多発性硬化症:症状と治療法
病院での用語を教えて
先生、「多発性硬化症」って、どんな病気なんですか?名前は聞いたことあるんですけど、よく分からなくて…
体の健康研究家
そうだね。「多発性硬化症」、略して「MS」はね、脳や脊髄といった、体にとって大切な神経に炎症が起こる病気なんだ。神経は、体からの指令を伝えるために電気信号を送っているんだけど、炎症が起こるとその信号がうまく伝わらなくなってしまうんだ。
病院での用語を教えて
そうなんですね。じゃあ、どんな症状が出るんですか?
体の健康研究家
症状は色々で、人によって違うんだ。例えば、手足がしびれたり、視力が落ちたり、疲れやすくなったりする人もいるよ。症状の出方も、良くなったり悪くなったりを繰り返すことが多いんだ。
多発性硬化症とは。
『多発性硬化症』っていう病気の言葉について説明するね。この病気は、脳と脊髄で炎症が起きて、神経の周りにあるカバー(髄鞘っていうんだ)が壊れちゃう病気なんだ。たくさんの場所で起こるから『多発性』って言うんだよ。
多発性硬化症とは
– 多発性硬化症とは多発性硬化症は、自分の免疫システムが、本来守るべき神経を攻撃してしまう病気です。免疫システムは、細菌やウイルスから体を守るための重要なシステムですが、多発性硬化症の場合、このシステムが誤作動を起こしてしまいます。具体的には、脳や脊髄にある神経線維が攻撃対象となります。神経線維は、脳からの指令を体の各部に伝えるための重要な役割を担っており、電気信号を伝える電線のようなものとイメージすると分かりやすいでしょう。この電線を覆っているのがミエリン鞘と呼ばれる組織です。ミエリン鞘は、電線を守る被覆のような役割をしており、電気信号をスムーズに伝えるために欠かせません。しかし、多発性硬化症になると、このミエリン鞘が免疫システムによって攻撃され、炎症を起こしたり、損傷したりしてしまいます。その結果、神経線維は電気信号を効率的に伝えることができなくなり、体の様々な場所に異常が現れるようになります。これが多発性硬化症の主なメカニズムです。症状は人によって異なり、視力障害、運動障害、感覚障害、排尿障害など、多岐にわたります。
項目 | 説明 |
---|---|
多発性硬化症とは | 自分の免疫システムが、本来守るべき神経を攻撃してしまう病気 |
神経線維 | 脳からの指令を体の各部に伝えるためのもの(電線のようなもの) |
ミエリン鞘 | 神経線維を覆い、保護する組織(電線の被覆のようなもの) |
多発性硬化症のメカニズム | 免疫システムがミエリン鞘を攻撃し、炎症や損傷を引き起こすことで、神経線維が電気信号を効率的に伝えられなくなる |
症状 | 視力障害、運動障害、感覚障害、排尿障害など、多岐にわたる |
症状の現れ方
– 症状の現れ方多発性硬化症は、神経線維を覆うミエリン鞘という部分が、自身の免疫機能によって攻撃されてしまう自己免疫疾患です。このミエリン鞘は、神経の情報伝達をスムーズに行うために重要な役割を担っています。このミエリン鞘が傷つけられることで、脳からの指令が正しく伝わらず、様々な神経症状が現れます。症状が現れる部位や程度は、ミエリン鞘の損傷を受けた場所やその範囲によって大きく異なるため、患者さん一人ひとりで症状が異なり、一概にどの症状が出るとは言えません。代表的な症状としては、ものが二重に見えたり、視野が狭くなったりする視力障害、手足の感覚が鈍くなったり、力が入りにくくなるしびれや麻痺、歩行時にふらついたり、足が重く感じる歩行障害、言葉がうまく話せなくなる言語障害、尿意を感じにくい、または尿を我慢できないなどの排尿障害、便秘や便失禁といった排便障害などが挙げられます。これらの症状は、一時的に現れては消えることを繰り返す場合もあれば、徐々に進行していく場合もあります。症状が再発と寛解を繰り返しながら進行していく場合や、徐々に進行していく場合、最初からほとんど進行がない場合など、経過は患者さんによって様々です。
症状 | 説明 |
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視力障害 | ものが二重に見えたり、視野が狭くなったりする |
しびれや麻痺 | 手足の感覚が鈍くなったり、力が入りにくくなる |
歩行障害 | 歩行時にふらついたり、足が重く感じる |
言語障害 | 言葉がうまく話せなくなる |
排尿障害 | 尿意を感じにくい、または尿を我慢できない |
排便障害 | 便秘や便失禁 |
診断について
– 診断について多発性硬化症は、その症状が多岐にわたり、他の病気と似ている場合もあるため、診断が容易ではありません。そのため、医師は様々な情報を総合的に判断して診断を行います。まず、患者さんから詳しく症状を聞き取り、神経学的診察を行います。これは、視力、運動機能、感覚、 reflexes(反射)などを評価し、神経系の異常を調べる検査です。次に、MRI検査を行います。MRI検査では、強力な磁場と電波を用いて、脳や脊髄の断面画像を撮影します。多発性硬化症の場合、MRI画像上で炎症や脱髄巣と呼ばれる病変が確認できます。炎症は、神経線維を覆っているミエリンという組織が炎症を起こしている状態で、脱髄巣は、ミエリンが失われた状態を指します。これらの病変は、多発性硬化症に特徴的な所見です。さらに、髄液検査を行うこともあります。髄液とは、脳や脊髄を保護している液体のことです。髄液検査では、腰椎穿刺という方法で採取した髄液を分析します。多発性硬化症の場合、髄液中に特定の免疫細胞や抗体が増加していることがあります。これらの検査結果に加えて、症状の経過や他の疾患の可能性なども考慮し、最終的な診断を下します。多発性硬化症は、寛解と再発を繰り返すという特徴的な経過をたどることが多いため、症状の経過も重要な判断材料となります。また、似たような症状を示す他の疾患の可能性を否定することも重要です。診断には時間がかかることもありますが、早期に診断し、適切な治療を開始することが重要です。
検査 | 説明 | 多発性硬化症の場合に見られる所見 |
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神経学的診察 | 視力、運動機能、感覚、反射などを評価し、神経系の異常を調べる検査。 | 神経系の異常 |
MRI検査 | 強力な磁場と電波を用いて、脳や脊髄の断面画像を撮影する。 | 炎症や脱髄巣と呼ばれる病変が確認できる。 |
髄液検査 | 腰椎穿刺で採取した髄液を分析する。 | 髄液中に特定の免疫細胞や抗体が増加していることがある。 |
治療の選択肢
– 治療の選択肢多発性硬化症は、残念ながら今の医学では完治させる治療法は見つかっていません。しかし、症状を軽くしたり、病気の進行を遅らせたりする治療法はあります。主な治療法としては、大きく分けて3つの種類があります。まず、再発を予防するための治療です。これは、病気の経過を修正する働きがあることから「病気修飾療法」と呼ばれています。病気修飾療法には、注射薬や内服薬など様々な種類があり、患者さん一人ひとりの症状や病状に合わせて最適なものが選択されます。次に、症状が急激に悪化した時に行う治療です。これは「急性期治療」とも呼ばれ、主にステロイド薬が用いられます。ステロイド薬は炎症を抑える効果が高く、症状を速やかに改善することができます。最後に、症状に合わせて行う治療です。これは「対症療法」とも呼ばれ、歩行障害や排尿障害、痛み、しびれなど、患者さんによって現れる症状は様々であるため、それぞれの症状に合わせてリハビリテーションや薬物療法などが行われます。これらの治療法を組み合わせることで、患者さんの生活の質を維持し、できるだけ長く社会生活を送れるようにサポートしていきます。
治療の種類 | 説明 | 主な治療法 |
---|---|---|
再発予防治療(病気修飾療法) | 病気の経過を修正し、再発を予防する。 | 注射薬、内服薬など |
急性期治療 | 症状が急激に悪化した時に行う。 | ステロイド薬 |
対症療法 | 症状に合わせて行う。 | リハビリテーション、薬物療法など |
生活への影響とサポート体制
多発性硬化症は、体の様々な部位に症状が現れるため、日常生活に大きな影響を与える可能性があります。症状の程度や種類は患者さんによって異なり、ある人は軽い痺れや疲労感を感じる程度で済む一方で、ある人は歩くことや話すことさえ困難になる場合があります。
このような状況下では、患者さん本人のみならず、家族や周囲の人々の理解とサポートが非常に重要です。病気の症状や治療法について正しく理解し、患者さんの気持ちを尊重しながら、日常生活を支えていく必要があります。家事の負担を軽減したり、通院やリハビリテーションに付き添ったりするなど、具体的なサポートを行うことが大切です。
また、患者さん自身が症状に合わせて生活を工夫することも重要です。疲労や痺れを軽減するために、無理のない範囲で体を動かす習慣をつけたり、日常生活で使える補助具を活用したりするのも有効です。さらに、国の福祉制度や地域のサービスなども積極的に活用することで、患者さんの生活の質の向上に繋がる可能性があります。
病気との向き合い方は人それぞれですが、同じ病気を持つ患者さん同士が交流し、情報交換や悩みを相談できる場があることは大きな支えになります。患者会に参加することで、病気に関する最新の情報や、他の患者さんが実践している生活の工夫などを得ることができます。また、同じ経験を持つ人たちと気持ちを分かち合うことで、精神的な安定や前向きな気持ちを取り戻せる患者さんも多くいます。
対象者 | ポイント | 具体的な行動 |
---|---|---|
家族や周囲の人 | 患者さんの理解とサポートが重要 | – 病気の症状や治療法について正しく理解する – 患者さんの気持ちを尊重する – 家事の負担を軽減する – 通院やリハビリテーションに付き添う |
患者さん自身 | 症状に合わせて生活を工夫する | – 無理のない範囲で体を動かす – 日常生活で使える補助具を活用する – 福祉制度や地域のサービスを活用する |
患者さん同士 | 交流を通して支え合う | – 患者会に参加する – 情報交換や悩みを相談する – 気持ちを分かち合う |