全身性エリテマトーデス:若年女性に多い難病
病院での用語を教えて
『全身性エリテマトーデス』って、どんな病気ですか?
体の健康研究家
簡単に言うと、自分の免疫が自分を攻撃してしまう病気だよ。
病院での用語を教えて
攻撃するって、どういうことですか?
体の健康研究家
本来、免疫は体に入ってきた悪いものと戦うものだけど、この病気では、免疫が自分の体のあちこちを攻撃してしまうんだ。だから、様々な場所に炎症が起きてしまうんだよ。
全身性エリテマトーデスとは。
「全身性エリテマトーデス」は、医学や健康に関する言葉の一つです。これは、主に若い女性に多く見られる病気で、「全身性エリテマトーデス」または「SLE」とも呼ばれます。体のあちこちに炎症が起こる病気で、自分の免疫の働きがおかしくなることで起こると考えられています。国もこの病気を「特定疾患(難病)」と定めています。
全身性エリテマトーデスとは
– 全身性エリテマトーデスとは私たちの体には、細菌やウイルスなどの外敵が侵入してくると、それらを排除して体を守る「免疫システム」が備わっています。通常、このシステムは正常に機能し、私たちを病気から守ってくれています。しかし、全身性エリテマトーデス(SLE)では、この免疫システムに異常が生じます。 本来、外部の敵を攻撃するはずの免疫システムが、自分自身の正常な細胞や組織を誤って攻撃してしまうのです。その結果、全身の様々な臓器、例えば皮膚、関節、腎臓、心臓、肺、脳などに炎症が起こり、様々な症状が現れます。この病気は、患者さんによって症状の出方や重症度が大きく異なり、ある人は皮膚に赤い発疹が現れるだけかもしれませんが、別の人は関節の痛みや腎臓の障害など、複数の症状を併発することもあります。そのため、全身性エリテマトーデスは「百面相の病気」とも呼ばれています。
項目 | 説明 |
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病気 | 全身性エリテマトーデス(SLE) |
原因 | 免疫システムの異常 (自己の細胞・組織への攻撃) |
症状 | 全身の様々な臓器に炎症 – 皮膚:赤い発疹など – 関節:痛みなど – 腎臓:障害など – 心臓、肺、脳など ※症状の出方や重症度は患者によって大きく異なる |
その他 | 「百面相の病気」とも呼ばれる |
主な症状
– 主な症状
全身性エリテマトーデス(SLE)は、体の様々な臓器に炎症を引き起こすため、現れる症状は実に多様です。
代表的な症状としては、顔面、特に頬骨のあたりに蝶が羽を広げたような赤い斑点(蝶形紅斑)が現れることが挙げられます。この紅斑は、日光に当たると悪化することがあります。
また、SLEでは、発熱や関節痛、全身のだるさ(倦怠感)などもよくみられます。
これらの症状に加えて、脱毛、口内炎、腎臓の機能異常、血液の異常、神経系の異常など、様々な症状が現れる可能性があります。
SLEの症状は、一時的に現れては消えることを繰り返す場合(再燃と寛解を繰り返す)もあれば、慢性的に続く場合もあります。
症状の現れ方や重症度は患者さんによって異なり、軽い症状しか出ない場合もあれば、生命に関わるような重症になる場合もあります。
症状 | 詳細 |
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蝶形紅斑 | 顔面、特に頬骨のあたりに蝶が羽を広げたような赤い斑点。日光に当たると悪化する。 |
発熱 | |
関節痛 | |
倦怠感(全身のだるさ) | |
脱毛 | |
口内炎 | |
腎臓の機能異常 | |
血液の異常 | |
神経系の異常 | |
その他 | 症状は一時的に現れては消えることを繰り返す場合(再燃と寛解を繰り返す)もあれば、慢性的に続く場合もある。 症状の現れ方や重症度は患者さんによって異なり、軽い症状しか出ない場合もあれば、生命に関わるような重症になる場合もある。 |
原因
全身性エリテマトーデス(SLE)は、免疫の異常によって自己の細胞や組織を攻撃してしまう、原因不明の慢性的な炎症性疾患です。 発症のメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、遺伝的な要素と環境的な要素が複雑に関係していると考えられています。遺伝的な要素としては、SLEを発症しやすくなる遺伝子の存在が指摘されています。 これらの遺伝子は、免疫システムの調節に関与しており、その異常がSLEの発症リスクを高めると考えられています。 しかし、SLEを発症しやすい遺伝子を持っていても、必ずしも発症するわけではありません。 環境的な要素も、SLEの発症に大きく関わっていると考えられています。 例えば、紫外線は皮膚に炎症を起こしやすく、SLEの症状を悪化させることが知られています。 また、ウイルス感染や特定の薬剤の使用が、SLEの発症の引き金になる場合もあると報告されています。 さらに、ストレスや喫煙なども、SLEの発症や症状の悪化に関係している可能性が指摘されています。SLEは、遺伝的な要素と環境的な要素が複雑に組み合わさって発症すると考えられています。 今後の研究により、発症メカニズムのさらなる解明と、より効果的な治療法の開発が期待されています。
要因 | 詳細 |
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遺伝的要因 | – 免疫システムの調節に関与する遺伝子の異常 – SLE発症リスクを高めるが、遺伝子があっても必ず発症するわけではない |
環境要因 | – 紫外線:皮膚の炎症、症状悪化 – ウイルス感染、特定の薬剤:発症の引き金 – ストレス、喫煙:発症や症状悪化の可能性 |
診断
– 診断全身性エリテマトーデス(SLE)は、その症状が多岐にわたるため、診断が容易ではありません。診断を確定するためには、医師は患者さんから詳しく話を聞き、身体診察を行い、血液検査、尿検査、画像検査など、さまざまな情報を総合的に判断する必要があります。まず初めに、患者さんから症状について詳しく聞き取ります。SLEは、発熱、関節痛、倦怠感といった全身症状や、蝶形紅斑、円形脱毛症などの皮膚症状、腎臓の炎症によるタンパク尿、血液の異常など、実にさまざまな症状を引き起こします。これらの症状は、他の病気でも見られることがあるため、SLEと特定することは容易ではありません。次に、血液検査では、SLEに特徴的な自己抗体の有無を調べます。代表的なものとしては、抗核抗体、抗dsDNA抗体、抗Sm抗体などが挙げられます。これらの抗体が陽性であれば、SLEの可能性が高くなります。また、尿検査では、腎臓の炎症の有無を調べます。SLEでは、腎臓が炎症を起こし、タンパク尿や血尿が出ることがあります。さらに、必要に応じて、画像検査なども行います。例えば、胸部レントゲン検査や心電図検査で心臓の状態を調べたり、超音波検査で関節や腎臓の状態を調べたりします。SLEは、心臓や肺などの臓器にも影響を及ぼすことがあるため、これらの検査も診断に役立ちます。これらの検査結果と、米国リウマチ学会の診断基準などを照らし合わせて、最終的な診断を下します。SLEは、症状の出方や重症度が人によって大きく異なるため、診断にはある程度の時間がかかる場合もあります。
診断項目 | 詳細 |
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病歴聴取 | 発熱、関節痛、倦怠感、蝶形紅斑、円形脱毛症、タンパク尿、血尿など、多岐にわたる症状について詳しく聞き取る。 |
血液検査 | 抗核抗体、抗dsDNA抗体、抗Sm抗体などのSLEに特徴的な自己抗体の有無を調べる。 |
尿検査 | 腎臓の炎症の有無を調べる。タンパク尿や血尿の有無を確認する。 |
画像検査 | 胸部レントゲン、心電図、関節や腎臓の超音波検査などを行い、臓器への影響を調べる。 |
診断基準 | 米国リウマチ学会の診断基準などを用い、検査結果と照らし合わせて診断する。 |
治療
全身性エリテマトーデスは、現在の医学では完全に治癒することが難しい病気です。しかし、適切な治療を継続することで症状をコントロールし、日常生活を問題なく送ることは十分可能です。
治療の中心となるのは、過剰な免疫反応による炎症を抑える薬物療法です。具体的には、炎症を抑える効果の高いステロイド薬や、免疫の働きを抑える免疫抑制薬などが用いられます。
治療方針は、画一的ではなく、患者さん一人ひとりの症状や重症度、体質や合併症などを考慮して慎重に決定されます。
具体的には、ステロイド薬や免疫抑制薬の種類や投与量、投与期間などを調整し、患者さんにとって最適な治療法を模索していきます。
全身性エリテマトーデスは、症状が一旦落ち着いた後も、再発しやすい病気であるという特徴があります。そのため、症状が安定した後も、定期的な検査や医師の診察を受けることが重要です。
定期的な検査や診察によって、病気の再発の兆候を早期に発見し、適切な治療を速やかに開始することで、重症化を防ぐことができるのです。
項目 | 内容 |
---|---|
病気の特徴 | 完治は難しいが、治療で症状コントロール可能 |
治療の中心 | 薬物療法(免疫反応による炎症を抑える) |
主な薬剤 | ステロイド薬、免疫抑制薬 |
治療方針 | 個々の症状や重症度、体質、合併症を考慮 |
治療のポイント | 薬の種類、投与量、期間を調整し最適な治療法を見つける |
予後と注意点 | 再発しやすい病気のため、定期的な検査と医師の診察が必要 |
日常生活で気を付けること
全身性エリテマトーデスは、日光や疲労、ストレスなどがきっかけで再び悪化してしまうことがあります。このため、日常生活の中で発症や悪化の予防をすることがとても重要になります。
まず、全身性エリテマトーデスは、紫外線を浴びることで症状が悪化することが知られています。これは、紫外線が免疫の異常を引き起こすことが原因の一つと考えられています。ですから、外出時には日焼け止めを塗ったり、つばの広い帽子や日傘、長袖の上着などを身につけるなどして、できる限り紫外線を浴びないように注意する必要があります。
また、免疫の異常が原因で、細菌やウイルスに対する抵抗力が低下し、感染症にかかりやすくなっているため注意が必要です。こまめなうがい、手洗いはもちろんのこと、人混みを避けるなど、日常生活の中で感染症にかからないように予防することが大切です。
さらに、十分な睡眠をとり、栄養バランスのとれた食事を心がけ、規則正しい生活習慣を送りましょう。ストレスをため込まないように、適度な運動や趣味など、自分なりのストレス解消方法を見つけることも大切です。
予防のポイント | 具体的な方法 |
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紫外線対策 | ・日焼け止めを塗る ・つばの広い帽子や日傘を使う ・長袖の上着を着用する |
感染症予防 | ・こまめなうがい、手洗い ・人混みを避ける |
ストレス解消 | ・十分な睡眠 ・栄養バランスのとれた食事 ・規則正しい生活習慣 ・適度な運動や趣味 |