療の効率性が向上します。また、問題点や治療方針が明確になることで、患者さん自身も自身の健康状態や治療内容を理解しやすくなるというメリットもあります。
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医療現場で活躍するNGチューブ:その役割と重要性

- NGチューブとはNGチューブとは、鼻から胃に挿入する細い管のことを指し、正式には経鼻胃管と呼ばれます。この管は、口から胃までつながる消化管の一部を一時的にバイパスするために使用されます。材質は柔らかく、柔軟性があるため、鼻腔や食道などのデリケートな部分に挿入しても、比較的苦痛が少ないという特徴があります。 NGチューブは、主に医療現場において、患者さんの治療やケアを目的として使用されます。その用途は多岐にわたり、大きく分けて検査と治療の二つの目的で使用されます。 検査の目的で使用される場合、NGチューブを通じて胃の内容物を採取し、その成分を分析することで、消化器官の状態や病気の診断に役立てます。例えば、胃液の酸性度を測定したり、出血の有無を確認したりする検査などが挙げられます。 一方、治療の目的で使用される場合には、NGチューブは主に栄養補給の手段として用いられます。口から食事を摂るのが難しい患者さん、例えば意識障害のある方や、手術後などで口から食事をとることができない患者さんに対して、栄養剤や水分を直接胃に送り込むことで、必要な栄養を補給することができます。また、薬剤を投与する際にも、NGチューブが使用されることがあります。 このように、NGチューブは多様な目的で医療現場において重要な役割を担っています。患者さんの負担を軽減し、適切な治療やケアを提供するために、欠かせない医療機器の一つと言えるでしょう。
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病気の経過: 亜急性期とは

病気は、その経過の中で様々に姿を変えます。発症直後のように症状が激しく、生命の危険を伴う場合もあれば、時間とともにその勢いを弱め、穏やかな経過をたどる場合もあります。このように変化に富んだ病気の経過を段階的に表す言葉の一つに、「急性期」があります。これは、病気の始まりを示す時期であり、激しい症状に悩まされることが多く見られます。 急性期を乗り越えると、病気は次の段階へと進みます。それが「亜急性期」と呼ばれる時期です。この時期に入ると、それまで猛威を振るっていた病気の勢いは衰え、症状は落ち着きを見せ始めます。呼吸や脈拍などの変化に代表されるように、生命活動の乱れも落ち着きを取り戻し、身体的な安定が図られるようになります。 しかし、症状が落ち着いてきたからといって、油断は禁物です。亜急性期は、病気そのものから解放された時期ではありません。むしろ、この時期の過ごし方によって、その後の回復具合が大きく左右される、非常に重要な時期といえます。急性期に受けたダメージからの回復を目指し、再び社会生活を送るために必要な力を養うためには、この時期に集中的なリハビリテーションに取り組むことが重要となります。安静を保ちながら、身体機能の回復を促すリハビリテーションに積極的に取り組むことで、日常生活へのスムーズな復帰を目指します。
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回復期:病気からの復活を支える大切な期間

病気は、その経過によって大きく三つの段階に分けられます。まず、発症直後で、最も症状が激しく、命の危険さえ伴う可能性のある時期を急性期と呼びます。この山場ともいえる急性期を乗り越えると、次の段階である回復期に入ります。回復期に入ると、症状は落ち着きをみせ、危険な状態からは脱します。この時期は、低下した身体の機能を回復させることに専念できる時期といえます。そして、回復期は、その後の人生を健やかに過ごすため、また、社会復帰を果たすために非常に重要な時期となります。ただし、病気によっては、完全に回復せず、長期間にわたって症状が続く慢性期に移行する場合もあります。慢性期は、急性期のような命の危険は少ないものの、病気と長く付き合っていくための工夫や、生活の質を維持するための努力が必要となります。
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褥瘡:予防と対策について

- 褥瘡とは褥瘡は、一般的に「床ずれ」として知られる症状です。これは、長時間同じ姿勢を続けることで、特定の部位、特に骨が出っ張っている部分に体重がかかり続け、その部分の血流が悪くなることで発生します。皮膚やその下の組織が、まるで押しつぶされたように傷ついてしまうのです。褥瘡は、寝たきりの方や車椅子を利用している方など、長時間体を動かすことが難しい方に多く見られます。このような状態では、体重がかかりやすいお尻や背中、かかとなどに褥瘡ができやすくなります。また、栄養状態の悪化や、糖尿病などの病気によって、皮膚の抵抗力が弱まっている場合も、褥瘡ができやすくなるため注意が必要です。褥瘡は、初期段階では皮膚が赤くなる、または紫色に変色するなどの症状が現れます。さらに悪化すると、水ぶくれや皮膚のびらん、潰瘍などが生じ、場合によっては、そこから細菌が侵入し、感染症を引き起こすこともあります。感染症を合併すると、発熱や悪寒、患部の痛みや腫れなどの症状が現れ、重症化すると命に関わることもあります。褥瘡を予防するためには、体位変換をこまめに行い、圧迫されている部分を解放することが重要です。また、栄養バランスの取れた食事を心がけ、皮膚を清潔に保つことも大切です。褥瘡が疑われる症状が見られた場合は、自己判断せずに、速やかに医師に相談しましょう。
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他動運動:その役割と重要性

- 他動運動とは他動運動とは、文字通り、自分以外の力で身体を動かす運動のことを指します。普段私たちが何気なく行っている運動の多くは、脳からの指令で筋肉が収縮し、関節を動かしています。このような運動を「能動運動」と呼びますが、他動運動はこれとは異なり、自分の意志とは関係なく、あるいは自分の力だけでは動かせない状態でも、外部からの力によって関節を動かすことを言います。具体例として、怪我や病気などで腕が上がらなくなった方が、理学療法士に支えてもらいながら腕を上げ下げする様子を想像してみてください。この場合、本人は腕を動かそうという意志はあっても、自分の力だけでは腕を動かすことはできません。しかし、理学療法士の手を借りることで、本来であれば動かすことが難しい腕を上下に動かすことができます。これが他動運動です。他動運動は、関節の柔軟性を維持したり、筋肉や関節の拘縮を予防したりする効果があります。また、脳卒中などで麻痺が残ってしまった方のリハビリテーションとしても重要な役割を担っています。外部からの刺激によって、脳に運動を再学習させる効果も期待できるからです。このように、他動運動は私たちが健康な身体を維持し、運動機能を回復するために行われる重要な運動の一つと言えるでしょう。
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他動運動:その役割と利点

- 他動運動とは他動運動とは、怪我や病気、あるいは筋力低下などの理由で、自力で体を動かすことが困難な場合に、外部からの力によって関節を動かしていく運動療法のことです。 例えば、交通事故による後遺症や脳卒中の後遺症などで、麻痺が残ってしまった場合、腕や足を自分の意思で動かすことが難しくなります。このような場合に、理学療法士や作業療法士といった専門家が、患者さんの体に直接触れて、関節を曲げ伸ばしする運動を行います。 また、患者さん自身が、麻痺のない反対側の手を使って麻痺のある側の腕を動かしたり、タオルや紐などを利用して足を持ち上げたりするのも、他動運動に含まれます。 他動運動の目的は、関節の柔軟性を維持すること、筋肉や腱の萎縮を防ぐこと、関節周りの血液循環を促進することなどです。 他動運動は、あくまでも外部からの力で受動的に行う運動であるため、筋肉を鍛えたり、運動機能を回復させたりする効果は限定的です。そのため、可能な限り、自力で体を動かすことができるように、自主トレーニングなども並行して行っていくことが重要です。
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腹臥位のすべて:利点から注意点まで

- 腹臥位とは何か腹臥位とは、簡単に言うと「うつぶせ」の状態を指します。医療現場では頻繁に用いられる体位の一つで、患者さんの背中全体をベッドに密着させ、顔を横に向けて呼吸を確保します。この体位は、手術や治療、検査など、様々な場面で選択されます。例えば、背中や腰の手術の場合、腹臥位にすることで手術部位へのアクセスが容易になります。また、呼吸療法においても、肺の後ろ側の換気を促すために腹臥位が有効な場合があります。ただし、腹臥位は妊婦や心臓に疾患を持つ方など、体勢によっては負担が大きくなってしまう場合もあります。そのため、医療従事者は患者さんの状態をしっかりと見極め、適切な体位を選択する必要があります。腹臥位は医療現場において、患者さんの負担を軽減し、より安全で効果的な治療や検査を行うために欠かせない体位の一つと言えるでしょう。
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日常生活の自立を支える:BADLとその評価

- BADLとはBADLは「基本的日常生活動作能力」の略称で、人が健康で自立した生活を送るために欠かせない、日常生活における基本的な動作を指します。私たちは毎日何気なく体を動かして生活していますが、その中には意識せずに行っている動作も数多く存在します。BADLは、そうした動作の中でも特に基本的なものを表しており、具体的には以下の6つが挙げられます。1. -家の中での歩行や移動- これは、部屋から部屋へ移動したり、椅子から立ち上がったりといった動作を指します。自分の足で安全に移動できることは、生活の質を大きく左右します。2. -食事- これは、食事を自分の力で口に運び、飲み込む動作を指します。栄養を摂取し、生命を維持する上で欠かせない動作です。3. -衣服の着脱- これは、衣服を自分で着たり脱いだりする動作を指します。季節や状況に合わせた服装を選ぶことは、健康で文化的な生活を送る上で重要です。4. -入浴- これは、浴槽に入ったり出たり、体を洗ったりする動作を指します。清潔を保ち、健康的な生活を送るために必要な動作です。5. -トイレの使用- これは、トイレに行って排泄し、後始末をする動作を指します。基本的な生理現象を適切に処理することは、衛生面からも重要です。これらの動作は、私たちが普段意識せずにできているものばかりですが、病気や怪我、加齢などによってできなくなることもあります。BADLは、人の自立度を測る指標の一つとして、医療や介護の現場で広く用いられています。BADLが低下した場合は、適切なリハビリテーションや介護支援を受けることで、できる動作を増やし、自立した生活を維持・向上させることが重要です。
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生命線:医療におけるラインの役割

- ラインとは何か病院で治療を受ける際、「点滴のラインを取りましょう」といった言葉を耳にすることがあるかもしれません。医療現場で日常的に使われる「ライン」とは、一体どのようなものなのでしょうか。簡単に言うと、ラインとは、体内に薬剤や栄養を投与したり、血液検査を行うために確保する、体への入り口のことです。具体的には、注射針よりも細い特殊な針を血管に刺したり、皮膚を少しだけ切開したりして、細い管を血管内に挿入します。この管のことを「カテーテル」と呼び、カテーテルを通して体外と血管内をつなぐ経路を確保することで、様々な医療行為が可能になります。ライン確保によってできることは、実に多岐に渡ります。例えば、脱水症状の改善や栄養補給のための点滴、病気の治療のための薬剤投与、手術や出血時の輸血などが挙げられます。さらに、血液検査のための採血や、心臓の状態を監視するためのカテーテル挿入などにも、ラインは欠かせません。このように、ラインは、患者さんの体と医療をつなぐ、まさに「生命線」と言える重要な役割を担っています。安全かつ確実な医療を提供するために、医療従事者は日々、ラインの管理や技術の向上に努めています。そして、患者さん一人ひとりの状態に合わせて、最適な方法でラインを確保することが何よりも大切です。
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医療現場の「ラウンド」とは?

病院で働く人なら、誰もが耳にする「ラウンド」。これは、患者さんの病室を定期的に訪問して回ることを指す言葉です。 患者さんの様子に変化がないか、治療やケアはきちんと行われているかなどを確認するのが目的です。 以前は、主に看護師が患者さんの状態確認や身の回りの世話を行うためにラウンドを行っていました。しかし、近年では、医師、看護師、薬剤師、理学療法士など、多くの医療専門職が協力して治療にあたる「チーム医療」が重要視されるようになっています。それに伴い、それぞれの専門家がチームで協力してラウンドを行う機会も増えています。 ラウンドは、患者さん一人ひとりの状態を細かく把握し、変化に素早く対応するためにとても大切なことです。顔色や表情、体調、食事の摂取量など、些細な変化も見逃さずに対応することで、重大な病気の兆候を早期に発見できる可能性があります。また、患者さんの訴えに耳を傾け、不安や疑問を解消することで、安心して治療に専念できる環境を作ることもできます。 このように、ラウンドは、患者さんの安全を確保し、一日も早く回復できるようにするために欠かせない取り組みといえます。
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医療現場の必須知識:Vラインとは?

- Vラインの基礎 Vラインとは、医療現場でよく使われる「末梢静脈ライン」のことを指します。アルファベットの「V」は、静脈を意味する英語「venous」の頭文字から来ています。 Vラインは、細い管状の医療器具であるカテーテルを、手足の静脈に挿入することで確保されます。そして、このルートを通じて、点滴のように薬剤や栄養剤などを体内に投与します。 カテーテルは、留置針と呼ばれる針を使って静脈に挿入されます。留置針が血管に入ったら、針は抜き、カテーテルだけが残ります。カテーテルはテープなどで皮膚に固定され、患者さんの負担を軽減できるようになっています。 Vラインは、入院している患者さんから手術を受ける患者さんまで、幅広い医療現場で活用されています。 例えば、脱水症状の改善や栄養補給、手術中の麻酔薬や抗生物質の投与などに用いられます。
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医療現場を守る!感染管理の重要性

- 感染管理とは病院や診療所といった医療機関では、日々多くの人が治療や診察を受けています。その中には、病気のために免疫力が低下し、感染症にかかりやすい状態の方も少なくありません。そこで、患者さん一人ひとりを感染症から守り、安全な医療を提供するために重要な役割を担うのが「感染管理」です。感染管理とは、医療機関において、患者さんや医療従事者に感染症が広がることを防ぐための取り組み全体を指します。具体的には、手洗い・手指消毒の徹底といった基本的な衛生管理から、医療機器の消毒・滅菌、空気中の細菌やウイルスへの対策など、多岐にわたる取り組みが行われています。感染経路としては、接触感染、空気感染、飛沫感染、血液・体液を介した感染など、様々な経路が考えられます。それぞれの感染経路に応じて、適切な予防策を講じる必要があります。例えば、接触感染を防ぐためには、患者さんに触れる前後の手洗い・手指消毒が重要となります。また、空気感染を防ぐためには、換気を適切に行う、空気清浄機を設置するなどの対策が有効です。感染管理は、医療従事者だけでなく、患者さんやその家族など、医療機関に関わる全ての人が意識して取り組むことが大切です。正しい知識と意識を持つことで、感染症のリスクを減らし、安全な医療環境を守ることができます。
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医療現場におけるエプロンの重要性

エプロンとは、衣服の上から身につける、身体を保護するための道具です。飲食店や工場などでよく見かけますが、医療現場でも活躍しています。 医療現場では、患者さんの血液や体液、分泌物などから医療従事者自身を守るためにエプロンが欠かせません。医療用のエプロンは、主にポリエチレンや不織布といった素材で作られています。これらの素材は、血液や体液をはじきやすく、医療従事者を感染から守るのに役立ちます。 エプロンには、使い捨てのものと、洗濯して繰り返し使用できるものの2種類があります。使い捨てエプロンは、主にポリエチレン製で、診察や検査など、短時間の使用を想定しています。一方、繰り返し使用できるエプロンは、主に不織布製で、洗濯に強く、繰り返し使用することができます。病院や診療所などでは、状況に応じて使い分けています。 エプロンは、医療従事者にとって、自身の身を守るための重要な道具であると同時に、患者さんへの安全な医療を提供するためにも欠かせないものです。適切なエプロンの使用は、医療現場における衛生管理の基本といえます。
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日常生活における基本動作:BADL

- 日常生活動作とBADL 私たちは毎日、朝起きてから夜寝るまで、様々な動作を行っています。 例えば、ご飯を食べたり、お風呂に入ったり、服を着替えたりと、これらはごく当たり前の行為であり、特に意識することなく行っている方がほとんどでしょう。 これらの動作は「日常生活動作」、英語で「Activities of Daily Living」、略して「ADL」と呼ばれ、健康を維持し、自立した生活を送る上で非常に重要です。 ADLは大きく分けて「BADL(Basic Activity of Daily Living基本的日常生活動作)」と「IADL(Instrumental Activity of Daily Living手段的日常生活動作)」の2つに分類されます。 BADLは、生命を維持するために必要不可欠な動作であり、具体的には食事、排泄、移動などが挙げられます。 食事は栄養を摂取するために、排泄は体内の老廃物を排出するために、移動は自分の意志で場所を移動するために、それぞれ欠かせない動作です。 一方、IADLは、より複雑な動作や社会生活を送る上で必要となる動作を指し、掃除、洗濯、料理、買い物、金銭管理などが挙げられます。 これらの動作は、必ずしも自分一人で行う必要はなく、家族や周囲の人の助けを借りることで、自立した生活を送ることができる場合もあります。
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看護の標準化:NICとその役割

- NICとはNICは「Nursing Interventions Classification」を略したもので、日本語では「看護介入分類」といいます。これは、看護師が患者さんに対して行うケアや処置を、統一された言葉で表現し、分類したものです。例えば、患者さんの痛みを和らげるために、看護師は様々な行動を起こします。患部の状態を観察したり、楽な姿勢を一緒に考えたり、医師の指示に従って痛み止めを投与したりするなど、その方法は多岐に渡ります。NICは、このような看護師の行動一つ一つに具体的な名前を与え、分類することで、看護の内容を明確に記録したり、他の看護師と共有したりすることを可能にします。NICは、看護師であれば誰でも理解できる共通言語として、看護記録や研究など、様々な場面で広く活用されています。これにより、看護の質の向上や、より安全で効果的な看護の提供につながると期待されています。
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看護記録の焦点:フォーカスチャーティングとは

医療現場において、看護記録は患者の状態や受けた看護ケアの内容を正確に記録し、医師や薬剤師、理学療法士など、医療チーム全体で情報を共有するために非常に重要なツールです。近年、従来の記録方式に加えて、患者の視点に立った、より患者中心的な記録方式が注目されています。 従来の記録方式では、看護師の視点から見た症状や行った処置などが中心に記録される傾向にありました。しかし、患者中心の記録方式では、患者の発言や行動、そしてその背景にある感情や考え方を重視します。 代表的な患者中心の記録方式として、『フォーカスチャーティング』があります。これは、患者の状態や行動、看護師の観察内容などを、「データ」「アクション」「レスポンス」の3つの要素で記録する手法です。「データ」は患者の訴えやバイタルサインなどの客観的な情報を、「アクション」は看護師が行ったケアの内容を、「レスポンス」はケアに対する患者の反応を記録します。 患者中心の記録方式を導入することで、医療チーム全体が患者の状況をより深く理解し、患者一人ひとりのニーズに合わせた質の高い医療を提供することに繋がります。また、患者自身が自分の状態や治療経過を把握しやすくなることで、治療に対する意欲や自己管理能力の向上も期待できます。
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エンゼルケア:故人との最後の時間を大切に

- エンゼルケアとは人は誰しも、その生涯に幕を閉じるときを迎えます。その時、残された家族は深い悲しみに包まれながらも、故人との最後のお別れの時を迎えなければなりません。エンゼルケアとは、そんな大切な方の旅立ちを穏やかで美しいものにするための、最後の贈り物と言えるでしょう。具体的には、まず温かいお湯とタオルを使い、身体を丁寧に拭き清めます。これは、まるで生きているかのように、故人を慈しむ気持ちで行うことが大切です。そして、生前と同様に化粧を施したり、髪を整えたりすることで、安らかな顔つきに近づけていきます。闘病の痛みや苦しみを偲ばせる傷跡がある場合は、それらを目立たなくする処置を施すこともあります。エンゼルケアは、単なる遺体の処置ではありません。それは、故人に対する敬意と愛情の表れであり、ご遺族が穏やかな気持ちで最後のお別れをするための大切なプロセスです。穏やかな表情の故人と対面することで、ご遺族は深い悲しみの中でも、安らぎと癒しを感じることができるでしょう。それは、故人が残してくれた最後の愛情表現とも言えるかもしれません。
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看護の現場で活躍するカーデックス

- カーデックスとは病院の病棟では、患者さん一人ひとりの情報を正確に把握し、安全な看護を提供することが非常に重要です。そのために用いられるのが「カーデックス」と呼ばれる記録用紙です。カーデックスは、患者さん一人ひとりに専用のものが用意され、氏名や年齢といった基本的な情報はもちろん、病気や治療内容、服用している薬、食事の内容、アレルギーの有無など、医療に関わる様々な情報が詳細に記録されます。さらに、看護師は患者さんの状態を観察し、体温や脈拍、血圧などの測定結果、行った処置やその後の経過などを記録していきます。これらの情報は、一枚の紙に要約してまとめられ、専用のファイルに保管されます。ファイルには複数の患者さんのカーデックスが収められており、看護師は必要なときにすぐに取り出して患者さんの情報を確認することができます。カーデックスは、患者さんに関する情報を一元的に管理し、看護師間で共有するための重要なツールと言えるでしょう。情報を共有することで、看護師は、患者さん一人ひとりに最適な看護を提供できるだけでなく、業務の引継ぎもスムーズに行うことができます。また、医師や薬剤師など、他の医療従事者にとっても、患者さんの状態を把握するための貴重な情報源となっています。このように、カーデックスは、病院において患者さんの安全な医療と看護を提供するために欠かせない存在です。
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看護の基盤:アセスメントを理解する

- アセスメントとは看護師は、患者さんの状態をより良くするために、計画を立てて行動します。その計画を立てるための土台となるのが、アセスメントです。アセスメントとは、患者さんの状態を可能な限り正確に把握することであり、看護師にとって最初の、そして非常に重要なステップと言えます。看護師は、患者さんの状態を把握するために、まず情報を集めます。情報を集める際には、患者さんから直接伺う必要があります。例えば、「熱っぽい」「頭が痛い」「吐き気がする」といった訴えや、「不安だ」「家族が心配だ」といった気持ちは、患者さん自身にしかわからない主観的な情報であり、とても重要です。しかし、患者さんの言葉だけに頼るのではなく、看護師自身の目で見て、耳で聞いて、手で触れて得られる情報も大切です。これらの情報は、客観的な情報と呼ばれ、表情やしぐさ、体温や脈拍、皮膚の状態やお腹の音などを、医療者としての知識や経験に基づいて確認します。さらに、血液検査やレントゲンなどの検査結果も、客観的な情報として加わります。このように、アセスメントでは、患者さんから直接伺う主観的な情報と、看護師が自身の五感や検査結果から得る客観的な情報を組み合わせて、総合的に判断します。このプロセスを通じて、患者さんの状態をより深く理解することができ、その後の看護計画へと繋げていくことができるのです。
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患者中心の医療を実現する:ウォーキングカンファレンスのすすめ

- ウォーキングカンファレンスとは従来の会議室で行うカンファレンスとは異なり、患者さんのベッドサイドで行われるものがウォーキングカンファレンスです。会議室に集まって行う形式とは異なり、医師や看護師が患者さんのもとへ直接足を運び、その場で話し合いを行います。特徴的なのは、患者さん自身も議論に参加できる点です。治療方針やケア内容について、医師や看護師から直接説明を受け、疑問点があればその場で質問できます。ウォーキングカンファレンスでは、患者さんは医療従事者と顔を見ながら、自分の病気や治療について話し合うことができます。そのため、治療内容に対する理解を深めることができ、納得した上で治療に臨むことが期待できます。また、自身の意見や希望を伝えることで、より積極的に治療や看護に関わることができます。このような患者中心の姿勢は、患者さんの不安や疑問を軽減するだけでなく、医療従事者との信頼関係構築にも役立ちます。その結果、治療効果の向上や患者さんの満足度向上、ひいては医療の質向上に繋がると期待されています。
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心地よい眠りの準備: イブニングケアのススメ

- イブニングケアで心地よい眠りを一日の終わりに迎える夜は、ただ眠るための時間ではありません。翌朝を気持ちよくスタートさせるために、心身をゆったりと休ませ、質の高い睡眠へと導くための準備をする時間とも言えます。この、夕方から寝るまでの時間を利用したケアを「イブニングケア」と呼びます。日中は仕事や家事、勉強など慌ただしく過ごしていても、イブニングケアの時間を持つことで、活動モードから休息モードへと自然に切り替えることができます。夜のゆったりとした時間を有効活用し、自分自身をいたわることで、心身の緊張を解きほぐし、心地よい眠りへと誘うことができるのです。具体的には、ぬるめのお風呂にゆっくりと浸かったり、好きな香りのアロマを焚いたり、リラックス効果のあるハーブティーを味わったりなど、方法は様々です。また、寝る前のスマホやパソコンの使用を控えたり、部屋の照明を暖色系にしたりすることも、質の高い睡眠を得るための準備として効果的です。イブニングケアは、特別なことをするのではなく、日々の生活の中に取り入れやすい、自分にとって心地よい方法で行うことが大切です。毎日の習慣にすることで、睡眠の質が向上するだけでなく、心身のバランスを整え、より健康的な生活を送ることに繋がります。
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医療現場の必需品:リストンとは?

リストンは、病院や診療所などで日々使用されている、医療用の特別なはさみです。みなさんが、病院で包帯を巻いてもらったり、点滴の管を固定するテープを貼ってもらったりした際に、医師や看護師さんが使っていた小さく、少し変わった形のはさみを見たことがありませんか?それが、リストンです。 リストンは、包帯やテープ、糸などを切るために作られています。医療現場では、患者の体に直接触れるため、清潔さや安全性が非常に重要になります。リストンは、先端部分が丸みを帯びているという特徴があります。これは、万が一、患者の肌に先端が当たってしまっても、傷つけないようにという工夫がされているためです。また、切れ味が非常に鋭いことも、リストンの大きな特徴の一つです。切れ味が良いことで、処置を素早く行うことができ、患者さんの負担を減らすことにもつながります。 このように、リストンは医療従事者にとって、患者さんの安全を確保しながら、日々の業務を円滑に行うために欠かせない道具の一つと言えるでしょう。
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