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大腸がんとAPC遺伝子

近年、日本人の間で罹患率、死亡率ともに高いがんである大腸がん。早期発見、早期治療が重要となるこの病気は、食生活などの環境要因に加えて、遺伝的な要因も発症に深く関わっていることが分かっています。 実は、大腸がんの一部は遺伝によって引き起こされることがあり、その代表的な疾患が家族性大腸腺腫症です。この病気は、大腸に多数の腫瘍(腺腫)ができる病気で、放置すると若いうちから大腸がんを発症するリスクが高くなります。 家族性大腸腺腫症の原因として、APC遺伝子と呼ばれる遺伝子の異常が知られています。この遺伝子は、細胞の増殖をコントロールする役割を担っており、APC遺伝子に変異があると、細胞増殖のコントロールが効かなくなり、腫瘍ができやすくなると考えられています。 今回は、この家族性大腸腺腫症の原因遺伝子であるAPC遺伝子について、詳しく解説していきます。遺伝子の構造や機能、遺伝子変異と大腸がん発症の関係など、様々な側面から解説することで、家族性大腸腺腫症に対する理解を深めていきたいと思います。
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肝臓の守護神:クッパー細胞

- 肝臓の構造肝臓は、体重の約2%を占める、成人男性で約1.2~1.5kg、成人女性で約1~1.2kgにもなる、人体最大の臓器です。横隔膜のすぐ下に位置し、肋骨に守られるようにお腹の右上に収まっています。肝臓の表面は線維性の膜で覆われており、内部は肝細胞と呼ばれる小さな細胞が、規則正しく並んだ構造をしています。肝細胞は、栄養分の代謝や貯蔵、有害物質の解毒、胆汁の生成など、実に500種類以上もの働きを担う、まさに肝臓の働きの中心を担う細胞と言えるでしょう。肝細胞がびっしりと詰まった肝臓の内部には、門脈と呼ばれる血管から栄養や酸素を豊富に含んだ血液が流れ込み、肝動脈からは酸素を多く含んだ血液が流れ込みます。これらの血管は、肝臓内で枝分かれを繰り返しながら、毛細血管と呼ばれる非常に細い血管へと変化していきます。毛細血管は、肝細胞一つ一つに密着するように網目状に広がっており、まるでスポンジのような構造を作っています。この毛細血管の網目状の構造は、類洞と呼ばれ、栄養や酸素を効率よく肝細胞に届けると同時に、肝細胞で処理された物質や老廃物を運び出す役割も担っています。このように、肝臓は、無数の肝細胞と、それを取り囲む血管網が複雑に絡み合った、非常に精巧な構造をしています。この複雑な構造こそが、肝臓が多様な機能を効率よく行うことを可能にしているのです。
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胃を守る胃粘膜: その構造と役割

食べ物を一時的に蓄え、消化の最初の段階を担う臓器、胃。その内部は、食べ物の消化を効率的に行うために、複雑な構造をしています。胃の壁は、内側から外側に向かって、粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜という4つの層で構成されています。 胃の最も内側にある粘膜は、食べ物が直接触れる部分です。この粘膜は、胃液の酸性や食べ物の刺激から胃自身を守る、重要な役割を担っています。 粘膜の下には、粘膜下層と呼ばれる層が存在します。粘膜下層は、血管やリンパ管、神経などが豊富に通っており、粘膜への栄養供給や、胃の動きの調節などを行っています。 粘膜下層の外側には、胃の運動を司る筋層があります。この筋層は、縦方向、輪状方向、斜め方向に走る3層の筋肉からなり、それぞれの筋肉が協調して収縮することで、食べ物を churning と呼ばれる複雑な動きでかき混ぜ、消化液と混ぜ合わせます。 churning によって食べ物は細かく砕かれ、消化酵素の作用を受けやすくなります。 最も外側の漿膜は、胃を外部から包む薄い膜です。漿膜は、胃と周囲の臓器との摩擦を防ぎ、滑らかな動きを助ける役割を担っています。 このように、胃は4層からなる精巧な構造を持つことで、効率的に食べ物を消化し、次の段階である小腸へと送り出しているのです。
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ウィルヒョウ転移:その名は不吉なサイン

皆さんは「鎖骨上窩(さこつじょうか)」という部分をご存知でしょうか?鎖骨上窩とは、左右の鎖骨の上、ちょうど首と肩の境目あたりに見られる、くぼんだ部分のことです。この鎖骨上窩に、時に小さな腫れが見つかることがあります。一見、大したことのないようなこの腫れですが、実は体からの重要なサインである可能性があります。 医学の世界では、がんが進行し、体の離れた場所に広がることを「転移」と呼びます。そして、「ウィルヒョウ転移」は、その中でも特に注意すべき転移の一つです。ウィルヒョウ転移とは、胃がんや肺がん、乳がんなど、様々な種類のがんが、リンパの流れに乗って鎖骨上窩にあるリンパ節に転移することを指します。 鎖骨上窩に見られる小さな腫れの多くは、良性のリンパ節腫脹であることがほとんどです。しかし、中にはウィルヒョウ転移が隠れている可能性もあるため、注意が必要です。特に、健康な状態でありながら、理由もなく鎖骨上窩に腫れが見られる場合や、腫れが持続する場合は、速やかに医療機関を受診し、医師の診察を受けるようにしましょう。
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大腸内視鏡検査:大腸の健康状態を詳しく調べる

- 大腸内視鏡検査とは大腸内視鏡検査は、肛門から内視鏡と呼ばれる細長い管状の機器を挿入し、大腸の内部を観察する検査です。内視鏡の先端には小型カメラとライトが付いており、大腸の粘膜を鮮明に映し出すことができます。医師は、モニターに映し出された画像を見ながら、大腸の内部をくまなく観察し、病変の有無を調べます。この検査では、大腸がん、ポリープ、潰瘍性大腸炎、クローン病など、さまざまな大腸の病気を診断することができます。特に、早期の大腸がんは自覚症状が現れにくいため、定期的な検査による早期発見・早期治療が重要です。検査中は、腸の中を膨らませるために空気やガスを送り込みます。そのため、お腹の張りや軽い腹痛を感じる場合がありますが、通常は検査後しばらくすると治まります。また、鎮静剤を使用することで、検査中の苦痛を軽減することも可能です。大腸内視鏡検査は、大腸の病気を早期に発見し、適切な治療につなげるための重要な検査です。不安や疑問点があれば、検査前に医師に相談するようにしましょう。
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C型肝炎:沈黙の臓器の脅威

- C型肝炎とはC型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)によって引き起こされる肝臓の病気です。このウイルスは血液を介して感染し、肝臓に炎症を起こします。感染すると、肝臓の細胞が破壊され、徐々に肝臓の機能が低下していきます。C型肝炎は、急性肝炎と慢性肝炎の2つの段階に分けられます。急性肝炎は、感染初期に現れる症状で、発熱、倦怠感、食欲不振、黄疸などがみられます。しかし、急性肝炎の症状は軽度であることが多く、気づかないまま経過してしまう場合もあります。約70%の患者さんは、急性肝炎から慢性肝炎に移行するとされています。慢性肝炎は、自覚症状がほとんどないまま長い期間にわたって肝臓の炎症が続く状態です。そのため、知らないうちに病気が進行し、肝硬変や肝臓がんのリスクが高まることが問題となっています。C型肝炎は早期発見、早期治療が重要です。定期的な健康診断や血液検査を受けることで、早期に発見することができます。また、近年では有効性の高い治療薬が開発されており、早期に治療を開始することで、肝硬変や肝臓がんの発生を抑制することが期待できます。
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B型肝炎:沈黙のウイルスとの闘い

- はじめに B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)によって引き起こされる肝臓の病気です。このウイルスは、血液や体液を介して人から人に感染します。感染すると、肝臓で炎症が起こり、さまざまな症状が現れます。 B型肝炎の特徴の一つに、自覚症状が少ないことが挙げられます。そのため、自分が感染していることに気づかないまま、病気を進行させてしまうケースも少なくありません。このようなことから、B型肝炎は「沈黙のウイルス」とも呼ばれています。 B型肝炎を放置すると、肝硬変や肝臓がんといった重い病気につながる可能性があります。しかし、早期に発見し、適切な治療を受けることで、病気の進行を抑え、健康な状態を長く保つことが期待できます。 今回は、B型肝炎について、その原因や症状、治療法などを詳しく解説していきます。B型肝炎の予防についても触れていきますので、ぜひ最後までお読みください。
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ありふれた症状の奥に潜むもの:腹痛

お腹が痛むということは、誰しもが経験するありふれた症状です。医学用語では「腹痛」と呼びますが、これはみぞおちからおへその下あたりまでの腹部と呼ばれる領域に感じる痛みのことを指します。 腹痛の原因は非常に多岐に渡り、その程度も軽いものから命に関わる重篤なものまで様々です。例えば、食べ過ぎや飲み過ぎ、脂っこいものを食べた後などに感じる鈍い痛みは、多くが一過性の消化不良によるものであり、通常はあまり心配する必要がありません。また、緊張やストレスを感じた時にみぞおちのあたりがキリキリと痛む神経性胃炎なども、比較的よく見られる腹痛の一つです。 一方、急な激しい痛みや、発熱、吐き気、嘔吐、下痢、血便などを伴う場合は注意が必要です。これらの症状は、虫垂炎や胆石症、腸閉塞、 pancreatitis (膵臓の炎症)などの病気のサインである可能性があり、早急な医療処置が必要となることもあります。 自己判断は危険ですので、少しでも気になる症状がある場合は、我慢せずに医療機関を受診し、医師の診察を受けるようにしましょう。
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脱腸:腹腔内容が飛び出す病気

- 脱腸とは脱腸は、本来お腹の中に収まっているべき腸などの臓器が、何らかの原因で弱くなった腹壁の隙間から外へ飛び出してしまう病気です。体の一部が本来あるべき場所から飛び出してしまう状態を「ヘルニア」と呼びますが、脱腸は「腹壁ヘルニア」とも呼ばれます。お腹の中には、胃や腸などの消化器官をはじめ、肝臓や脾臓などの重要な臓器が詰まっています。これらの臓器は、腹筋や筋膜などからなる腹壁によって守られています。しかし、加齢や肥満、妊娠、重い物を持ち上げる動作、慢性的な咳などによって腹壁が弱くなると、組織の隙間から臓器が飛び出しやすくなります。特に、お腹の中の圧力が高まった時に、その圧力に耐えきれず、組織の弱い部分が押し出されるようにして脱腸が起こります。脱腸は、飛び出す場所や原因によっていくつかの種類に分けられます。例えば、太ももの付け根に起こる「鼠径(そけい)ヘルニア」、おへその周辺に起こる「臍(さい)ヘルニア」、手術の傷跡に起こる「瘢痕(はんこん)ヘルニア」などがあります。脱腸は、放置すると飛び出した臓器への血流が悪くなったり、腸閉塞などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。そのため、早期に発見し、適切な治療を受けることが重要です。治療法としては、飛び出した臓器を元の位置に戻し、弱くなった腹壁を修復する手術が行われます。近年では、体に負担の少ない腹腔鏡手術が普及してきています。
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体に優しい栄養補給:胃ろうの一種、ペグとは?

人は誰でも、歳を重ねたり病気になったりすることで、体の機能が衰えていきます。食べるという行為も例外ではありません。噛む力や飲み込む力が弱くなってしまうと、食事が思うように進まなくなり、十分な栄養を摂ることが難しくなります。このような状態が続くと、健康を維持することが難しくなり、体力や免疫力の低下につながる可能性もあります。 口から十分な食事を摂ることが難しい場合に、検討される方法の一つに「胃ろう」という方法があります。胃ろうは、お腹に小さな穴を開け、そこから胃に直接チューブを通すことで、栄養を直接胃に送り込む方法です。口や食道を通さずに栄養を摂取できるため、噛むことや飲み込むことが困難な方でも、効率的に栄養を補給することができます。 胃ろうは、手術が必要となるため、患者さんにとって負担が大きいと感じる方もいるかもしれません。しかし、胃ろうによって栄養状態が改善されると、体力の回復や免疫力の向上が期待できます。また、食事の介助にかかる時間や負担を減らすことができるため、患者さんだけでなく、ご家族にとっても生活の質を向上させることにつながると考えられています。
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ノロウイルス感染症:その感染力と症状

- ノロウイルスとは?ノロウイルスは、一年を通して私たちの間で頻繁に流行を引き起こす、急性胃腸炎の代表的な原因となるウイルスです。ノロウイルスに感染すると、吐き気や嘔吐、腹痛、下痢などの症状が現れます。 多くの場合、これらの症状は1日から3日程度で治まりますが、乳幼児や高齢者の方などは、脱水症状や他の病気の合併症を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。ノロウイルスの感染力は非常に強く、わずか10~100個ほどのウイルス粒子が口から体内に入るだけで感染が成立してしまうと言われています。これは、他のウイルスと比較しても極めて少ない数であり、ノロウイルスの感染力の強さを示しています。感染経路は主に、ウイルスに汚染された食品や飲料水を摂取することによる「経口感染」です。特に、カキなどの二枚貝や、ノロウイルスに感染した人が調理した食品などを介して感染することが多いため、注意が必要です。また、感染者の吐物や糞便に含まれるウイルスが、空気中に舞い上がり、それを吸い込むことで感染する「空気感染」や、感染者の吐物や糞便が付着したドアノブやトイレなどを介して感染する「接触感染」もあります。ノロウイルスに対する有効なワクチンや特効薬は、現在のところありません。そのため、感染を防ぐためには、日頃から手洗いを徹底することや、食品を加熱調理することなど、基本的な衛生対策を心掛けることが重要です。
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胆石の治療に!ラパコレってどんな手術?

- ラパコレとはラパコレとは、正式には腹腔鏡下胆嚢摘出術と言い、お腹を切らずに胆嚢を摘出する手術のことです。胆嚢は、肝臓の下にぶら下がっている小さな袋状の臓器です。肝臓で作られた胆汁を一時的に蓄え、濃縮して、食べ物が十二指腸に送られてくると胆汁を送り出す役割を担っています。しかし、胆石症などで胆嚢に炎症が起こったり、胆嚢の機能が低下したりすると、腹痛や発熱などの症状が現れることがあります。このような場合には、胆嚢を摘出する手術が必要となります。従来の開腹手術では、お腹を大きく切開して胆嚢を摘出していました。一方、ラパコレでは、お腹に小さな穴を数カ所開け、そこから内視鏡や手術器具を挿入して胆嚢を摘出します。内視鏡にはカメラが付いているため、術者はモニターを見ながら手術を行うことができます。ラパコレは、開腹手術に比べて傷が小さく、術後の痛みが少ないというメリットがあります。また、入院期間も短く、日常生活への復帰も早いという利点があります。そのため、現在では胆嚢摘出手術の多くがラパコレで行われています。
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アニサキス症:食中毒にご用心

- アニサキスとはアニサキスは、海に住む生き物に寄生する寄生虫の一種です。細長い糸のような形をしていて、色は白っぽいのが特徴です。大きさは2~3cmほどで、肉眼でも確認することができます。アニサキスは、サバ、イカ、サケ、サンマなど、私たちが普段食べている魚介類に寄生していることが多く、その魚の内臓に多く存在します。私たちがアニサキスに寄生された魚介類を生で、もしくは十分に加熱処理せずに食べてしまうと、アニサキスが体内に入ってきてしまうことがあります。アニサキスは私たち人間の体の中では生きていくことができません。そのため、体内に入っても長く留まることはなく、通常数日以内に自然に排出されます。しかし、アニサキスが胃や腸の壁に刺さってしまうことがあります。これがアニサキス症と呼ばれる食中毒の原因です。アニサキス症は、激しい腹痛や吐き気を引き起こし、場合によっては手術が必要になることもあります。アニサキスは熱に弱いため、魚を十分に加熱するか、マイナス20度で24時間以上冷凍することで、死滅させることができます。また、新鮮な魚を選ぶ、内臓を生で食べないことも予防に繋がります。アニサキスによる食中毒は、正しい知識と予防法を実践することで防ぐことができます。
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排便の司令塔:直腸肛門反射

私たちは毎日、食事をして栄養を摂取し、不要となったものを体外へ排出しています。この排出活動の一つである排便は、健康のバロメーターとも呼ばれ、私たちの体の状態を反映する重要なものです。一見、単純な行為のように思える排便ですが、そこには驚くほど精緻なメカニズムが隠されています。 食べたものは、胃で消化され、小腸で栄養分が吸収された後、残ったものは大腸へと送られます。大腸では水分が吸収され、便が形成されていきます。そして、直腸と呼ばれる場所に運ばれた便は、一定量たまると、脳にその情報が伝わります。すると、私たちは便意を感じ、トイレへと向かうのです。 排便時には、肛門にある二つの筋肉が重要な役割を果たします。内肛門括約筋と外肛門括約筋と呼ばれるこれらの筋肉は、普段はしっかりと肛門を閉じています。しかし、脳からの指令を受けると、これらの筋肉は弛緩し、便の排出を促します。同時に、私たちは無意識に、あるいは意識的に腹部に力を入れることで、直腸に溜まった便を体外へと押し出します。このようにして、私たちは排便という行為をスムーズに行うことができるのです。
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お腹の痛みとブルンベルグ徴候

- ブルンベルグ徴候とはお腹の痛みは、誰しもが経験するありふれた症状です。しかし、その痛みが命に関わる病気のサインである場合もあります。そのため、痛みの種類や現れ方を正しく理解することが重要です。今回は、腹膜炎の可能性を示唆する重要なサインである「ブルンベルグ徴候」について詳しく解説します。ブルンベルグ徴候とは、お腹を押したときに感じる痛みのサインの一つです。診察の際、医師はお腹の表面を優しくゆっくりと押していきます。そして、ある程度まで押し込んだ後、急に手を離すと、お腹に強い痛みを感じます。この痛みこそが、ブルンベルグ徴候と呼ばれるものです。では、なぜ手を離したときに強い痛みを感じるのでしょうか?健康な状態では、お腹の中は臓器で満たされており、臓器同士は腹膜と呼ばれる薄い膜で覆われています。しかし、腹膜に炎症が起こると、この膜が刺激に対して敏感になります。そのため、お腹を押さえられると強い痛みを感じます。さらに、急に圧迫が解除されると、炎症を起こした腹膜が急に伸びるため、より強い痛みを感じると考えられています。ブルンベルグ徴候は、腹膜炎の疑いがある場合に重要な診断材料となります。腹膜炎は、放置すると命に関わる危険な病気です。そのため、ブルンベルグ徴候が見られる場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。
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食中毒を防ぐために

食中毒とは、食べ物に付着した細菌やウイルス、有害な化学物質などを口にすることで、体調が悪くなる病気のことを指します。代表的な症状としては、吐き気や嘔吐、下痢、腹痛などが挙げられます。 食中毒の原因は多岐に渡り、大きく分けて細菌やウイルス、寄生虫といった微生物によるもの、農薬や食品添加物などの化学物質によるもの、フグ毒や毒キノコなどの自然毒によるものの3つに分類されます。 中でも細菌やウイルスによる食中毒は、気温や湿度が上昇する夏場に多く発生する傾向があります。これは、高温多湿な環境が、これらの微生物にとって増殖しやすい条件となるためです。 食中毒を予防するためには、食品の購入から調理、保管に至るまで、あらゆる段階で注意を払う必要があります。例えば、肉や魚などの生鮮食品は新鮮なものを選び、持ち帰る際は保冷剤を入れたクーラーボックスなどを使用し、低温を保つように心がけましょう。また、調理の際にはしっかりと加熱し、食品の中心部まで火を通すことが重要です。さらに、調理器具は清潔なものを使用し、生野菜などは流水でよく洗い流してから食べるようにしましょう。 食中毒は、適切な予防策を講じることで、その多くを防ぐことが可能です。日頃から食中毒のリスクを認識し、安全な食品の取り扱いを心がけましょう。
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サルモネラ菌:食中毒を引き起こす身近な脅威

- サルモネラ菌とはサルモネラ菌は、私たちの身の回り、自然環境の様々な場所に生息する細菌です。土壌や水、そして動物の腸内など、あらゆる場所に潜んでいる可能性があります。特に、家畜やペットなどの動物はサルモネラ菌を腸内に保有していることが多く、これらの動物由来の食品は注意が必要です。 サルモネラ菌は、汚染された食品を食べることで、私たちの体内に侵入します。食品がサルモネラ菌に汚染される経路は様々です。例えば、家畜の腸内にいたサルモネラ菌が、食肉処理の過程で肉に付着したり、汚染された水や土壌を介して野菜や果物に付着したりすることがあります。また、ペットの爬虫類や両生類もサルモネラ菌を保有していることがあり、これらの動物に触れた後、適切な手洗いをせずに食品を扱うと、食品が汚染される可能性があります。 サルモネラ菌が体内に侵入すると、食中毒症状を引き起こします。主な症状としては、腹痛、下痢、発熱などが挙げられます。通常、これらの症状は数日で治まりますが、乳幼児や高齢者、免疫力の低下している方などは、重症化する可能性もあるため、注意が必要です。 サルモネラ菌による食中毒を予防するためには、食品の適切な加熱や手洗いの徹底が重要です。食品は十分に加熱することで、サルモネラ菌を死滅させることができます。また、調理前や食事前、トイレの後、動物に触れた後などは、石鹸と流水を使って手を丁寧に洗い、菌の体内への侵入を防ぎましょう。
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命に関わる胆管の炎症:急性胆管炎

- 急性胆管炎とは急性胆管炎は、生命にかかわる可能性もある危険な病気です。胆汁の流れが悪くなることで細菌感染を起こし、胆管に強い炎症を引き起こします。胆汁は、肝臓で作られる消化液で、脂肪の分解を助ける重要な役割を担っています。肝臓で作られた胆汁は、いったん胆嚢に蓄えられ、その後、胆管と呼ばれる管を通って十二指腸に送られます。ところが、この胆管が胆石や腫瘍などによって塞がってしまうと、胆汁の流れが滞ってしまいます。すると、胆汁が溜まり、そこに細菌が繁殖しやすくなるのです。細菌が繁殖すると、胆管に炎症が起こり、これが急性胆管炎の始まりです。急性胆管炎になると、発熱、腹痛、黄疸といった症状が現れます。特に右上腹部には激しい痛みが生じることが多く、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。また、重症化すると意識障害やショック状態に陥ることもあり、迅速な治療が必要です。急性胆管炎は、早期に発見し、適切な治療を行えば、多くの場合、治癒する病気です。しかし、放置すると重症化し、命に関わる危険性も高まります。そのため、腹痛や発熱、黄疸などの症状が出た場合には、速やかに医療機関を受診することが重要です。
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医療現場で使われる「KOT」って何?

病院で働く人たちは、患者さんの状態や治療内容を正確に、そして素早く伝えるために、普段の生活ではあまり耳にすることのない専門用語を使っています。このような専門用語は、医療従事者同士のコミュニケーションを円滑にするために欠かせないものです。しかし、一般の人にとっては、これらの言葉は難解で、理解するのが難しい場合も多いでしょう。今回は、数ある医療用語の中から、「KOT」という言葉について詳しく説明していきます。 「KOT」とは、「Keep on Temperature」の略称で、日本語では「保温」を意味します。これは、手術後や体調が不安定な患者さんに対して、体温を一定に保つための指示として使われます。体温は、人間の生命維持に不可欠な要素であり、低体温症は様々な合併症を引き起こす可能性があります。そのため、患者さんの状態に合わせて、毛布や保温器具などを用いて適切な体温管理を行うことが重要となります。 「KOT」という言葉一つとっても、医療現場では、患者さんの安全を守るための様々な配慮が隠されています。普段、私たちが目にすることのない医療用語ですが、その背景には、患者さんの命と健康を守る医療従事者たちのたゆまぬ努力と、専門知識に基づいた的確な指示が存在しているのです。
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吐き気を表現する「ナウゼア」

病院や診療所など、医療の現場では、患者さんの訴えや症状を的確に捉え、医師や看護師の間で共有することが非常に重要です。その際に、患者さんが「吐き気がする」「むかつく」「胃がもたれる」といった漠然とした表現を使うことがあります。しかし、これらの言葉だけでは、患者さんが具体的にどのような状態なのか、医療従事者間で解釈が異なる可能性も出てきます。そこで、より正確に症状を伝えるために、「ナウゼア」という言葉を用いることがあります。 ナウゼアとは、英語の "nausea" に由来する医学用語で、日本語では「嘔気」と訳され、吐き気を催している状態を指します。これは、単に胃の内容物が逆流しそうだと感じるだけでなく、実際に吐いてしまう前段階の状態や、吐き気はあるものの吐くものがない状態も含みます。 医療従事者は、患者さんから「吐き気がする」という訴えがあった場合、それが「ナウゼア」に該当するのか、それとも別の症状なのかを注意深く見極める必要があります。そして、患者さんとのコミュニケーションを円滑に進め、他の医療従事者へも正確な情報を伝えるために、「ナウゼア」のような医学用語を用いることがあります。このように、医療現場では、共通の用語を用いることで、誤解のない情報伝達を心がけています。
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感染性胃腸炎: 冬の流行に注意

- 感染性胃腸炎とは感染性胃腸炎は、食べ物や飲み物、あるいは感染者の便などを通して、体の中に微生物が侵入し、胃や腸などの消化管に炎症を引き起こす病気です。この微生物には、主に細菌やウイルスなどが挙げられます。代表的な症状としては、吐き気や嘔吐、下痢、腹痛などがあり、発熱や頭痛を伴うこともあります。これらの症状は、体内に入った微生物を排除しようとする体の防御反応によって起こります。感染性胃腸炎は、乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層で発症する可能性があります。特に、免疫力が十分に発達していない乳幼児や、免疫力が低下しやすい高齢者は、重症化しやすい傾向にあるため注意が必要です。感染性胃腸炎は、年間を通して発生しますが、特に冬場に流行しやすいと言われています。これは、気温が低く乾燥した環境では、ウイルスが空気中を漂いやすく、感染が広がりやすいためと考えられています。また、夏場には、細菌による食中毒が原因で発症するケースも多くなります。感染性胃腸炎を予防するためには、こまめな手洗いが重要です。特に、食事の前やトイレの後には必ず手を洗いましょう。また、食品は十分に加熱してから食べるようにし、生水は飲まないようにしましょう。周りの人に感染を広げないためにも、咳エチケットを心がけることも大切です。
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医療現場で使われる「KOT」って?

病院や診療所などで、医師や看護師が使う言葉には、私たちが普段耳にしない専門用語が多く存在します。これらの言葉は、患者さんの状態や治療の内容を正確に記録し、医療従事者間で情報を共有するために欠かせません。しかし、一般の方にとっては、見慣れない言葉が並ぶと、戸惑ってしまうこともあるでしょう。そこで今回は、数ある医療用語の中から「KOT」という言葉を取り上げ、その意味するところを詳しく解説していきます。 「KOT」とは、「Keep on Temperature」の頭文字をとったもので、日本語では「体温保持」という意味です。これは、病気や手術などの影響で、患者さん自身の力で体温を維持することが難しい場合に、毛布や温風ヒーターなどを用いて、体温が下がらないように保つ処置のことを指します。体温が低下すると、免疫力が低下したり、心臓や呼吸器に負担がかかったりするなど、様々な悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、KOTは患者さんの回復を助ける上で、非常に重要な処置の一つと言えるのです。 医療ドラマなどで、患者さんに毛布をかけたり、湯たんぽを使ったりする場面を見たことがあるかもしれません。それは、体温を保つための医療処置であり、医療現場では「KOT」という言葉で表現されているのです。
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体の出口、肛門の役割と病気

私達が毎日口にする食べ物は、胃や腸で消化・吸収され、栄養となって全身に届けられます。そして、その過程で残ったものが便です。便は、いわば体の「残りカス」であり、肛門はこれを体外へと送り出す、いわば体の「出口」としての重要な役割を担っています。 肛門は消化管の最終地点に位置し、体の最も低い場所に位置しています。この肛門が正常に機能することで、私達は不快な思いをすることなく、健康的な生活を送ることができるのです。 肛門は、単なる排出口ではなく、精巧な仕組みによってその役割を果たしています。肛門括約筋と呼ばれる筋肉が、便意がないときは肛門をしっかりと閉じて、便が漏れるのを防いでいます。そして、便が直腸に到達し、便意を感じると、脳からの指令によって肛門括約筋が緩み、便を排出します。 さらに、肛門の粘膜には、便をスムーズに排出するための粘液を分泌する機能も備わっています。この粘液が不足すると、排便時に痛みを感じたり、出血を伴ったりすることがあります。 このように、肛門は私達が健康的な生活を送る上で欠かせない役割を担っています。日々の生活の中で、肛門の健康にも気を配ることが大切です。
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食べ物の旅路: 小腸の秘密を探る

私たちは毎日食事を摂りますが、体にとって必要な栄養素は、口にしたものをそのままの形で吸収できるわけではありません。食物を体内に吸収できる形にまで分解し、必要な栄養を吸収する役割を担っているのが小腸です。 小腸は、胃に続く消化管の一部であり、腹部の内側で腸間膜によって支えられています。全長は6~7メートルにも及び、複雑に折り畳まれた構造をしています。 この長い管の中を、食べ物は時間をかけてゆっくりと移動していきます。そして、小腸の壁から分泌される消化液や、胆嚢、膵臓から分泌される消化酵素によって、さらに細かく分解されていきます。 小腸の内壁には、絨毛と呼ばれる小さな突起が無数に存在しています。絨毛は、分解された栄養素を効率的に吸収するために、表面積を大きくする役割を担っています。 このように、小腸は食物を消化し、栄養素を吸収するという、私たちが生きていく上で欠かせない役割を担っています。食べたものが胃から送られてきた後、小腸を通過する間に、生命活動に必要なエネルギー源や体の組織を構成する成分へと変化していくのです。
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