内鼠径ヘルニア:その詳細と理解
病院での用語を教えて
先生、「内鼠径ヘルニア」ってどういう病気ですか?鼠径ヘルニアの一種って書いてあるんですけど、よくわかりません。
体の健康研究家
そうだね。「ヘルニア」っていうのは、本来あるべき場所に臓器の一部が飛び出してしまう状態のことを言うんだ。お腹の部分で言うと、腸の一部が飛び出すことが多いかな。内鼠径ヘルニアは、その飛び出す場所が「内鼠径輪」と呼ばれる部分にできるヘルニアなんだよ。
病院での用語を教えて
なるほど。じゃあ、内鼠径輪ってどこにあるんですか?
体の健康研究家
簡単に言うと、お腹の下の方、太ももの付け根あたりかな。そこの筋肉が弱くなっていたり、生まれつき隙間があると、そこから腸が飛び出してきてしまうんだ。これが内鼠径ヘルニアだよ。
内鼠径ヘルニアとは。
「医学・健康の言葉である『内鼠径ヘルニア』は、鼠径ヘルニアという病気の一種です。この病気は、お腹の下の方にある血管や神経の通り道の内側にある、Hesselbach三角と呼ばれる弱い部分から、お腹の中のものが出てきてしまうことをいいます。そして、出てきたものは、外鼠径輪という出口から外へ飛び出します(図1)。
内鼠径ヘルニアとは
– 内鼠径ヘルニアとはお腹の中には、胃や腸など、食べ物を消化吸収するための臓器が詰まっています。これらの臓器は、通常、筋肉や筋膜と呼ばれる組織でできた壁に囲まれていて、正しい位置に保たれています。しかし、この壁の一部が弱くなると、お腹の中の臓器がその隙間から皮膚の下に飛び出してしまうことがあります。これが「ヘルニア」と呼ばれる病気です。ヘルニアは体の様々な場所で起こりますが、お腹の下の方、特に太ももの付け根近くにできるものを「鼠径ヘルニア」と呼びます。鼠径ヘルニアは、生まれたときから筋肉や筋膜が弱い場合と、加齢や重いものを持ち上げるなどの負担によって後天的に弱くなる場合があります。鼠径ヘルニアの中でも、「内鼠径ヘルニア」は、お腹の中の臓器が「ヘッセルバッハ三角」と呼ばれる、血管の内側にある、筋膜の特に弱い部分から飛び出すことで起こります。このヘッセルバッハ三角は、生まれつき筋膜が薄くなっていることが多く、内鼠径ヘルニアは男性に多くみられます。内鼠径ヘルニアになると、鼠径部にしこりや膨らみができ、立ったときやお腹に力を入れたときに目立つようになります。痛みを感じることもありますが、痛みがなく、膨らみだけが症状として現れることもあります。
項目 | 説明 |
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疾患名 | 内鼠径ヘルニア |
定義 | お腹の中の臓器が、ヘッセルバッハ三角と呼ばれる筋膜の弱い部分から皮膚の下に飛び出す病気 |
発生場所 | 鼠径部(太ももの付け根近く) |
原因 | ・生まれつきの筋膜の弱さ ・加齢や重いものを持つことによる筋膜の弱体化 |
好発 | 男性 |
症状 | ・鼠径部のしこりや膨らみ(立った時やお腹に力を入れた時に目立つ) ・痛み(ある場合とない場合がある) |
発生のメカニズム
私たちのお腹の中には、食べ物を消化吸収する腸などの重要な臓器が収められています。これらの臓器は、ちょうど家屋に壁があるように、筋肉や筋膜と呼ばれる組織でできた壁によって支えられ、正しい位置に保たれています。
しかし、この壁は常に頑丈なわけではありません。生まれつき一部が弱かったり、年齢を重ねるにつれて老朽化したりすることがあります。また、肥満や重いものを持ち上げるなど、お腹に負担がかかることによって、壁が弱くなってしまうこともあります。
ヘッセルバッハ三角と呼ばれる部分は、このような筋膜の弱い部分の一つです。この部分は、生まれつき筋膜が薄くなっていたり、欠損していたりすることがあります。ヘッセルバッハ三角が弱くなっていると、腸などのお腹の中の臓器が、その部分から皮膚の下に飛び出してしまうことがあります。これが内鼠径ヘルニアです。
飛び出した臓器は、鼠径管と呼ばれる管を通って、男性であれば陰嚢の上部付近まで達することがあります。鼠径管は、胎児期に精巣が陰嚢へ下降する際に通る管で、成人男性では精索と呼ばれる精管などを包む組織が通っています。内鼠径ヘルニアは、この鼠径管を通って腸などが飛び出すことで起こるのです。
項目 | 説明 |
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腹部の壁 | ・筋肉や筋膜でできており、消化器官を支え、正しい位置に保つ。 ・生まれつき弱かったり、加齢、肥満、重いものを持ち上げるなどで弱くなることがある。 |
ヘッセルバッハ三角 | ・腹部の筋膜が生まれつき薄くなっていたり、欠損していたりする部分。 ・この部分が弱いと、内臓が皮膚の下に飛び出すことがある(内鼠径ヘルニア)。 |
内鼠径ヘルニア | ・ヘッセルバッハ三角から腸などの臓器が飛び出すこと。 ・飛び出した臓器は鼠径管を通って、男性であれば陰嚢の上部付近まで達することがある。 |
鼠径管 | ・胎児期に精巣が陰嚢へ下降する際に通る管。 ・成人男性では精索(精管などを包む組織)が通る。 |
症状と診断
– 症状と診断内鼠径ヘルニアは、初期の段階ではほとんど自覚症状がないことも少なくありません。しかし、症状が現れる場合は、足の付け根にあたる鼠径部に膨らみを生じたり、違和感や痛みを感じたりすることが多く見られます。特に、立っている姿勢やお腹に力を入れた時など、お腹の中の圧力が高まる場面において、これらの症状は顕著になる傾向があります。さらに、飛び出した臓器が腸である場合、便秘や吐き気といった消化器系の症状を伴う場合もあります。これは、腸がヘルニアによって圧迫され、正常な働きを阻害されるために起こると考えられています。内鼠径ヘルニアの診断は、医師による診察が不可欠です。医師は、鼠径部の視診や触診を行い、ヘルニアの有無を直接確認します。さらに、超音波検査やCT検査といった画像検査を実施することで、ヘルニアの大きさや内容物を詳細に把握することができます。これらの検査を通して、適切な治療方針を決定します。
症状 | 診断 |
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治療法
– 治療法内鼠径ヘルニアの治療は、基本的には手術によって行われます。内鼠径ヘルニアは自然に治癒することはなく、放置すると腸閉塞などの重篤な合併症を引き起こす可能性があるためです。手術では、まず飛び出した臓器を元の位置に戻します。その後、弱くなった腹壁を補強するために、メッシュと呼ばれる人工物を埋め込む場合が多くあります。このメッシュは、体への負担が少なく、耐久性に優れた素材でできており、腹壁の修復を助ける役割を果たします。従来は、お腹を大きく切開する開腹手術が一般的でしたが、近年では腹腔鏡手術が広く行われるようになっています。腹腔鏡手術は、お腹に小さな穴を数カ所開け、そこからカメラや手術器具を挿入して行う手術法です。開腹手術に比べて傷が小さく、術後の痛みも少ないため、患者さんの体への負担が軽減されます。また、入院期間も短縮できるため、早期の社会復帰が期待できます。ただし、全ての患者さんが腹腔鏡手術の対象となるわけではありません。医師は、患者さんの年齢や健康状態、ヘルニアの大きさや症状などを考慮した上で、適切な手術方法を選択します。
治療法 | 詳細 | メリット | デメリット |
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手術 | 飛び出した臓器を元の位置に戻し、弱くなった腹壁をメッシュで補強する。 | 根治が期待できる。 | – |
開腹手術 | お腹を大きく切開して手術を行う。 | – | 傷が大きく、術後の痛みや入院期間が長い。 |
腹腔鏡手術 | お腹に小さな穴を数カ所開け、カメラや手術器具を挿入して手術を行う。 | 傷が小さく、術後の痛みも少ない。入院期間も短縮できる。 | 全ての患者さんに適応できるわけではない。 |
日常生活での注意
– 日常生活での注意内鼠径ヘルニアと診断された場合、日常生活の中でいくつか注意すべき点があります。まず、重いものを持ち上げることは避けましょう。重いものを持ち上げると、お腹に大きな負担がかかり、ヘルニアが悪化する可能性があります。荷物を持ち上げる必要がある場合は、膝を曲げて腰を落とすなど、正しい姿勢を保ち、お腹への負担を軽減するようにしてください。また、日頃から腹圧をかけないように意識することも大切です。腹圧が上昇すると、ヘルニアの内容物が飛び出しやすくなるため、お腹を締め付けるような服装は避け、ベルトもきつく締めすぎないようにしましょう。肥満も腹圧を上昇させる要因の一つです。体重が増加すると、お腹にかかる負担も大きくなるため、ヘルニアの悪化を招きやすくなります。適度な食事と運動を心がけ、適切な体重を維持しましょう。便秘も腹圧を上昇させる要因となります。便秘になると、排便時に強くいきむことが多くなり、その際に腹圧が急激に上昇します。食物繊維を多く含む野菜や海藻類を積極的に摂取し、水分を十分に摂るようにしましょう。また、適度な運動も腸の動きを活発にする効果があります。日常生活の中でこれらの点に注意することで、ヘルニアの悪化を防ぎ、快適に過ごすことができます。
注意すべきこと | 具体的な内容 |
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重いものを持ち上げない | 重いものを持ち上げると腹圧が上がり、ヘルニアが悪化する可能性があります。持ち上げる際は、膝を曲げて腰を落とすなどして、お腹への負担を減らしましょう。 |
腹圧をかけない | 腹圧上昇はヘルニアの内容物が飛び出しやすくなるため、お腹を締め付ける服装を避け、ベルトもきつく締めすぎないようにしましょう。 |
肥満に注意 | 体重増加は腹部に負担をかけ、ヘルニア悪化に繋がります。適切な食事と運動を心がけましょう。 |
便秘に注意 | 便秘になると排便時に腹圧が急激に上昇します。食物繊維や水分を十分に摂取し、適度な運動を心がけましょう。 |