総合健康ガイド

血液

血液の隠れた主役:血漿の役割

私たちの体の中に流れる血液は、大きく分けて二つの要素で成り立っています。一つは赤血球、白血球、血小板といった細胞成分で、もう一つはこれらの細胞を包み込む液体成分である血漿です。血液全体のおよそ6割がこの血漿で、残りの4割が細胞成分に当たります。 血液を採取し、試験管に入れて高速で回転させると、成分の違いによって重いものから順に沈殿していきます。一番下に沈むのは赤血球、その上に血小板と白血球を含む薄い層ができ、そして一番上に透明な淡黄色の液体部分が現れます。これが血漿です。 一見すると、ただの水のように見える血漿ですが、実際には生命維持に不可欠な様々な成分が含まれています。栄養素やホルモン、電解質などを体全体に運搬する役割を担っている他、老廃物や二酸化炭素を運び出す役割も担っています。さらに、免疫機能や血液凝固などにも関与しており、私たちの体が正常に機能する上で欠かせない存在と言えるでしょう。
消化器

胃の病気とピロリ菌

ピロリ菌とは、正式にはヘリコバクター・ピロリと呼ばれる、胃の粘膜に生息する細菌です。この細菌は、その名の通り、らせん状の形をしており、胃の中で生きていくための驚くべき能力を備えています。 私たちの胃は、強力な酸性の胃液で満たされており、食べ物を消化すると同時に、外部から侵入してくる細菌などの有害な物質を殺菌する役割を担っています。しかし、ピロリ菌は、この過酷な環境である胃酸の中でも生き延びることができるのです。 ピロリ菌は、世界中で非常に多くの人々に感染しており、特に衛生状態が十分ではない地域では、感染率が高い傾向にあります。かつて日本でも、衛生状態の悪さから多くの人がピロリ菌に感染していました。しかし、近年では上下水道などのインフラ整備が進み、衛生状態が大幅に改善されたため、感染率は低下してきています。 それでもなお、日本は先進国の中ではピロリ菌の感染率が高い国の一つとされており、特に中高年を中心に、依然として多くの感染者がいると考えられています。これは、過去の衛生環境の影響や、一度感染すると体内に長期間にわたって潜伏し続けるピロリ菌の特性によるものと考えられます。
資格・職種

看護師の転職サポート!ナースバンクとは?

ナースバンクは、転職を考えている看護師の方や、医療現場への復帰を目指す看護師の方を対象に、無料で就職活動を支援するサービスです。 都道府県ごとに設置された看護協会が運営するナースセンターが、求職中の看護師と、看護師を求めている病院、診療所、介護施設といった医療機関をつなぐ役割を担っています。 利用にあたっては、登録料や紹介料などの費用は一切かかりません。 ナースバンクの魅力は、求人情報の提供だけにとどまらず、担当者が親身になって、さまざまなサポートを提供してくれる点にあります。 具体的には、希望の条件に合う求人の紹介、履歴書の書き方や面接対策の指導、給与や勤務時間などの条件交渉、入職後の職場環境に関する相談など、就職活動の開始から入職後まで、一貫して寄り添ったサポートを受けられます。 そのため、転職活動が初めての方や、ブランクがあって不安を感じている方でも、安心して利用することができます。
泌尿器

知っていますか?過活動膀胱について

- 過活動膀胱とは過活動膀胱とは、尿をためておく膀胱という臓器の機能に異常が生じ、様々な排尿の症状を引き起こす病気です。健康な状態では、膀胱に尿がたまると脳に信号が伝わり、私たちは「尿がたまっている」と認識します。そして、トイレに行きたいタイミングで脳から膀胱に指令を出し、尿を排出します。しかし、過活動膀胱になると、この膀胱と脳の連携がうまくいかなくなります。膀胱にまだ十分な量の尿がたまっていないにも関わらず、脳に「尿意」の信号が送られてしまうのです。そのため、突然我慢できないような強い尿意(尿意切迫感)に襲われることが多くなります。また、このような強い尿意に何度も襲われることで、トイレに行く回数が増え、頻尿の症状が現れます。特に、夜寝ている間に何度もトイレに行きたくなってしまう夜間頻尿に悩まされる場合もあります。さらに、尿意が非常に強く、トイレに間に合わない場合、我慢できずに尿が漏れてしまう切迫性尿失禁もみられます。過活動膀胱は、加齢に伴い膀胱や神経の機能が低下することが原因で、中高年以降の方に多くみられます。しかし、若い世代でも発症する可能性は十分にあります。過活動膀胱は、生活の質を著しく低下させる病気であるため、気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
資格・職種

世界を繋ぐ看護師の輪:国際看護師協会

- 国際看護師協会って? 国際看護師協会(ICN)は、世界中の看護師を代表する唯一の組織です。1899年に設立され、国際的な機関が集まるスイスのジュネーブに本部を置いています。世界で初めて作られた国際的な看護師団体であり、その規模は世界最大を誇ります。 ICNは、国境を越えて看護師同士が協力し、世界中の人々の健康を向上させることを目指しています。具体的には、国際会議や研修を通じて、看護師の知識や技術の向上を支援しています。また、世界保健機関(WHO)などの国際機関と協力し、保健医療政策の立案や実施にも貢献しています。 さらに、ICNは、看護の質向上と看護師の労働環境改善にも力を入れています。国際的な基準やガイドラインを作成し、各国で活用されるよう働きかけています。 このように、国際看護師協会は、世界中の看護師を結びつけ、人々の健康と福祉に貢献する重要な役割を担っています。
消化器

感染性胃腸炎: 冬の流行に注意

- 感染性胃腸炎とは感染性胃腸炎は、ウイルスや細菌などの微生物が原因となって、胃や腸などの消化管に炎症が起こる病気です。代表的な症状としては、吐き気や嘔吐、下痢、腹痛などがあり、発熱を伴うこともあります。これらの症状は、体内に入った病原体が胃や腸の粘膜に侵入し、炎症を引き起こすことで現れます。感染性胃腸炎の多くは、経口感染で広がります。これは、汚染された飲食物を口にすることで、病原体が体内に侵入することを意味します。例えば、十分に加熱処理されていない肉や魚介類、洗浄が不十分な野菜、賞味期限切れの食品などを摂取することで感染する可能性があります。また、感染者の便や吐瀉物に含まれるウイルスや細菌が、手や調理器具などを介して口に入ることでも感染します。感染性胃腸炎は、年間を通して発生しますが、特に冬場に流行しやすい傾向があります。これは、気温が低く乾燥した環境では、ウイルスが活性化しやすくなるためです。また、冬場は人々が室内で過ごす時間が長くなり、密集状態になりやすいことも、感染拡大の一因と考えられます。感染性胃腸炎は、多くは数日から1週間程度で自然に治癒しますが、脱水症状を引き起こしやすいため、こまめな水分補給が重要です。また、症状が重い場合や長引く場合は、医療機関を受診しましょう。

血糖値を下げるホルモン、インスリン

私たちの体には、血糖値を調節する重要なホルモンが存在します。それは、膵臓で作られるインスリンと呼ばれるホルモンです。 食事をすると、ご飯やパンなどに含まれる炭水化物が分解され、ブドウ糖が作られます。ブドウ糖は血液中に流れ込み、全身の細胞に運ばれてエネルギー源として利用されます。 しかし、細胞がブドウ糖を取り込むためには、インスリンの助けが必要です。インスリンは、細胞の扉を開けて、ブドウ糖を細胞内に取り込むように促す働きをします。 もし、インスリンの分泌量が不足したり、働きが悪くなったりすると、細胞はブドウ糖を十分に取り込めなくなります。その結果、血液中のブドウ糖濃度である血糖値が上昇してしまいます。 このように、インスリンは、血糖値を適切に保つために非常に重要な役割を担っています。血糖値が適切に保たれていることで、私たちは健康的に過ごすことができるのです。
泌尿器

神経因性膀胱:排尿の悩みを抱えるあなたへ

- 神経因性膀胱とは 神経因性膀胱は、脳や脊髄、膀胱につながる神経の道筋に障害が起こることで、膀胱の働きに問題が生じる病気です。 健康な状態では、脳からの指令が膀胱に伝わることで、尿が膀胱に溜まっていきます。そして、ある程度の量になると、再び脳から指令が出され、膀胱が収縮し、尿道括約筋が緩むことで、自然に排尿できます。 しかし、神経因性膀胱になると、この複雑な神経の伝達がうまくいかなくなってしまうため、様々な排尿の異常が現れます。例えば、尿意を感じにくくなる、急に我慢できないほど尿意に襲われる、尿がうまく出せない、残尿感がある、といった症状が現れます。 神経因性膀胱の原因は、脳卒中や脊髄損傷、多発性硬化症などの神経系の病気が挙げられます。また、糖尿病や前立腺肥大症、 pelvic organ prolapse(骨盤臓器脱)などの病気によって、神経が圧迫されることで発症することもあります。 神経因性膀胱は、適切な治療を行わないと、尿路感染症や腎臓病などの合併症を引き起こす可能性があります。そのため、排尿に異常を感じたら、早めに医療機関を受診することが大切です。
その他

医療費を決める中医協とは?

皆さんが病院や診療所で診察や治療を受けると、必ず医療費が発生しますよね。この医療費、一体誰がどうやって決めているのか、疑問に思ったことはありませんか? 実は、医療費の一部を患者さんが負担し、残りを健康保険組合などの保険者が負担するこの仕組みの中で、医療サービスそのものの価格を決めているのが、中央社会保険医療協議会、通称「中医協(ちゅういきょう)」と呼ばれる組織なのです。 中医協は、厚生労働大臣の諮問機関として、医療費が不適切に高額になったり、逆に低くなりすぎたりしないよう、バランスをとりながら医療費の適正化を図る重要な役割を担っています。具体的には、診察や検査、薬の処方など、様々な医療サービス一つ一つに値段がつけられており、この値段を「診療報酬」と呼んでいます。中医協は、この診療報酬を2年に1度見直すことで、医療費全体の調整を行っているのです。 中医協での議論は、医療現場の声を代表する医師会と、保険料を支払う側である健康保険組合などの間で、時に激しい議論が交わされる場でもあります。患者さんにとって分かりやすい医療費の仕組み作りを目指し、中医協は今日も議論を重ねています。
消化器

胃腸炎とは:原因と症状、予防策について

胃腸炎は、食べ物を消化し吸収する器官である消化管に炎症が起こる病気です。主に胃、小腸、大腸といった器官が炎症の影響を受けます。一般的に「お腹の風邪」とも呼ばれ、多くの人が経験するありふれた病気です。 胃腸炎になると、腹部に強い痛みを感じることがあります。また、下痢や吐き気、嘔吐といった症状も現れます。これらの症状は、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。例えば、仕事や学校を休まざるを得ない状況になることもありますし、家事や育児に集中することが難しくなることもあります。 多くの場合、胃腸炎は数日程度で自然に治癒します。しかし、症状が長引いたり、重症化したりするケースもあります。特に、下痢や嘔吐が続くと、体内の水分や電解質が失われ、脱水症状に陥る危険性があります。脱水症状が重症化すると、入院治療が必要となる場合もあるため注意が必要です。 胃腸炎の原因はさまざまですが、主にウイルスや細菌による感染が挙げられます。これらの病原体は、汚染された食品や水、あるいは感染者の便などを介して、口から体内へと侵入します。また、ノロウイルスのように、空気中に漂うウイルスを吸い込むことで感染するケースもあります。 胃腸炎を予防するためには、手洗いの徹底が重要です。特に、トイレの後や食事の前には、石鹸と流水を使って手を丁寧に洗いましょう。また、食品を適切な温度で保管したり、調理する際は十分に加熱したりすることも、食中毒による胃腸炎の予防に効果的です。

医療現場のRx:処方箋を意味する記号

病院やクリニックを受診し、医師の診察後、必要があれば薬が処方されます。私たちが受け取る処方箋には、飲む薬の名前や量、服用方法などが事細かに記されています。この処方箋をよく見てみると、「Rx」という謎の記号が目に留まることがあります。多くの人が見たことがあるこの「Rx」とは、一体何を意味するのでしょうか? 実はこちら、ラテン語で「recipe(レシピ)」の省略形なのです。「recipe」は英語で「処方」を意味し、動詞として「処方する」という意味も持ちます。つまり、「Rx」は「処方してください」という医師の指示を表す記号なのです。 「Rx」の歴史は古く、古代ローマ時代にまで遡るとされています。当時、薬剤師は医師から受け取った処方箋に基づいて薬を調合していました。「Rx」は、医師と薬剤師の間で正確な情報伝達を行うための重要な役割を担っていたと考えられています。 現代では、医療現場の情報化が進み、電子カルテやオンライン処方箋が普及しつつあります。しかし、紙の処方箋にも、いまだに「Rx」は記号として残っています。これは、「Rx」が単なる記号ではなく、医師と患者、そして薬剤師をつなぐ大切な歴史と伝統を象徴するものとして、医療従事者たちの間で大切に受け継がれているからかもしれません。
泌尿器

陰嚢:男性器の大切な役割

男性の体において、陰嚢は非常に重要な役割を担っています。陰嚢は、ちょうど袋のような形をしていて、男性器である陰茎の根元部分からぶら下がるように位置しています。肌で直接触れることができ、その表面には多くのしわが見られます。これは、陰嚢を構成する皮膚が非常に薄く、柔らかな性質を持っているためです。 陰嚢の内部には、精子を作り出すための重要な器官である精巣が左右一つずつ、合計二つ収められています。精巣以外にも、精巣に隣接し、精子の成熟や輸送に関わる様々な器官が存在します。 陰嚢は、精巣を体の外に配置することで、精子にとって最適な温度を保つ働きを担っています。精子は、体温よりもやや低い温度環境下で最も活発に生産されることが知られています。そのため、陰嚢は筋肉の働きによって、温度調節を行っているのです。気温が低い場合は、陰嚢は筋肉の収縮によって体に密着し、体温の影響を受けにくくなります。逆に、気温が高い場合は、陰嚢は筋肉が弛緩し、体から離れることで放熱を促します。このように、陰嚢は精巣を外部環境から保護し、精子生産を維持する上で重要な役割を果たしていると言えるでしょう。
看護技術

看護の標準化を目指して:NANDA-Iとは

医療現場において、看護師は患者さんの状態を的確に把握し、それぞれの状況に応じた適切なケアを提供することが求められます。しかし、看護師によって症状の見立てや判断基準が異なってしまうと、患者さんへの対応にばらつきが生じてしまう可能性があります。質の高い看護を提供するためには、看護師間で共通の認識に基づいた診断を行うことが不可欠です。 このような背景から、看護診断の統一を図るために設立された国際的な組織がNANDA-I(North American Nursing Diagnosis Association-International)です。NANDA-Iは、看護師が使用する診断用語を標準化し、世界中の医療現場で統一された看護診断を可能にすることを目指しています。これにより、看護師間だけでなく、医師や薬剤師など、他の医療従事者との連携も円滑に進めることが期待できます。 NANDA-Iが提供する標準化された看護診断は、看護師の専門性を高め、より質の高い看護を提供するための基盤となるものです。看護師は、NANDA-Iの診断基準を用いることで、患者さんの状態をより正確に把握し、根拠に基づいたケアを提供することができます。また、NANDA-Iは、看護教育の分野においても重要な役割を担っており、世界中の看護学生が共通の診断基準を学ぶことで、質の高い看護師の育成に貢献しています。

レボフロキサシン:感染症治療薬の基礎知識

- レボフロキサシンとはレボフロキサシンは、細菌によって引き起こされる様々な感染症の治療に用いられるお薬です。 細菌を退治する作用を持つため、抗菌薬、特にフルオロキノロン系またはニューキノロン系と呼ばれるグループに分類されます。 レボフロキサシンは、細菌の増殖に欠かせないDNAに作用することで効果を発揮します。 細菌が増殖するためには、自身のDNAを複製する必要がありますが、レボフロキサシンは、このDNAの複製に必要なDNAジャイレースとトポイソメラーゼIVという酵素の働きを阻害します。 その結果、細菌は増殖することができなくなり、体内の免疫の働きによって排除され、感染症が治癒へと向かいます。 レボフロキサシンは、様々な種類の細菌に対して効果を示すという特徴があります。 そのため、肺炎などの呼吸器感染症、膀胱炎などの尿路感染症、皮膚の感染症、前立腺炎など、幅広い感染症の治療に用いられています。
血液

免疫の番人!脾臓の役割とは?

人間の体には、それぞれ重要な役割を担う様々な臓器が存在しますが、今回は「脾臓」について詳しく解説していきます。脾臓は、握りこぶしほどの大きさで、重さは成人で約100~200グラムほどです。体の左上、肋骨の下あたりに位置し、胃の後ろに隠れるように、横隔膜のすぐ下にあります。この場所はちょうど第9肋骨から第11肋骨の高さにあたり、外部からの衝撃を受けにくい場所となっています。 脾臓の表面は、薄い膜である「被膜」で覆われています。被膜の内側には「脾髄」と呼ばれる組織があり、この脾髄こそが脾臓の機能の中心を担っています。脾髄は大きく「赤脾髄」と「白脾髄」の2つの領域に分けられます。赤脾髄は、脾臓の大部分を占めており、古くなった赤血球を壊したり、血液中の異物を取り除いたりする役割を担っています。一方、白脾髄は、リンパ球が集まっている場所で、免疫機能に大きく関わっています。具体的には、体内に侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体に対する免疫反応を起こし、排除する役割を担っています。このように、脾臓は一見地味ながらも、私たちの健康を守るために重要な役割を担っている臓器と言えるでしょう。
泌尿器

意外と知らない?残尿感と残尿の違い

- 残尿とは何か 「残尿」とは、文字通り、尿を出した後にも関わらず、膀胱の中に残ってしまう尿のことを指します。普段の生活の中で、尿を排出した後でも、なんとなく膀胱のあたりに違和感を感じることはありませんか?それはもしかすると、膀胱内に残尿が残っているサインかもしれません。 この残尿感は、誰にでも起こりうる現象です。その量は人によって異なり、年齢や性別、日々の生活習慣など、様々な要因が影響を与えます。 健康な人の場合、一回の排尿で膀胱内の尿をほぼ全て出し切ることができ、残尿はほとんどありません。しかし、加齢に伴って膀胱の筋肉が衰えたり、前立腺肥大などの病気によって尿道が圧迫されると、尿の出が悪くなり、残尿量が増加することがあります。 残尿が多い状態が続くと、膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症のリスクが高まるだけでなく、膀胱の機能低下や尿失禁を引き起こす可能性もあります。そのため、日頃から排尿の状態に注意し、残尿が多いと感じたり、排尿時の違和感がある場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
小児科

小児慢性特定疾患: 未来への希望を繋ぐ治療と支援

幼い頃に発症し、長期にわたる治療を必要とする病気は、子ども本人だけでなく、その家族にも大きな負担を強いることになります。治療期間が長引くことによる経済的な不安、日常生活における様々な制限、そして病気の先行きに対する不安など、乗り越えなければならない壁は少なくありません。 このような状況にある子どもたちとその家族を支えるため、国は様々な制度や事業を展開しています。その中でも特に重要な役割を担っているのが、「小児慢性特定疾患治療研究事業」です。この事業は、医療費の負担軽減という経済的な側面だけでなく、治療法の開発や質の向上、そして患者とその家族に対する相談支援など、多岐にわたる支援を提供することで、子どもたちの未来を明るく照らそうとしています。 この事業は、単に病気の治療という枠を超え、子どもたちが健やかに成長し、将来の夢に向かって歩んでいけるよう、社会全体で支えていくという理念に基づいています。そして、この理念を実現するために、医療従事者、研究者、行政機関などが一体となって、日々の診療や研究、そして支援活動に取り組んでいるのです。
循環器

生体弁:心臓の働きを助ける天然の代替弁

私たちの体にとって、心臓は休むことなく全身に血液を送る重要な役割を担っています。心臓は複数の部屋に分かれており、それぞれの部屋の間には血液が逆流するのを防ぐための弁が存在します。しかし、加齢や生活習慣病など、様々な原因によって心臓弁が正常に機能しなくなることがあります。弁がうまく開閉しなくなると、心臓は全身に十分な血液を送ることができなくなり、動悸や息切れ、むくみなどの症状が現れます。 このような心臓弁の異常を治療するために、近年注目されているのが「生体弁」です。生体弁は、その名の通り生物の組織を材料にして作られた人工弁の一種です。主に、ウシやブタなどの心臓弁や心膜を特殊な処理を施すことで、人体に適合するように作られています。生体弁は、人工物で作られた機械弁と比較して、血栓ができにくいという利点があります。そのため、血液をサラサラにする薬を服用する必要性が低く、患者さんの負担軽減に繋がります。一方で、機械弁と比べて耐久性が低いため、将来的に再手術が必要となる可能性もあります。 生体弁は、心臓弁の機能が低下した患者さんにとって、生活の質を向上させるための重要な選択肢の一つとなっています。
その他

知っておきたい医療現場の用語:コンタミネーション

- コンタミネーションとは何か 医療現場において、「コンタミネーション」とは、薬剤や医療機器、手術部位など、本来であれば無菌状態であるべき場所に、細菌やウイルスなどの微生物や、異物などが入り込み、汚染されてしまうことを指します。 これは医療ミスの一種として捉えられ、患者さんの健康や生命に深刻な影響を及ぼす可能性も孕んでいます。例えば、手術中に傷口に細菌が侵入すれば、術後感染症を引き起こし、入院期間の延長や再手術が必要になるケースも考えられます。また、点滴用の薬液に異物が混入した場合、血管が詰まったり、最悪の場合には命に関わる事態に発展する可能性も否定できません。 医療現場では、このようなコンタミネーションを未然に防ぐために、徹底した衛生管理が求められます。医療従事者は、手洗い・手指消毒を徹底するのはもちろんのこと、マスクや手袋、ガウンなどの着用を義務付けられています。また、使用する医療機器は滅菌処理が施され、薬剤は厳重な管理の下で保管されています。 このように、医療現場におけるコンタミネーションは、患者さんの安全を脅かす重大な問題です。医療従事者は常にコンタミネーションのリスクを認識し、それを最小限に抑えるための努力を継続していく必要があります。
泌尿器

尿閉:尿意があっても出ない病気

- 尿閉とは尿閉とは、その名の通り「尿が閉じてしまう」状態を指します。つまり、膀胱には尿が溜まっているのに、尿意があっても排尿ができない状態のことです。通常、健康な状態であれば、膀胱に一定量以上の尿が溜まると、脳に信号が伝わり、尿意を感じて排尿します。しかし、様々な原因によってこの尿の排出経路が塞がったり、膀胱の収縮力が弱まったりすると、尿意があってもスムーズに排尿することができなくなります。これが尿閉です。尿閉には、尿が全く出ない状態だけでなく、尿意はあるものの、少量しか尿が出ない、尿の勢いが弱く、残尿感があるといった状態も含まれます。これらの症状は、尿閉の初期段階で現れることも多いため、注意が必要です。尿閉は、男性に多くみられる疾患です。これは、男性の場合、加齢とともに前立腺肥大症を発症しやすいためです。前立腺が肥大すると、尿道が圧迫され、尿が出にくくなるため、尿閉を引き起こしやすくなります。尿閉を放置すると、膀胱炎や腎機能障害などの合併症を引き起こす可能性もあります。そのため、尿が出にくい、残尿感があるなどの症状が現れた場合には、早めに医療機関を受診することが大切です。
その他

難病法とは?

- 難病法の概要難病法とは、「難病の患者に対する医療等に関する法律」を分かりやすく省略した言葉です。この法律は、2014年1月に施行されました。 国民にとって大きな負担となる難病に対し、患者とその家族が安心して暮らせるように、医療費の助成や相談できる体制を整えることを目的としています。難病法が出来る前は、難病の患者に対する支援は、病気の種類によってばらつきがあり、十分な支援を受けられない場合も見られました。 そこで、難病法が制定されたことで、包括的な支援体制を構築し、難病の患者とその家族がより良く生活できることを目指しています。具体的には、医療費の負担軽減、医療の提供体制の充実、療養生活の支援、就労・経済活動の支援、相談支援体制の整備などが盛り込まれています。 これらの取り組みを通して、難病になっても、住み慣れた地域で安心して生活を続けられるよう、様々な側面から支援を行っています。 難病法は、患者だけでなく、その家族にとっても大きな支えとなっています。 病気による経済的な負担や精神的な負担を軽減することで、患者とその家族が安心して治療や療養に専念できる環境作りを目指しています。

医療現場で使われる「sol」って?

病院で「sol」という表記を目にすることがあるかもしれません。これは、一体何を意味するのでしょうか? 「sol」は、英語の「Solution」を略したもので、日本語では「溶液」という意味です。 医療現場では、点滴や注射など、様々な場面でこの「溶液」が使われています。 薬を体内に投与する際には、そのままでは吸収されにくい場合があります。そこで、薬を液体に溶かして「溶液」の状態にすることで、体内への吸収をスムーズに行うことができるのです。 また、「溶液」は、体液と似た成分の液体としても使用されます。例えば、脱水症状の患者さんには、体内の水分と電解質を補給するために、生理食塩水などの「溶液」が投与されます。 このように、「溶液」は、薬剤を投与する目的や、患者の症状に合わせて、様々な種類が使い分けられています。 「sol」という表記は、医療従事者にとって、正確に薬剤を調剤し、患者さんに安全に投与するために欠かせない情報なのです。
外科

手術の進化:組織接着剤とその役割

組織接着剤は、手術や怪我の治療において、組織や臓器を繋ぎ合わせるために用いられる医療材料です。これは、例えるならば、体の中で傷口を塞ぐために働く血液凝固の仕組みを人工的に再現したものです。私たちの血液中には、トロンビンとフィブリノゲンと呼ばれる成分が含まれています。組織接着剤は、これらトロンビンとフィブリノゲンを主成分として作られています。組織や臓器の切断面に組織接着剤を塗布すると、トロンビンとフィブリノゲンが反応して、フィブリンと呼ばれる繊維状のタンパク質が生成されます。このフィブリンが網目状に組織を包み込み、接着力を発揮することで、傷口を素早く塞ぎます。このことから、組織接着剤はフィブリン糊とも呼ばれています。組織接着剤は、従来の縫合糸やホッチキスを用いる方法と比べて、出血や空気の漏れを効果的に防ぐことができます。また、手術時間を短縮できる、傷跡が目立ちにくいなどの利点もあります。そのため、近年、組織接着剤は、従来の方法に代わる、あるいは補完する手段として、多くの医療現場で注目されています。
看護技術

中心静脈栄養法:口からの食事が難しいときの選択肢

- 中心静脈栄養法とは中心静脈栄養法(TPN)は、口から十分な栄養を摂取することが難しい患者さんに対して、必要な栄養を直接血液中に送り込む治療法です。私たちの体は、健康を維持し、活動するためのエネルギー源として、また、組織の成長や修復のために栄養が必要です。 通常、私たちは食事から必要な栄養を摂取しますが、病気や怪我など様々な理由で、口から十分な栄養を摂取できない場合があります。 このような場合に、中心静脈栄養法が用いられます。 中心静脈栄養法では、心臓に近い太い静脈である中心静脈にカテーテルと呼ばれる細い管を挿入します。カテーテルは、通常、鎖骨の下を通る鎖骨下静脈や首にある内頚静脈から挿入され、その先端は心臓の近くにある上大静脈という大きな静脈に位置します。 そして、このカテーテルを通じて、糖分、アミノ酸、脂質、ビタミン、ミネラルなど、体に必要な栄養素をバランス良く含んだ高カロリーの栄養輸液を直接血液中に送り込みます。中心静脈栄養法は、生命維持に不可欠な場合もあれば、患者さんの栄養状態を改善し、回復を早めることを目的とする場合もあります。
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