脳・神経

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体性痛:体の表面から感じる痛み

- 体性痛とは体性痛とは、皮膚や筋肉、骨、関節といった体の表面に近い部分で感じる痛みのことです。これらの部位には痛みのセンサーが数多く存在しており、外部からの刺激を感知する役割を担っています。体の表面に何らかの刺激が加わると、これらのセンサーが活性化し、電気信号に変換された刺激が神経を通じて脳に伝えられます。脳は、この電気信号を受け取ると、それを「痛み」として認識します。例えば、鋭利なもので指先を切った場合、皮膚に存在する痛みのセンサーが損傷を感知し、その情報を脳に伝えます。脳はそれを「鋭い痛み」として認識し、私たちは指先が切れたことを認識します。また、転倒して足を強く打ったり、重いものを持ち上げて腰を痛めた場合などにも、体性痛は生じます。これらの場合、筋肉や骨、関節などに存在する痛みのセンサーが、損傷や炎症などの異常を感知し、痛みとして脳に伝えているのです。このように、体性痛は、私たちの体が危険を察知し、身を守るために重要な役割を果たしています。痛みを感じることによって、私たちは傷ついた部分を保護したり、危険な行動を避けたりすることができます。体性痛は、日常生活で頻繁に経験する痛みであり、私たちの健康を守るための重要なサインと言えるでしょう。
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てんかん:脳の電気信号の乱れが引き起こす発作

- てんかんとはてんかんは、脳の神経細胞が異常に興奮することで、様々な症状が現れる病気です。脳は、神経細胞が電気信号を発することで、体を動かしたり、考えたり、感じたりする指令を出しています。てんかんの場合、この電気信号が過剰に発生することで、発作と呼ばれる症状が起こります。多くの人は、てんかんと聞くと、手足が硬直したり、激しく痙攣する姿を思い浮かべるかもしれません。しかし、てんかんの発作は、意識、動作、感覚など、実に多様な症状を引き起こします。例えば、意識がぼーっとして周囲の状況が分からなくなる、体の一部がピクピクと勝手に動く、実際にはしないにおいや味を感じるなど、症状は人によって様々です。重要なのは、これらの症状が繰り返し起こるかどうかです。例えば、十分な睡眠が取れなかったり、強いストレスを感じたりした場合、一時的に意識を失うことは誰にでも起こり得ます。しかし、てんかんの場合は、特別なきっかけがなくても、繰り返し発作が起こるのが特徴です。てんかんは、適切な治療を行うことで、発作を抑え、日常生活を送ることができる病気です。発作が疑われる場合は、ためらわずに医療機関を受診しましょう。
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記憶の番人、海馬の謎を探る

脳の深部には、記憶を司る重要な領域が存在します。それが、側頭葉の奥底に左右対称に位置する海馬です。海馬という名前は、その形がギリシャ神話に登場する海神ポセイドンの馬車に由来しています。海馬は、まるで巻貝のような、あるいは三日月のような、独特の湾曲した形状をしています。この特徴的な形から、ギリシャ語で「馬」を意味する「ヒポス」と「海の怪物」を意味する「カンポス」を組み合わせた「ヒポカンパス」とも呼ばれています。小さく見える海馬ですが、実は脳の働きの中でも特に複雑な記憶の形成に深く関わっています。海馬は、新しい情報の学習や記憶の固定、空間記憶、感情的な出来事の記憶など、多岐にわたる記憶プロセスにおいて重要な役割を担っています。この小さな器官が、私たちの豊かな記憶体験を支えているのです。
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髄膜炎:脳と脊髄を守る膜の炎症

- 髄膜炎とは私たちの脳と脊髄は、髄膜と呼ばれる薄い膜で覆われています。この髄膜は、外部からの衝撃をや病原菌から脳や脊髄を守る、いわば鎧のような役割を担っています。 髄膜炎は、この重要な髄膜に炎症が起こる病気です。髄膜炎の原因として最も多いのは、細菌やウイルスなどの病原体による感染です。その他、真菌や寄生虫、特定の薬剤や病気によって引き起こされることもあります。髄膜炎は、初期症状として発熱、頭痛、吐き気など、風邪に似た症状が現れることが多く、注意が必要です。症状が進むにつれて、首の硬直、意識障害、けいれん、光過敏など、より重い症状が現れることもあります。乳幼児の場合は、これらの典型的な症状が現れにくく、機嫌が悪い、ミルクの飲みが悪いといった症状が見られることもあります。髄膜炎は、重症化すると命に関わる可能性もある病気です。特に細菌性髄膜炎は、早期に適切な治療を行わないと、後遺症が残ったり、最悪の場合死に至ることもあります。そのため、髄膜炎の疑いがある場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。早期に診断し、適切な治療を開始することで、重症化を防ぐことができます。
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脳腫瘍:頭の中の静かな脅威

- 脳腫瘍とは人間の頭蓋骨の内側には、思考や感情、身体の動きや五感など、生命活動の中枢を担う重要な器官である脳が存在します。脳腫瘍とは、この脳にできる腫瘍のことを指します。腫瘍とは、本来は新しい細胞が生まれて古い細胞と入れ替わるべき場所で、細胞が無秩序に増殖し続けることで発生する異常な組織塊です。脳は硬い頭蓋骨に囲まれた閉鎖的な空間にあるため、腫瘍が大きくなると周囲の正常な脳組織を圧迫し始めます。さらに、腫瘍が大きくなり続けると、脳を構成する重要な神経細胞を破壊してしまうこともあります。その結果、身体の麻痺や言語障害、視覚障害、激しい頭痛、意識障害など、様々な神経症状が現れます。脳腫瘍は、その発生源によって大きく2つに分類されます。1つは、脳を構成する神経細胞やその周囲の細胞から発生する「原発性脳腫瘍」です。もう1つは、肺や乳房など、身体の他の部位で発生したがん細胞が血液などに乗って脳に転移し、増殖する「転移性脳腫瘍」です。脳腫瘍は早期発見が重要であり、早期に治療を開始することで、症状の進行を抑えたり、生活の質を維持したりすることが期待できます。少しでも気になる症状がある場合は、ためらわずに医療機関を受診しましょう。
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記憶障害:脳の神秘に迫る

- 記憶障害とは何か記憶障害とは、脳の働きに何らかの問題が生じることで、記憶に関する能力に影響が出てしまう状態のことを指します。 私たちは普段の生活の中で、絶えず記憶の力を借りて生活しています。例えば、昨日食べた夕食を思い出す、新しい人の名前を覚える、朝起きたときに顔を洗う、といった行動も、すべて記憶が正常に機能しているからこそできることです。記憶障害が起こると、このような記憶に関連する行動に困難が生じ、日常生活に支障が出てしまうことがあります。 例えば、人の名前が出てこなかったり、約束を忘れてしまったり、時には自分が置かれている状況がわからなくなってしまうこともあります。 記憶障害には、様々な種類と程度があります。 ある特定の期間の記憶だけを失ってしまう場合もあれば、新しいことを全く覚えられなくなってしまう場合もあります。 また、記憶障害の原因も、加齢、ストレス、脳卒中、アルツハイマー病など、実に様々です。記憶障害は、誰にでも起こりうる身近な問題です。 もし、ご自身や周囲の方が記憶に関するトラブルを抱えていると感じたら、早めに医療機関に相談することが大切です。
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コミュニケーションの困難:失語症を理解する

- 失語症とは失語症は、脳卒中や頭部外傷などによって脳の一部が損傷を受けることで起こる、コミュニケーションに障害が生じる病気です。 話す、聞く、読む、書くといった、人間が言葉を用いるために必要な様々な機能に影響が現れます。 症状は人によって異なり、特定の機能だけが損なわれることもあれば、複数の機能に障害が出ることもあります。重要なのは、失語症は知能や思考能力の低下とは関係がないということです。 失語症の患者さんは、思考力や感情は損なわれていません。 しかし、 頭の中で考えていることや感じていることを言葉で表現したり、相手の言っていることを理解することが難しくなります。 たとえるなら、外国語を話すことを想像してみてください。 まだ慣れない外国語を話すとき、伝えたいことがうまく言えなかったり、相手の言っていることが理解できなかったりすることがありますよね。 失語症の患者さんは、まるで母国語が外国語になってしまったかのように感じることがあるのです。
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群発頭痛:強烈な痛みが周期的に襲う病気

- 群発頭痛とは群発頭痛は、非常に激しい痛みが特徴の頭痛です。その名前が示すように、集中的に頭痛が起こる「群発期」と、頭痛がほとんどない「寛解期」を交互に繰り返す点が特徴です。群発期には、毎日ほぼ同じ時間帯に、1~2時間程度の強烈な頭痛に襲われます。頭痛は片側のみに起こることが多く、目の奥やこめかみなど、頭の片側だけに激痛が走ります。痛みの程度は非常に激しく、「自殺頭痛」と呼ばれることからも、その苦しみが想像できるでしょう。群発頭痛は、一般的な頭痛である片頭痛とは異なり、吐き気や嘔吐などの症状はあまり見られません。その代わり、頭痛の起こる側で、目の充血、涙、鼻水、鼻づまりなどの自律神経症状を伴うことが多いです。群発期は数週間から数ヶ月続き、その後は寛解期に入ります。寛解期には頭痛はほとんど起こらず、数ヶ月から数年続くこともあります。しかし、また再び群発期が訪れ、激しい頭痛に悩まされることになります。群発頭痛の原因は、まだはっきりと解明されていません。ただ、脳内の血管や神経が関与していると考えられており、生活習慣やストレスなども影響している可能性があります。群発頭痛は命に関わる病気ではありませんが、その激痛は日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。もし、群発頭痛が疑われる場合は、自己判断せず、医療機関を受診し適切な診断と治療を受けることが重要です。
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顔面神経麻痺:顔の動きを司る神経に起こる障害

- 顔面神経麻痺とは 顔面神経麻痺とは、私たちの表情を司る顔の筋肉を動かすための神経である顔面神経に障害が生じることで、顔の筋肉が麻痺してしまう病気です。 顔面神経は、脳からの指令を顔の筋肉に伝える役割を担っています。この神経に何らかの異常が発生すると、脳からの指令が顔の筋肉にうまく伝わらなくなり、様々な症状が現れます。 顔面神経麻痺の主な症状は、顔の片側、または両側に麻痺が生じ、思い通りの表情が作りにくくなることです。例えば、おでこにシワを寄せたり、目をしっかりと閉じたり、口を大きく開けたりすることが難しくなります。 また、顔の麻痺以外にも、様々な症状が現れる場合があります。まぶたが完全に閉じられないために目が乾燥しやすくなったり、口角からよだれが垂れてしまったり、味を感じにくくなったりするケースもあります。さらに、耳の痛みや、音が響いて大きく聞こえるといった症状が出る場合もあります。
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神秘の器官:松果体の役割とは?

私たちの頭の中にある脳は、左右に大きく分かれた「大脳」が大部分を占めています。この左右の大脳半球の間、ちょうど中心に位置するようにして、「松果体」と呼ばれる小さな器官が存在します。その大きさはわずか5~8mmほどしかなく、米粒よりも小さい器官です。形は名前の由来ともなっている「松ぼっくり」にそっくりです。松果体は、脳の奥深くに位置しており、一見するとあまり目立たず、地味な印象を与えます。しかし、小さな体には、私たちの体にとって重要な役割が備わっているのです。松果体は、「メラトニン」というホルモンを作り出す働きを担っています。メラトニンは、私たちの睡眠と覚醒のリズムを整えるために重要なホルモンです。夜になり、周囲が暗くなると、松果体からメラトニンが分泌されます。メラトニンは、体温を低下させたり、脳の活動を鎮めたりすることで、自然な眠りを誘う効果があります。そして、朝になり、太陽の光を浴びると、メラトニンの分泌量は減少し、体は活動状態へと切り替わっていきます。このように、松果体は、地球の昼夜のサイクルに合わせて、私たちの睡眠と覚醒のリズムを調整する、体内時計の役割を担っているのです。
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命を脅かす脳の血管の病気:脳動脈瘤

- 脳動脈瘤とは人間の体には、心臓から送り出された血液を全身に巡らせるための血管が無数に張り巡らされています。そして、脳にも重要な役割を担う多くの血管が存在します。脳動脈瘤とは、この脳内の血管の一部が、何らかの原因で弱くなり、風船のように膨らんでしまう病気です。血管は、ゴムのように弾力性を持つ壁でできていますが、加齢や高血圧などの影響によって、その壁が徐々に弱くなってしまうことがあります。特に、血管の分岐部は構造的に弱いため、壁が薄くなりやすく、風船のように膨らみやすいのです。この膨らんだ部分は、正常な血管と比べて壁が薄くなっているため、ちょっとした衝撃や血圧の変動によって破裂する危険性があります。もしも脳動脈瘤が破裂すると、脳内出血を引き起こし、死に至ったり、重い後遺症が残ったりする可能性もある恐ろしい病気です。自覚症状がない場合も多いため、脳ドックなどで早期発見に努めることが重要です。また、高血圧や喫煙などの危険因子を避ける生活習慣も大切です。
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髄膜刺激症状:その定義と重要性

- 髄膜刺激症状とは脳と脊髄は、髄膜と呼ばれる薄い膜で覆われています。この髄膜に何らかの原因で炎症や刺激が起きると、特徴的な症状が現れます。これが髄膜刺激症状です。髄膜刺激症状が現れる原因は様々です。代表的なものとしては、細菌やウイルスによる髄膜炎が挙げられます。その他にも、くも膜下出血や脳腫瘍、頭部外傷など、脳や脊髄、そして髄膜に影響を及ぼす可能性のある病気や怪我が原因となることがあります。髄膜刺激症状で代表的なものとしては、首の痛みや硬直、激しい頭痛、発熱などがあります。首の痛みや硬直は、炎症によって髄膜が硬くなることで起こります。また、炎症によって神経が刺激されることで、激しい頭痛が起こります。発熱は、体内に侵入した細菌やウイルスと戦うために体が起こす反応です。これらの症状は、他の病気でも見られることがあります。そのため、髄膜刺激症状があるからといって、必ずしも髄膜炎や他の重篤な病気を発症しているとは限りません。しかし、髄膜炎は命に関わる病気であるため、髄膜刺激症状が見られる場合は、自己判断せずに、速やかに医療機関を受診することが重要です。
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髄膜刺激症状とケルニッヒ徴候

- ケルニッヒ徴候とはケルニッヒ徴候は、髄膜炎などの病気の際にみられる、足の動きに関する異常な反応のことを指します。ロシアの医師であるウラジミール・ケルニッヒによって発見されたことから、この名前が付けられました。私たちの脳と脊髄は、髄膜と呼ばれる薄い膜で覆われています。この髄膜に炎症が起こる病気を髄膜炎といいますが、ケルニッヒ徴候は、この髄膜炎を疑う重要な手がかりの一つとなります。ケルニッヒ徴候は、患者さんを仰向けに寝かせた状態で確認します。まず、検査する側の足を股関節と膝関節をそれぞれ90度に曲げた状態にします。その後、ゆっくりと膝をまっすぐに伸ばそうとすると、髄膜に炎症がある場合、痛みとともに膝が完全に伸びなくなる、または抵抗を感じてしまうのです。これは、炎症によって髄膜が刺激され、筋肉が硬直することで起こると考えられています。髄膜炎は、命に関わることもある病気です。そのため、早期に診断し、適切な治療を開始することが非常に重要になります。ケルニッヒ徴候は、髄膜炎の早期発見に役立つ重要なサインであるため、医療従事者だけでなく、一般の人々もその特徴を知っておくことが大切です。
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運動を司る脳の神秘:小脳の役割

- 運動機能の司令塔私たちは日常生活で、歩く、物を掴む、言葉を話すなど、様々な動作を何気なく行っています。これらの動作は、意識しなくてもスムーズに行うことができますが、実はその裏側では「小脳」と呼ばれる器官が重要な役割を担っています。小脳は、脳の後ろ側に位置する器官で、その形がカリフラワーに似ていることから「小さい脳」という意味の名前が付けられています。しかし、その役割は小さくありません。小脳は、まるで運動の司令塔のように、全身の筋肉の動きを調整し、滑らかで正確な動作を実現させているのです。私たちが体を動かす時、脳はまず、どのような動作をしたいのかという指令を出します。この指令は、まず大脳皮質と呼ばれる部分から発せられ、脊髄を通って筋肉に伝えられます。同時に、この指令は小脳にも送られます。小脳は、目や耳、筋肉などから送られてくる感覚情報と、大脳皮質から送られてきた運動指令とを照らし合わせ、体のバランスや筋肉の緊張を細かく調整します。そして、その調整情報を再び大脳皮質へとフィードバックすることで、私たちはスムーズで正確な動作を行うことができるのです。もし、小脳が正常に機能しなくなると、運動やバランスに障害が現れます。例えば、歩くときにふらついたり、字を書くときに手が震えたり、言葉が不明瞭になったりします。これは、小脳が損傷を受けることで、筋肉の動きを滑らかに調整する機能が失われてしまうためです。このように、小脳は私たちが意識することなく、運動機能を円滑に行うために重要な役割を担っています。普段は意識することが少ないかもしれませんが、小脳の働きによって、私たちは複雑な動作をスムーズに行うことができているのです。
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思考と行動の司令塔:前頭葉

私たちの脳は、まるで精巧な機械のように、多くの部位が複雑に連携し合って様々な機能を果たしています。その中でも、額のすぐ後ろに位置する前頭葉は、人間の思考や行動を司る最高司令官と例えられます。 前頭葉は、脳全体の約3分の1を占める、最も大きく発達した領域です。この領域は、まるで巨大なオーケストラを統率する指揮者のように、他の脳の部位からの情報を統合し、思考、判断、計画、実行といった高度な認知機能をコントロールしています。 具体的には、何かを考えたり、計画を立てたり、問題を解決したりする際には、前頭葉が中心的な役割を担います。また、周囲の状況を理解し、適切な行動を選択するのも前頭葉の重要な機能です。さらに、喜怒哀楽といった感情をコントロールし、社会的な場面で適切な行動をとる際にも、前頭葉は深く関わっています。 このように、前頭葉は、私たちが人間らしく思考し、行動するために欠かせない、非常に重要な役割を担っているのです。
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意識障害:その種類と症状について

- 意識障害とは意識障害とは、周囲の状況や自分自身の状態を正しく認識することが難しくなった状態を指します。私たちが普段、あたりまえに周りの風景を見たり、人の話を聞いて理解したり、考えたりできるのは、脳が正常に機能しているおかげです。そして、この脳の働きによって保たれている、周囲や自己を認識する能力を「意識」と呼びます。しかし、病気や怪我など、様々な原因によって脳がダメージを受けると、この「意識」を正常に保つことが難しくなり、様々な異常が現れます。これが意識障害です。意識障害の症状は、その程度によって大きく異なります。軽度の意識障害では、ぼーっとしている、何となく反応が鈍いなど、周囲の人もあまり気づかないことがあります。しかし、重度の意識障害になると、呼びかけに全く反応しなくなったり、自分の名前すら分からなくなったり、場合によっては、自力で呼吸をすることも、心臓を動かすことも難しくなり、生命の危機に瀕することもあります。意識障害は、決して他人事ではありません。脳卒中や頭部外傷、低血糖など、比較的誰にでも起こりうる病気や怪我によって引き起こされる可能性があります。普段と様子が違うと感じたら、早めに医療機関を受診することが大切です。
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強直間代性けいれん:知っておきたいこと

けいれんは、脳を流れる電流に異常が生じることで起こる発作です。意識や運動、感覚、行動などに一時的に異常が現れます。一口にけいれんと言っても、その種類は様々で、症状や持続時間も人によって、また原因によって異なります。 けいれんは大きく分けて、一部の脳領域で異常な電気活動が起こる部分発作と、脳全体に広がる全般発作の二つに分類されます。 部分発作は、さらに意識が保たれる単純部分発作と、意識がなくなる複雑部分発作に分けられます。単純部分発作では、手足が勝手に動いたり、感覚がおかしくなったりするなどの症状が現れます。複雑部分発作では、意識がなくなったり、ぼーっとしたりする症状に加え、意味のない行動を繰り返すこともあります。 一方、全般発作では、脳全体に異常な電気活動が広がるため、全身に症状が現れます。意識を失って体全体が硬直する強直間代発作や、全身の筋肉から力が抜けて、ぐったりとする欠神発作など、様々なタイプの発作があります。 繰り返しけいれんを起こす病気として、てんかんが挙げられます。てんかんは、脳の神経細胞の過剰な興奮によって起こると考えられており、薬物療法や外科療法など、様々な治療法があります。 けいれんは、その種類や症状、持続時間、頻度などを把握することが重要です。けいれんが疑われる場合は、自己判断せずに、速やかに医療機関を受診しましょう。
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生命の根幹:延髄の役割

延髄は、脳幹の一部であり、その中でも最も下に位置しています。重さはわずか6~7グラムほどで、成人男性の親指ほどの大きさしかありません。形は円錐状をしていて、上部は太く、下部は細くなっています。 延髄は、脳と脊髄を繋ぐ重要な中継点としての役割を担っています。脳から送られる運動指令や、感覚器からの情報は、延髄を通って脊髄へと伝達されます。また、逆に脊髄から脳へと向かう情報も、延髄を経由します。 延髄は、生命維持に欠かせない重要な機能も担っています。呼吸、心臓の拍動、血管の収縮など、無意識に行われる生命活動をコントロールする中枢が存在しています。そのため、延髄が損傷を受けると、呼吸困難や心停止などを引き起こし、生命に関わる重大な事態となる可能性があります。 延髄は、神経線維が密集しており、複雑な構造をしています。延髄の内部には、多数の神経核と呼ばれる神経細胞の集まりが存在し、それぞれが特定の機能を担っています。延髄の構造と機能を理解することは、脳神経系の病気の診断や治療において非常に重要です。
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脳のエネルギー源:酸素消費量の謎

私たち人間は、考える、記憶する、体を動かすなど、日常生活で実に様々な活動を行っています。これらの活動は、脳からの指令によって行われています。脳は、まるでコンピューターのように、休むことなく働き続けているのです。 ところで、このような活動を続けるために、脳は一体どのようにエネルギーを得ているのでしょうか?その答えは、酸素です。 酸素は、私たちが呼吸によって体内に取り込む空気中の成分の一つです。体内に取り込まれた酸素は、血液によって体の隅々まで運ばれます。そして、細胞の中にあるミトコンドリアという小さな器官で、栄養素と結びつくことでエネルギーを生み出します。 脳は、体重のわずか2%ほどしかありませんが、体全体の酸素消費量の約20%を占めていると言われています。これは、心臓や消化器官など、他の臓器と比較しても、脳がいかに多くの酸素を必要としているかを表しています。 つまり、脳は、私たちが生命を維持し、活動するために、大量の酸素を必要とする非常に重要な臓器なのです。日頃から十分な酸素を脳に送り届けるために、深い呼吸を心がけたり、適度な運動を習慣化したりすることが大切です。
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脳の橋渡し役:橋

人間の脳は、大きく分けて3つの部分で構成されています。思考や記憶をつかさどる大脳、運動やバランスを調整する小脳、そして生命活動を維持する上で欠かせない役割を担う脳幹です。 脳幹は、呼吸や心臓の拍動、体温調節など、私たちが意識しなくても生きていくために必要な機能をコントロールしています。この脳幹は、さらに中脳、橋、延髄という3つの部分に分かれており、それぞれが重要な役割を担っています。 橋は、その名の通り中脳と延髄の間にある、橋渡しのような役割を担っています。具体的には、大脳からの指令を小脳に伝えたり、逆に小脳からの情報を大脳に伝えたりすることで、運動の調整に関わっています。また、顔の筋肉を動かすための神経や、聴覚や平衡感覚に関わる神経も、橋から出ています。 橋は、睡眠や覚醒のサイクルの調節にも関わっていると考えられています。そのため、橋に損傷が起こると、意識障害や運動麻痺、感覚障害などの深刻な症状が現れる可能性があります。脳幹は生命維持に直結する重要な部位であるため、橋を含む脳幹の働きは、私たちの健康にとって非常に重要です。
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命に関わる脳卒中の脅威

- 脳卒中とは脳卒中とは、脳内の血管に問題が生じることで発症する病気です。 私たちの脳は、体全体の司令塔として、思考、運動、感覚など、非常に重要な役割を担っています。 この重要な器官である脳に、血液が十分に供給されなくなると、脳細胞は栄養や酸素不足に陥り、ダメージを受けてしまいます。脳卒中の主な原因は、脳の血管が詰まる「脳梗塞」と、脳の血管が破れる「脳出血」の二つに分けられます。 脳梗塞は、動脈硬化などによって血管が狭くなったり、心臓などから血液のかたまりが流れてきて血管を詰まらせたりすることで起こります。 一方、脳出血は、高血圧などが原因で血管がもろくなり、破裂することで起こります。脳卒中は、発症すると命に関わるだけでなく、後遺症が残る可能性も高い病気です。 後遺症には、体の麻痺や言語障害、記憶障害など、日常生活に支障をきたす深刻なものも少なくありません。 脳卒中を予防するためには、バランスの取れた食事や適度な運動、禁煙など、健康的な生活習慣を心がけることが重要です。 また、高血圧や糖尿病などの持病がある場合は、適切な治療を継続することも大切です。
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多発性硬化症:症状と治療法

- 多発性硬化症とは多発性硬化症は、自分の免疫システムが、本来守るべき神経を攻撃してしまう病気です。免疫システムは、細菌やウイルスから体を守るための重要なシステムですが、多発性硬化症の場合、このシステムが誤作動を起こしてしまいます。具体的には、脳や脊髄にある神経線維が攻撃対象となります。神経線維は、脳からの指令を体の各部に伝えるための重要な役割を担っており、電気信号を伝える電線のようなものとイメージすると分かりやすいでしょう。この電線を覆っているのがミエリン鞘と呼ばれる組織です。ミエリン鞘は、電線を守る被覆のような役割をしており、電気信号をスムーズに伝えるために欠かせません。しかし、多発性硬化症になると、このミエリン鞘が免疫システムによって攻撃され、炎症を起こしたり、損傷したりしてしまいます。その結果、神経線維は電気信号を効率的に伝えることができなくなり、体の様々な場所に異常が現れるようになります。これが多発性硬化症の主なメカニズムです。症状は人によって異なり、視力障害、運動障害、感覚障害、排尿障害など、多岐にわたります。
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チャドック反射:錐体路障害を知らせるサイン

- チャドック反射とはチャドック反射は、神経系の状態、特に錐体路と呼ばれる運動神経系の経路に異常がないかを評価するために用いられる神経反射の一つです。この反射は、乳幼児期に自然と消失する原始反射の一つであり、通常、健康な成人では見られません。チャドック反射の検査方法としては、まず、患者さんを仰向けに寝かせた状態、もしくは椅子に座らせた状態で足を軽く外側に開いた状態にします。そして、検査を行う側とは反対の手で患者の足を軽く持ち、ハンマーの柄などの鈍的なもので、足の外くるぶしの下から踵を通り、つま先に向かって皮膚をこすります。もしも、錐体路と呼ばれる運動神経系の経路に障害があると、この刺激に対して足の親指が背側に反り返り、他の4本の指が開くような動き(バビンスキー反射) が見られます。これがチャドック反射陽性です。チャドック反射は、脳卒中や脳性麻痺、脊髄損傷などの神経疾患によって錐体路が障害を受けた場合に陽性となります。そのため、これらの疾患の診断や病状の評価に役立ちます。ただし、チャドック反射単独では診断を確定することはできません。他の神経学的検査と組み合わせて総合的に判断する必要があります。もしも、チャドック反射が陽性であった場合には、医師の診察を受け、適切な検査や治療を受けるようにしてください。
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医療現場で使われる「ニューロ」って?

病院で働く私たちにとって、専門用語は日常茶飯事です。患者さんとの会話では、誰もが理解できる言葉を使うように心がけていますが、スタッフ同士であれば、簡潔な表現や独特の言い回しを使うことも少なくありません。今回は、数ある医療用語の中でも、特に頻繁に耳にする「ニューロ」という言葉について詳しく解説しましょう。 「ニューロ」は、英語で「神経」を意味する「ニューロン(neuron)」を短縮した言葉です。医療現場では、神経に関連する様々なものを指す場合に、この「ニューロ」という言葉が用いられます。例えば、「ニューロ内科」は神経内科を、「ニューロ検査」は神経に関する検査を指します。 このように、「ニューロ」という言葉単体には、「神経」という意味以上の情報は含まれていません。具体的な意味合いは、「ニューロ」と組み合わされる言葉によって決まると言えるでしょう。医師や看護師の会話の中で「ニューロ」という単語が出てきたら、その後ろに続く言葉に注意して、文脈全体から意味を理解することが大切です。
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