脳・神経

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脳を守る流れを作る:脈絡叢の役割

私たちの脳は、硬い骨でできた頭蓋骨の中にあり、衝撃などから守られています。その脳の内部には、脳室と呼ばれるいくつかの空洞が存在します。脳室には、左右一対の側脳室と、その間をつなぐ第三脳室、さらに下に位置する第四脳室の4つがあり、それぞれが細い管でつながっています。 これらの脳室は、脳と脊髄の中を循環する重要な液体である脳脊髄液で満たされています。 脳脊髄液は、脳や脊髄への衝撃を和らげるクッションの役割や、脳に必要な栄養を運んだり、老廃物を排出したりする役割を担っています。 この重要な脳脊髄液を作り出しているのが、脈絡叢と呼ばれる組織です。脈絡叢は、脳室の壁の一部に存在し、毛細血管が密集した構造をしています。脈絡叢は、血液中から必要な成分を取り込み、脳脊髄液を産生し、脳室へと分泌する重要な役割を担っています。 このように、脳室は脳脊髄液で満たされた空間であり、脳脊髄液の産生を行う脈絡叢とともに、脳の正常な機能維持に非常に重要な役割を果たしているのです。
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髄膜炎のサイン?項部硬直を解説

- 項部硬直とは 仰向けに寝ている患者さんの頭を、医師がゆっくりと持ち上げようとすると、首の後ろに抵抗を感じ、頭を胸の方にスムーズに近づけられないことがあります。このような状態を「項部硬直」と呼びます。簡単に言うと、首が硬くなって動きが悪くなった状態を指します。 この項部硬直は、髄膜炎の患者さんに多く見られる症状の一つとして知られています。髄膜炎とは、脳や脊髄を覆っている薄い膜である髄膜に炎症が起こる病気です。髄膜は、外部からの衝撃から脳や脊髄を守るという重要な役割を担っています。 項部硬直は、髄膜炎以外にも、くも膜下出血や脳腫瘍など、脳や脊髄に何らかの異常が生じた場合にも現れることがあります。これらの病気では、項部硬直以外にも、頭痛や発熱、嘔吐などの症状が見られることが多く、これらの症状を伴う場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。 項部硬直は、これらの病気の重要なサインとなる場合があります。そのため、首の後ろに違和感や硬さを感じたら、自己判断せずに、医療機関を受診し、医師の診察を受けることが大切です。
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意識障害の一つ:嗜眠とは

- 嗜眠とは何か 「嗜眠」とは、医学の世界で「意識障害」の程度を表す言葉の一つです。では、意識障害とはどのような状態を指すのでしょうか。簡単に言うと、意識がはっきりしない状態のことを指します。 この意識障害には、軽いものから重いものまで様々な段階があります。その中で、「嗜眠」は意識レベルが低下し、周囲からの刺激に対して反応が鈍くなっている状態を指します。 例えば、あなたは電車に乗っている時に、うとうとしてしまった経験はありませんか? そのような、普段よりも眠気が強く、周囲から話しかけられても反応が遅かったり、刺激がない状態では眠り続けてしまうような状態が、「嗜眠」と呼ばれる状態です。 嗜眠は、病気のサインとして現れることがあります。例えば、風邪をひいた時や、熱がある時などに、体がだるく、眠気が強くなることがありますよね。このような場合にも、「嗜眠」がみられることがあります。 ただし、「嗜眠」は病気の初期症状として現れることもあれば、深刻な病気のサインであることもあります。そのため、もしも「いつもより眠気が強い」「周りの人に「ぼーっとしている」と指摘された」などの経験があり、気になる場合は、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
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意識障害の一つ:傾眠とは

- 傾眠とは何か傾眠とは、意識がはっきりしない状態、つまり意識障害の程度を表す言葉の一つです。普段は意識がはっきりしている状態であっても、疲労や睡眠不足、薬の影響などによって一時的に傾眠状態になることがあります。傾眠状態の特徴は、周囲からの刺激に対して反応が鈍くなることです。例えば、名前を呼ばれても反応が遅くなったり、ぼーっとした表情をしたり、話しかけられても上の空で返事をしたりすることがあります。また、刺激がなくなるとすぐに眠ってしまうのも特徴です。傾眠と似た状態に「昏睡」がありますが、昏睡は周囲からの刺激に全く反応を示さない状態を指し、傾眠とは区別されます。傾眠状態の人は、周囲から呼びかけたり、軽く体を揺すったりといった刺激があれば目を覚まします。しかし、刺激がなくなると再び意識が低下し、うとうとした状態に戻ってしまいます。傾眠状態の人は、自分自身や周囲の状況を把握することが難しく、質問に対して適切な受け答えができないこともあります。また、意識がもうろうとしているため、周囲の状況を正しく認識することができず、時間や場所がわからなくなってしまうこともあります。傾眠状態が長く続く場合は、病気の可能性も考えられます。自己判断せずに、医療機関を受診するようにしましょう。
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口とがらし反射:症状と原因

- 口とがらし反射とは口とがらし反射とは、外部からの特定の刺激に対して、本来は現れないはずの原始反射が、神経系の異常により出現してしまう状態を指します。この反射は、医師が患者の上唇の中央を優しく叩くことで確認できます。その際、まるで口をとがらすように唇が突き出る様子が特徴的で、このことから「口とがらし反射」と名付けられました。健康な大人の場合、この反射は通常見られません。これは、乳幼児期にのみ現れる原始反射が、成長と共に中枢神経系によって抑制されるためです。しかし、脳に何らかの損傷があったり、神経系の発達が未熟な乳幼児期であったりする場合には、この抑制機能が正常に働かず、口とがらし反射が出現することがあります。口とがらし反射自体は、生命に関わるような危険な反射ではありません。しかし、その出現は脳性麻痺などの神経疾患の指標となる可能性があります。そのため、乳幼児健診などでこの反射が認められた場合は、医師による詳しい検査が必要となる場合があります。また、成人になってからこの反射が現れた場合も、速やかに医療機関を受診することが大切です。
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筋肉の急な収縮:スパスムとは?

- スパスムの定義スパスムとは、自分の意思とは関係なく、筋肉が急に縮んでしまう現象のことです。よく「足がつる」「こむら返り」といった言葉が使われますが、これらはスパスムの一種です。また、「痙攣」も医学用語ではスパスムと同じ意味で使われます。この筋肉の急な収縮は、ほんの一瞬で終わる場合もあれば、数分以上続く場合もあります。多くの場合、自然と治まりますが、中には激しい痛みを伴うこともあり、日常生活に影響がでることもあります。スパスムは、激しい運動や筋肉の疲労、脱水症状、ミネラル不足などが原因で起こることがあります。また、特定の病気や神経の異常が原因で起こることもあります。例えば、脳卒中や脊髄損傷、パーキンソン病などの神経系の病気では、筋肉の動きをコントロールすることが難しくなり、スパスムが起こりやすくなります。スパスムが頻繁に起こる場合や、痛みが強い場合には、医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。治療法としては、筋肉をリラックスさせる薬物療法や、リハビリテーションなどが挙げられます。また、原因となる病気がある場合には、その病気に対する治療が必要となることもあります。
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下顎反射:そのメカニズムと臨床的意義

- 下顎反射とは顎の先端をハンマーなどで軽く叩くと、反射的に口が開いたり閉じたりすることがあります。これを下顎反射と言い、医学的には咬筋反射とも呼ばれます。この反射は、私たちが普段意識していないところで起こる不随意運動の一種です。熱いものに触れたときに思わず手を引っ込めてしまうのと同じように、外部からの刺激に対して体が自動的に反応する仕組みを示しています。下顎反射は、三叉神経と顔面神経という二つの神経が関与しています。ハンマーで顎の先端を叩打すると、その刺激はまず三叉神経を伝わって脳幹へと送られます。脳幹では、受け取った刺激を分析し、顔面神経へと指令を出します。その指令が顔面神経を通じて顎の筋肉に伝わることで、口が開閉する反応が引き起こされるのです。この反射は、神経系の状態を評価する上で重要な指標の一つとされています。通常、軽く叩打しただけで反応が見られる場合は正常と判断されます。しかし、反射が過剰に強かったり、逆に弱かったり、あるいは全く反応が見られない場合は、神経系に何らかの異常が疑われます。例えば、脳卒中や脳腫瘍、顔面神経麻痺などが挙げられます。下顎反射は、私たちが健康な生活を送る上で重要な役割を担っている神経系の働きを理解する上で、大変興味深い現象と言えるでしょう。
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反射:神経疾患を診る窓

- 反射とは私たちが日々何気なく生活する中で、意識することなく、まるで自動的に起こる体の反応があります。熱いものにうっかり触れてしまい、思わず手を引っ込めてしまった経験は誰にでもあるのではないでしょうか。あるいは、薄暗い場所に足を踏み入れたとき、自然と目が慣れてくるのも経験したことがあるでしょう。こうした意識とは無関係に、外界からの刺激に対して瞬間的に起こる反応のことを「反射」と呼びます。反射は、考えてから行動を起こすよりもはるかに速く、私たちの体を守ってくれる重要な役割を担っています。 例えば、熱いものに手を触れたとき、熱さを感じてから手を引っ込めるまでに時間をかけていたら、大やけどをしてしまうかもしれません。しかし反射によって、私たちは熱さを感じるのとほぼ同時に手を引っ込めることができるため、重傷を負わずに済むのです。反射は、感覚神経、脊髄や脳幹といった中枢神経、そして運動神経が関与した複雑な仕組みによって起こります。熱いものに手を触れた場合を例に考えてみましょう。まず、手の皮膚にある感覚神経が熱さという刺激を受け取ります。この情報は、神経を伝って脊髄や脳幹へと送られます。脊髄や脳幹では、受け取った情報に基づいて、手を引っ込めるという指令を出します。そして、この指令は運動神経を介して筋肉に伝えられ、筋肉が収縮することで、私たちは手を引っ込めることができるのです。このように、反射は私たちが意識することなく、体を守ってくれる非常に重要な機能と言えます。
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脳を守る関所:血液脳脊髄液関門

私たちの脳は、非常に精巧で繊細な器官であり、その正常な働きを維持するためには、外部環境の変化から厳しく保護される必要があります。この重要な役割を担っているのが、血液脳関門と血液脳脊髄液関門という二つの重要な関所です。 血液脳関門は、脳内の血管と脳組織の間に存在し、血液中を流れる様々な物質が、脳内に無制限に入ってこないように厳密に制御しています。この関門は、特定の物質のみを通過させる、選別機能を備えた細胞の層でできており、栄養素や酸素は選択的に通過させる一方、有害な物質や病原体の侵入はブロックします。 一方、血液脳脊髄液関門は、脳室周囲器官と呼ばれる脳内の特定の部位に存在し、血液から脳脊髄液への物質移動を制御しています。脳脊髄液は、脳と脊髄を満たす無色透明な液体であり、脳と脊髄を外部の衝撃から守るとともに、脳内の老廃物の除去や栄養供給など、重要な役割を担っています。血液脳脊髄液関門は、血液脳関門と同様に、脳脊髄液の環境を一定に保つため、物質の通過を厳しく制限しています。 このように、血液脳関門と血液脳脊髄液関門は、脳という重要な器官を外部環境から保護し、その正常な機能を維持するために必要不可欠な存在と言えるでしょう。
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感情の波に乗りこなせない:情動失禁を理解する

- 情動失禁とは何か情動失禁とは、些細なことで感情が大きく揺れ動き、自分で抑えることが難しくなる状態のことです。例えば、面白いテレビ番組を見ている時に突然泣き出してしまったり、レストランで注文を取ってくれている店員さんに、ささいなことで怒鳴ってしまったりするなど、状況にそぐわない感情表現をしてしまうことがあります。この症状は、感情をコントロールする役割を担う脳の機能が、様々な要因によって影響を受けてしまうことで起こると考えられています。例えば、脳卒中や認知症、パーキンソン病などの脳神経疾患が原因となる場合もあれば、事故などによる脳への損傷が原因となる場合もあります。また、強いストレスや疲労、睡眠不足なども、情動失禁の引き金となることがあります。情動失禁は、周囲の人に誤解を与えてしまうことがあり、人間関係に影響を及ぼす可能性もあります。また、日常生活においても、仕事や家事、趣味活動など様々な場面で支障をきたすことがあります。もし、ご自身や周りの方が情動失禁の症状でお困りの場合は、早めに医療機関を受診し、適切なアドバイスや治療を受けることが大切です。
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指示された動作ができない?観念運動失行について

- 観念運動失行とは観念運動失行は、運動機能そのものに問題がないにも関わらず、頭で理解している動作や身振りを実際に行うことが難しい状態を指します。 例えば、「手を振ってください」と指示されても、手をどのように動かして良いのか戸惑ってしまったり、ぎこちない動きになってしまったりします。これは、筋肉や関節に異常があるのではなく、脳の指令が運動機能に正しく伝わらないことが原因だと考えられています。もう少し具体的に説明すると、私たちは体を動かす時、まず脳で「手を振る」という動作のイメージを作り出します。そして、そのイメージを具体的な運動の指令に変換し、神経を通して筋肉に伝えています。観念運動失行の場合、このイメージを運動指令に変換する過程に問題が生じていると考えられています。そのため、簡単な動作であっても複雑な手順を踏むような動作や、日常生活でよく行う動作であっても、意識して行おうとすると上手くできないといった特徴が見られます。例えば、歯ブラシで歯を磨く動作や、箸を使って食事をする動作など、無意識に行う場合は問題なく行えても、意識して行おうとすると途端にぎこちなくなってしまうことがあります。観念運動失行は、脳卒中や脳腫瘍などの脳血管障害によって脳が損傷を受けることで起こることがあります。また、アルツハイマー病などの認知症の初期症状として現れることもあります。
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リラックスの鍵!副交感神経を理解する

私たち人間の体には、自分の意志とは関係なく、生命を維持するために24時間休むことなく働き続けている神経があります。これを自律神経と呼びます。 例えば、心臓を動かしたり、呼吸をしたり、食べ物の消化吸収なども、この自律神経の働きによるものです。 そして、この自律神経は、大きく2つに分けられます。 一つは交感神経、もう一つは副交感神経です。 副交感神経は、主に体がリラックスしている時や、休息している時に活発に働く神経です。 睡眠中や食後など、心身をゆったりと休ませ、リラックスしたい時に優位に働きます。 副交感神経が優位に働くと、脈拍がゆっくりになり、血管が広がるので、血圧が下がります。 また、消化活動が促進され、栄養素を吸収しやすくなるため、体が休息と回復に向かうように働きます。
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一過性の意識消失、失神とは?

失神とは、一時的に意識を消失する現象を指します。周囲から見ると突然倒れたように見えるため、驚きや不安を伴うことが多いでしょう。意識消失は通常短時間で、多くの場合は数秒から数分で自然に回復します。失神自体は命に関わるような深刻なものではない場合がほとんどです。 しかし、決して油断して良いわけではありません。失神を引き起こす原因には、一時的な血圧低下や自律神経の乱れなど、比較的軽度のものもあれば、心臓病や脳血管障害、神経系の病気など、重大な病気が隠れている可能性もあるからです。そのため、失神を起こした場合は、たとえその後回復したとしても、必ず医療機関を受診し、適切な検査を受けることが重要です。 失神の原因を特定するために、医師は病歴や症状、発症時の状況などを詳しく聞き取ります。必要に応じて、心電図検査や脳波検査、頭部CT検査、血液検査などの検査が行われます。これらの検査結果に基づいて、適切な治療が行われます。失神は決して珍しい症状ではありませんが、その背景には様々な要因が考えられるため、自己判断せずに医療機関に相談することが大切です。
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痛みとは何か:その役割とメカニズム

- 痛みの定義痛み、すなわち「痛み」は、私たちが日々感じる最もありふれた感覚の一つと言えるでしょう。多くの人が経験するにもかかわらず、その仕組みや役割には、まだ分からない点が多く残されています。痛みは、ただ単に嫌な感覚と思われがちですが、実際には私たちの体を危険から守るために重要な働きをしています。痛みは、体の一部に何らかの異常が生じていることを知らせる警告信号の役割を担っています。例えば、熱いものに手を触れたときに感じる熱さや、鋭利なもので切ったときに感じる痛みは、私たちに危険が迫っていることを瞬時に知らせ、手を引っ込めたり、傷口を押さえたりするなどの行動を促します。このような防御反応のおかげで、私たちは大きな怪我や火傷を負わずに済むのです。また、痛みは怪我の治療を促す役割も担っています。捻挫をした場合、その部分を庇うように歩くことで、さらにひどい怪我になることを防ぎます。骨折した場合は、激痛のためにその部分を動かさなくなり、骨が自然にくっつくのを助けます。このように、痛みは私たちに安静を促し、体が回復するまでの時間を与えてくれるのです。痛みは時に、病気のサインとなることもあります。例えば、原因不明の腹痛が続く場合は、消化器系の病気の可能性が考えられます。頭痛が続く場合は、脳の病気の可能性も考えられます。このように、痛みは私たちの体の異常にいち早く気づかせてくれる重要なサインなのです。痛みは単なる不快な感覚ではなく、私たちの生存や健康を守る上で欠かせない役割を担っています。痛みのメカニズムや役割を理解することで、痛みをより適切に管理し、より健康な生活を送ることに繋がるでしょう。
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硬膜外腔:脊髄を守る重要な空間

- 硬膜外腔とは私たちの背骨は、たくさんの骨が積み重なってできており、その中心には神経の束である脊髄が通っています。脊髄は、脳からの指令を体全体に伝えたり、体からの感覚情報を脳に伝えたりする、非常に重要な役割を担っています。 この大切な脊髄は、3つの層からなる膜でしっかりと保護されています。この膜を髄膜と呼び、外側から硬膜、クモ膜、軟膜と名付けられています。硬膜は、線維質で弾力性に富んだ丈夫な膜で、脊髄を外部からの衝撃から守っています。 さらに、脊髄は、積み重なった骨によって作られるトンネル、脊柱管の中を走行しています。この硬膜と脊柱管の間にあるわずかな隙間のことを、硬膜外腔と呼びます。硬膜外腔には、血管やリンパ管、脂肪組織などが存在し、脊髄への栄養供給や、衝撃を吸収する役割などを担っています。 硬膜外腔は、医療現場でも重要な役割を担っています。硬膜外麻酔は、この硬膜外腔に局所麻酔薬を注入することで、痛みを和らげる効果を発揮します。この麻酔法は、出産時の痛みを和らげたり、下半身の手術時などに用いられたりします。
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運動を支える裏方:錐体外路系

私たちは体を思い通りに動かすことができますが、この運動の指令を脳から筋肉へと伝える経路には、大きく分けて錐体路と錐体外路の二つの経路が存在します。 錐体路は、主に意識的な運動をコントロールする経路です。例えば、ピアノを弾く時の指の動きや、文字を書く時のペンの動きなど、繊細で複雑な運動を正確に行うためには、錐体路が重要な役割を果たします。この経路は、例えるならば、オーケストラの指揮者が演奏全体を統率するように、体の各部位の筋肉に的確な指示を出して、滑らかで正確な運動を実現する、司令塔のような役割を担っています。 一方、錐体外路は、主に無意識下で行われる運動を調節する経路です。私たちが意識しなくても、姿勢を保ったり、歩行時に腕を振ったり、表情を作ったりすることができるのは、錐体外路が働いているおかげです。錐体外路は、様々な筋肉の動きを協調させ、円滑な運動を支える、いわば縁の下の力持ちといえるでしょう。 これらの二つの経路は、それぞれ独立して機能しているように見えますが、実際には密接に連携し合いながら、私たちの複雑な運動を可能にしています。
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破傷風:静かなる脅威とその予防

- 破傷風とは破傷風は、破傷風菌と呼ばれる細菌によって引き起こされる感染症です。この細菌は、土や埃の中など、私達の身の回りによく見られます。通常は、傷口を通して体の中に入り込みます。傷は、小さく浅いものから、大きく深いものまで様々ですが、破傷風菌は、傷口の奥深く、酸素が少ない環境で繁殖しやすいため、注意が必要です。破傷風菌は、体の中で毒素を作ります。この毒素は、神経に影響を与え、筋肉を異常に緊張させる作用があります。その結果、様々な症状が現れます。初期症状としては、口が開きにくくなったり、ものを飲み込みにくくなったりすることが挙げられます。さらに症状が進むと、全身の筋肉が硬直したり、痙攣を起こしたりすることもあります。特に、背中や腹部の筋肉が硬直することで、体が弓なりに反り返ってしまうこともあります。破傷風は、重症化すると命に関わる危険性も高く、予防が非常に重要です。予防には、破傷風ワクチンが有効です。乳幼児期に定期接種を受けることで、発症のリスクを大幅に減らすことができます。また、大人になってからも、追加接種を受けることで、効果を維持することができます。万が一、傷を負ってしまった場合には、傷口を清潔に保ち、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。
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脊髄を守るクッション、硬膜外腔

私たちの体の中心には、脳から続く神経の束である脊髄が通っています。脊髄は、脳からの指令を体へ伝えたり、体からの感覚を脳へ伝えたりする、生命維持にも関わる重要な役割を担っています。しかし、その役割とは裏腹に、脊髄はとても繊細な組織です。そのため、外部からの衝撃から守るための精巧な仕組みが備わっています。硬膜外腔は、まさにこの保護に貢献する空間なのです。 脊髄は、まず硬膜という丈夫な膜によって包まれています。硬膜は、その名の通り硬い膜で、外部からの衝撃を和らげるクッションの役割を果たします。さらに、硬膜の外側には、脊柱管と呼ばれる骨のトンネルが存在します。脊柱管は、複数の椎骨と呼ばれる骨が連結して構成されており、硬膜をしっかりと覆っています。そして、この硬膜と脊柱管の間にわずかに存在する隙間を、硬膜外腔と呼びます。硬膜外腔は、脂肪組織や血管などが緩く詰まった空間であり、脊髄への衝撃を吸収する役割を担います。 硬膜外腔は、医療現場でも重要な役割を果たします。例えば、出産時の痛みを和らげるための硬膜外麻酔では、この硬膜外腔に麻酔薬を注入します。このように、硬膜外腔は、脊髄を守るだけでなく、医療においても重要な役割を担う空間なのです。
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運動の影の立役者:錐体外路系

- 錐体外路系とは 私たちは、歩いたり、物を掴んだり、言葉を話したりと、日々、何気なく体を動かしています。こうした動作は、脳からの指令によって筋肉が正確に動くことで成り立っています。 脳から筋肉へ指令を伝える経路は大きく二つに分けられます。一つは、私たちの意識的な運動をコントロールする錐体路系です。もう一つは、今回解説する錐体外路系です。 錐体外路系は、運動の司令塔である大脳皮質から始まり、脳幹にある神経核を経由して、脊髄へと信号を伝えます。この経路は、私たちの意志とは無関係に働く、いわば運動の「自動操縦装置」のような役割を担っています。 例えば、歩く際に、私たちは一つ一つの足の運び方を意識していません。また、姿勢を維持するために、絶えず体のバランスを微調整していることにも気づきません。こうした無意識下の運動は、錐体外路系がコントロールしています。 錐体外路系は、運動の開始や停止、滑らかさ、力の入れ具合などを調整し、錐体路系と協調しながら、スムーズで協調性の取れた運動を可能にしています。 錐体外路系が正常に機能しなくなると、パーキンソン病のように体が硬直したり、動作が遅くなったり、逆に、舞踏病のように意図しない動きが出てしまったりといった運動障害が現れます。
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神経毒:目に見えない脅威

- 神経毒とは神経毒は、私たちの体の中で、脳から指令を伝えたり、感じたり、体を動かしたりするために働く、神経系と呼ばれる仕組みを攻撃する物質のことです。 普段は目に見えないほど小さな物質ですが、体内に入ると、神経細胞という神経系の最小単位に直接作用し、体に様々な異常を引き起こします。神経毒は、大きく分けて二つの作用機序を持っています。一つは、神経細胞同士の情報伝達を阻害する作用です。私たちの脳からの指令は、電気信号として神経細胞の中を伝わっていきます。そして、神経細胞と神経細胞の間にあるシナプスと呼ばれる隙間を、神経伝達物質と呼ばれる化学物質が渡ることで、次の神経細胞へと情報が伝達されていきます。神経毒の中には、この神経伝達物質の放出を妨げたり、神経伝達物質を受け取る受容体を塞いでしまったりするものがあります。その結果、脳からの指令が正しく伝わらなくなり、体の麻痺や呼吸困難などの症状が現れます。もう一つは、神経細胞を過剰に興奮させる作用です。神経細胞は、外部からの刺激に応じて、適切な量の神経伝達物質を放出することで、情報の伝達をコントロールしています。しかし、神経毒の中には、神経細胞を必要以上に興奮させ、過剰な量の神経伝達物質を放出させてしまうものがあります。その結果、筋肉の痙攣やけいれん、ひどい場合には意識障害などを引き起こす可能性があります。このように、神経毒は、神経系に直接作用することで、私たちの体や命に大きな危険をもたらす可能性があります。
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顔面の電撃痛!三叉神経痛とは

顔の感覚をつかさどる神経である三叉神経。この三叉神経に異常が生じることで、耐え難いほどの痛みが顔面に走る病気を三叉神経痛と言います。まるで電流が走るような、あるいはガラスの破片が刺さるような、そんな激痛が顔の片側に起こるのが特徴です。 痛みの持続時間は人それぞれで、一瞬で治まることもあれば、数秒から数分続くこともあります。また、発作の頻度も個人差が大きく、数ヶ月に一度という場合もあれば、一日に何度も起こる場合もあります。痛みが起こるきっかけも様々で、顔を洗う、歯を磨く、食事をする、話す、風にあたるといった、ごく日常的な動作がきっかけになることもあります。 三叉神経痛は命に関わる病気ではありませんが、その激痛は日常生活に大きな支障をきたし、患者さんの生活の質を著しく低下させる可能性があります。激しい痛みにより、外出や人と会うことを避けたり、食事や会話が困難になったりするなど、日常生活に様々な制限が生じることもあります。そのため、適切な診断と治療を受けることが重要です。
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神経細胞の連携プレー:シナプスの働き

私たち人間の脳は、巨大なコンピューターに例えられるほど複雑な構造をしています。その中心的な役割を担っているのが、神経細胞と呼ばれる特殊な細胞です。脳内には、気が遠くなるほどの数の神経細胞が存在し、それらが複雑に絡み合い、巨大なネットワークを築き上げています。 この神経細胞のネットワークこそが、私たちが日々何気なく行っている、考えたり、感じたり、思い出したり、体を動かしたりといった、あらゆる活動の源泉となっています。驚くべきことに、一つ一つの神経細胞はそれぞれ独立した存在でありながら、互いに情報をやり取りすることで、複雑な情報処理を可能にしています。 では、神経細胞同士はどのようにして情報を伝えているのでしょうか?その鍵となるのが、「シナプス」と呼ばれる構造です。神経細胞は、長い突起を伸ばしており、その先端にあるシナプスを介して、他の神経細胞と接続しています。シナプスでは、電気信号や化学物質を用いることで、神経細胞間で情報が伝達され、処理されていきます。 このように、脳の神経細胞ネットワークは、無数の神経細胞とシナプスからなる、極めて精巧で複雑なシステムと言えます。そして、この複雑なネットワークの働きによって、私たちは人間らしい高度な機能を発揮することができるのです。
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神経系の司令塔:灰白質

私たちの体には、脳から全身に張り巡らされた、まるで intricate なネットワークのような神経系が存在します。この神経系において、情報を処理し、他の神経細胞へと伝達するという重要な役割を担っているのが神経細胞です。灰白質とは、この神経細胞の本体である細胞体が密集している領域のことを指します。 神経細胞は、木の幹に例えられる細胞体と、そこから枝のように伸びる軸索、そして葉のように広がる樹状突起と呼ばれる構造から成り立っています。細胞体には、細胞の核やエネルギーを生み出すミトコンドリアなど、まるで司令塔のように細胞が生きていくために必要な機能を集中させています。そして、この細胞体こそが、神経細胞としての機能を維持するために重要な役割を担っているのです。 灰白質は、神経細胞の細胞体が集まっていることから、神経活動の中心的な役割を担っていると考えられています。つまり、私たちが考えたり、感じたり、体を動かしたりするなど、あらゆる行動の源となっているのが灰白質と言えるでしょう。
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身体の司令塔:脊髄の役割と重要性

私たちの体の中心部、背骨の内部には、脳から続く重要な器官が存在します。それが脊髄です。まるで脳からの指令を全身に伝える電線のように、神経細胞が集まって太い束状になっています。 脊髄は、脳からの指令を体の各部へと伝達する役割を担っています。例えば、手を動かそうと考えた時、その指令は脳から脊髄を通って腕の筋肉へと伝わり、実際に手が動くのです。また、反対に、皮膚に触れた感覚や体の位置情報なども、脊髄を通じて脳へと送られます。 このように、脊髄は脳と体をつなぐ情報伝達の要と言えるでしょう。脊髄は、私たちが意識的に行う動作だけでなく、呼吸や心臓の動きなど、生きていく上で欠かせない体の機能にも深く関わっています。もし、脊髄が損傷してしまうと、脳からの指令が伝わらなくなったり、体からの情報が脳に届かなくなったりするため、体の麻痺や感覚障害といった重い症状が現れることがあります。
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