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血液凝固:出血を止める体の仕組み

- 血液凝固とは私たちは日常生活で、ちょっとした擦り傷から、転んで深く傷を作ってしまうことまで、様々な怪我をする可能性があります。怪我をして出血すると、体にとって大切な血液が外に出ていってしまいます。しかし、私たちの体は、出血を放置して、血液を無駄にしてしまうようなことはしません。出血をできるだけ早く止めて、体を守る仕組みを持っているのです。血液凝固とは、血管が傷ついて出血した時に、その出血を止めるために体が起こす反応のことです。この反応は、まるで複雑なパズルのように、様々な要素が組み合わさって起こります。まず、血管が傷つくと、その傷口を塞ぐように、血小板と呼ばれる小さな細胞が集まってきます。血小板は、傷口に集まると、互いにくっつき合い、まるで「栓」のようになって傷口を塞ぎます。これが血液凝固の第一段階です。次に、「血液凝固因子」と呼ばれるタンパク質が活性化され、次々と反応していきます。そして最終的に、血液中に溶けているフィブリンというタンパク質が、網目状の構造を作って、傷口をしっかりと塞ぎます。このようにして、血液凝固は、私たちの体を傷や出血から守る、非常に重要な役割を担っています。怪我をして出血した時に、自然と血が止まるのは、この血液凝固という優れたシステムが、私たちの体の中で働いているおかげなのです。
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エイズ:免疫の崩壊がもたらす脅威

エイズとは、後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome)の略称で、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染によって引き起こされる病気です。 HIVは、免疫システムにおいて中心的な役割を担うヘルパーT細胞を破壊し、体の防御システムを弱体化させてしまいます。 私たちの体は、常にウイルスや細菌などの病原体の攻撃にさらされています。健康な状態であれば、免疫システムがこれらの病原体を攻撃し、排除することで病気から体を守ってくれます。しかし、HIVに感染すると、免疫システムの中核であるヘルパーT細胞が破壊されるため、免疫力が低下してしまいます。その結果、通常であれば発症しないような弱い病原体に対しても、体が抵抗することができなくなり、様々な病気にかかりやすくなってしまうのです。 エイズは、HIV感染によって引き起こされる免疫不全の状態を指します。エイズを発症すると、肺炎や結核、ガンなど、通常では発症しにくい様々な病気を併発するようになります。これらの病気は、健康な人であれば治療可能なものも多いですが、免疫力が低下した状態では重症化しやすく、命に関わることもあります。
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免疫の要!HLAと私たちの身体

- HLAとは何かHLAとは、ヒト白血球抗原(Human Leukocyte Antigen)の略称で、私たちの体を守る免疫システムにおいて、非常に重要な役割を担うものです。 私たちの体の中にある細胞は、それぞれ表面に「自分自身の細胞である」ことを示すマークをつけています。このマークがHLAであり、いわば細胞の「顔写真」のようなものです。免疫細胞は、体の中を常にパトロールして、侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体や、体内で発生した異常な細胞(がん細胞など)を見つけ出して攻撃します。この時、免疫細胞は細胞の表面に提示されたHLAをチェックします。自分自身の細胞が持つHLAであれば「味方」、そうでないHLAであれば「敵」と認識し、攻撃するかどうかを判断します。 つまり、HLAは免疫細胞が「自己」と「非自己」を区別するために不可欠なものであり、私たちの体を病気から守る上で非常に重要な役割を担っているのです。HLAは、非常に多くの種類が存在し、その組み合わせは個人によって異なります。そのため、HLAは臓器移植の際に、適合性を判断する重要な指標として用いられています。適合しないHLAを持つ者同士で臓器移植を行うと、拒絶反応が起こる可能性が高くなるためです。
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アルブミン: 血液中の働き者

私たちの体内を巡る血液は、主に細胞成分と血漿という液体成分で構成されています。赤血球、白血球、血小板といった細胞成分は、それぞれ酸素を運搬したり、外部からの細菌やウイルスから体を守ったり、出血を止めたりと重要な役割を担っています。そして、これらの細胞成分を包み込むように存在するのが血漿です。 アルブミンは、この血漿中に溶けているタンパク質の中で最も量が多いものです。体重60kgの人の場合、血液中に約240gものアルブミンが存在し、血漿全体の約60%を占めていると言われています。これは、アルブミンが私たちの体にとって、どれほど重要な役割を担っているかを物語っています。
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骨髄検査:血液疾患の診断に欠かせない検査

- 骨髄検査とは骨髄検査は、血液の病気や異常の原因を調べるために行われる検査です。血液は、体中に酸素を運んだり、細菌やウイルスから体を守ったりするなど、生きていく上で欠かせない役割を担っています。この血液を作り出しているのが、骨の中心部にある骨髄と呼ばれる組織です。骨髄では、赤血球、白血球、血小板といった様々な血液細胞が作られていますが、骨髄の病気や異常によって血液細胞が正常に作られなくなると、貧血や感染症、出血傾向などの症状が現れることがあります。骨髄検査では、骨髄液と呼ばれる骨髄に含まれる液体や、骨髄組織そのものを採取して、顕微鏡で観察したり、染色して細胞の種類や数を調べたりします。これらの検査結果から、骨髄の状態や血液細胞の産生能力を評価することで、血液疾患の診断や治療方針の決定に役立てることができます。骨髄検査は、一般的には腰の骨に針を刺して行われます。検査中は局所麻酔を行うため、痛みはほとんど感じませんが、検査後には少し痛むことがあります。骨髄検査は、血液疾患の診断において非常に重要な検査ですが、医師は患者さんの症状や他の検査結果などを総合的に判断した上で、検査の必要性を判断します。
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Rh血液型:知っておきたい血液型の基礎知識

私たちが日常会話で「血液型」と呼ぶ場合、たいていはABO式血液型のことを指します。これは、A型、B型、AB型、O型の4種類に分類され、血液中の赤血球の表面にある抗原の違いによって決まります。 たとえば、A型の人はA抗原を、B型の人はB抗原を持っています。AB型の人はA抗原とB抗原の両方を持ち、O型の人はどちらの抗原も持ちません。 しかし、血液型はABO式血液型以外にもたくさんあります。その一つにRh式血液型があります。これは、赤血球の表面にD抗原という別の種類の抗原を持っているかどうかで分類されます。D抗原を持っている人はRhプラス、持っていない人はRhマイナスと呼ばれます。 血液型は、輸血や妊娠の際に非常に重要です。なぜなら、自分と違う血液型を輸血されると、血液中の抗体が反応し、ショックなどの重い副作用を引き起こす可能性があるからです。そのため、輸血や妊娠の際には、必ず血液型の検査が行われます。
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移植後も油断大敵?移植片対宿主病

造血幹細胞移植は、白血病などの血液疾患を持つ患者さんにとって、根治を目指すための重要な治療法です。しかし、移植後には、提供された造血幹細胞がうまく生着しない、または再発といったリスク以外にも、「移植片対宿主病(GVHD)」と呼ばれる合併症が起こる可能性があります。 移植片対宿主病は、他人から提供された骨髄や臍帯血の中に含まれる免疫細胞であるリンパ球が、移植を受けた患者さんの体内の細胞を“異物”と認識し、攻撃してしまうことで起こります。 わかりやすく例えると、新しい家に引っ越しをした際に、その家の家具や内装が気に入らず、破壊してしまう人がいるとします。この場合、新しい家は患者さんの体、引っ越しをしてきた人はドナーさんから提供されたリンパ球、家具や内装は患者さん自身の細胞や組織に当たります。 リンパ球は、本来は体の中に侵入してきた細菌やウイルスなどを攻撃して、私たちを守ってくれる役割を担っています。しかし、移植片対宿主病では、リンパ球が、本来攻撃すべきでない患者さん自身の正常な細胞を攻撃してしまうのです。 移植片対宿主病は、皮膚、肝臓、消化管など、体の様々な場所に症状が現れます。主な症状としては、皮膚のかゆみ、発疹、黄疸、下痢、腹痛などがあります。移植後早期に症状が現れる急性型と、数年後に症状が現れる慢性型に分けられます。 移植片対宿主病は、場合によっては命に関わることもあるため、移植後の注意深い経過観察と、早期発見、早期治療が非常に重要です。
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希望を繋ぐ架け橋:同種造血幹細胞移植

私たちの体を巡る血液は、体の隅々に酸素を届けたり、外部から侵入しようとする細菌やウイルスから体を守ったりと、生きていく上で欠かせない様々な働きをしています。しかし、白血病や再生不良性貧血といった病気にかかってしまうと、血液が正常に作られなくなり、体に様々な不調が現れてしまいます。 これらの血液の病気と闘うための治療法の一つに、近年注目されているのが「造血幹細胞移植」という方法です。造血幹細胞というのは、血液中の赤血球、白血球、血小板といった様々な細胞の元となる細胞です。この造血幹細胞を移植することで、正常な血液を作り出す能力を取り戻そうとするのが、造血幹細胞移植の目的です。 造血幹細胞移植には、大きく分けて「骨髄移植」と「末梢血幹細胞移植」、「臍帯血移植」の3つの方法があります。骨髄移植は、骨盤などにある骨髄から造血幹細胞を採取して移植する方法です。末梢血幹細胞移植は、血液中から造血幹細胞を採取して移植する方法で、近年ではこちらの方法が主流となっています。臍帯血移植は、出産時に残る臍帯血(さいたいけつ)から造血幹細胞を採取して移植する方法です。 造血幹細胞移植は、患者さんにとって大きな負担となる治療法ですが、血液の病気と闘うための有効な手段の一つとして、日々研究が進められています。
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自家末梢血幹細胞移植:がん治療の新たな選択肢

- 自家末梢血幹細胞移植とは自家末梢血幹細胞移植とは、文字通り自分の体から採取した血液幹細胞を、再び自分自身の体内に戻す治療法です。 血液幹細胞は、血液中に含まれる赤血球や白血球、血小板など、あらゆる血液細胞の元となる細胞のことを指します。この治療法は、主にがん治療、特に悪性リンパ腫や多発性骨髄腫といった血液のがんの治療に用いられます。がん細胞を死滅させるために、高用量の抗がん剤治療や放射線治療を行うと、正常な血液細胞も同時にダメージを受けてしまいます。その結果、重い貧血や感染症、出血などを引き起こす可能性があります。そこで、あらかじめ患者さん自身の血液から健康な血液幹細胞を採取し、凍結保存しておきます。そして、高用量の抗がん剤治療や放射線治療を行った後に、採取しておいた血液幹細胞を体内に戻すことで、骨髄機能を回復させ、正常な血液細胞を再び作り出すことができるのです。自家末梢血幹細胞移植は、自分自身の細胞を移植するため、拒絶反応が起こるリスクが低いというメリットがあります。また、ドナーを探す必要がないため、比較的治療が開始しやすいという点も挙げられます。しかし、すべての患者さんに適応できるわけではなく、合併症のリスクもゼロではありません。そのため、治療を受けるかどうかは、医師とよく相談し、ご自身の病気の状態や治療の副作用などを考慮した上で、慎重に判断する必要があります。
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第三者からの希望の光:同種骨髄移植

- 同種骨髄移植とは同種骨髄移植は、病気のために正常な血液を作ることができなくなった患者さんに対して行われる治療法です。血液は私たちの体にとって非常に重要で、酸素を全身に届けたり、細菌やウイルスなどの病原体から体を守ったり、傷を治したりするなど、様々な役割を担っています。 血液の中には、赤血球、白血球、血小板といった様々な種類の細胞が存在しますが、これらの血液細胞は骨髄で作られています。骨髄には、血液の細胞の元となる「造血幹細胞」があり、盛んに細胞分裂を繰り返すことで、毎日、膨大な数の新しい血液細胞を作り出しています。 しかし、白血病などの病気になると、この造血幹細胞が正常に働かなくなり、十分な数の健康な血液細胞を作ることができなくなってしまいます。その結果、貧血や感染症、出血傾向など、様々な症状が現れ、生命の危機に瀕することもあります。同種骨髄移植は、このような血液の病気の患者さんに対して、健康な人から提供された造血幹細胞を移植することで、血液を作る機能を回復させることを目的とした治療法です。健康な人の骨髄から採取した造血幹細胞を、患者さんの体内に入れることで、患者さんの骨髄に新たに根付き、健康な血液細胞を作り出すことが期待されます。 同種骨髄移植は、患者さんにとって大きな負担を伴う治療法でもありますが、血液の病気の根治を目指すことができる、有効な治療法の一つです。
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希望を繋ぐ光:同種末梢血幹細胞移植

「新たな命を芽吹かせる治療法」と呼ばれる医療が、近年注目を集めています。これは、「同種末梢血幹細胞移植」と呼ばれるもので、血液のがんや一部の悪性リンパ腫など、様々な血液の病を抱える患者さんにとって、新たな希望となる治療法です。 私たちの血液には、赤血球、白血球、血小板など、生命を維持するために欠かせない様々な細胞が存在しています。これらの細胞を生み出す源となるのが、「造血幹細胞」と呼ばれる細胞です。血液の病気にかかると、この造血幹細胞がダメージを受けてしまい、正常な血液細胞を十分に作ることができなくなってしまいます。 同種末梢血幹細胞移植は、健康な人の血液から採取した造血幹細胞を、患者さんの体内に移植する治療法です。移植された造血幹細胞は、患者さんの体内で再び血液細胞を作り出す働きを再開し、失われた造血機能を回復させるのです。 この治療法によって、患者さんは再び健康な血液を作り出す能力を手に入れ、病を克服できる可能性が広がります。まさに、新たな命を吹き込まれるかのような治療法と言えるでしょう。
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造血幹細胞移植後のリスク:移植合併症

- 移植合併症とは移植手術は、病気や事故によって機能を失ってしまった臓器や組織を、健康な臓器や組織に入れ替えることで、患者さんの命を救ったり、生活の質を向上させたりする画期的な治療法です。しかし、体にとって「自分以外のもの」が入ってくるため、どうしても避けられない問題が起こることがあります。これが「移植合併症」です。移植合併症は、大きく分けて二つの原因によって起こります。一つ目は、移植された臓器や組織に対する拒絶反応です。私たちの体は、生まれつき「自己」と「非自己」を見分ける力を持っています。これは、細菌やウイルスなどの病原体から体を守るために非常に重要な機能です。しかし、この機能が、移植された臓器や組織に対しても働いてしまうことがあります。免疫細胞が、移植された臓器や組織を「非自己」と認識し、攻撃してしまうことで、様々な症状が現れます。二つ目は、移植手術に伴う感染症です。移植手術後には、免疫抑制剤と呼ばれる薬を使って、拒絶反応を抑える必要があります。しかし、免疫抑制剤を使うことで、体の免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなってしまいます。また、移植された臓器や組織自体が、ウイルスや細菌に感染している場合もあります。移植合併症は、発症時期や症状も様々です。発熱や痛み、倦怠感といった比較的軽い症状から、臓器機能の低下や、命に関わるような重篤な症状まで、様々なものが知られています。移植合併症のリスクを減らすためには、患者さん自身が健康的な生活習慣を心がけること、担当医の指示に従ってきちんと薬を服用することが重要です。また、定期的な検査を受けることで、早期発見・早期治療に繋げることが大切です。
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移植片対腫瘍効果:希望の治療法

- 移植片対腫瘍効果とは移植片対腫瘍効果とは、骨髄移植などの造血幹細胞移植を受けた後に、移植されたドナー由来の免疫細胞が、患者の体内に残存する腫瘍細胞を攻撃し、排除しようとする現象を指します。造血幹細胞移植は、血液のがんや免疫不全症などの治療法として行われます。この治療では、まず、患者さん自身のもしくはドナーからの健康な造血幹細胞を移植します。造血幹細胞は、血液中の様々な免疫細胞の元となる細胞です。移植された造血幹細胞は、患者の骨髄に定着し、新たな血液細胞を作り出すようになります。この時、ドナーの免疫細胞は、患者の体内環境を「異物」として認識することがあります。特に、がん細胞は、正常な細胞とは異なる特徴的なタンパク質(抗原)を持つため、ドナーの免疫細胞によって攻撃されやすくなります。例えるなら、新しい兵士(ドナーの免疫細胞)が、敵が潜む地域(患者の体内)に送り込まれ、潜んでいる敵(腫瘍細胞)を攻撃するイメージです。移植片対腫瘍効果は、従来の抗がん剤治療とは異なるメカニズムで作用するため、新たな治療法として期待されています。しかし、一方で、ドナーの免疫細胞が患者の正常な組織を攻撃してしまう「移植片対宿主病」といったリスクも存在します。このため、移植片対腫瘍効果を高めつつ、副作用を抑制するための研究が進められています。
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骨髄破壊的移植:造血幹細胞移植の基礎

- 骨髄破壊的移植とは骨髄破壊的移植は、造血幹細胞移植を行う際の一つの方法です。造血幹細胞移植とは、血液を作り出す能力を持つ細胞「造血幹細胞」を、健康な人から患者に移植する治療法です。骨髄破壊的移植では、移植の前に「骨髄破壊的前処置」と呼ばれる重要な準備段階があります。骨髄破壊的前処置とは、高用量の抗がん剤や放射線を用いて、患者の骨髄機能を一時的に抑える処置です。「骨髄破壊」と聞くと思わず不安になるかもしれませんが、これは移植を成功させるために必要なプロセスです。この処置には、主に二つ目的があります。一つ目は、白血病などの血液疾患の原因となる異常な細胞を、体から取り除くことです。二つ目は、移植する健常な造血幹細胞が、患者の骨髄に定着しやすくなるように、環境を整えることです。骨髄破壊的前処置によって、健康な造血幹細胞が移植されやすくなるため、移植後の生存率向上や再発率の低下など、良い結果が期待できます。
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低カリウム血症が招く筋力低下:低カリウム性ミオパチー

- 低カリウム性ミオパチーとは低カリウム性ミオパチーは、血液中のカリウムの値が過度に低下することによって、全身の筋肉に力が入らなくなる病気です。カリウムは、体内の水分量を調整したり、神経伝達をスムーズに行ったりする役割を担う重要な電解質の一つです。特に、筋肉が正常に収縮するためには欠かせない役割を担っています。 このカリウムが不足すると、筋肉は本来の働きができなくなり、様々な症状が現れます。初期症状としては、手足の脱力感や倦怠感などが挙げられます。これらの症状は、最初は一時的なものとして見過ごされがちですが、放置すると徐々に悪化していきます。進行すると、立つ、歩くといった動作が困難になるだけでなく、重症化すると呼吸に必要な筋肉も弱り、呼吸困難に陥ることもあります。さらに、心臓の筋肉も影響を受け、不整脈を引き起こす可能性もあります。最悪の場合、生命の危険も伴うため、早期の発見と適切な治療が非常に重要となります。
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希望を繋ぐ光:同種骨髄移植の理解

近年、医療技術の進歩によって、これまで多くの人々を苦しめてきた「がん」という病に対する治療法も日々進化を遂げています。 その中でも、特に注目されている治療法の一つに「同種骨髄移植」があります。 これは、健康な人の骨髄から採取した「造血幹細胞」を、がんを患っている患者に移植するというものです。 造血幹細胞とは、血液中の赤血球、白血球、血小板といった様々な血液細胞の元となる細胞です。 がん治療において、手術や抗がん剤治療、放射線治療などを行う場合がありますが、これらの治療法によって、がん細胞だけでなく、正常な細胞もダメージを受けてしまうことがあります。 その結果、骨髄の機能が低下し、血液細胞が十分に作られなくなることがあります。 同種骨髄移植は、低下した骨髄の機能を補い、再び健康な血液を作り出す力を回復させることを目的としています。 移植された造血幹細胞は、患者の骨髄に定着し、やがて新しい血液細胞を作り始めます。 同種骨髄移植は、白血病や悪性リンパ腫、骨髄異形成症候群など、様々な血液疾患の治療に用いられています。 しかし、その一方で、移植後の拒絶反応や感染症などのリスクも伴います。 そのため、患者にとって最適な治療法を選択するために、医師とよく相談することが重要です。
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希望をつなぐ、末梢血幹細胞移植

血液の病気、特にがんなどの治療において、「末梢血幹細胞移植」という治療法が重要な役割を担っています。この治療法は、私たちの体にとって欠かせない血液を作り出す源である「造血幹細胞」を、健康なドナーのものと置き換えることで、病気を克服へと導きます。 私たちの血液には、酸素を運ぶ赤血球、免疫を担う白血球、出血を止める血小板など、様々な種類の細胞が存在します。これらの細胞は、すべて骨髄という骨の中にあるスポンジ状の組織に存在する「造血幹細胞」から生まれます。造血幹細胞は、例えるならば、様々な血液細胞を生み出す工場のようなものです。 しかし、病気やその治療の影響で、この血液の工場がダメージを受けてしまうことがあります。その結果、正常な血液細胞が作られなくなり、貧血や感染症、出血傾向といった深刻な事態に陥ってしまうのです。 このような状況において、「末梢血幹細胞移植」は、ダメージを受けた血液の工場を、健康なドナーのものと入れ替えることで、再び血液を作り出す機能を取り戻すことを目的とした治療法です。ドナーから提供された造血幹細胞は、レシピエントの骨髄に engraft し、新たな血液細胞を作り始めます。こうして、血液の工場を新しくすることで、病気の治療を目指します。
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骨髄非破壊的移植:新たな希望

- はじめに近年、血液のがんや免疫不全症などの難病に対する治療法として、造血幹細胞移植が広く行われています。造血幹細胞移植とは、血液を作り出すもととなる細胞を、健康なドナーから患者に移植する治療法です。この治療法は、従来の治療法では治癒が難しいとされてきた多くの患者さんに、再び健康な生活を送るチャンスをもたらしてきました。従来の造血幹細胞移植では、患者の骨髄を、放射線や抗がん剤を用いて完全に破壊する必要がありました。これは、移植するドナーの細胞を、患者の体内で確実に生着させるために必要な処置でした。しかし、この骨髄破壊は、患者にとって大きな負担となるものでした。強い吐き気や脱毛、感染症のリスク増加など、様々な副作用が生じる可能性があったからです。そこで近年注目されているのが、骨髄非破壊的移植と呼ばれる新しい移植法です。骨髄非破壊的移植では、従来のような骨髄破壊を行わず、より身体への負担が少ない方法でドナーの細胞を移植します。この方法により、高齢の患者さんや合併症を持つ患者さんでも、移植治療を受けられる可能性が広がることが期待されています。この資料では、骨髄非破壊的移植について、その種類やメリット、デメリットなどを詳しく解説していきます。
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知っておきたい溶血:その原因と影響

私たちの体内を流れる血液の中には、体中に酸素を届ける役割を担う赤い細胞、赤血球が存在します。健康な状態であれば、赤血球は約120日間、体内を循環しながら酸素を運び続けます。そして、その役割を終えると、主に肝臓で分解され、体外に排出されます。これは、例えるならば、工場で製造された製品が、一定期間使用された後に回収され、リサイクルされるようなものです。 しかし、溶血と呼ばれる現象が起こると、まだ十分に役割を果たせるはずの赤血球が、寿命を迎える前に壊れてしまいます。これは、工場でまだ使える製品が、出荷前に壊れてしまうようなもので、体内では大変な異常事態と言えます。溶血が起こると、体内の赤血球の数が減少し、酸素を十分に体に行き渡らせることができなくなります。その結果、貧血と呼ばれる状態に陥り、動悸や息切れ、顔面蒼白といった症状が現れることがあります。さらに、重症化すると、生命に関わる可能性もあるのです。
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健康のバロメーター!血清鉄と貧血の関係

- 血清鉄とは?血液中に存在する鉄分のことを、血清鉄と呼びます。鉄分は人体にとって欠かせないミネラルの一つであり、様々な役割を担っています。その中でも特に重要なのが、全身に酸素を運搬する役割を担う赤血球です。この赤血球の中に含まれるヘモグロビンというタンパク質を作るためには、鉄分が不可欠です。 つまり、血清鉄の値を調べることで、体内の鉄分の状態を把握することができ、貧血の診断に役立ちます。一般的に、血清鉄の値が低い場合は、体内の鉄分が不足している鉄欠乏状態を示唆しており、鉄欠乏性貧血の可能性があります。反対に、血清鉄の値が高い場合は、体内に鉄分が過剰に存在している可能性があり、鉄過剰症などの病気が疑われます。ただし、血清鉄の値だけで貧血の診断を確定できるわけではありません。なぜなら、血清鉄の値は、時間帯や体の状態によって変動することがあるからです。そのため、貧血の診断には、血清鉄の値だけでなく、ヘモグロビン濃度や赤血球数などの他の検査結果と合わせて総合的に判断する必要があります。
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輸血医療の要!交差適合試験とは?

私たちは、病気や怪我などで血液が不足すると、輸血によって血液を補います。輸血は、不足した血液を補うことで、命を救うための大切な医療行為です。しかし、輸血を行う際には、血液型に注意しなければなりません。なぜなら、自分と異なる血液型の血液を輸血されると、血液の中で抗原抗体反応という免疫反応が起こり、体に深刻な影響を及ぼす可能性があるからです。 人間の血液は、大きくA型、B型、AB型、O型の4つの血液型に分類されます。これは、赤血球の表面にある抗原と、血漿中に含まれる抗体の種類によって決まります。A型の人はA抗原と抗B抗体、B型の人はB抗原と抗A抗体、AB型の人はA抗原とB抗原を持っていますが、抗体は持っていません。O型の人は、抗原を持たず、抗A抗体と抗B抗体の両方を持っています。 輸血の際には、この血液型を合わせる必要があります。例えば、A型の人にB型の血液を輸血すると、A型の人の中にある抗B抗体が、B型血液中のB抗原と反応し、赤血球を破壊してしまいます。これが抗原抗体反応で、発熱や吐き気、最悪の場合、ショック症状を引き起こし、死に至ることもあります。 安全な輸血を行うためには、血液型について正しく理解し、血液型に合った輸血を受けることが重要です。輸血は、多くの場合、緊急を要するため、日頃から自分の血液型を知っておくことが大切です。
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急性GVHD:移植後の免疫反応を知る

- 急性GVHDとは造血幹細胞移植は、血液のがんや難病の治療法として大きな期待が寄せられています。しかし、移植後には、提供された造血幹細胞(ドナー)と、移植を受けた患者さん(レシピエント)の身体の間で、様々な免疫反応が起こることがあります。その中でも、急性GVHD(移植片対宿主病)は、移植後の合併症として特に注意が必要とされています。急性GVHDは、一体どのような病気なのでしょうか?簡単に言うと、移植されたドナー由来の免疫細胞が、患者さんの身体を「異物」と認識し攻撃してしまう病気です。通常、私たちの体内には、細菌やウイルスなどの外敵から身を守る免疫細胞が存在します。ところが、他人から提供された造血幹細胞は、患者さんから見ると「非自己」と認識されてしまうことがあります。そのため、ドナー由来の免疫細胞は、本来攻撃すべきでない患者さんの臓器や組織を攻撃してしまうのです。急性GVHDは、主に皮膚、肝臓、消化管といった臓器に炎症を引き起こします。具体的には、皮膚の発疹やかゆみ、黄疸、下痢、腹痛などの症状が現れます。これらの症状は、移植後100日以内に発症することが多く、重症化すると命に関わるケースもあります。急性GVHDの発症リスクや重症度は、移植する細胞の種類や量、ドナーとレシピエントのHLA(ヒト白血球抗原)の適合度、患者さんの年齢や基礎疾患など、様々な要因が影響します。そのため、移植前に、患者さん一人ひとりの状態に合わせて、予防対策を検討することが重要となります。
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移植前処置:造血幹細胞移植の準備

- 移植前処置とは移植前処置とは、患者さんが造血幹細胞移植を受ける前に必ず行う、非常に大切な準備段階のことを指します。造血幹細胞移植は、病気やその治療の影響によって、自ら血液細胞を正常に作ることができなくなってしまった患者さんに対して行われます。具体的には、健康なドナーさんから提供された、血液細胞の元となる造血幹細胞を患者さんの体内に移植する治療法です。移植前処置は、移植の成功率を高め、合併症のリスクを抑えるために欠かせないプロセスです。大きく分けて、(1)病気の細胞を減らす、(2)免疫の働きを抑える、(3)ドナー由来の造血幹細胞が根付きやすいように準備をする、という三つの目的があります。まず、移植前に残っている病気の細胞を減らすことは、移植後に病気が再発するリスクを低下させるために重要です。次に、患者さんの免疫の働きを抑えることで、移植されたドナーさんの細胞を「異物」として攻撃する拒絶反応を防ぐことができます。そして、患者さんの骨髄をあらかじめ空けておくことで、移植されたドナーさんの造血幹細胞が、骨髄にスムーズに定着しやすくなるのです。移植前処置の内容は、患者さんの病気の種類や状態、移植の種類、ドナーさんとの相性などによって異なります。主な方法としては、抗がん剤や免疫抑制剤を投与する薬物療法や、全身に放射線を照射する放射線療法などがあります。それぞれの治療法は、単独で行われることもあれば、組み合わせて行われることもあります。移植前処置は、患者さんにとって身体的な負担が大きい場合もありますが、移植を成功させるために非常に重要なプロセスです。患者さん自身の病気や治療についての理解を深め、医師や医療スタッフとしっかりとコミュニケーションをとるように心がけましょう。
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慢性GVHD:移植後の闘い

- 慢性GVHDとは慢性GVHD(まんせいじーぶいえいちでぃー)は、骨髄移植などを受けた後に起こる病気です。骨髄移植は、血液のがんや一部の難病の治療法として行われます。骨髄移植では、健康な人(ドナー)から提供された血液細胞を、患者さん(レシピエント)の体内に移植します。移植された血液細胞には、免疫細胞が含まれています。免疫細胞は、本来は体内に侵入してきた細菌やウイルスなどを攻撃して、体を守る働きをしています。しかし、骨髄移植の場合、提供されたドナーの免疫細胞が、レシピエントの体を「異物」と認識してしまうことがあります。その結果、ドナーの免疫細胞が、レシピエント自身の正常な細胞や組織を攻撃してしまうのです。これが、慢性GVHDと呼ばれる病気です。慢性GVHDでは、皮膚、口腔、消化管、肝臓、肺、眼、関節など、体の様々な部位が攻撃対象となる可能性があります。そのため、皮膚の発疹やかゆみ、口内炎、下痢、腹痛、呼吸困難、視力低下、関節痛など、多岐にわたる症状が現れます。慢性GVHDは、移植後3ヶ月以降に発症することが多く、長期にわたる経過をたどることが特徴です。症状の程度は患者さんによって異なり、軽い場合は経過観察のみで済むこともありますが、重症化すると生命に関わることもあります。
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