全身の筋肉が衰える病気:ALS
病院での用語を教えて
先生、「ALS」って聞いたことあるんですけど、どんな病気なのかよく分かりません。教えてください。
体の健康研究家
なるほど。「ALS」は体の筋肉がだんだん弱くなっていく病気なんだ。 正式には「筋萎縮性側索硬化症」って言うんだけど、長いから「ALS」って略して呼ばれているんだよ。
病院での用語を教えて
筋肉が弱くなるんですか? なんでそんな病気になってしまうんですか?
体の健康研究家
実はね、はっきりとした原因はまだ分かっていないことが多い病気なんだ。 だけど、体を動かす指令を出す神経がうまく働かなくなることで、筋肉が痩せて力が入らなくなってしまうんだ。
ALSとは。
『ALS』は、正式名称を『筋萎縮性側索硬化症』と言い、体を動かすための神経がダメージを受けることで、手足の力が弱くなるだけでなく、呼吸に必要な筋肉も含めた全身の筋肉が衰えてしまう病気の総称です。
ALSとは
– ALSとはALS(筋萎縮性側索硬化症)は、体を動かすための指令を脳から筋肉へと伝える役割を持つ神経細胞「運動ニューロン」が、少しずつ壊れていく病気です。運動ニューロンは、脳から脊髄を通って全身の筋肉へと繋がっています。この運動ニューロンが正常に働いているときは、脳から「手を動かす」という指令が出されると、その指令は脊髄を経由して手の筋肉へと伝わり、スムーズに手が動きます。しかし、ALSを発症すると、この運動ニューロンが徐々に壊れてしまい、脳からの指令が筋肉へと伝わらなくなってしまいます。その結果、筋肉は次第にやせ細り、力が弱くなっていきます。初期症状としては、手や足の動きがぎこちなくなったり、言葉が話しにくくなったりすることがあります。病気の進行は患者さんによって異なり、呼吸に関わる筋肉が弱って呼吸困難に陥ったり、食べ物を飲み込む筋肉が衰えて食事が難しくなったりすることもあります。ALSは現在のところ、根本的な治療法が確立されていません。しかし、病気の進行を遅らせたり、症状を和らげたりするための薬物療法やリハビリテーションなどが行われています。
項目 | 詳細 |
---|---|
病気の定義 | 運動ニューロン(脳から筋肉への指令を伝える神経細胞)が徐々に壊れていく病気 |
原因 | 不明 |
初期症状 | – 手足の動きがぎこちなくなる – 言葉が話しにくくなる |
進行すると | – 呼吸困難 – 嚥下困難 |
治療法 | – 根本的な治療法は確立されていない – 病気の進行を遅らせたり、症状を和らげたりするための薬物療法やリハビリテーション |
症状の進行
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動神経が徐々に侵されていく病気です。そのため、体の動きに深く関わっている筋肉が衰え、硬くなっていく症状が現れます。
初期の段階では、手や足の筋力が低下し、細かい動作が困難になります。例えば、箸を使う、字を書く、ボタンをかけるといった日常的な動作に支障をきたすことがあります。また、歩行時につまずきやすくなったり、転びやすくなったりするケースも見られます。これらの症状は、最初は片側の手足に現れることが多いですが、徐々に反対側にも広がっていきます。
病気の進行に伴い、筋肉の衰えは全身に広がり、日常生活に大きな影響を及ぼすようになります。 歩くことが困難になり、車椅子が必要となる場合もあります。また、食事や呼吸、会話といった基本的な動作にも支障が生じることがあります。さらに、筋肉の衰えによって、食べ物をうまく飲み込めなくなったり、唾液が増えたり、呼吸が浅くなったりするなどの症状が現れることもあります。
ALSは進行性の病気であるため、症状は時間とともに悪化していきます。しかし、その進行速度や症状の出方には個人差が大きく、ゆっくりと進行するケースもあれば、急速に悪化するケースもあります。
ALSの症状 | 詳細 |
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初期症状 | – 手足の筋力低下 – 微細な動作の困難 (箸の使用、字を書く、ボタンをかけるなど) – 歩行時のつまずきやすさ、転倒しやすさ – 片側から始まり、徐々に反対側にも広がる |
進行した症状 | – 全身への筋力低下の広がり – 歩行困難、車椅子が必要となる – 食事、呼吸、会話などの基本動作への支障 – 嚥下困難、唾液増加、呼吸の浅化 |
病気の進行 | – 進行性であり、症状は時間とともに悪化 – 進行速度や症状の出方には個人差がある |
原因
– 原因
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、その原因が完全には明らかになっていない難病です。現時点では、この病気の発生に寄与すると考えられている要因がいくつか特定されているものの、なぜ特定の人に発症するのか、そのメカニズムは依然として解明されていません。
ALSの患者さん全体で見ると、およそ1割程度は家系内に同じ病気の方がいる遺伝性のケースであることが分かっています。これは、特定の遺伝子の変異が、親から子へと受け継がれることで発症する可能性を示唆しています。しかしながら、残りの9割近くの患者さんでは、家族歴に関係なく発症するため、遺伝的な要因だけでは説明がつきません。
近年、遺伝子解析技術の進歩により、家族性、孤発性に関わらず、ALSの発症リスクを高める可能性のある遺伝子の変異が、数多く発見されてきました。これらの遺伝子変異は、神経細胞の維持や修復に関わるタンパク質の異常を引き起こし、結果として神経細胞の変性や死滅を招くと考えられています。また、環境要因もALSの発症に影響を与えている可能性が指摘されています。具体的には、喫煙、農薬への曝露、激しい運動などがリスクを高める可能性が示唆されていますが、明確な因果関係はまだ証明されていません。
ALSの原因を解明することは、効果的な治療法や予防法の開発に不可欠です。現在も世界中の研究者たちが、この難病の謎を解き明かそうと、日々研究に取り組んでいます。
要因 | 詳細 |
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遺伝 | – 全体の約1割が遺伝性 – 特定の遺伝子の変異が親から子に受け継がれる |
遺伝子変異 | – 家族性、孤発性に関わらず、発症リスクを高める遺伝子変異が多数発見 – 神経細胞の維持や修復に関わるタンパク質の異常を引き起こす可能性 |
環境要因 | – 喫煙、農薬への曝露、激しい運動などがリスクを高める可能性 – 明確な因果関係は未証明 |
診断
– 診断筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断するためには、様々な角度からの診察と検査が必要です。 ALSは、他の病気と症状が似ている場合があり、誤診を防ぐために、専門医による入念な診断が欠かせません。 診断は、大きく分けて以下の3つの要素を基に行われます。-1. 神経学的検査-医師は、患者さんから詳しく症状を聞き取った後、神経学的検査を行います。 具体的には、筋肉の萎縮や筋力の低下、反射の異常、歩行障害、言語障害など、様々な神経系の状態を調べます。 これらの検査を通して、運動神経や感覚神経の障害の程度や範囲を把握します。-2. 電気生理学的検査-神経や筋肉の電気的な活動を測定する検査です。代表的な検査として、神経伝導検査と針筋電図検査があります。 神経伝導検査では、神経に電気刺激を与え、神経を伝わる信号の速度や強さを測定することで、神経の損傷の程度を調べます。針筋電図検査では、筋肉に細い針を刺し、筋肉の電気的な活動を測定することで、筋肉の異常を検出します。-3. 画像検査-MRI(磁気共鳴画像)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査などの画像検査は、脳や脊髄の状態を詳しく調べるために用いられます。 ALSでは、これらの検査によって、他の神経疾患との鑑別を行います。例えば、脳や脊髄の腫瘍、頸椎症、脳梗塞などが疑われる場合に、これらの画像検査は非常に重要な役割を果たします。これらの検査結果と、患者さんの症状や経過を総合的に判断し、ALSの診断を下します。 ALSは、現在のところ根本的な治療法が確立されていません。そのため、早期に診断し、病気の進行を遅らせるための治療やケアを始めることが重要です。
診断要素 | 内容 | 詳細 |
---|---|---|
神経学的検査 | 医師による診察と問診 | 筋肉の萎縮、筋力低下、反射の異常、歩行障害、言語障害などを確認 |
電気生理学的検査 | 神経や筋肉の電気的な活動を測定 | – 神経伝導検査:神経の損傷程度を調べる – 針筋電図検査:筋肉の異常を検出 |
画像検査 | MRI、CTなどの画像診断 | – 脳や脊髄の状態を確認 – 他の神経疾患との鑑別(腫瘍、頸椎症、脳梗塞など) |
治療
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、現代の医学をもってしても完全に治癒することが難しい病気です。しかし、病気の進行を遅らせたり、つらい症状を和らげたりするための様々な治療法が存在します。ALSの治療は、患者さん一人ひとりの状態や希望に合わせたオーダーメイドの治療計画に基づいて行われます。
薬物療法は、ALSの進行を遅らせることを目的とした治療の中心的な役割を担います。承認されている薬は限られていますが、神経細胞の損傷を抑えたり、神経伝達物質の働きを調整したりすることで、病気の進行を遅らせ、延命効果も期待できます。薬物療法の効果や副作用には個人差があるため、医師と相談しながら、最適な薬剤を選択していくことが重要です。
リハビリテーションは、残された運動機能を維持し、日常生活の自立度を可能な限り保つために非常に重要です。理学療法士や作業療法士による指導のもと、筋力トレーニングや関節可動域訓練、呼吸訓練などを行います。また、日常生活で不便を感じることなく過ごせるように、福祉用具や住宅改修についても相談することができます。
ALSが進行すると、呼吸に関わる筋肉が弱まり、呼吸困難に陥ることがあります。そのため、呼吸ケアは、患者さんの生活の質(QOL)を維持する上で欠かせない治療法となります。具体的には、呼吸を補助する装置を用いたり、酸素吸入を行ったりします。
さらに、ALSの患者さんは、嚥下機能の低下によって栄養状態が悪化しやすいため、栄養管理も重要です。管理栄養士の指導のもと、食べやすい食事の工夫や、必要に応じて経管栄養や胃ろう造設などの栄養補給法を検討します。
ALSの治療は、これらの治療法を組み合わせ、患者さんのQOLを維持向上させることを目標に行われます。そして、治療にあたっては、医師や看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、管理栄養士など、多職種の医療従事者が連携し、患者さんとそのご家族を支えていきます。
治療法 | 目的と内容 |
---|---|
薬物療法 | 神経細胞の損傷抑制、神経伝達物質の働き調整による進行抑制と延命効果 |
リハビリテーション | 理学療法士・作業療法士による筋力トレーニング、関節可動域訓練、呼吸訓練、福祉用具、住宅改修の指導による残存運動機能維持と日常生活の自立度維持 |
呼吸ケア | 呼吸補助装置、酸素吸入による呼吸困難への対応とQOL維持 |
栄養管理 | 管理栄養士による食事指導、経管栄養、胃ろう造設などによる栄養状態悪化の予防 |
支援体制
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、患者さん本人だけでなく、そのご家族にとっても、肉体的、精神的、そして経済的に大きな負担となる病気です。
ALSと診断された際には、医療従事者、介護福祉士、ソーシャルワーカー、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、栄養士など、様々な専門職がチームとなって患者さんとご家族を支える体制が整っています。
主治医や担当医は、病気の状態を把握し、治療方針を決定します。また、患者さんとご家族の相談に乗り、不安や悩みに寄り添います。
介護福祉士は、食事や入浴、排泄などの日常生活の介助を行います。
ソーシャルワーカーは、介護保険や障害者手帳の申請手続き、福祉用具の貸与など、社会資源の活用について相談に応じます。
理学療法士は、筋力や関節の動きを維持するためのリハビリテーションを行います。
作業療法士は、日常生活動作の訓練や、生活をより快適に過ごせるよう工夫やアドバイスを行います。
言語聴覚士は、話すことや飲み込むことの訓練を行います。
栄養士は、患者さんの状態に合わせた食事の栄養指導を行います。
これらの専門職は、互いに連携を取りながら、患者さんとご家族の状況に合わせて、必要な支援を提供します。
一人で抱え込まずに、相談しやすい雰囲気作りも大切です。
また、患者会や家族会に参加することで、他の患者さんやそのご家族と交流し、情報交換や悩みを共有することもできます。
専門職 | 役割 |
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主治医/担当医 | 病気の状態把握、治療方針決定、患者家族への相談 |
介護福祉士 | 食事、入浴、排泄など日常生活の介助 |
ソーシャルワーカー | 介護保険、障害者手帳申請、福祉用具相談など |
理学療法士 | 筋力、関節の動き維持のためのリハビリ |
作業療法士 | 日常生活動作訓練、生活を快適にする工夫、アドバイス |
言語聴覚士 | 話す、飲み込む訓練 |
栄養士 | 患者さんの状態に合わせた食事指導 |