総合健康ガイド

看護技術

看護記録の焦点:フォーカスチャーティングとは

医療現場において、看護記録は患者の状態や受けた看護ケアの内容を正確に記録し、医師や薬剤師、理学療法士など、医療チーム全体で情報を共有するために非常に重要なツールです。近年、従来の記録方式に加えて、患者の視点に立った、より患者中心的な記録方式が注目されています。 従来の記録方式では、看護師の視点から見た症状や行った処置などが中心に記録される傾向にありました。しかし、患者中心の記録方式では、患者の発言や行動、そしてその背景にある感情や考え方を重視します。 代表的な患者中心の記録方式として、『フォーカスチャーティング』があります。これは、患者の状態や行動、看護師の観察内容などを、「データ」「アクション」「レスポンス」の3つの要素で記録する手法です。「データ」は患者の訴えやバイタルサインなどの客観的な情報を、「アクション」は看護師が行ったケアの内容を、「レスポンス」はケアに対する患者の反応を記録します。 患者中心の記録方式を導入することで、医療チーム全体が患者の状況をより深く理解し、患者一人ひとりのニーズに合わせた質の高い医療を提供することに繋がります。また、患者自身が自分の状態や治療経過を把握しやすくなることで、治療に対する意欲や自己管理能力の向上も期待できます。
脳・神経

痛みとは何か:その役割とメカニズム

- 痛みの定義痛み、すなわち「痛み」は、私たちが日々感じる最もありふれた感覚の一つと言えるでしょう。多くの人が経験するにもかかわらず、その仕組みや役割には、まだ分からない点が多く残されています。痛みは、ただ単に嫌な感覚と思われがちですが、実際には私たちの体を危険から守るために重要な働きをしています。痛みは、体の一部に何らかの異常が生じていることを知らせる警告信号の役割を担っています。例えば、熱いものに手を触れたときに感じる熱さや、鋭利なもので切ったときに感じる痛みは、私たちに危険が迫っていることを瞬時に知らせ、手を引っ込めたり、傷口を押さえたりするなどの行動を促します。このような防御反応のおかげで、私たちは大きな怪我や火傷を負わずに済むのです。また、痛みは怪我の治療を促す役割も担っています。捻挫をした場合、その部分を庇うように歩くことで、さらにひどい怪我になることを防ぎます。骨折した場合は、激痛のためにその部分を動かさなくなり、骨が自然にくっつくのを助けます。このように、痛みは私たちに安静を促し、体が回復するまでの時間を与えてくれるのです。痛みは時に、病気のサインとなることもあります。例えば、原因不明の腹痛が続く場合は、消化器系の病気の可能性が考えられます。頭痛が続く場合は、脳の病気の可能性も考えられます。このように、痛みは私たちの体の異常にいち早く気づかせてくれる重要なサインなのです。痛みは単なる不快な感覚ではなく、私たちの生存や健康を守る上で欠かせない役割を担っています。痛みのメカニズムや役割を理解することで、痛みをより適切に管理し、より健康な生活を送ることに繋がるでしょう。
検査

乳がん検診の要!マンモグラフィを理解しよう

- マンモグラフィとは?マンモグラフィは、乳房を調べるための特別なレントゲン検査です。 健康診断などで行われる通常のレントゲン検査では、胸全体を撮影しますが、マンモグラフィでは、乳房だけを細かく調べるために設計された専用の装置を使用します。検査を受ける際には、乳房を装置に挟み、薄く広げた状態で撮影します。これは、乳房内部の構造をより鮮明に写し出すためです。 また、少ない量のX線を当てることで、身体への負担を最小限に抑えながら検査を行うことができます。撮影された画像は、医師によって注意深く分析されます。 医師は、画像から、しこりや石灰化といった、乳がんを疑わせるサインがないかを調べます。 特に、早期の乳がんは、小さなしこりとして現れることが多く、マンモグラフィは、これらの微細な変化を見つけるのに非常に優れています。マンモグラフィは、乳がんの早期発見に大きく貢献しており、広く普及している検査方法です。
その他

身近な脅威、感染症について

- 感染症とは私たちの身の回りには、目には見えない小さな生き物がたくさんいます。その中には、私たちの体の中に入ると、体に害を及ぼすものもいます。このような生き物のことを病原体といい、病原体が体の中に侵入して増え、体に悪さをすることで、私たちは病気になってしまいます。この病気を、感染症と呼びます。感染症を引き起こす病原体には、大きく分けて、細菌やウイルス、真菌など、様々な種類があります。それぞれの種類によって、引き起こされる病気や症状、感染経路などが異なります。例えば、風邪の原因となるのは主にウイルスであり、インフルエンザもインフルエンザウイルスというウイルスによって引き起こされます。食中毒は、細菌やウイルスによって汚染された食べ物を口にすることで感染します。病原体が体内に侵入したとしても、必ずしも感染症を発症するわけではありません。私たちの体は、生まれながらに備わっている免疫や、ワクチンや過去の感染によって得られた免疫によって、病原体から身を守る仕組みを持っているからです。この免疫システムのおかげで、多くの場合、病原体の侵入を防いだり、排除したりすることができます。しかし、体が疲れていたり、栄養が不足していたり、睡眠不足が続いたりすると、免疫の働きが弱まってしまうことがあります。また、病気やストレス、加齢なども、免疫力を低下させる要因となります。免疫力が低下すると、病原体の侵入を防ぐことができなくなり、感染症を発症しやすくなってしまいます。感染症を予防するためには、普段から、バランスの取れた食事や十分な睡眠、適度な運動を心がけ、免疫力を高めておくことが大切です。また、外出後の手洗いとうがいを徹底したり、人混みを避けるなど、病原体との接触を減らすように心がけることも重要です。
血液

希望を繋ぐ、骨髄移植という治療

- 骨髄移植とは骨髄移植は、血液の病気で苦しむ患者さんの命を救うための大切な治療法です。たとえば、白血病や悪性リンパ腫、再生不良性貧血といった、血液細胞の異常が原因で起こる病気に対して、効果が期待されています。では、骨髄移植は具体的にどのような治療法なのでしょうか。簡単に言うと、健康な人から提供された骨髄から、血液を作るもとになる細胞(造血幹細胞)を取り出し、それを患者さんの体内へ移植する治療法です。私たちの体の中では、骨髄と呼ばれる骨の中心部にある組織で、日々新しい血液が作られています。しかし、血液の病気になると、この血液を作る働きが弱ってしまったり、異常な血液が作られてしまったりします。そこで、骨髄移植によって、健康な人の造血幹細胞を患者さんの体内に入れることで、再び正常な血液を作り出す力を取り戻すことを目指します。 これは、まるで病気で弱ってしまった土壌に、新しい種をまくことで、再び植物を育てる力を取り戻すのと似ています。骨髄移植は、患者さんにとって大きな負担を伴う治療法ですが、血液の病気に対する有効な治療法の一つとして、多くの患者さんに希望を与えています。
外科

生命を支えるパイプライン:シャント機能不全とその対処

私たちの体は、血管やリンパ管など、体液を循環させるための重要な管が隅々まで張り巡らされています。これらの管は、まるで体中に張り巡らされた水道管のように、血液やリンパ液といった体液を必要な場所に送り届ける役割を担っています。しかし、病気や怪我によって、これらの重要な管が詰まったり、機能しなくなったりすることがあります。水道管が壊れて水が流れなくなってしまうように、体液を運ぶ管が正常に機能しなくなると、私たちの体は栄養や酸素を十分に受け取ることができなくなり、生命維持に支障をきたす可能性も出てきます。 このような事態に対処するために開発されたのが「シャント」です。シャントとは、人工的に作ったバイパスルート、つまり体液の流れ道のことを指します。体内に細い管を通したり、血管同士をつなぎ合わせたりすることで、本来のルートが機能しなくても体液をスムーズに流すことができるようになります。これは、まるで壊れた水道管を迂回して新しい水道管を敷設するようなものです。シャントによって体液の流れを確保することで、栄養や酸素を体の各部に届け、正常な生命活動を維持することが可能になります。シャントは、心臓外科手術や透析治療など、様々な医療分野で重要な役割を果たしています。

処方箋の「TD」ってなに?

病院で診察を受けると、医師から治療に必要な薬が記載された処方箋を受け取ります。この処方箋には、薬の名前や量、服用方法などが記載されていますが、服用方法を表す際に「TD」のような略語が使われていることがあります。 このような略語は、医療従事者にとっては日常的に使用されるものですが、患者にとっては一見すると分かりにくいものです。今回は、処方箋によく使われる略語の一つである「TD」について詳しく解説していきます。 「TD」は、ラテン語の「Ter Die」を省略したもので、「1日に3回」という意味です。つまり、「TD」と処方箋に書かれている場合は、その薬を1日に3回服用することを意味します。 例えば、「朝昼晩」と指示がある場合や、「食後3回」などと書かれている場合に、「TD」が用いられることがあります。 薬の効果を最大限に発揮し、副作用を最小限に抑えるためには、処方箋に記載された服用方法を正しく守ることが重要です。 処方箋に記載されている内容で不明な点があれば、医師や薬剤師に質問し、正しく薬を服用するようにしましょう。
その他

物質量の単位 mol

皆さんは、鉛筆やノートパソコンを数える際に「ダース」という言葉を使うことがありますよね。1ダースが12個であるように、化学の世界にも、目に見えないほど小さな原子や分子を数えるための特別な単位があります。それが、これから説明する「モル」です。 「モル」は、国際的に定められた単位で、原子や分子を非常にたくさん集めたときの量を表します。1モルの粒子の数は、6.02214076×10²³個ととてつもない数になります。この途方もない数字は、「アボガドロ定数」とよばれ、1モルの定義の基礎となっています。 では、なぜこのような大きな数を扱うのでしょうか?それは、原子や分子が非常に小さく、1個ずつ扱うのが現実的ではないからです。例えば、水素原子1個の質量は、わずか1.67×10⁻²⁴グラムしかありません。このような小さな数字を扱うよりも、アボガドロ定数個のまとまりとして扱う方が、物質の量を把握しやすいため、モルという単位が用いられています。 日常生活でモルを意識することはほとんどありませんが、化学の分野では、物質の性質や反応を理解する上で欠かせない概念となっています。

身近に潜む脅威、緑膿菌

私たちの身の回りには、目には見えないながらも無数の細菌が存在しています。その中でも、緑膿菌は、土壌や水場といった自然環境から、人間の皮膚や腸の中まで、実に様々な場所に生息している細菌です。 健康な状態であれば、緑膿菌は私たちと共存しており、特に病気を引き起こすことはありません。むしろ、土壌の栄養分を分解したり、腸内環境を整えたりと、自然界や私たちの体内で重要な役割を担っています。 しかし、緑膿菌は、免疫力が低下した人や、手術や怪我などで体内に侵入しやすくなっている人にとっては、脅威となる可能性があります。肺炎、尿路感染症、創傷感染症など、様々な感染症を引き起こすことが知られており、重症化すると命に関わることもあります。 特に、医療現場では、緑膿菌は院内感染の原因菌の一つとして警戒されています。これは、緑膿菌が抗菌薬に対する抵抗力を持ちやすい性質を持っているためです。院内感染を防ぐためには、手洗い・消毒の徹底など、医療従事者だけでなく、患者やその家族も共に感染予防対策に取り組むことが重要です。
血液

骨髄バンク:命をつなぐ希望の橋渡し

骨髄バンクとは、白血病などの血液疾患で苦しむ患者さんにとって、まさに命の橋渡しをする大切な役割を担っています。これらの病気の治療には、健康な人の骨髄から採取した造血幹細胞を移植する治療法が有効な場合があります。しかし、移植が成功するには、提供者と患者さんの間で、白血球の型であるHLA型が一致する必要があります。 骨髄バンクは、まさにこのHLA型の一致という難題を乗り越えるために存在しています。ドナーと呼ばれる提供者の方々から、骨髄液や末梢血幹細胞を提供していただき、大切に保管しています。そして、移植を必要とする患者さんが現れた際に、HLA型が一致するドナーを探し出し、移植が実現するよう橋渡しを行います。 提供者と患者さん、両者の善意と希望を繋ぐ骨髄バンクは、多くの命を救う可能性を秘めた、非常に重要な役割を担っていると言えるでしょう。
救急

多臓器不全:体の危機

- 多臓器不全とは 人間の身体は、心臓が血液を送り出し、肺が酸素を取り込み、腎臓が老廃物を濾過するなど、それぞれの臓器が重要な役割を担い、まるで精巧な機械のように機能しています。 これらの臓器は独立しているわけではなく、互いに密接に連携し合い、私たちの生命を維持するために休むことなく働いています。 しかし、体の大きな病気や怪我がきっかけで、この精巧なシステムが崩れてしまうことがあります。 例えば、深刻な感染症にかかったり、交通事故などで大怪我を負ったり、大規模な手術を受けた場合など、体が大きなストレスにさらされると、複数の臓器が同時に機能不全に陥ることがあります。これが「多臓器不全」と呼ばれる状態です。 多臓器不全は、文字通り複数の臓器が機能不全に陥る深刻な状態で、命に関わる危険性も非常に高い状態です。 臓器の機能不全が進むと、血液中の酸素濃度が低下したり、老廃物が体内に蓄積したり、体温調節が困難になったりと、様々な症状が現れます。 多臓器不全の原因や症状、治療法は多岐にわたるため、ここでは概要について説明しました。詳細については、それぞれの項目をご覧ください。
検査

肝臓の健康を知る指標:ALTとは?

- ALTの概要ALTとは、アラニンアミノトランスフェラーゼという酵素の略称です。 この酵素は、主に肝臓の細胞内に存在し、体内でのアミノ酸代謝に重要な役割を担っています。具体的には、アラニンというアミノ酸をピルビン酸という物質に変換する反応を触媒します。この反応は、エネルギー生産や糖新生といった重要な代謝経路に関与しています。健康な状態であれば、血液中のALT濃度は低く保たれています。 これは、ALTが主に肝細胞内に存在し、血液中に漏れ出す量はごくわずかだからです。しかし、肝炎や脂肪肝、肝臓がんといった病気によって肝細胞が損傷を受けると、ALTが血液中に流れ出してしまいます。そのため、血液検査でALT値が上昇している場合は、肝臓に何らかの異常がある可能性を示唆していると考えられます。ただし、ALT値が上昇していても、必ずしも重い肝臓病であるとは限りません。一時的な疲労や飲酒、薬の服用などによってもALT値は上昇することがあります。ALT値の上昇の原因を特定し、適切な治療を行うためには、医師による診察と、他の検査結果と組み合わせた総合的な判断が必要となります。
その他

インフォームドチョイス:医療における自己決定権

- インフォームドチョイスとは 医療現場において、患者さんが自身の健康や治療に関する決定に主体的に関わるための重要な概念、それが「インフォームドチョイス」です。 従来の「インフォームドコンセント」では、医師が患者さんに対して治療内容やリスクなどを説明し、患者さんがそれに同意するかどうか、という点が重視されてきました。しかし、「インフォームドチョイス」は一歩進み、患者さんが自ら積極的に治療方針に関わっていくことを目指しています。 具体的には、医師は患者さんに対して、考えられる複数の治療法について、それぞれのメリットだけでなく、デメリットやリスク、成功率、治療期間、費用なども含めて、わかりやすく丁寧に説明する必要があります。 患者さんは、医師から提供された情報に加えて、インターネットや書籍などで自ら情報を収集したり、家族や他の医療従事者に相談したりするなどして、自身の価値観や生活背景、将来の希望などを考慮しながら、納得のいくまで治療法を検討します。 そして最終的には、患者さんが自ら主体的に、最適だと考える治療法を選択します。医師は、患者さんの選択を尊重し、その選択に基づいた治療を提供する義務があります。 インフォームドチョイスは、患者さんが自身の健康に対してより積極的に関与することで、より良い治療結果や生活の質の向上につながると考えられています。
その他

身近に潜むサイトメガロウイルス

- サイトメガロウイルスとはサイトメガロウイルス(CMV)は、ヒトヘルペスウイルス5型とも呼ばれる、ありふれたウイルスです。このウイルスは、口唇ヘルペスの原因となるウイルスと同じ仲間です。世界中で多くの人がCMVに感染しており、日本では成人の約8割が過去に感染した経験を持つと言われています。健康な人がCMVに感染した場合、多くの場合は何も症状が出ないか、風邪のような軽い症状で済みます。しかし、免疫力が低下している人や妊娠している人が感染すると、肺炎や脳炎などの重篤な病気を発症するリスクが高まるため、注意が必要です。CMVは、咳やくしゃみなどの飛沫感染や、感染者の体液に接触することによって感染します。また、母子感染や性行為によって感染することもあります。一度感染すると、ウイルスは体の中に潜伏し続けます。普段は症状が出ませんが、免疫力が低下すると再び活性化し、症状が現れることがあります。CMVの感染を予防するためには、こまめな手洗いやうがいを心がけ、感染者の体液に触れないようにすることが大切です。また、免疫力が低下している人は、CMV感染のリスクが高いことを認識し、予防対策を徹底する必要があります。
血液

血液凝固:出血を止める体の仕組み

- 血液凝固とは私たちは日常生活で、ちょっとした擦り傷から、転んで深く傷を作ってしまうことまで、様々な怪我をする可能性があります。怪我をして出血すると、体にとって大切な血液が外に出ていってしまいます。しかし、私たちの体は、出血を放置して、血液を無駄にしてしまうようなことはしません。出血をできるだけ早く止めて、体を守る仕組みを持っているのです。血液凝固とは、血管が傷ついて出血した時に、その出血を止めるために体が起こす反応のことです。この反応は、まるで複雑なパズルのように、様々な要素が組み合わさって起こります。まず、血管が傷つくと、その傷口を塞ぐように、血小板と呼ばれる小さな細胞が集まってきます。血小板は、傷口に集まると、互いにくっつき合い、まるで「栓」のようになって傷口を塞ぎます。これが血液凝固の第一段階です。次に、「血液凝固因子」と呼ばれるタンパク質が活性化され、次々と反応していきます。そして最終的に、血液中に溶けているフィブリンというタンパク質が、網目状の構造を作って、傷口をしっかりと塞ぎます。このようにして、血液凝固は、私たちの体を傷や出血から守る、非常に重要な役割を担っています。怪我をして出血した時に、自然と血が止まるのは、この血液凝固という優れたシステムが、私たちの体の中で働いているおかげなのです。
脳・神経

硬膜外腔:脊髄を守る重要な空間

- 硬膜外腔とは私たちの背骨は、たくさんの骨が積み重なってできており、その中心には神経の束である脊髄が通っています。脊髄は、脳からの指令を体全体に伝えたり、体からの感覚情報を脳に伝えたりする、非常に重要な役割を担っています。 この大切な脊髄は、3つの層からなる膜でしっかりと保護されています。この膜を髄膜と呼び、外側から硬膜、クモ膜、軟膜と名付けられています。硬膜は、線維質で弾力性に富んだ丈夫な膜で、脊髄を外部からの衝撃から守っています。 さらに、脊髄は、積み重なった骨によって作られるトンネル、脊柱管の中を走行しています。この硬膜と脊柱管の間にあるわずかな隙間のことを、硬膜外腔と呼びます。硬膜外腔には、血管やリンパ管、脂肪組織などが存在し、脊髄への栄養供給や、衝撃を吸収する役割などを担っています。 硬膜外腔は、医療現場でも重要な役割を担っています。硬膜外麻酔は、この硬膜外腔に局所麻酔薬を注入することで、痛みを和らげる効果を発揮します。この麻酔法は、出産時の痛みを和らげたり、下半身の手術時などに用いられたりします。
食生活

筋肉とエネルギー源: クレアチンの役割

- クレアチンとはクレアチンは、私達の体内で自然に生成される、エネルギー代謝に重要な役割を果たす物質です。 筋肉や脳などのエネルギーを多く必要とする組織に特に多く存在しています。クレアチンは、主に肝臓で、3つのアミノ酸(メチオニン、グリシン、アルギニン)を材料に合成されます。食事からも、肉や魚などの動物性タンパク質から摂取することができますが、体内での生成が主な供給源となっています。体内で生成されたクレアチンは、血液によって筋肉などの組織に運ばれ、そこでリン酸と結合してクレアチンリン酸として貯蔵されます。 クレアチンリン酸は、運動などの際に筋肉が収縮するためのエネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)の再生を助ける役割を担っています。激しい運動を行う際、筋肉中のATPは急速に消費されますが、クレアチンリン酸は、ADP(アデノシン二リン酸)にリン酸基を供給することで、ATPの再合成を促進し、エネルギー供給を維持します。このように、クレアチンは、体内でエネルギー代謝に重要な役割を果たしているため、運動能力の向上や筋肉の成長をサポートする効果が期待されています。
血液

エイズ:免疫の崩壊がもたらす脅威

エイズとは、後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome)の略称で、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染によって引き起こされる病気です。 HIVは、免疫システムにおいて中心的な役割を担うヘルパーT細胞を破壊し、体の防御システムを弱体化させてしまいます。 私たちの体は、常にウイルスや細菌などの病原体の攻撃にさらされています。健康な状態であれば、免疫システムがこれらの病原体を攻撃し、排除することで病気から体を守ってくれます。しかし、HIVに感染すると、免疫システムの中核であるヘルパーT細胞が破壊されるため、免疫力が低下してしまいます。その結果、通常であれば発症しないような弱い病原体に対しても、体が抵抗することができなくなり、様々な病気にかかりやすくなってしまうのです。 エイズは、HIV感染によって引き起こされる免疫不全の状態を指します。エイズを発症すると、肺炎や結核、ガンなど、通常では発症しにくい様々な病気を併発するようになります。これらの病気は、健康な人であれば治療可能なものも多いですが、免疫力が低下した状態では重症化しやすく、命に関わることもあります。
看護技術

エンゼルケア:故人との最後の時間を大切に

- エンゼルケアとは人は誰しも、その生涯に幕を閉じるときを迎えます。その時、残された家族は深い悲しみに包まれながらも、故人との最後のお別れの時を迎えなければなりません。エンゼルケアとは、そんな大切な方の旅立ちを穏やかで美しいものにするための、最後の贈り物と言えるでしょう。具体的には、まず温かいお湯とタオルを使い、身体を丁寧に拭き清めます。これは、まるで生きているかのように、故人を慈しむ気持ちで行うことが大切です。そして、生前と同様に化粧を施したり、髪を整えたりすることで、安らかな顔つきに近づけていきます。闘病の痛みや苦しみを偲ばせる傷跡がある場合は、それらを目立たなくする処置を施すこともあります。エンゼルケアは、単なる遺体の処置ではありません。それは、故人に対する敬意と愛情の表れであり、ご遺族が穏やかな気持ちで最後のお別れをするための大切なプロセスです。穏やかな表情の故人と対面することで、ご遺族は深い悲しみの中でも、安らぎと癒しを感じることができるでしょう。それは、故人が残してくれた最後の愛情表現とも言えるかもしれません。
血液

免疫の要!HLAと私たちの身体

- HLAとは何かHLAとは、ヒト白血球抗原(Human Leukocyte Antigen)の略称で、私たちの体を守る免疫システムにおいて、非常に重要な役割を担うものです。 私たちの体の中にある細胞は、それぞれ表面に「自分自身の細胞である」ことを示すマークをつけています。このマークがHLAであり、いわば細胞の「顔写真」のようなものです。免疫細胞は、体の中を常にパトロールして、侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体や、体内で発生した異常な細胞(がん細胞など)を見つけ出して攻撃します。この時、免疫細胞は細胞の表面に提示されたHLAをチェックします。自分自身の細胞が持つHLAであれば「味方」、そうでないHLAであれば「敵」と認識し、攻撃するかどうかを判断します。 つまり、HLAは免疫細胞が「自己」と「非自己」を区別するために不可欠なものであり、私たちの体を病気から守る上で非常に重要な役割を担っているのです。HLAは、非常に多くの種類が存在し、その組み合わせは個人によって異なります。そのため、HLAは臓器移植の際に、適合性を判断する重要な指標として用いられています。適合しないHLAを持つ者同士で臓器移植を行うと、拒絶反応が起こる可能性が高くなるためです。
脳・神経

運動を支える裏方:錐体外路系

私たちは体を思い通りに動かすことができますが、この運動の指令を脳から筋肉へと伝える経路には、大きく分けて錐体路と錐体外路の二つの経路が存在します。 錐体路は、主に意識的な運動をコントロールする経路です。例えば、ピアノを弾く時の指の動きや、文字を書く時のペンの動きなど、繊細で複雑な運動を正確に行うためには、錐体路が重要な役割を果たします。この経路は、例えるならば、オーケストラの指揮者が演奏全体を統率するように、体の各部位の筋肉に的確な指示を出して、滑らかで正確な運動を実現する、司令塔のような役割を担っています。 一方、錐体外路は、主に無意識下で行われる運動を調節する経路です。私たちが意識しなくても、姿勢を保ったり、歩行時に腕を振ったり、表情を作ったりすることができるのは、錐体外路が働いているおかげです。錐体外路は、様々な筋肉の動きを協調させ、円滑な運動を支える、いわば縁の下の力持ちといえるでしょう。 これらの二つの経路は、それぞれ独立して機能しているように見えますが、実際には密接に連携し合いながら、私たちの複雑な運動を可能にしています。
検査

健康のバロメーター:BMIについて

- 体格指数(BMI)についてBMIとは、Body Mass Indexの略称で、日本語では体格指数と訳されます。これは、身長と体重から算出される数値であり、肥満度を客観的に評価するために広く用いられています。BMIの計算式は非常に簡単です。体重(キログラム) ÷ 身長(メートル) ÷ 身長(メートル)で求められます。例えば、身長が1.75メートル、体重が70キログラムの人のBMIは、70 ÷ 1.75 ÷ 1.75 = 22.9となります。BMIは、国際的な基準値に基づいて、以下の通りに分類されます。* 18.5未満低体重* 18.5以上25未満普通体重* 25以上30未満肥満(1度)* 30以上35未満肥満(2度)* 35以上40未満肥満(3度)* 40以上肥満(4度)BMIは、肥満の判定に役立つ指標ですが、体脂肪率や筋肉量を考慮していないため、アスリートや高齢者の方などでは、BMIだけで肥満度を判断することが適切ではない場合があります。あくまでも目安として捉え、健康状態の確認には、医師の診断を受けるようにしましょう。
脳・神経

破傷風:静かなる脅威とその予防

- 破傷風とは破傷風は、破傷風菌と呼ばれる細菌によって引き起こされる感染症です。この細菌は、土や埃の中など、私達の身の回りによく見られます。通常は、傷口を通して体の中に入り込みます。傷は、小さく浅いものから、大きく深いものまで様々ですが、破傷風菌は、傷口の奥深く、酸素が少ない環境で繁殖しやすいため、注意が必要です。破傷風菌は、体の中で毒素を作ります。この毒素は、神経に影響を与え、筋肉を異常に緊張させる作用があります。その結果、様々な症状が現れます。初期症状としては、口が開きにくくなったり、ものを飲み込みにくくなったりすることが挙げられます。さらに症状が進むと、全身の筋肉が硬直したり、痙攣を起こしたりすることもあります。特に、背中や腹部の筋肉が硬直することで、体が弓なりに反り返ってしまうこともあります。破傷風は、重症化すると命に関わる危険性も高く、予防が非常に重要です。予防には、破傷風ワクチンが有効です。乳幼児期に定期接種を受けることで、発症のリスクを大幅に減らすことができます。また、大人になってからも、追加接種を受けることで、効果を維持することができます。万が一、傷を負ってしまった場合には、傷口を清潔に保ち、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。
看護技術

看護の現場で活躍するカーデックス

- カーデックスとは病院の病棟では、患者さん一人ひとりの情報を正確に把握し、安全な看護を提供することが非常に重要です。そのために用いられるのが「カーデックス」と呼ばれる記録用紙です。カーデックスは、患者さん一人ひとりに専用のものが用意され、氏名や年齢といった基本的な情報はもちろん、病気や治療内容、服用している薬、食事の内容、アレルギーの有無など、医療に関わる様々な情報が詳細に記録されます。さらに、看護師は患者さんの状態を観察し、体温や脈拍、血圧などの測定結果、行った処置やその後の経過などを記録していきます。これらの情報は、一枚の紙に要約してまとめられ、専用のファイルに保管されます。ファイルには複数の患者さんのカーデックスが収められており、看護師は必要なときにすぐに取り出して患者さんの情報を確認することができます。カーデックスは、患者さんに関する情報を一元的に管理し、看護師間で共有するための重要なツールと言えるでしょう。情報を共有することで、看護師は、患者さん一人ひとりに最適な看護を提供できるだけでなく、業務の引継ぎもスムーズに行うことができます。また、医師や薬剤師など、他の医療従事者にとっても、患者さんの状態を把握するための貴重な情報源となっています。このように、カーデックスは、病院において患者さんの安全な医療と看護を提供するために欠かせない存在です。
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