脳・神経

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意識レベルの指標:グラスゴーコーマスケール

- はじめに 医療現場において、患者さんの意識レベルを正確に把握することは、適切な治療方針を決定するために非常に重要です。意識レベルの変化は、病気の深刻さや治療の効果を判断するための重要な指標となります。しかしながら、意識レベルは見た目や動作など、どうしても感覚的に捉えがちであり、客観的な評価が難しい場合も少なくありません。 このような問題を解決し、医療従事者間で共通の理解のもとに患者さんの状態を評価するために、国際的に広く用いられているのが「グラスゴーコーマスケール(Glasgow Coma Scale GCS)」です。このスケールは、数値化された客観的な指標を用いることで、意識レベルをより正確に評価することを可能にします。 GCSは、簡単に実施できるという利点もあり、救急医療現場から集中治療室、一般病棟まで、幅広い医療現場で活用されています。今回の記事では、このGCSについて、その概要や具体的な評価方法、そして臨床現場における活用例などを詳しく解説していきます。
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意識障害の評価:ジャパンコーマスケール

- ジャパンコーマスケールとは ジャパンコーマスケール(JCS)は、日本で広く使われている意識障害の程度を評価する方法です。意識障害とは、意識のレベルが低下し、周囲の状況や変化にうまく反応できなくなったり、全く反応を示さなくなってしまう状態を指します。 JCSは、この意識障害の程度を、周囲の人間が客観的に判断し、数値を用いて段階的に表すことができるように作られました。 意識レベルは、10段階に分けられ、数字が小さいほど意識がはっきりしていて、数字が大きくなるにつれて意識障害が重度であることを示します。具体的には、呼びかけに対する反応や、指示に従って体を動かすことができるかなど、いくつかの項目を評価して判定します。 JCSは、救急医療現場や病院など、様々な医療現場で使用されています。意識障害の原因を特定し、適切な治療を行うために重要な役割を担っています。また、JCSを用いることで、医療従事者間で患者さんの状態を共通の認識のもとで共有することが容易になります。 しかし、JCSはあくまでも意識レベルを評価するものであり、意識障害の原因や、その他の神経学的状態を評価するものではないことに注意が必要です。意識障害がある場合は、速やかに医療機関を受診し、JCSによる評価を含めた適切な検査や治療を受けるようにしましょう。
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体内の万能選手!セロトニンについて解説

- セロトニンとは?セロトニンは、体内で自然に作り出される化学物質の一つで、別名5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)とも呼ばれます。 神経伝達物質として特に有名で、脳内の神経細胞の間で情報を伝える役割を担っています。神経細胞は、体中に張り巡らされたネットワークのようなもので、電気信号によって情報をやり取りしています。しかし、神経細胞と神経細胞の間にはわずかな隙間が存在し、電気信号はそのままでは伝えることができません。そこで活躍するのがセロトニンです。セロトニンは、情報の発信元の神経細胞から放出されると、受信側の神経細胞にある特定の受容体と結合します。この結合によって、電気信号に代わる化学的な信号が生まれて、情報が伝達されるのです。 セロトニンは、気分、感情、睡眠、食欲などを調整するなど、私たちの体と心の健康に深く関わっています。 セロトニンが不足すると、気分が落ち込みやすくなったり、イライラしやすくなったり、睡眠の質が低下したりするなど、様々な影響が現れることがあります。
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意識障害の評価:3-3-9度方式とは?

- はじめに医療現場において、患者さんの意識状態を把握することは、病気の深刻度を判断する上で非常に重要です。意識に何らかの異常がみられる状態、いわゆる「意識障害」は、命に関わる深刻な病気が隠れている可能性もあるため、迅速かつ的確な対応が必要となります。 では、医療従事者はどのようにして患者さんの意識レベルを判断しているのでしょうか? 実は、日本では古くから「3-3-9度方式」と呼ばれる独自の指標を用いて、客観的に意識障害の程度を評価しています。この方式は、呼びかけに対する反応、痛み刺激に対する反応、そして自発的な開眼の有無の3つの要素に基づいており、それぞれを3段階、3段階、9段階で評価することで、患者さんの意識レベルを詳細に分類することができます。 この章では、この重要な指標である「3-3-9度方式」について、その歴史的背景や具体的な評価方法、そして実際の医療現場における活用例などを交えながら詳しく解説していきます。
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お酒と体:酩酊状態を知る

- 酩酊状態とはお酒を飲むと、含まれているアルコールが体内に入ります。このアルコールが脳に達すると、様々な精神作用や身体作用が現れます。これが、いわゆる「酔っ払い」の状態、つまり酩酊状態です。お酒を少しだけ飲んだ状態では、気分が上向き、リラックスしたり、明るく社交的になったりすることがあります。しかし、飲み過ぎると、アルコールの脳への影響が強くなり、正常な判断ができなくなったり、運動機能が低下したりします。具体的には、ろれつが回らなくなったり、千鳥足になったり、記憶があいまいになったりするなどの症状が現れます。また、感情の起伏が激しくなったり、攻撃的になったりする人もいます。酩酊状態の程度は、飲酒量やアルコール度数の高さだけでなく、体質や体調、その時の状況によっても大きく異なります。空腹時や睡眠不足の時は、少量の飲酒でも酔いやすくなります。お酒は、楽しく適量を心がけましょう。飲み過ぎると、急性アルコール中毒になる危険性もあります。自分の体質や体調と向き合い、節度を守って飲酒を楽しむことが大切です。
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糖尿病神経障害:高血糖が引き起こす神経の合併症

- 糖尿病神経障害とは糖尿病神経障害は、長期間にわたる高血糖状態によって引き起こされる、神経の合併症です。私たちの体には、脳からの指令を全身に伝えたり、外部からの刺激や感覚を脳に届けたりする、神経という組織が張り巡らされています。この神経は、高血糖状態が続くことでダメージを受けたり、栄養を運ぶ血管が詰まったりすることで、その働きが鈍くなってしまうことがあります。これが糖尿病神経障害と呼ばれる状態です。神経は、大きく分けて感覚神経、運動神経、自律神経の3つに分類されます。糖尿病神経障害は、これらの神経のうちどれが障害されるかによって、現れる症状が異なってきます。例えば、感覚神経が障害されると、手足にしびれや痛み、感覚の鈍さなどが現れます。運動神経が障害されると、筋力低下や歩行障害などが起こりやすくなります。また、自律神経が障害されると、便秘や下痢、立ちくらみ、発汗異常など、様々な症状が現れることがあります。糖尿病神経障害は、糖尿病患者全体の約3割にみられると言われています。初期には自覚症状が出にくいこともありますが、症状が進行すると日常生活に支障をきたす場合もあります。そのため、早期発見と適切な治療、そして日々からの血糖コントロールが非常に重要です。
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ルイス・サムナー症候群:知っておきたいこと

- はじめにルイス・サムナー症候群は、私たちの身体を動かし、感じ取ることを司る神経系に影響を与える、発症数の少ない病気です。この病気は、筋肉の衰えや感覚の異常など、日常生活に困難をもたらす様々な症状を引き起こします。 多くの場合、手足の感覚が鈍くなったり、力が入りにくくなったりする症状が最初に現れます。 これらの症状は、進行すると歩行や日常生活動作に支障をきたす可能性があります。ルイス・サムナー症候群は、免疫システムの異常によって引き起こされると考えられており、自身の神経を誤って攻撃してしまうことで様々な神経症状が現れます。 具体的には、神経線維の周りを覆っているミエリン鞘と呼ばれる部分が免疫システムの攻撃対象となり、神経伝達が正常に行われなくなることで様々な症状が現れると考えられます。現時点では、ルイス・サムナー症候群を完全に治す治療法は見つかっていません。しかし、免疫グロブリン療法や血漿交換療法といった治療法によって、免疫システムの異常な活動を抑制し、症状の進行を抑えたり、改善したりすることが可能です。 また、リハビリテーションによって筋肉の機能や日常生活動作能力を維持することも重要です。この記事では、ルイス・サムナー症候群の原因や症状、治療法について、より詳細な情報を提供することで、この病気に対する理解を深めることを目的としています。 また、患者さんやそのご家族が、この病気と向き合っていく上で必要な情報や支援についても触れていきます。
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学習障害:目に見えない困難への理解

- 学習障害とは学習障害とは、特定の学習や行動に関わる能力の習得や使用において、著しい困難が生じる状態のことを指します。重要な点は、これは決して知能の低さが原因なのではなく、むしろ平均以上の知能を持ちながら、特定の分野で困難を抱えている場合も少なくありません。例えば、文字を読むのが困難であったり、計算が苦手、あるいは、図形を認識することが難しいなど、人によって現れ方は様々です。これらの困難は、脳の機能の発達に偏りがあることが原因と考えられていますが、詳しいメカニズムはまだ十分に解明されていません。文部科学省では、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった能力のうち、一つまたは複数の能力において、習得や使用に困難が見られる場合を学習障害と定義しています。学習障害は、適切な支援や指導を受けることで、困難を克服し、能力を伸ばしていくことが可能です。そのためにも、 early intervention 早期発見・早期支援が重要になります。
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