総合健康ガイド

検査

PCR検査:ウイルスの検出

近年、ニュースや新聞などで「PCR検査」という言葉を耳にする機会が増えましたね。では、PCR検査とは一体どのような検査なのでしょうか? PCR検査とは、「ポリメラーゼ連鎖反応」の略称で、特定のウイルスや細菌の遺伝物質を人工的に増幅させて、その有無を調べる検査方法です。 私たちの体の中には、細胞の中に遺伝情報をつかさどるDNAが存在しています。ウイルスも同様に、遺伝情報を持つDNAやRNAを持っています。PCR検査では、このウイルス特有のDNAやRNAを検出することで、感染の有無を判断します。 検査では、まず、鼻の奥や喉の粘膜を綿棒でこすり、検体を採取します。この検体には、もし感染していれば、ごくわずかな量のウイルスが含まれています。PCR検査では、このわずかな量のウイルス遺伝子を、試験管の中で増幅させることで、検出を容易にします。 PCR検査は、従来の検査方法と比べて、感度が高く、微量のウイルスでも検出することができるという特徴があります。そのため、感染初期の段階でもウイルスの有無を調べることができ、早期発見・早期治療に繋がると期待されています。
その他

現代医療の壁:難病とは何か

現代の医療をもってしても、根治が困難な病気を難病と呼びます。難病は、患者さんにとって大きな負担となるだけでなく、医療経済全体にも大きな影響を与えます。 厚生労働省は、難病を「発症の原因が解明されていない、あるいは治療法が確立していないために、長期間にわたる療養が必要となる病気」と定義しています。これは、現在の医学では完治が難しい、あるいは治療法がまだ見つかっていない病気を意味します。 難病には、がんや心臓病などのように、多くの患者さんがいる病気もあれば、ごく少数の人にしか発症しない希少疾患もあります。いずれの場合も、患者さんは、身体的な苦痛に加えて、精神的な不安や経済的な負担を抱えることになります。 難病の克服には、医学研究の進歩が不可欠です。国は、難病の治療法や予防法の開発、患者さんの生活の質の向上を目指した研究を推進しています。同時に、患者さんやその家族に対する経済的・精神的な支援も重要な課題となっています。
その他

炎症反応の司令塔:炎症性サイトカイン

- 炎症性サイトカインとは 私たちの体は、細菌やウイルスなどの病原体が侵入してくると、これらを排除し体を守るために防御反応を起こします。この防御反応は「炎症反応」と呼ばれ、発熱、痛み、腫れ、赤みなどの症状を伴います。そして、この炎症反応において中心的な役割を担うのが、「炎症性サイトカイン」と呼ばれるタンパク質です。 炎症性サイトカインは、免疫細胞から分泌され、細胞間の情報伝達を司る重要な役割を担っています。例えるなら、体内で起こる炎症という戦場において、司令塔から各部隊へ指示を出す役割を担っているのが炎症性サイトカインと言えるでしょう。 炎症性サイトカインは、種類によって作用が異なり、標的となる細胞も異なります。例えば、TNF-αやIL-1βといった炎症性サイトカインは、血管内皮細胞に作用し、白血球を炎症部位に呼び寄せます。また、IL-6は肝臓に作用し、発熱を引き起こす物質の産生を促します。 炎症反応は、本来、体を守るための重要な反応です。しかし、炎症性サイトカインが過剰に産生されたり、慢性的に分泌され続けたりすると、関節リウマチや炎症性腸疾患などの自己免疫疾患、アレルギー疾患、動脈硬化症、糖尿病などの生活習慣病など、様々な病気の原因となることが知られています。そのため、炎症性サイトカインの働きを適切に制御することが、これらの病気の予防や治療に繋がると考えられています。
検査

検査に欠かせないスピッツ:種類と用途

- スピッツとは病院で血液検査や尿検査を受けるとき、採血や採尿の後に、看護師さんが薄いガラス管に血液や尿を入れているのを見たことはありませんか?あのガラス管こそが「スピッツ」です。スピッツは、検査のために採取した血液や尿を一時的に保管しておくための小さな容器です。検査を行うまでの間、血液や尿を清潔な状態で保ち、検査に適した状態に保つ役割があります。多くのスピッツは、片方の先端が細くなっている円錐形をしています。この独特な形が、ドイツ語で「尖ったもの」を意味する「スピッツ」の由来となっています。先端が細い形状をしているため、採取した血液や尿をスムーズに入れることができます。また、検査機器にセットしやすいという利点もあります。スピッツには、血液検査用と尿検査用があります。さらに、検査項目に応じて、中に添加されている試薬が異なる場合もあります。例えば、血液を固まらせないようにするための凝固防止剤が入っているものや、特定の成分を分離しやすくするための分離剤が入っているものなどがあります。このように、スピッツは、一見シンプルながらも、検査を正確に行うために欠かせない重要な役割を担っているのです。
その他

医療現場の専門用語:リハの意味とは?

私たちが日頃、何気なく口にしている言葉の中には、医療現場で使用すると全く違う意味として解釈されてしまうものが少なくありません。例えば、皆さんは「リハ」という言葉を聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?多くの人は、演劇や音楽の練習を意味する「リハーサル」を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、病院で働く医師や看護師、理学療法士などの医療従事者にとって、「リハ」は「リハビリテーション」を意味する専門用語なのです。 このように、同じ言葉でも、使用する場面や人によって意味が異なる場合があります。特に、医療現場では、専門用語が多く使われており、患者さんにとって分かりにくい言葉も少なくありません。医療従事者は、患者さんに分かりやすく説明するために、専門用語を避けて、日常生活で使う言葉に置き換えることが重要です。 また、患者さん側も、医師や看護師の説明で分からない言葉があれば、遠慮せずに質問することが大切です。お互いにコミュニケーションを密にすることで、誤解を防ぎ、より良い医療を提供することができます。
その他

タンパク質合成の設計図:mRNA

私たちの体は、様々な種類のタンパク質からできています。骨や筋肉、血液など、体を作る様々なパーツはタンパク質からできており、体の中で起こる化学反応も、タンパク質が大きく関わっています。毎日新しい細胞が作られ、古くなった細胞が壊されるように、タンパク質も、常に作られ、分解されています。では、細胞はどのようにして、膨大な種類のタンパク質の中から、必要なものを、必要な時に、必要な量だけ作り出すことができるのでしょうか? その鍵を握るのが、遺伝情報の通り道です。遺伝情報は、細胞の核の中にあるDNAに保存されています。DNAは、いわば体の設計図のようなものです。設計図であるDNAの情報に基づいてタンパク質が作られるのですが、DNAは細胞の核の外に出ることができません。そこで、DNAの情報は、mRNAと呼ばれる物質に「転写」されます。mRNAはDNAの情報の一部を写し取ったもので、核の外に出ることができます。 mRNAは、細胞質にあるリボソームという場所に移動し、そこでタンパク質合成の鋳型となります。リボソームは、mRNAの情報を読み取り、その情報に基づいてアミノ酸を順番につなげていきます。こうして、DNAの情報に基づいたタンパク質が合成されるのです。このように、DNA→mRNA→タンパク質という流れは、遺伝情報が細胞の中で伝達される基本的な流れであり、「セントラルドグマ」と呼ばれています。
その他

医療費助成の対象となる病気:指定難病

- 指定難病とは 指定難病とは、簡単に言うと国が「これは治療が大変で、患者さんの負担が大きすぎる病気だ」と認めた病気のことです。具体的には、厚生労働大臣が指定した特定の難病を指します。 では、どんな病気が「難病」とされるのでしょうか?難病の特徴は、主に三つあります。 一つ目は、病気の原因や発症の仕組みが、まだはっきりと解明されていないことです。原因が分からなければ、根本的な治療法を見つけるのが難しいのは想像に難しくないでしょう。 二つ目は、有効な治療法が確立されていないことです。病気によっては、症状を和らげる治療法はあっても、病気を完全に治す方法が見つかっていない場合があります。 そして三つ目は、長期間にわたる治療や療養が必要となることです。治療費や介護の費用など、長期間にわたる治療や療養には、経済的な負担が大きくなってしまうという側面があります。 これらの特徴を持つ難病は、患者さんやその家族にとって、肉体的にも精神的にも、そして経済的にも大きな負担となってしまいます。 そこで、国は指定難病に対して医療費助成制度を設け、患者さんの経済的な負担を少しでも軽くする取り組みを行っています。健康保険証とは別に、難病患者さんのための医療受給者証を交付し、医療費の一部を公費で負担することで、患者さんの治療と生活を支援しています。
血液

輸血医療の要!交差適合試験とは?

私たちは、病気や怪我などで血液が不足すると、輸血によって血液を補います。輸血は、不足した血液を補うことで、命を救うための大切な医療行為です。しかし、輸血を行う際には、血液型に注意しなければなりません。なぜなら、自分と異なる血液型の血液を輸血されると、血液の中で抗原抗体反応という免疫反応が起こり、体に深刻な影響を及ぼす可能性があるからです。 人間の血液は、大きくA型、B型、AB型、O型の4つの血液型に分類されます。これは、赤血球の表面にある抗原と、血漿中に含まれる抗体の種類によって決まります。A型の人はA抗原と抗B抗体、B型の人はB抗原と抗A抗体、AB型の人はA抗原とB抗原を持っていますが、抗体は持っていません。O型の人は、抗原を持たず、抗A抗体と抗B抗体の両方を持っています。 輸血の際には、この血液型を合わせる必要があります。例えば、A型の人にB型の血液を輸血すると、A型の人の中にある抗B抗体が、B型血液中のB抗原と反応し、赤血球を破壊してしまいます。これが抗原抗体反応で、発熱や吐き気、最悪の場合、ショック症状を引き起こし、死に至ることもあります。 安全な輸血を行うためには、血液型について正しく理解し、血液型に合った輸血を受けることが重要です。輸血は、多くの場合、緊急を要するため、日頃から自分の血液型を知っておくことが大切です。
産婦人科

医療現場のギネ:産婦人科を指す言葉

皆さんは「ギネ」という言葉を聞いたことがありますか?もしかしたら、医療ドラマや漫画の中で耳にしたことがあるかもしれませんね。 実はこの「ギネ」という言葉、私たちが普段「産婦人科」と呼んでいる診療科を指す言葉なのです。 日常生活で耳にする機会は少ないかもしれませんが、医療現場では日常的に使われています。 では、なぜ「産婦人科」を「ギネ」と呼ぶのでしょうか? 実は「ギネ」は、ギリシャ語で女性を意味する「gyne(ギュネー)」という言葉が由来となっています。ギュネーは、医学用語の中でも「婦人科」を意味する言葉として使われており、それが短縮されて「ギネ」と呼ばれるようになったと言われています。 「ギネ」が担当する診療範囲は、妊娠・出産はもちろんのこと、月経不順や更年期障害、子宮や卵巣の病気など、女性の体に関すること全般に及びます。 女性の生涯を通して、健康をサポートする役割を担っていると言えるでしょう。
その他

がん治療の用語解説:メタとは?

『メタ』という言葉は、医療の現場、特にがん治療において『転移』を意味する言葉として使われます。では、なぜ『転移』が重要なのでしょうか。がんは、体の特定の場所に発生した後、周囲の組織に侵入しながら増殖していきます。そして、さらに進行すると、がん細胞は血液やリンパ液の流れに乗り、体の他の場所に移動することがあります。この現象が『転移』です。『転移』は、がんが体の別の場所に広がることを意味し、がん治療を複雑にする大きな要因となります。 例えば、最初に肺で発見されたがんが、骨や脳などに転移することがあります。このように、がんが元の場所から離れた場所で増殖すると、治療がより困難になる場合が多く見られます。さらに、転移したがんは、元の場所のがんと比べて、治療に対する反応が異なることがあります。そのため、医師はがんの治療方針を決定する際に、転移の有無を慎重に診断します。がんの種類や転移の程度によって、手術、放射線療法、化学療法など、様々な治療法を組み合わせることがあります。『メタ』という言葉は、がんの深刻な側面を表す言葉として、医療従事者の間で共通認識されています。
検査

免疫の記憶を探る:抗体検査とは

- 抗体検査とは抗体検査とは、血液などを用いて、体の中に特定の病原体に対する抵抗力となる物質が存在するかどうかを調べる検査です。私たちの体には、外から侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体から身を守る仕組みが備わっています。この仕組みを「免疫」と呼びます。病原体が体内に侵入してくると、私たちの体はそれと戦うための特別な物質を作ります。これを「抗体」と言います。抗体は、特定の病原体だけを攻撃する性質を持っています。例えば、はしかウイルスに対する抗体は、はしかウイルスだけを攻撃し、インフルエンザウイルスには作用しません。このように、抗体は鍵と鍵穴の関係のように、特定の病原体だけにぴったりと結合して、それを攻撃します。一度病気に感染すると、その病原体に対する抗体が体の中に作られ、その後も長い間、体内に残る場合があります。このため、再び同じ病原体に感染したときに、体はすばやく病原体を撃退することができます。これを「免疫記憶」と呼びます。抗体検査は、この免疫記憶を利用した検査です。血液中に特定の病原体に対する抗体が存在するかどうかを調べることで、過去にその病気に感染したことがあるかどうかを調べることができます。ただし、抗体検査はあくまでも過去の感染の可能性を示唆するものであり、現在の感染状態や病気の診断を確定するために行うものではありません。
血液

急性GVHD:移植後の免疫反応を知る

- 急性GVHDとは造血幹細胞移植は、血液のがんや難病の治療法として大きな期待が寄せられています。しかし、移植後には、提供された造血幹細胞(ドナー)と、移植を受けた患者さん(レシピエント)の身体の間で、様々な免疫反応が起こることがあります。その中でも、急性GVHD(移植片対宿主病)は、移植後の合併症として特に注意が必要とされています。急性GVHDは、一体どのような病気なのでしょうか?簡単に言うと、移植されたドナー由来の免疫細胞が、患者さんの身体を「異物」と認識し攻撃してしまう病気です。通常、私たちの体内には、細菌やウイルスなどの外敵から身を守る免疫細胞が存在します。ところが、他人から提供された造血幹細胞は、患者さんから見ると「非自己」と認識されてしまうことがあります。そのため、ドナー由来の免疫細胞は、本来攻撃すべきでない患者さんの臓器や組織を攻撃してしまうのです。急性GVHDは、主に皮膚、肝臓、消化管といった臓器に炎症を引き起こします。具体的には、皮膚の発疹やかゆみ、黄疸、下痢、腹痛などの症状が現れます。これらの症状は、移植後100日以内に発症することが多く、重症化すると命に関わるケースもあります。急性GVHDの発症リスクや重症度は、移植する細胞の種類や量、ドナーとレシピエントのHLA(ヒト白血球抗原)の適合度、患者さんの年齢や基礎疾患など、様々な要因が影響します。そのため、移植前に、患者さん一人ひとりの状態に合わせて、予防対策を検討することが重要となります。
その他

全身に炎症を起こすベーチェット病

- ベーチェット病とはベーチェット病は、原因がはっきりとは分かっていない、長く続く炎症性の病気です。体の様々な場所で炎症が起こるのが特徴で、特に口の中、皮膚、目、関節などで繰り返し炎症が見られます。この病気は、「シルクロード病」とも呼ばれています。これは、シルクロード沿いの国々で患者が多いことが理由です。日本では、ベーチェット病は特定疾患に指定されていて、およそ2万人の患者がいると推測されています。ベーチェット病では、口の中に繰り返し口内炎ができることが多く見られます。これは、多くの場合、初期症状として現れます。また、皮膚には、赤いブツブツやニキビのような発疹が現れたり、痛みを伴う赤い腫れができることがあります。目に炎症が起こると、視力が低下したり、物が歪んで見えたりすることがあります。さらに、関節に炎症が起こると、関節が腫れたり、痛んだり、動きが悪くなることがあります。ベーチェット病の症状は、患者さんによって様々です。症状が出たり消えたりを繰り返すことも多く、症状が全く出ない時期もあります。ベーチェット病は、命に関わる合併症を引き起こす可能性もあるため、早期に診断し、適切な治療を受けることが重要です。
目・眼科

医療現場で使われるドイツ語?アウゲって何?

病院に行くと、医師や看護師が普段使い慣れない言葉を使うことがよくあります。診察室で飛び交う言葉や、カルテに書かれている記号や略語の意味が分からず、不安に感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。 これらの医療現場で使われる専門用語は、医師や看護師が患者さんの症状や治療方針について、正確かつスムーズに情報を共有するために欠かせません。例えば、患者さんの状態を伝える際に、「少し気分が悪い」という曖昧な表現ではなく、「悪心がある」という具体的な医学用語を用いることで、他の医療従事者にも症状の程度や種類が明確に伝わります。 また、カルテに記載する際には、限られたスペースに多くの情報を詰め込む必要があり、記録の効率化のために略語が頻繁に使われます。さらに、カルテは個人情報のかたまりであるため、患者さんのプライバシーを守る上でも、専門用語や略語を使うことは重要です。 しかし、医療従事者にとって当たり前の専門用語であっても、患者さんにとっては分かりにくいものです。もし、医師や看護師の説明で分からない言葉があれば、遠慮せずに質問するようにしましょう。
看護技術

バギング:人工呼吸の基礎知識

- バギングとはバギングとは、呼吸が止まってしまったり、自力で十分な呼吸ができなくなったりした人の肺に、バックバルブマスクを使って空気を送り込む人工呼吸の方法です。 別名で「用手換気」とも呼ばれ、医療従事者の手によって行われます。バックバルブマスクは、大きく分けて三つの部分から構成されています。まず、患者さんの顔に直接当てて密着させる部分であるマスク。そして、空気を送り込むための袋状の部分。最後に、送り込んだ空気が逆流してしまわないようにするための弁です。 バギングはこのバックバルブマスクを用いることで、効率的かつ確実に、患者さんの肺に必要な空気を送り込むことができるのです。人工呼吸が必要となる状況は、呼吸が完全に停止してしまった場合や、病気や怪我などによって自力で呼吸をすることが難しい場合など、実に様々です。 バギングは、医療現場において、このような緊急事態に瀕した患者さんの命を救うための非常に重要な手段となっています。
その他

身近に潜む脅威:溶連菌感染症

- 溶連菌とは溶連菌は、正式には溶血性レンサ球菌と呼ばれる細菌の一種です。顕微鏡で観察すると、丸い形をした菌が鎖のようにつながって見えることから、この名前が付けられました。この細菌は、私たちの身の回りにも普通に存在しています。空気中に漂っていたり、ドアノブや電気のスイッチなど、いろいろな物に付着していることがあります。そのため、誰でも溶連菌に感染する可能性がありますが、健康な状態であれば、体内に入る菌の数が少なかったり、体の抵抗力で撃退することができるので、必ずしも発症するわけではありません。 しかし、免疫力が低下している時や、疲労が溜まっている時などは、溶連菌に対する抵抗力が弱くなってしまうため、注意が必要です。特に、幼児や小学生など、小さな子供は免疫力が発達段階にあり、溶連菌に感染しやすいため、集団生活の中で流行しやすくなります。溶連菌に感染すると、代表的な症状として、喉の痛みや発熱を伴う咽頭炎や扁桃炎などを引き起こします。その他、発疹や舌の炎症などが現れることもあります。症状が現れた場合は、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
血液

移植前処置:造血幹細胞移植の準備

- 移植前処置とは移植前処置とは、患者さんが造血幹細胞移植を受ける前に必ず行う、非常に大切な準備段階のことを指します。造血幹細胞移植は、病気やその治療の影響によって、自ら血液細胞を正常に作ることができなくなってしまった患者さんに対して行われます。具体的には、健康なドナーさんから提供された、血液細胞の元となる造血幹細胞を患者さんの体内に移植する治療法です。移植前処置は、移植の成功率を高め、合併症のリスクを抑えるために欠かせないプロセスです。大きく分けて、(1)病気の細胞を減らす、(2)免疫の働きを抑える、(3)ドナー由来の造血幹細胞が根付きやすいように準備をする、という三つの目的があります。まず、移植前に残っている病気の細胞を減らすことは、移植後に病気が再発するリスクを低下させるために重要です。次に、患者さんの免疫の働きを抑えることで、移植されたドナーさんの細胞を「異物」として攻撃する拒絶反応を防ぐことができます。そして、患者さんの骨髄をあらかじめ空けておくことで、移植されたドナーさんの造血幹細胞が、骨髄にスムーズに定着しやすくなるのです。移植前処置の内容は、患者さんの病気の種類や状態、移植の種類、ドナーさんとの相性などによって異なります。主な方法としては、抗がん剤や免疫抑制剤を投与する薬物療法や、全身に放射線を照射する放射線療法などがあります。それぞれの治療法は、単独で行われることもあれば、組み合わせて行われることもあります。移植前処置は、患者さんにとって身体的な負担が大きい場合もありますが、移植を成功させるために非常に重要なプロセスです。患者さん自身の病気や治療についての理解を深め、医師や医療スタッフとしっかりとコミュニケーションをとるように心がけましょう。
外科

意外と知らない?医療用語「オルト」の意味

病院で働いていると、医師や看護師が専門用語を話すのを耳にすることがあるでしょう。医療現場では、正確に情報を伝えるために、そして迅速に動くために、様々な略語が使われています。これらの略語は、医療従事者にとっては日常的なものですが、患者さんやそのご家族にとっては分かりにくいものもあるかもしれません。 例えば、よく耳にする「オペ」という言葉は、「手術(operation)」を短くしたものです。手術室に入ることを「オペに入る」、手術後であることを「オペ後」のように使われます。また、「バイタル」は「生命兆候(vital signs)」を意味し、脈拍、体温、血圧、呼吸など、生命の維持に不可欠な体の状態を表しています。「バイタルが安定している」といえば、これらの数値に大きな変動がなく、容体が安定していることを示します。 医療現場で使われる略語は、医療従事者間のコミュニケーションを円滑にするために重要な役割を果たしています。しかし、患者さんにとっては、それが何を意味するのか理解できないこともあるでしょう。もし、医師や看護師が使う言葉で分からないことがあれば、遠慮なく尋ねてみてください。医療従事者は、患者さんが安心して治療を受けられるよう、分かりやすい言葉で説明する義務があります。
脳・神経

脳地図: ホムンクルスの世界

「ホムンクルス」という、少し不気味な響きの言葉を知っていますか?これはラテン語で「小人」を意味する言葉ですが、実は脳科学の分野で、ある特別な図を指す言葉として使われています。 人間の脳の表面には、体の各部位の感覚や運動をコントロールする、様々な領域が存在しています。例えば、手の指を動かしたり、触れた物の温度を感じたりするのも、全て脳からの指令によるものです。そして、驚くべきことに、脳の表面には、体の各部位に対応した領域が、まるで地図のように綺麗に配置されているのです。 ホムンクルスとは、この脳の領域と体の部位の関係を、分かりやすく人形に投影した図のことを指します。脳の特定の領域が、体の特定の部位に対応している様子が、まるで脳の中に小さな人間がいるかのように見えることから、「小人」という意味のホムンクルスと呼ばれるようになったのです。 面白いことに、このホムンクルス人形は、体の部位によってその大きさが異なっています。例えば、手や唇、舌などは、他の部位に比べて大きく描かれています。これは、手や唇、舌などが、脳の広い領域を使って、繊細な感覚や運動をコントロールしていることを示しています。逆に、背中や足などは小さく描かれていますが、これは、これらの部位が、脳の比較的狭い領域で、大まかな感覚や運動をコントロールしていることを示しています。 このように、ホムンクルスは、脳の構造と機能を理解する上で、非常に重要な役割を果たしているのです。
看護技術

医療現場の用語:ナートって?

病院で働く人たちは、患者さんを治療するために、普段の生活ではあまり聞かない専門的な言葉をたくさん使います。 これらの言葉は、医師や看護師がお互いに正しく情報を伝え合い、誤解なく治療を進めるためにとても大切です。 例えば、「エンチ」という言葉を聞けば、多くの人が注射を思い浮かべるでしょう。また、「ドリップ」と聞けば、点滴のことを想像する人も多いのではないでしょうか。このように、医療現場では、一般の人にも広く知られている言葉もあれば、医療関係者しか知らない言葉もたくさんあります。これらの専門用語は、医療従事者にとっては、正確で効率的なコミュニケーションをとるための共通言語と言えるでしょう。 しかし、医療現場以外の人にとって、これらの言葉は難解で理解しづらいものです。患者さんの中には、医師や看護師の説明に使われた専門用語が分からず、治療内容を十分に理解できないまま不安を抱えてしまう方もいるかもしれません。 医療従事者は、患者さんとの信頼関係を築き、安心して治療を受けていただけるよう、専門用語を分かりやすく説明するよう心がける必要があります。
耳鼻科

溶連菌感染症とは?

- 溶連菌感染症の概要溶連菌感染症は、溶血性連鎖球菌という細菌によって引き起こされる感染症です。この細菌は、人の喉や皮膚に普通に存在していることがあり、感染している人が咳やくしゃみをすると、空気中に含まれる小さな水滴(飛沫)を介して周りの人に感染します。また、感染者の皮膚や粘膜に直接触れることによっても感染します。溶連菌感染症の代表的な症状は、突然始まる喉の痛みと高い熱です。喉の奥を見ると、扁桃腺が赤く腫れ上がり、白い膿が付着していることもあります。その他、頭痛、倦怠感、吐き気、腹痛などを伴う場合もあります。 通常、咳はみられません。多くは軽症で、適切な治療を行えば数日で改善します。しかし、まれに重症化し、猩紅熱やリウマチ熱、急性糸球体腎炎などの合併症を引き起こすことがあります。特に、猩紅熱は、発疹と高熱を特徴とする病気で、合併すると治療が長引く場合があります。溶連菌感染症は、子ども、特に幼児や小学校低学年によくみられますが、大人でも感染することがあります。適切な予防と早期治療が重要です。
検査

カルテ用語「s/o」って何?

医療現場では、患者さんの状態や治療方針などを記録するカルテや、医師同士の会話の中で、様々な略語が日常的に使われています。これは、医療従事者たちが限られた時間の中で、簡潔かつ正確に情報を伝達するために非常に重要な役割を果たしています。 例えば、患者さんの状態を表す「意識レベル」を示す場合、「JCS(ジャパン・コーマ・スケール)」と呼ばれる指標を用い、数字と記号を組み合わせて表現します。意識がはっきりしている状態は「JCS 0」、意識障害が重い場合は「JCS Ⅲ-300」のように表現します。このように、略語を用いることで、患者さんの状態を簡潔に共有することができます。 しかし、その反面、医療従事者以外の人にとっては、これらの略語は暗号のように感じられ、理解が難しいものとなっています。カルテに書かれた内容や、医師の会話の内容が分からず、不安を感じてしまう患者さんも少なくありません。 医療現場では、患者さんにとって分かりやすい言葉で説明することが重要視されています。そのため、近年では、患者さんと接する際には、できるだけ略語を使わずに説明するよう努める医療機関も増えています。患者さんも、分からない言葉があれば、遠慮なく質問することで、安心して治療を受けることができるでしょう。
血液

慢性GVHD:移植後の闘い

- 慢性GVHDとは慢性GVHD(まんせいじーぶいえいちでぃー)は、骨髄移植などを受けた後に起こる病気です。骨髄移植は、血液のがんや一部の難病の治療法として行われます。骨髄移植では、健康な人(ドナー)から提供された血液細胞を、患者さん(レシピエント)の体内に移植します。移植された血液細胞には、免疫細胞が含まれています。免疫細胞は、本来は体内に侵入してきた細菌やウイルスなどを攻撃して、体を守る働きをしています。しかし、骨髄移植の場合、提供されたドナーの免疫細胞が、レシピエントの体を「異物」と認識してしまうことがあります。その結果、ドナーの免疫細胞が、レシピエント自身の正常な細胞や組織を攻撃してしまうのです。これが、慢性GVHDと呼ばれる病気です。慢性GVHDでは、皮膚、口腔、消化管、肝臓、肺、眼、関節など、体の様々な部位が攻撃対象となる可能性があります。そのため、皮膚の発疹やかゆみ、口内炎、下痢、腹痛、呼吸困難、視力低下、関節痛など、多岐にわたる症状が現れます。慢性GVHDは、移植後3ヶ月以降に発症することが多く、長期にわたる経過をたどることが特徴です。症状の程度は患者さんによって異なり、軽い場合は経過観察のみで済むこともありますが、重症化すると生命に関わることもあります。
脳・神経

意識障害の指標:JCS

- JCSとはJCSは、「ジャパン・コーマ・スケール」の略称で、意識障害の程度を測る指標です。1974年に、日本の救急医療現場において、意識障害を持つ患者さんの状態を簡潔にそして正確に伝えるために開発されました。JCSは、意識レベル、運動機能、瞳孔反応の3つの要素から評価を行います。それぞれの要素に3段階のレベルが設定されており、この3段階のレベルを組み合わせることで、患者さんの状態を9段階で表現します。このことから、JCSは3-3-9度方式と呼ばれることもあります。JCSを用いることで、医療従事者間で患者さんの意識状態を共通の基準で理解し、共有することができます。これは、適切な治療方針を決定する上で非常に重要です。また、JCSは、患者さんの意識状態を経時的に記録することで、病状の変化を把握するためにも役立ちます。JCSは、救急医療現場だけでなく、一般病棟や在宅医療など、様々な医療現場で使用されています。意識障害は、様々な原因で引き起こされる可能性があり、その早期発見と適切な対応が重要です。JCSは、医療従事者だけでなく、一般の人々にとっても、意識障害について理解を深めるために役立つ指標と言えるでしょう。
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