身近な動作の異変:観念失行
- 観念失行とは観念失行は、脳の一部が損傷を受けることで起こる症状で、日常生活で何気なく行っている動作がスムーズにできなくなってしまう状態を指します。私たちは普段、朝起きてから夜寝るまで、歯磨きや着替え、食事など、多くの動作を自然と行っています。これらの動作は、いちいち考えなくても、まるで体が覚えているかのようにスムーズに行うことができます。しかし、観念失行になると、これらの動作をどのように行うのか、頭では理解していても、実際に体で表現することが難しくなってしまうのです。例えば、歯ブラシを渡されても、それが歯を磨くための道具だと分かっていても、どのように手を動かして歯に当てればいいのか、戸惑ってしまい、うまく磨くことができません。あるいは、シャツを着ようとして、袖を通す、ボタンを掛けるといった一連の動作が分からなくなり、服を着ること自体に苦労することもあります。観念失行は、動作の意味や手順が分からなくなる失語や、体の動き自体が困難になる麻痺とは異なり、あくまでも動作の実行がうまくいかなくなる点が特徴です。観念失行が起こる原因は、脳卒中や頭部外傷などによって、脳の運動を計画したり、手順を記憶したりする部位が損傷を受けることが考えられます。