総合健康ガイド

脳・神経

ジスキネジア:意図しない動きとその対処

- ジスキネジアとは?ジスキネジアは、自分の意思とは関係なく体が動いてしまう症状を指します。 まるで操り人形のように、自分の意思とは無関係に体が勝手に動いてしまうため、日常生活に様々な支障をきたすことがあります。 この不随意運動は、顔の表情筋、口、舌、手足など、体の様々な部位に現れる可能性があります。 例えば、顔面にジスキネジアが現れると、顔をしかめたり、舌を出したり、口をパクパクさせたりといった症状が現れます。また、手足にジスキネジアが現れると、腕が勝手に動いたり、足がばたばたしたりすることがあります。ジスキネジアの原因は様々ですが、大きく分けて二つあります。一つは、パーキンソン病などの神経疾患に伴って起こるケースです。もう一つは、統合失調症などの治療薬の副作用として現れるケースです。ジスキネジアは、それ自体が病気というわけではありません。 あくまで、他の病気の症状として現れたり、薬の副作用として現れたりする症状の一つなのです。 そのため、ジスキネジアの治療には、まずその原因を突き止めることが重要になります。そして、原因疾患の治療や、副作用を引き起こしている薬の変更などを行うことで、症状の改善が期待できます。
資格・職種

理学療法士ってどんな仕事?

- 理学療法士ってどんな資格?理学療法士と聞いても、具体的にどんな仕事をしているのか想像しにくい方もいるかもしれません。理学療法士は、怪我や病気、高齢などによって身体に障害を持つ方や障害を持つ可能性のある方に対して、その人らしい生活を送れるようにサポートする専門職です。具体的には、まず患者さんの身体の状態を丁寧に評価することから始めます。関節の動きはどうなのか、筋肉の力強さやバランスはどうなのか、痛みはどの程度なのかなどを把握します。そして、その評価に基づいて、一人ひとりの状態や目標に合わせた治療プログラムを作成します。治療プログラムでは、歩く練習などの運動療法、マッサージや電気刺激などの物理療法、温熱や冷却などの治療を行います。これらの治療を通して、痛みの軽減、関節の動きの改善、筋力や体力の向上、日常生活動作の改善などを目指します。理学療法士の活躍の場は、病院やクリニック、介護施設、スポーツ施設など多岐に渡ります。患者さんが住み慣れた地域で安心して生活を送れるよう、医療機関だけでなく、福祉や教育の分野とも連携しながら仕事を進めていきます。
外科

医療現場の用語:ナートって?

病院で診察や治療を受ける際、医師や看護師が使う言葉が独特だと感じたことはありませんか?医療現場では、日常会話では耳慣れない専門用語が多く飛び交っています。これは、医療従事者同士が正確かつ迅速に情報を共有し、円滑な治療を進めるために欠かせないものです。 例えば、注射を意味する「エンチ」や点滴を意味する「ドリップ」などは、一般の方にも比較的馴染みのある医療用語と言えるでしょう。しかし、これらの言葉は、正式な医学用語を簡略化した医療現場特有の略語です。他にも、「バイタル」は「生命兆候」を、「「ルート確保」は「点滴の準備」を意味するなど、多くの略語が日常的に使われています。 このような医療現場特有の用語は、医師や看護師が限られた時間の中で効率的にコミュニケーションを取るために重要な役割を果たしています。しかし、患者さんにとっては、これらの専門用語が理解の妨げになることもあります。医療従事者は、患者さんに分かりやすく説明するよう心がけるとともに、患者さんも、分からない言葉があれば遠慮なく質問することが大切です。お互いに歩み寄ることで、よりスムーズな診療と安心できる医療の実現に繋がると言えるでしょう。
消化器

命に関わる胆管の炎症:急性胆管炎

- 急性胆管炎とは急性胆管炎は、生命にかかわる可能性もある危険な病気です。胆汁の流れが悪くなることで細菌感染を起こし、胆管に強い炎症を引き起こします。胆汁は、肝臓で作られる消化液で、脂肪の分解を助ける重要な役割を担っています。肝臓で作られた胆汁は、いったん胆嚢に蓄えられ、その後、胆管と呼ばれる管を通って十二指腸に送られます。ところが、この胆管が胆石や腫瘍などによって塞がってしまうと、胆汁の流れが滞ってしまいます。すると、胆汁が溜まり、そこに細菌が繁殖しやすくなるのです。細菌が繁殖すると、胆管に炎症が起こり、これが急性胆管炎の始まりです。急性胆管炎になると、発熱、腹痛、黄疸といった症状が現れます。特に右上腹部には激しい痛みが生じることが多く、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。また、重症化すると意識障害やショック状態に陥ることもあり、迅速な治療が必要です。急性胆管炎は、早期に発見し、適切な治療を行えば、多くの場合、治癒する病気です。しかし、放置すると重症化し、命に関わる危険性も高まります。そのため、腹痛や発熱、黄疸などの症状が出た場合には、速やかに医療機関を受診することが重要です。
血液

希望をつなぐ、末梢血幹細胞移植

血液の病気、特にがんなどの治療において、「末梢血幹細胞移植」という治療法が重要な役割を担っています。この治療法は、私たちの体にとって欠かせない血液を作り出す源である「造血幹細胞」を、健康なドナーのものと置き換えることで、病気を克服へと導きます。 私たちの血液には、酸素を運ぶ赤血球、免疫を担う白血球、出血を止める血小板など、様々な種類の細胞が存在します。これらの細胞は、すべて骨髄という骨の中にあるスポンジ状の組織に存在する「造血幹細胞」から生まれます。造血幹細胞は、例えるならば、様々な血液細胞を生み出す工場のようなものです。 しかし、病気やその治療の影響で、この血液の工場がダメージを受けてしまうことがあります。その結果、正常な血液細胞が作られなくなり、貧血や感染症、出血傾向といった深刻な事態に陥ってしまうのです。 このような状況において、「末梢血幹細胞移植」は、ダメージを受けた血液の工場を、健康なドナーのものと入れ替えることで、再び血液を作り出す機能を取り戻すことを目的とした治療法です。ドナーから提供された造血幹細胞は、レシピエントの骨髄に engraft し、新たな血液細胞を作り始めます。こうして、血液の工場を新しくすることで、病気の治療を目指します。
脳・神経

口腔顔面失行:話したり食べたりすることの難しさ

- 口腔顔面失行とは口腔顔面失行は、脳の一部の損傷が原因で発症する病気です。 この病気になると、話したり、食べたりといった、口や顔の動きをスムーズに行うことが難しくなります。私たちは普段、無意識に口や顔の筋肉を動かして、会話や食事をしています。しかし、口腔顔面失行になると、脳からの指令が口や顔の筋肉にうまく伝わらなくなるため、これらの動作に支障が出てしまうのです。 例えば、口を開け閉めする、舌を動かす、表情を作るといった動作が困難になります。口腔顔面失行は、「観念運動失行」と呼ばれる、体を思い通りに動かせなくなる症状の一つです。観念運動失行は、手足の動作に障害が現れる場合もありますが、口腔顔面失行は、口や顔の動きに特異的に症状が現れる点が特徴です。口腔顔面失行は、脳卒中や脳腫瘍、頭部外傷などが原因で起こることがあります。また、神経変性疾患に伴って発症することもあります。治療には、言語聴覚士によるリハビリテーションなどが行われます。リハビリテーションでは、口や顔の筋肉の訓練や、発音練習などを行います。
脳・神経

アポってなに?~脳卒中との関係~

病院で働く人たちは、専門用語や病気の名前を短くして使うことがよくあります。これは、忙しい医師や看護師が短い時間で情報を伝え合い、すぐに患者さんに対応するために必要なことです。例えば、心臓の動きを調べる検査である心電図はECGやEKGと略したり、手術はOPと略したりします。このように、病院では様々な略語が使われていますが、患者さんにとっては聞き慣れない言葉も多いでしょう。今回は、その中でも「アポ」という言葉について詳しく説明します。 「アポ」は「アポイントメント」を短くした言葉で、約束や予約という意味です。病院で「アポ」が使われる場合は、主に診察の予約を指します。例えば、「アポを取る」は診察の予約をする、「アポの時間に遅れる」は予約していた診察時間に遅れるということを意味します。 病院では、患者さんがスムーズに診察を受けられるように、あらかじめ診察の予約をすることが一般的です。予約をせずに病院に行くと、長い時間待たされることがあります。そのため、病院に行く際には、事前に電話やインターネットで「アポ」を取っておくことが大切です。
救急

救急医療の現場で:バギングによる救命処置

- バギングとは バギングは、呼吸が止まってしまった患者さんの肺に、手を使って空気を送り込む処置です。「バックバルブマスク」という医療器具を使います。 呼吸が止まることは、人の命に関わる一大事です。バギングは、そのような緊急事態において、患者の呼吸を助けるための非常に大切な処置であり、「用手換気」とも呼ばれます。 バギングを行うのは、主に救急隊員や医師、看護師といった医療従事者です。彼らは、専門的な訓練と知識を活かして、患者さんの状態に合わせて、適切な圧力と頻度で空気を送り込みます。 バギングによって、血液中に酸素を送り込み、二酸化炭素を排出することで、患者さんの呼吸を正常な状態に近づけ、救命の可能性を高めることができます。
血液

骨髄非破壊的移植:新たな希望

- はじめに近年、血液のがんや免疫不全症などの難病に対する治療法として、造血幹細胞移植が広く行われています。造血幹細胞移植とは、血液を作り出すもととなる細胞を、健康なドナーから患者に移植する治療法です。この治療法は、従来の治療法では治癒が難しいとされてきた多くの患者さんに、再び健康な生活を送るチャンスをもたらしてきました。従来の造血幹細胞移植では、患者の骨髄を、放射線や抗がん剤を用いて完全に破壊する必要がありました。これは、移植するドナーの細胞を、患者の体内で確実に生着させるために必要な処置でした。しかし、この骨髄破壊は、患者にとって大きな負担となるものでした。強い吐き気や脱毛、感染症のリスク増加など、様々な副作用が生じる可能性があったからです。そこで近年注目されているのが、骨髄非破壊的移植と呼ばれる新しい移植法です。骨髄非破壊的移植では、従来のような骨髄破壊を行わず、より身体への負担が少ない方法でドナーの細胞を移植します。この方法により、高齢の患者さんや合併症を持つ患者さんでも、移植治療を受けられる可能性が広がることが期待されています。この資料では、骨髄非破壊的移植について、その種類やメリット、デメリットなどを詳しく解説していきます。
検査

梅毒検査の基礎:STSとは?

- 梅毒検査STSの概要梅毒は、「トレポネーマ・パリダム」という細菌が原因で発症する性感染症です。感染すると、皮膚や粘膜に病変が現れ、放置すると全身に様々な症状を引き起こします。早期発見・早期治療が重要となるため、梅毒の感染を調べるための検査がいくつかあります。 その中でも、「STS」は、Serologic Test for Syphilisの略称で、梅毒の感染を調べるための血液検査の一つです。STSは、トレポネーマ・パリダム自体を検出するのではなく、感染によって体内で作られる抗体を検出することで、間接的に梅毒の感染を診断します。 体内に梅毒トレポネーマが侵入すると、私たちの体はこれに対抗するために「抗体」と呼ばれるタンパク質を作ります。STSでは、この抗体の有無を調べることで、過去に梅毒に感染したことがあるか、現在感染しているかを判断します。 STSには、「非特異的抗体検査」と「特異的抗体検査」の二種類があります。非特異的抗体検査は、梅毒トレポネーマ以外の細菌感染でも陽性反応が出る可能性がありますが、検査費用が安く、広く実施されています。一方、特異的抗体検査は、梅毒トレポネーマに特異的な抗体を検出するため、より正確性が高い検査と言えます。 STSは、梅毒の診断に有効な検査ですが、検査結果だけで梅毒感染の確定診断はできません。医師は、STSの結果と合わせて、症状や診察 findings、その他の検査結果などを総合的に判断して診断を下します。
その他

カルテで見かける「Sx」って?

病院では、患者さんの情報を正確に素早く伝えるために、様々な略語が使われています。これらの略語は、医師や看護師が患者さんの状態や治療方針を共有する際に、言葉の短縮として日常的に用いられています。カルテや指示書など、医療現場の様々な書類にもこれらの略語は頻繁に登場します。 しかし、これらの略語は、医療従事者以外の方にとっては、あまり馴染みがないかもしれません。例えば、「BP」は血圧、「HR」は心拍数を表します。また、「NS」は生理食塩水、「iv」は点滴を意味します。このように、一言で複数の意味を持つ言葉を略語として使用する場合もあるため、医療従事者以外の方には理解が難しい場合があります。 医療現場で働く人々は、これらの略語を理解し、正しく使用することが求められます。正確な情報伝達は、患者さんの安全を守る上でも非常に重要です。一方で、医療従事者以外の方にとっては、これらの略語は分かりにくいと感じることもあるでしょう。医療ドラマやニュースなどで目にする機会もあるかもしれませんが、自己判断は危険です。医療に関する情報は、信頼できる情報源から得るように心がけましょう。
脳・神経

日本脳炎について

日本脳炎は、日本脳炎ウイルスが原因となる感染症で、脳に炎症を起こす病気です。このウイルスは、主にブタなどの体内で増殖し、それを吸血した蚊によって人へと媒介されます。人は、日本脳炎ウイルスに感染した蚊に刺されることで感染します。 感染初期には、高熱、頭痛、嘔吐、倦怠感などの症状が現れます。多くの場合、これらの症状は軽度で、数日で回復します。しかし、一部の人は、ウイルスが脳に侵入し、髄膜炎や脳炎などの重い症状を引き起こすことがあります。 重症化した場合、意識障害、けいれん、言語障害、神経麻痺などの神経系の症状が現れ、後遺症が残る可能性もあります。最悪の場合、死に至ることもあります。日本脳炎は、ワクチンで予防できる病気です。流行地域に住んでいる人や、流行地域へ旅行する人は、ワクチン接種を検討することが重要です。
消化器

医療現場で使われる「KOT」って何?

病院で働く人たちは、患者さんの状態や治療内容を正確に、そして素早く伝えるために、普段の生活ではあまり耳にすることのない専門用語を使っています。このような専門用語は、医療従事者同士のコミュニケーションを円滑にするために欠かせないものです。しかし、一般の人にとっては、これらの言葉は難解で、理解するのが難しい場合も多いでしょう。今回は、数ある医療用語の中から、「KOT」という言葉について詳しく説明していきます。 「KOT」とは、「Keep on Temperature」の略称で、日本語では「保温」を意味します。これは、手術後や体調が不安定な患者さんに対して、体温を一定に保つための指示として使われます。体温は、人間の生命維持に不可欠な要素であり、低体温症は様々な合併症を引き起こす可能性があります。そのため、患者さんの状態に合わせて、毛布や保温器具などを用いて適切な体温管理を行うことが重要となります。 「KOT」という言葉一つとっても、医療現場では、患者さんの安全を守るための様々な配慮が隠されています。普段、私たちが目にすることのない医療用語ですが、その背景には、患者さんの命と健康を守る医療従事者たちのたゆまぬ努力と、専門知識に基づいた的確な指示が存在しているのです。
救急

PICUって? 2つの異なる顔を持つ医療現場

PICUという言葉を耳にしたとき、多くの人は同じ場所を思い浮かべるかもしれません。しかし実際には、PICUは全く異なる二つの医療現場を表す略語として使われています。一つは「精神病集中治療室」のことで、英語ではPsychiatry Intensive Care Unitと表記するため、それぞれの単語の頭文字をとってPICUと呼ばれます。もう一つは「小児集中治療室」のことで、こちらはPediatric Intensive Care Unitの略称です。 どちらも、重症化した患者さんの容態を24時間体制で観察し、高度な医療機器を用いた集中的な治療や看護を提供する場であるという点では共通しています。しかし、対象となる患者さんや治療内容は大きく異なります。「精神病集中治療室」では、主に統合失調症やうつ病などの精神疾患が悪化し、自傷や他害のおそれがあるなど、入院治療が必要と判断された患者さんが入院しています。一方、「小児集中治療室」では、重い病気やケガをした15歳未満の子どもたちが、その年齢特有の体の仕組みや病気の特徴に合わせた専門的な治療を受けています。 このように、PICUは一見同じように見えても、実際には全く異なる医療現場を指す言葉なのです。それぞれの現場では、専門的な知識や技術を持った医療従事者が、患者さんの一日も早い回復に向けて日々尽力しています。
循環器

静かなる脅威:アテロームと動脈硬化

私たちの体を網の目のように巡っている血管は、生きていく上で欠かせない大切な器官です。特に、動脈は心臓から送り出された血液を体の隅々まで届けるという重要な役割を担っています。しかし、歳を重ねたり、生活習慣によって、動脈の内側には“アテローム”と呼ばれる脂肪の塊が溜まっていくことがあります。 アテロームは、血管の老化現象の一つと考えられています。動脈は、生まれたばかりの頃は弾力があり滑らかですが、加齢とともに弾力を失い硬くなっていくため、血管の内側に傷がつきやすくなります。すると、その傷を修復しようと、コレステロールや脂肪などが集まってきて、血管の内側に蓄積していきます。これがアテロームの始まりです。 アテロームは、最初は小さくても、徐々に大きくなり、血管の内側を狭くしていきます。 その結果、血液の流れが悪くなり、様々な体の不調につながる可能性があります。例えば、心臓に栄養を送る血管が狭くなると、胸の痛みや圧迫感を感じる狭心症、さらに悪化すると心筋梗塞を引き起こす危険性があります。また、脳の血管が狭くなると、脳梗塞のリスクが高まります。 アテロームの形成を防ぐためには、血管を老化させない生活習慣を心がけることが大切です。バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙など、健康的なライフスタイルを維持することで、血管の老化を遅らせ、アテロームの予防に繋がると考えられています。
呼吸器

1957年世界を襲ったパンデミック:アジアかぜ

- アジアかぜとはアジアかぜは、1957年に初めて確認された、新型のインフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症です。このウイルスは、それまで人間の体内に存在しなかった、A型インフルエンザウイルスのH2N2亜型として分類されました。この新型ウイルスは、鳥類の間で流行していたインフルエンザウイルスが変異し、人間にも感染する能力を獲得したことで出現したと考えられています。アジアかぜという名前が付けられた理由は、この病気が初めて確認された地域がアジアだったからです。具体的には、1957年2月に中国で最初の流行が報告され、その後、シンガポール、香港、そして世界中に感染が拡大していきました。アジアかぜの症状は、一般的な季節性インフルエンザと類似しており、高熱、咳、喉の痛み、筋肉痛、倦怠感などが挙げられます。多くの人々は1週間程度で回復しますが、乳幼児や高齢者、基礎疾患を持つ人などでは、肺炎などの合併症を引き起こし、重症化するケースも見られました。アジアかぜのパンデミックは、世界中で多くの人々の命を奪いました。正確な死者数は不明ですが、世界保健機関(WHO)は、少なくとも100万人以上が死亡したと推定しています。このパンデミックは、新型インフルエンザウイルスに対する脅威を世界に知らしめ、公衆衛生対策の重要性を改めて認識させる出来事となりました。
その他

医療現場で使われる「pus」ってなに?

傷口を見たときに、黄色や緑っぽいどろっとした液体が出ているのを見たことはありませんか?これは「膿(うみ)」と呼ばれるもので、医学用語では「pus(パス)」と表現します。 医療現場では、日本語よりも英語表記の「pus」の方が頻繁に使われます。これは、カルテなどに記載する際にもそのまま「pus」と記されることが一般的です。 では、この「膿」は一体何なのでしょうか? 膿は、体内に侵入した細菌やウイルスと戦うために集まった白血球や、その戦いで死んでしまった細胞、そして組織の残骸などが混ざり合ってできたものです。つまり、膿は体が細菌と戦っている証拠とも言えます。 膿が出ること自体は、必ずしも悪いことではありません。しかし、大量の膿が溜まったり、体の深い部分に膿が溜まってしまうと、周囲の組織を圧迫したり、炎症が広がってしまう可能性があります。そのため、膿が出た場合は、自己判断せずに医療機関を受診するようにしましょう。

医療現場のRx:処方箋の隠れた主役

病院やクリニックで診察を受けると、医師から処方箋を発行してもらえますね。 その処方箋に書かれた薬の名前の前に、必ずと言っていいほど「Rx」という記号が書かれているのに気付いたことはあるでしょうか? 多くの人にとっては何気なく見過ごしてしまうような、この謎めいた記号ですが、実は医療現場において、とても重要な役割を担っているのです。 「Rx」は、ラテン語で「Recipe(レシピ)」の略語です。「Recipe」には「受け取れ」という意味があり、医師から患者さんへの「この薬を受け取って下さい」というメッセージが込められています。 「Rx」は単なる記号ではなく、医師の指示を明確に示し、患者さんが安心して薬を受け取れるようにするための、大切な合言葉と言えるでしょう。 今では、この「Rx」は、処方箋だけでなく、薬局や医薬品のロゴマークなど、医療に関わる様々な場面で使用されるようになっています。 医療現場で見かける「Rx」は、患者さんと医療従事者を繋ぐ、重要な役割を担っていることを、少しだけ心に留めておいて下さい。

免疫抑制薬:その役割と注意点

- 免疫抑制薬とは私たちの体は、細菌やウイルスなどの病原体が侵入してくると、それらを排除しようと攻撃する仕組みが備わっています。これを免疫と呼びます。免疫は、健康な体を維持するために非常に重要な働きをしています。しかし、時にこの免疫システムが過剰に働きすぎたり、誤って自分自身の細胞を攻撃してしまうことがあります。これが、自己免疫疾患や移植臓器への拒絶反応です。免疫抑制薬は、このような免疫システムの過剰な反応を抑え、病気の症状を和らげるために用いられる薬です。具体的には、免疫細胞の増殖や働きを抑えたり、免疫反応を引き起こす物質の産生を抑えることで効果を発揮します。免疫抑制薬は、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患、臓器移植後、アトピー性皮膚炎や気管支喘息などのアレルギー疾患など、様々な病気の治療に用いられています。免疫抑制薬は、感染症にかかりやすくなる、悪性腫瘍のリスクが高まるなど、いくつかの副作用も知られています。そのため、医師は、患者さんの病気の状態や体質などを考慮して、慎重に免疫抑制薬を選択し、使用していく必要があります。また、患者さん自身も、免疫抑制薬を使用する際には、医師から十分な説明を受け、正しく理解しておくことが大切です。
産婦人科

母から子への贈り物?~垂直感染を知ろう~

- 垂直感染とは妊娠中の母親からお腹の赤ちゃんへ、病原体が伝わることを垂直感染といいます。これは、妊娠中だけでなく、出産時や授乳期など、赤ちゃんが母親のお腹にいる間や生まれて間もない時期にも起こり得るため、注意が必要です。垂直感染を引き起こす病原体には、ウイルスや細菌、寄生虫など様々なものがあります。これらの病原体の中には、大人が感染しても風邪のような軽い症状で済むものもありますが、胎児や新生児にとっては命に関わる重い病気につながる可能性もあるため、注意が必要です。妊娠中に母親が感染すると、胎盤を通して、あるいは出産時に産道で赤ちゃんに病原体が感染することがあります。また、母乳を通して感染することもあります。垂直感染によって赤ちゃんに現れる症状は、感染した病原体や感染時期によって異なります。中には、生まれた時に症状が現れない場合もあります。しかし、成長とともに発達障害や知的障害などの後遺症が現れる可能性もあるため、早期発見と適切な治療が重要です。妊娠を希望する場合は、過去の感染症や予防接種の有無などについて医師に相談しましょう。また、妊娠中は、感染症の予防に努め、定期的な妊婦健診を受けることが大切です。何か気になる症状がある場合は、すぐに医師に相談してください。

カルテで見るs.c.って?

病院で診察を受けると、医師が手早くカルテに書き込んでいる姿を見かけることがありますね。あのカルテには、実は私たち患者には馴染みのない、たくさんの略語が使われています。カルテは患者さんの症状や治療経過を記録するための大切な書類ですが、限られた時間の中で効率的に情報を共有するために、医療現場では独自の略語が使われているのです。 これらの略語は、医学用語を短く表したものや、英語の医学用語を省略したものなど、様々な種類があります。例えば、体温を表す「BT」や脈拍を表す「PS」など、日常的によく使われる単語の頭文字を取ったものもあれば、「Gastrointestinal」を「GI」と短縮するなど、英語表記をそのまま略したものもあります。 一見すると暗号のように思えるこれらの略語ですが、理解することで、自分の体で何が起きているのか、どんな治療を受けているのかをより深く理解することができます。また、医師とのコミュニケーションを円滑にする上でも役立つことがあります。 もちろん、全ての略語を覚える必要はありませんが、興味を持って調べてみることで、医療の世界を少し身近に感じることができるかもしれません。
救急

外因死とは?その意味と例

- 外因死の定義人が亡くなる原因には、大きく分けて『内因死』と『外因死』の二つがあります。病気によって命を落とす場合が内因死と呼ばれるのに対し、外因死とは、病気以外の要因によって引き起こされる死亡のことを指します。つまり、病気そのものが直接の死因ではなく、事故や事件、災害など、身体の外側から影響を与える何らかの要因が死に繋がった場合に外因死と判断されます。例えば、交通事故による負傷や、転落・転倒によるケガ、溺水、火災、窒息、中毒などが原因で亡くなった場合は、外因死とみなされます。病気によって身体が弱っている状態であったとしても、最終的に死に至った原因が病気以外の要因であれば、外因死と判断されるケースがほとんどです。外因死は、その原因となる要因が多岐にわたるため、予防対策が難しいという側面も持ち合わせています。しかし、交通ルールをしっかりと守る、危険な場所には近づかないなど、日頃から注意を払うことで、外因死のリスクを減らすことは可能です。
脳・神経

高次脳機能障害について

- 高次脳機能障害とは 高次脳機能障害は、交通事故や脳卒中といった病気や怪我によって脳が損傷することで発症します。脳の損傷により、言語、記憶、注意、遂行機能、社会的行動、情緒といった機能に障害が現れ、日常生活に様々な支障をきたす状態を指します。 高次脳機能障害では、具体的な症状として、言葉を発したり理解することが困難になる場合があります。また、新しいことを覚えられなくなったり、覚えが悪くなったりする記憶障害、周りの状況を把握することが困難になる注意障害などもみられます。 さらに、計画を立てたり、物事を順序立てて行うことが難しくなる遂行機能障害、他人とのコミュニケーションがうまくいかなくなる、場にそった行動が取れなくなるといった社会的行動の障害、感情のコントロールが難しくなる情緒障害なども現れることがあります。 これらの症状は、脳の損傷部位や程度によって異なり、一人ひとり症状の出方が異なります。そのため、個々の症状に合わせたリハビリテーションや支援が必要となります。
血液

知っておきたい溶血:その原因と影響

私たちの体内を流れる血液の中には、体中に酸素を届ける役割を担う赤い細胞、赤血球が存在します。健康な状態であれば、赤血球は約120日間、体内を循環しながら酸素を運び続けます。そして、その役割を終えると、主に肝臓で分解され、体外に排出されます。これは、例えるならば、工場で製造された製品が、一定期間使用された後に回収され、リサイクルされるようなものです。 しかし、溶血と呼ばれる現象が起こると、まだ十分に役割を果たせるはずの赤血球が、寿命を迎える前に壊れてしまいます。これは、工場でまだ使える製品が、出荷前に壊れてしまうようなもので、体内では大変な異常事態と言えます。溶血が起こると、体内の赤血球の数が減少し、酸素を十分に体に行き渡らせることができなくなります。その結果、貧血と呼ばれる状態に陥り、動悸や息切れ、顔面蒼白といった症状が現れることがあります。さらに、重症化すると、生命に関わる可能性もあるのです。
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