総合健康ガイド

検査

がん治療とパフォーマンスステータス

- パフォーマンスステータスとは パフォーマンスステータス(PS)とは、病気、特にがん治療を受ける方の日常生活における活動レベルを測る指標です。 日常生活動作がどれくらい自立しているかを、0から4までの5段階で表します。数字が小さいほど、日常生活動作が自立していることを示し、数字が大きいほど、介護や介助が必要な状態であることを示します。 具体的には、 * -0- 全く問題なく日常生活を送れる状態 * -1- 軽い運動は制限されるが、普段通りの仕事や生活はできる状態 * -2- 仕事はできないが、身の回りのことは自分でできる状態 * -3- 身の回りのことの半分以上を他人の助けを借りて行っている状態 * -4- 全く身の回りのことができず、常に介助が必要な状態 このように、日常生活動作の自立度を5段階で評価することで、患者さんの状態を客観的に把握することができます。 この評価は、治療方針の決定や、抗がん剤治療などの効果、病気の進行度合い、予後を予測する上で重要な要素となります。 例えば、同じ病気、同じステージであっても、パフォーマンスステータスが良い方が、治療の効果が期待でき、予後が良い傾向にあります。 また、パフォーマンスステータスは、治療の開始前だけでなく、治療中も定期的に評価することで、患者さんの状態の変化を把握し、適切な治療やケアを提供するために役立ちます。
その他

医療法人とは?その種類とメリット・デメリットを解説

医療法人とは、病院や診療所といった医療機関や、介護老人保健施設などの医療に関連する施設を開設・運営するために、医療法という法律に基づいて設立される法人です。 医療法人は、株式会社などの営利を目的とする法人とは異なり、医療を提供することを第一の目的としています。そして、医療の質の向上や、地域への医療の提供など、公益性の高い事業を行うことが求められます。 医療法人は、厚生労働省の認可を受けて設立され、その形態は、社団法人や財団法人といった公益法人と、株式会社や合同会社といった持分のある法人に分けられます。 2015年の医療施設動態調査によると、全国の病院の約7割、診療所の約4割が医療法人によって運営されており、日本の医療体制において重要な役割を担っています。
食生活

健康の鍵!歩くことの驚くべき効果

歩くということは、私たちが日々当たり前のように行っている動作です。一歩踏み出し、もう一歩と足を進める、ただそれだけの行為ですが、実は健康に素晴らしい効果をもたらしてくれることはご存知でしょうか? 歩くことは、特別な道具や服装、場所を必要としません。誰でも、思い立った時に、すぐに始めることができる運動なのです。毎日の生活の中に、ほんの少し歩く時間を増やすだけで、私たちの体は大きく変化していきます。 歩くことによって、まず足腰の筋肉が鍛えられ、体全体の体力向上に繋がります。また、血液の循環が促され、心臓の働きを活発にする効果も期待できます。毎日続けることで、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の予防にも役立つと言われています。 さらに、歩くことは心の健康にも良い影響を与えます。太陽の光を浴びながら歩くことは、体内時計を整え、質の高い睡眠を得ることに繋がります。また、ストレスを軽減し、気分を明るくしてくれる効果もあると言われています。 歩くことは、心身ともに健康な状態を保つための、最も手軽で効果的な方法の一つと言えるでしょう。日々の生活に、歩く習慣を取り入れてみてはいかがでしょうか。
アレルギー

知っておきたい食物アレルギー

食物アレルギーとは 食物アレルギーとは、特定の食べ物を口にした際に、本来であれば身体にとって無害なはずのその食べ物の成分に対して、免疫システムが過剰に反応してしまうことで、体に様々な不調が現れる病気です。この反応は、花粉症や喘息などと同じく、アレルギー反応の一つとされています。 食物アレルギーを引き起こす原因となる食べ物は人によって異なり、ごく少量食べただけでも症状が出てしまう場合もあれば、ある程度の量を食べないと症状が現れない場合もあります。 症状としては、じんましんや湿疹などの皮膚症状、嘔吐や下痢などの消化器症状、くしゃみや鼻水などの呼吸器症状など、実に様々です。場合によっては、意識障害や呼吸困難など、命に関わるような重篤な症状を引き起こす可能性もあり、注意が必要です。 花粉やダニなどによるアレルギーとは異なり、食物は私達が健康な身体を維持し、生きていくために必要なものです。そのため、食物アレルギーと診断された場合、日常生活において特定の食品を食事から除外しなければならないなど、生活の質に大きな影響が及ぶ可能性があります。
消化器

医療現場で使われる「マーゲン」って?

「マーゲン」という言葉、どこかで耳にしたことはありませんか? 実は私たちが日常的に使っている「胃」と同じ意味なんです。 「マーゲン」はドイツ語の「Magen」が由来となっています。かつて日本の医学はドイツの影響を強く受けており、その名残として現在でも医療現場ではドイツ語由来の言葉が多く使われています。「マーゲン」もその一つで、医師や看護師は日常的に使っていますし、病院の案内板などで目にすることもあるでしょう。 「胃」は私たちが食べ物を消化・吸収するために欠かせない臓器です。「マーゲン」と聞くと少し難しそうに聞こえるかもしれませんが、普段使っている「胃」を思い浮かべれば、その働きや重要性をより身近に感じることができるのではないでしょうか? 医学用語には、このようにドイツ語由来のものだけでなく、英語やラテン語由来のものなど、様々な言葉が使われています。これらの言葉を知ることで、病気や体の仕組みについてより深く理解することができます。

手術前の不安を和らげるプレメディとは?

- プレメディとは手術や検査を受ける際、患者さんは誰でも少なからず不安や緊張を感じます。 このような精神的なストレスは、手術や検査中の体の状態に影響を与え、思わぬ合併症を引き起こす可能性も考えられます。 そこで、手術や検査を安全かつ円滑に進めるために、事前に薬を投与することがあります。これが「プレメディケーション」、略して「プレメディ」と呼ばれるものです。プレメディの目的は主に二つあります。一つ目は、患者さんの不安や緊張を和らげ、リラックスした状態で手術や検査に臨めるようにすることです。二つ目は、手術や検査中の痛みや不快感を抑え、麻酔の効果を高めることです。具体的には、不安を軽減する薬、痛みを抑える薬、唾液や胃酸の分泌を抑える薬などが用いられます。プレメディを行うかどうか、またどのような薬をどの程度の量使用するかについては、患者さん一人ひとりの年齢や健康状態、手術や検査の内容などを考慮して、医師が慎重に判断します。 プレメディは、患者さんがより安心して手術や検査を受けられるようにするための重要な準備段階の一つといえるでしょう。
生活習慣病

生活習慣病:その予防と対策

- 生活習慣病とは生活習慣病とは、毎日の暮らしの中で身についた習慣が原因で発症する病気の総称です。現代社会において患者数は増加の一途を辿っており、誰もが注意すべき病気と言えるでしょう。生活習慣病の特徴は、初期段階では自覚症状がほとんど現れないことです。そのため、気づかないうちに病気が進行し、ある日突然、心臓病や脳卒中などの命に関わる病気を引き起こす危険性があります。自覚症状としては、動悸や息切れ、めまい、手足のしびれなどがありますが、これらは一過性のものとして軽視されがちです。しかし、生活習慣病は決してあきらめるべき病気ではありません。日々の生活習慣を改善することで、予防や改善が可能な病気でもあります。具体的には、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠、禁煙、節酒など、健康的な生活習慣を心がけることが重要です。生活習慣病は、かつては成人病と呼ばれていました。しかし、現代では、食生活の欧米化や運動不足、ストレスの増加などにより、若年層での発症も増えています。自分自身の生活習慣を見直し、健康的な生活を送るように心がけましょう。
資格・職種

皮膚・排泄ケア認定看護師:専門性の高い看護

近年、耳にする機会が増えてきた「ウォックナース」という言葉。これは、身体にできた傷口や、手術などで人工的に作られた排泄口のケア、そして排泄のトラブルを抱える患者さんのケアを専門に行う看護師のことを指します。傷口は「創傷」、人工肛門や人工膀胱は「ストーマ」、そして排泄の調節機能の障害は「失禁」と言い、それぞれの英単語の頭文字をとって「WOCナース」と呼ばれています。 ウォックナースの歴史は、1986年に聖路加国際病院に設立されたETスクールまで遡ります。この学校では、国際的な基準に基づいたストーマ療法士の育成が行われていました。その後、1996年には、日本の看護師制度の改革に伴い、ETスクールはWOC認定看護師教育課程へと発展します。そして、この教育課程を経て、日本看護協会の認定を受けた、専門性の高い「WOC認定看護師」が誕生しました。 ウォックナースは、患者さん一人ひとりの状態に合わせて、きめ細やかなケアを提供します。具体的には、傷口やストーマの処置、皮膚の管理、排泄のケア、そして日常生活におけるアドバイスなどを行います。また、患者さんの精神的なケアにも力を入れ、社会復帰に向けて、患者さんとその家族を支える役割も担っています。
看護技術

医療現場で使われるマーゲンチューブ:その役割と種類

- マーゲンチューブとは?マーゲンチューブとは、鼻から挿入し、食道を通って胃まで届くように作られた、柔らかな材質のチューブのことです。このチューブは、胃管、胃チューブ、胃ゾンデ、マーゲンゾンデ、NGチューブなど、様々な呼ばれ方をしますが、全て同じものを指します。医療現場では、記録を簡略化するためにMチューブやMaチューブと表記されることもあります。では、このマーゲンチューブはどのような場合に用いられるのでしょうか?マーゲンチューブは、主に病気や怪我などによって口から食事を摂ることが難しい患者さんに対して使用されます。例えば、意識がはっきりしない、飲み込む力が弱い、口や喉に手術をしたなどの理由で、口から食事を摂ることが困難な場合、このチューブを通して栄養剤を胃に直接送り込みます。このように、マーゲンチューブは、患者さんの栄養状態を維持するために重要な役割を担います。また、口から薬を飲むことが難しい患者さんに対しても、マーゲンチューブを通して薬を投与することができます。さらに、胃の中のガスや内容物を排出するため、あるいは検査のために胃液を採取するためなどにも用いられます。このように、マーゲンチューブは、口から食事を摂ることが難しい患者さんにとって、栄養補給や治療を安全かつ確実に行うための、非常に重要な医療器具と言えるでしょう。
検査

免疫の主役、T細胞を見つける鍵:CD3

私たち人間は、目には見えないウイルスや細菌など、健康を脅かす様々な外敵に常に囲まれながら生活しています。しかし、多くの人は病気にかかることなく、健康的な毎日を送ることができています。それは、私たちの体内に、生まれながらに備わっている「免疫」という優れた防御システムが備わっているからです。 免疫システムは、体内に侵入してきた異物を常に監視し、見つけ次第排除しようとします。この複雑な免疫システムにおいて、司令塔のような重要な役割を担っているのが「T細胞」です。T細胞は、血液中の白血球の一種で、体内をくまなくパトロールし、外敵の侵入を監視しています。 T細胞は、侵入者を発見すると、自ら攻撃を仕掛けるだけでなく、他の免疫細胞に攻撃を指示するなど、状況に応じて適切な対応を行います。 例えば、ウイルスに感染した細胞を見つけると、T細胞は、その細胞を直接攻撃して破壊します。また、細菌などの異物を発見した場合には、B細胞と呼ばれる免疫細胞に指令を出し、抗体と呼ばれる攻撃物質を作らせます。 このように、T細胞は、状況に応じて的確に判断し、他の免疫細胞とも連携しながら、私たちの体を守ってくれています。免疫の司令塔であるT細胞が、正しく機能することで、私たちは健康を維持することができるのです。

処方箋の「do」ってなに?

病院で処方箋を受け取ったり、過去の診療記録を目にしたりする際に、「do」という見慣れない記号に出くわすことがあるかもしれません。 この「do」は、一体何を意味するのでしょうか? 実は、これはラテン語で「同じ」を意味する「ditto」を短縮した形で、医療現場では「同上」と同じ意味合いで使われています。 例えば、処方箋に薬の名前や飲む量などが何行にもわたって書かれているとします。もし、前の行と同じ内容を繰り返す場合、医師は「do」を使って簡潔に表現するのです。これは、医師が処方箋を簡潔にまとめ、かつ、薬剤師が処方内容を正確に理解するための共通認識として、医療現場で広く使われています。 つまり、「do」は単なる記号ではなく、医療従事者間でスムーズな情報伝達を可能にするための重要な役割を担っていると言えるでしょう。
血液

LDLコレステロール:知っておきたい動脈硬化との関係

コレステロールは、体に悪いものというイメージを持っている方もいるかもしれませんが、実は私たちの体にとって非常に重要な役割を担っています。細胞膜やホルモンの材料となるなど、生命活動に欠かせない物質なのです。 しかし、コレステロールは水に溶けにくいという性質があるため、血液中にそのまま溶け込むことができません。そこで、コレステロールはリポタンパクというタンパク質に包まれて血液中を移動します。 このリポタンパクにはいくつかの種類があり、それぞれ異なる働きをしています。中でも代表的なものがLDLコレステロールとHDLコレステロールです。LDLコレステロールは、コレステロールを肝臓から体の各組織へ運ぶ役割を担っています。LDLコレステロールが増えすぎると、血管の内側にコレステロールが溜まりやすくなり、動脈硬化のリスクを高めてしまう可能性があります。そのため、LDLコレステロールは「悪玉コレステロール」とも呼ばれています。 一方、HDLコレステロールは余分なコレステロールを回収して肝臓へ運ぶ役割を担っています。HDLコレステロールの働きによって、血管の内側に溜まったコレステロールが減少し、動脈硬化の予防効果が期待できます。そのため、HDLコレステロールは「善玉コレステロール」とも呼ばれています。 このように、コレステロールは種類によって体への影響が異なります。健康な体を維持するためには、LDLコレステロールとHDLコレステロールのバランスを保つことが重要です。
資格・職種

プライマリーナース制とその意義

- プライマリーナースとは病院に入院すると、患者さん一人ひとりに担当の看護師さんがつきます。この看護師さんのことをプライマリーナースと呼び、入院した患者さんが退院するまでの間、患者さんの看護を責任持って担当する看護体制のことをプライマリーナース制といいます。従来の看護体制では、日勤や夜勤など、勤務時間帯によって担当する看護師さんが異なっていました。例えば、日勤の時間帯はAさんが担当していても、夜勤の時間帯はBさんが担当するといった具合です。しかし、プライマリーナース制では、入院から退院まで、一人の看護師さんが責任を持って担当するため、患者さんは安心して治療や療養に専念することができます。プライマリーナースは、患者さんの病気や治療に関することだけでなく、日常生活のケアや不安や悩みなど、様々な相談に対応します。患者さん一人ひとりに寄り添った看護を提供することで、より質の高い看護を提供することが期待されています。
消化器

マクバーニー圧痛点:虫垂炎のサイン?

皆さんは、お腹の右側、特に下の方が痛くなった経験はありませんか?多くの人が経験する、ありふれた症状の一つと言えるでしょう。 食べ過ぎや消化不良など、一時的な原因で起こることも多く、深刻な病気ではない場合がほとんどです。少し休めば、自然と痛みが引いていくことも珍しくありません。 しかし、同じ場所に繰り返し痛みが出たり、痛みが強くなったりする場合には注意が必要です。特に、お腹の右下には、虫垂という臓器があります。この虫垂に炎症が起こると、いわゆる「盲腸」と呼ばれる状態になり、激痛を引き起こすことがあります。 お腹の右下の痛みと関連の深いポイントの一つに、「マクバーニー圧痛点」というものがあります。これは、おへそと骨盤の高い部分を結んだ線上で、おへそから三分の一ほど外側の部分にあたります。この部分を指でゆっくりと押したときに、強い痛みを感じるか、指を離したときに痛みが強くなる場合は、虫垂炎の可能性があります。 もちろん、お腹の痛みの原因は様々であり、自己判断は危険です。痛みが続く場合には、医療機関を受診し、医師の診察を受けるようにしましょう。
血液

免疫の門番:CD14の役割

私たちの体は、常に外敵の侵入の脅威にさらされています。ウイルスや細菌、カビなど、目には見えない小さな侵入者たちは、私たちの体に悪影響を及ぼす可能性があります。しかし、私たちの体は無防備ではありません。体内には、これらの外敵から身を守るための、驚くほど精巧で複雑な防御システムが備わっているのです。 その中でも、特に重要な役割を担っているのが免疫システムです。免疫システムは、体中に張り巡らされたネットワークのように機能し、様々な種類の細胞が互いに連携を取りながら、外敵の侵入を阻止し、健康を維持しています。 免疫システムにおいて、最前線で活躍するのが単球やマクロファージといった細胞たちです。彼らは体内をパトロールする「警備員」であり、また、ゴミや異物を掃除する「清掃員」でもあります。体内に侵入してきた細菌やウイルス、あるいは、体内で発生したがん細胞などを見つけると、彼らは自分の中に取り込んで消化し、無害化します。この働きは、貪食と呼ばれ、私たちの体を守る上で非常に重要な役割を担っています。 このように、私たちの体には、目には見えない小さな細胞たちが、休むことなく働き続けることで、健康が守られているのです。

薬の効果と量の関係:有効量とは?

私たちは体調が悪い時、薬を飲んで症状を和らげようとします。薬を飲む際に期待することは、その効果によって一日も早く回復することでしょう。しかし、薬の効果は、単純に飲めば良いというわけではありません。服用する量によって、私たちの体に現れる影響は大きく変わってくるのです。 そこで、薬を服用する上で非常に重要な概念となるのが「有効量」です。有効量とは、薬の効果が体内でしっかりと現れるために必要な、適切な服用量のことを指します。この量は、少なすぎても多すぎてもいけません。もし、有効量を下回る量しか服用しなかった場合、期待する効果は得られないでしょう。反対に、有効量を上回る量を服用してしまうと、体に思わぬ悪影響、つまり副作用が出てしまう危険性が高まります。 さらに、この有効量は、薬の種類や、一人ひとりの年齢、体質によって異なるという点にも注意が必要です。そのため、自分の体にとって適切な量の薬を服用するためには、医師や薬剤師の指示を仰ぐことが何よりも重要になります。
その他

知っておきたい橋本病:その症状と治療法

- 橋本病とは橋本病は、本来体を守るはずの免疫の働きが誤って自分の甲状腺を攻撃してしまう自己免疫疾患の一つです。この攻撃によって甲状腺に慢性的な炎症が起こり、甲状腺ホルモンの分泌量が低下します。この状態を慢性甲状腺炎とも呼びます。甲状腺ホルモンは体の代謝を調整する重要な役割を担っているため、分泌量が低下すると、全身に様々な影響が現れます。 橋本病は、甲状腺ホルモンの分泌が低下する病気である甲状腺機能低下症の主な原因の一つとして知られています。日本では、比較的患者数の多い病気であり、特に女性に多く見られます。年齢層としては、30代から50代にかけて発症するケースが多い傾向にあります。 橋本病は初期段階では自覚症状が現れにくいという特徴があります。そのため、健康診断などで甲状腺ホルモンの値に異常が見つかり、初めて橋本病と診断されるケースも少なくありません。病状が進行すると、疲労感や倦怠感、体重増加、むくみ、寒がり、便秘、皮膚の乾燥、髪質の変化、月経不順などの症状が現れるようになります。 橋本病は完治が難しい病気ですが、適切な治療を行うことで症状を抑え、日常生活に支障が出ないようにコントロールすることができます。
その他

インフォームド・コンセント:医療における共同意思決定

- インフォームド・コンセントとは医療現場において、患者さんが自身の病気や治療について十分に理解し、納得した上で治療方針を決定することは非常に重要です。 このプロセスを「インフォームド・コンセント」と呼びます。 インフォームド・コンセントは、医師と患者さんの間で一方的に情報が伝えられるのではなく、対等な立場で意見交換を行い、協力しながら最善の医療を目指すためのプロセスと言えます。具体的には、医師は患者さんに対して、病気の状態や進行度合い、考えられる治療法、それぞれの治療法のメリット・デメリット、効果やリスク、治療にかかる期間や費用などを分かりやすく説明します。 専門用語を避け、図やイラストなどを用いることで、患者さんが理解しやすいように工夫することも大切です。患者さんは医師から提供された情報を元に、自身の価値観や生活背景、希望する治療方針などを医師に伝え、治療について納得いくまで相談することができます。 例えば、仕事や家庭の事情で治療期間に制限がある場合や、治療に伴う身体への負担や後遺症が心配な場合などは、率直に医師に伝えることが大切です。インフォームド・コンセントは、患者さんが自身の健康について主体的に判断し、より良い医療を受けるために欠かせないプロセスです。

治療指数:薬の安全性と効果の指標

- 治療指数の定義薬を安全に使用するためには、その薬が持つ効き目と副作用のバランスを理解することが非常に重要です。このバランスを評価する指標の一つとして、「治療指数」があります。治療指数とは、簡単に言うと、薬の効果が現れる量と、副作用が現れる量の比を表す数値です。この数値が大きいほど、副作用が生じるよりもずっと少ない量で、目的とする治療効果を得られることを意味します。つまり、治療指数が高い薬は、安全性が高いと言えるのです。例えば、ある薬の治療指数が100だったとします。これは、副作用が現れる量の100分の1の量を投与するだけで、治療効果が得られることを示しています。一方で、治療指数が2しかない薬の場合、治療効果が得られる量と副作用が生じる量が非常に近いことを意味し、投与量には細心の注意が必要です。治療指数は、新しい薬を開発する際にも重要な指標となります。新しい薬が既存の薬よりも治療指数が高い場合、より安全に治療効果が期待できるため、医療現場での活用が期待されます。しかし、治療指数はあくまでも目安の一つであり、患者の体質や病気の状態によって、効果や副作用の出方には個人差があります。そのため、治療指数だけに頼らず、医師は患者の状態を総合的に判断し、適切な薬の種類や量を決定する必要があります。
その他

いきみの生理学:身体の仕組みと注意点

- いきみとはいきみとは、息を強く吐き出すと同時に、お腹に力を込める動作のことを指します。普段の生活ではあまり意識することはありませんが、私たちはトイレで排便する時や、赤ちゃんが産まれてくる時など、無意識のうちにいきんでいます。いきみ動作を簡単に説明すると、まず、息を吸い込んだ後、声帯を閉じて息の通り道を塞ぎます。その状態で、まるで息を吐き出そうとするかのようにお腹に力を入れると、腹圧と呼ばれるお腹の中の圧力が高まります。この腹圧の上昇が、排便や分娩の際に大きな役割を果たすのです。例えば、排便の際には、この高まった腹圧が腸に圧力をかけ、便を直腸へと押し出す力を助けます。また、出産の際にも、腹圧は赤ちゃんを産道に押し出す力となり、スムーズな分娩を促します。このように、いきみは一見単純な動作に見えますが、呼吸筋や腹筋など、様々な筋肉が複雑に連携することで成り立っています。私たちが普段何気なく行っている排便や、新しい命の誕生には、実はこのような体の巧妙な仕組みが隠されているのです。
血液

免疫の精鋭部隊:CD8陽性T細胞

私たちの体には、まるで門番のように、外から侵入してくる病原体から体を守る仕組みが備わっています。これを免疫と呼びますが、この免疫システムにおいて中心的な役割を担っているのが、血液中に存在する白血球の一種であるリンパ球です。 リンパ球の中でも、胸腺と呼ばれる器官で成熟し、体内に侵入してきた病原体や、ウイルスに感染した細胞、がん細胞などを攻撃するのがT細胞です。T細胞は、免疫の司令塔として、そして最前線の戦士として活躍しています。 T細胞の表面には、T細胞受容体(TCR)と呼ばれる特殊なタンパク質が存在します。このTCRは、まるで鍵と鍵穴の関係のように、特定の抗原のみを認識することができます。抗原とは、細菌やウイルスなどの病原体の一部、あるいは、自分自身の細胞が変化した際に現れる物質のことを指します。 T細胞は、このTCRを用いて、体内をパトロールし、抗原を発見すると活性化します。活性化したT細胞は、攻撃用のタンパク質を放出して、病原体や感染細胞を直接攻撃したり、他の免疫細胞に攻撃を指示したりします。 このように、T細胞は、体内を常に監視し、病原体などの脅威から私たちを守ってくれる、まさに「免疫の守護者」と言えるでしょう。
血液

生命のエネルギー源、グルコース

- グルコースとはグルコースは、私たちが健康的に生活していく上で欠かせないエネルギー源です。体内では「ブドウ糖」とも呼ばれ、食事から摂取した炭水化物が消化器官で分解されることで作られます。 私たちが普段口にするご飯やパン、麺類といった穀物や、果物、お菓子などには、たくさんのグルコースが含まれています。そのため、私たちは毎日の食事を通して、自然とグルコースを体内に取り入れているのです。体内に取り込まれたグルコースは、血液によって全身の細胞に運ばれ、細胞の活動に必要なエネルギーへと変換されます。脳や筋肉など、活発に動く器官では、特に多くのグルコースが必要とされます。 もしも体内にグルコースが不足すると、エネルギーが不足し、集中力の低下や倦怠感、疲労感といった症状が現れます。反対に、過剰に摂取すると、使いきれなかったグルコースが脂肪として蓄えられ、肥満の原因となる可能性もあるため注意が必要です。このように、グルコースは私たちの生命活動に欠かせない重要な役割を担っています。バランスの取れた食事を心がけ、健康的な生活を送りましょう。
資格・職種

新人看護師を支えるアソシエートナースの役割

- アソシエートナースとは病院で働く看護師は、患者さんのケアをしながら、日々の業務の中で多くのことを学び成長していきます。特に、病院で働き始めたばかりの新人看護師にとって、経験豊富な先輩看護師から指導を受けることは、一人前の看護師を目指す上で非常に重要です。 新人看護師の教育には、プリセプターシップと呼ばれる制度が多くの病院で導入されています。これは、新人看護師一人ひとりに専任の指導者であるプリセプターナースがつき、マンツーマンで指導を行う制度です。新人看護師は、プリセプターナースから、病院の業務の流れや、患者さんへの接し方、看護技術などを実践的に学ぶことができます。 しかし、プリセプターナースも、担当の患者さんのケアを行いながら、新人看護師への指導を行うため、負担が大きくなってしまうことがあります。そこで、プリセプターナースをサポートし、新人看護師の教育をより充実させるために、近年、アソシエートナースという役割を置く病院が増えてきました。 アソシエートナースは、新人看護師の教育に関わり、プリセプターナースと連携しながら、新人看護師の成長をサポートします。具体的には、プリセプターナースが担当する新人看護師の技術指導や相談に乗ったり、新人看護師が安心して業務に取り組めるように、業務の進め方を教えたりするなど、様々な形で新人看護師を支えます。 アソシエートナースの導入により、プリセプターナースの負担軽減だけでなく、新人看護師は、複数の先輩看護師から様々な視点で指導を受けることができるようになるため、より効果的な教育体制が期待できます。
消化器

肝臓と臍をつなぐ遺構:肝円索

- 胎児期の名残肝円索 私たちのお腹には、「肝円索」と呼ばれる、胎児期の名残があります。これは、母親のお腹の中にいた頃に重要な役割を果たしていた血管の跡です。 胎児は、母親の胎盤から酸素や栄養を受け取って成長します。 この時、胎盤と胎児の肝臓を繋いでいたのが「臍静脈」と呼ばれる血管で、肝円索はこの臍静脈の名残です。 臍静脈は、胎児にとってまさに生命線とも言える重要な血管でした。 胎盤から運ばれてくる、酸素と栄養を豊富に含んだ血液を、ダイレクトに肝臓へと送り届けていたのです。 しかし、私たちが母親の胎外に出て、肺呼吸を始めるようになると状況は一変します。 肺が酸素を取り込む役割を担うようになるため、臍静脈の役割は必要なくなり、閉鎖してしまうのです。 そして、かつて血管であった部分は線維化し、細い紐のような組織へと変化します。これが、肝円索です。 肝円索は、私たちが母親のお腹の中で過ごした時間の、確かな証と言えるでしょう。
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