急性前骨髄球性白血病:稀少だが治癒可能な白血病
病院での用語を教えて
「急性前骨髄球性白血病」って、どんな病気なんですか?
体の健康研究家
良い質問だね。「急性前骨髄球性白血病」は、血液の病気である「急性骨髄性白血病」の一種なんだ。骨髄で作られる血液細胞に異常が起きる病気だよ。
病院での用語を教えて
血液細胞に異常が起きる、ってどういうことですか?
体の健康研究家
通常、骨髄では、赤血球や白血球、血小板など、体にとって必要な血液細胞が作られるんだけど、「急性前骨髄球性白血病」になると、この働きがうまくいかなくなって、未熟な白血球が増えてしまうんだ。それが体に悪影響を及ぼしてしまう病気なんだよ。
急性前骨髄球性白血病とは。
「急性前骨髄球性白血病」は、骨髄という血液を作る場所の細胞が、がんになる病気の中で「急性骨髄性白血病」と呼ばれる病気の一種です。この病気は、「急性骨髄性白血病」全体の約1割をしめています。
はじめに
血液は、体中に酸素を届けたり、細菌やウイルスなどの外敵から体を守ったりする重要な役割を担っています。血液の中には、赤血球、白血球、血小板といった様々な細胞が存在しますが、その中でも、白血球は体を守るために特に重要な役割を担っています。
白血病は、この白血球ががん化してしまう病気です。白血球は、体の中で毎日作られていますが、白血病になると、骨髄という場所で作られる白血球が、がん細胞に変化してしまいます。がん化した白血球は、正常な白血球のように働くことができず、増殖を繰り返して骨髄を占拠してしまいます。その結果、正常な血液細胞が作られなくなり、様々な症状が現れるようになります。
白血病には、大きく分けて急性と慢性の二つ、さらにそれぞれに骨髄性とリンパ性という種類があります。急性骨髄性白血病(AML)は、白血病の中でも進行が早く、放置すると命に関わる病気です。急性前骨髄球性白血病(APL)は、このAMLに分類される病気の一つで、AML全体の約10%と、比較的稀な病気ですが、適切な治療を行うことで治癒が期待できる白血病としても知られています。
白血病の種類 | 特徴 | 備考 |
---|---|---|
急性骨髄性白血病(AML) | 進行が早く、放置すると命に関わる | – |
急性前骨髄球性白血病(APL) | AMLの subtypes で、比較的稀な病気 適切な治療を行うことで治癒が期待できる |
AML全体の約10% |
症状と特徴
– 症状と特徴急性前骨髄球性白血病(APL)は、他の種類の白血病と同様に、骨髄において正常な血液細胞が作られなくなることで、様々な症状が現れます。健康な血液には、赤血球、白血球、血小板といった様々な血液細胞が存在し、それぞれ重要な役割を担っています。APLを発症すると、これらの血液細胞が十分に作られなくなり、様々な体の機能に影響を及ぼします。具体的には、体が酸素不足に陥ることで強い疲労感や息切れを感じたり、動悸が激しくなったり、顔色が悪くなることがあります。また、細菌やウイルスへの抵抗力が弱くなるため、発熱しやすくなります。さらに、血小板の減少によって出血しやすくなるため、皮膚の下に出血斑が見られたり、歯茎から出血しやすくなったりします。APLには、他の白血病と比べて特徴的な症状があります。それは、播種性血管内凝固症候群(DIC)と呼ばれる、血液の凝固異常を伴うことです。DICは、血液が固まり過ぎることで血管が詰まり、様々な臓器に障害を引き起こす可能性があります。重症化すると、大量の出血や臓器不全を起こし、命に関わることもあります。そのため、APLの治療においてDICへの対策は非常に重要となります。
症状・特徴 | 説明 |
---|---|
骨髄における血液細胞産生の阻害 | 赤血球、白血球、血小板などの血液細胞が十分に作られなくなる。 |
疲労感、息切れ、動悸、顔面蒼白 | 体が酸素不足に陥るため。 |
感染症のリスク増加 | 細菌やウイルスへの抵抗力が弱くなるため。 |
出血傾向(皮膚の出血斑、歯茎からの出血など) | 血小板の減少による。 |
播種性血管内凝固症候群(DIC) | 血液の凝固異常を伴い、血管が詰まり、様々な臓器に障害を引き起こす。大量出血や臓器不全に至ることもある。 |
原因と診断
急性前骨髄球性白血病(APL)は、骨髄の中の造血幹細胞に特定の遺伝子変異が起こることで発症します。造血幹細胞は、血液中の赤血球、白血球、血小板を作るもとになる細胞です。
APLの患者さんのほとんどに、15番染色体と17番染色体の一部が入れ替わる「転座」と呼ばれる染色体異常が見られます。染色体には遺伝情報が詰まっているため、この転座により、本来は存在しない「PML-RARα」と呼ばれる異常な融合遺伝子が作られます。このPML-RARαが、APLの白血病細胞を増殖させる原因として考えられています。
APLと診断するためには、血液検査と骨髄検査を行います。血液検査では、血液中の細胞の数や状態を調べます。APLでは、白血球数や血小板数が減少したり、顕微鏡で観察すると特定の形をした白血病細胞が見つかったりします。骨髄検査では、腰の骨に針を刺して骨髄液を採取し、顕微鏡で観察します。APLに特徴的な白血病細胞が見られるかどうか、遺伝子検査で染色体異常があるかどうかを調べます。
項目 | 内容 |
---|---|
疾患名 | 急性前骨髄球性白血病 (APL) |
原因 | ・骨髄の造血幹細胞における遺伝子変異 ・15番染色体と17番染色体の一部が入れ替わる「転座」 ・転座により異常な融合遺伝子「PML-RARα」が作られる |
診断 | ・血液検査: - 白血球数や血小板数の減少 - 特定の形をした白血病細胞の観察 ・骨髄検査: - APLに特徴的な白血病細胞の有無 - 遺伝子検査による染色体異常の確認 |
治療法の進歩
急性前骨髄球性白血病(APL)の治療は、近年、目覚ましい進歩を遂げています。従来は、強い副作用を伴う化学療法が中心でしたが、分子標的薬という新しいタイプの薬が登場し、治療成績は劇的に向上しました。
APLの治療に革命をもたらしたのが、全トランスレチノイン酸(ATRA)と三酸化ヒ素(ATO)という二つの分子標的薬です。
ATRAは、APL細胞内に存在する特定のタンパク質であるPML-RARαの働きを阻害します。このタンパク質は、白血球が成熟するのを妨げる働きを持っているのですが、ATRAはその働きを抑えることで、がん細胞を正常な白血球へと変化させ、細胞死を促します。
一方、ATOはPML-RARαを分解することで、APL細胞の増殖を抑えます。
これらの分子標的薬は、従来の化学療法と比べて副作用が少なく、高い治療効果が期待できます。ATRAとATOの登場により、APLはかつては治癒が難しい病気でしたが、現在では治癒を目指せる病気へと変化しました。
薬剤 | 作用機序 | 効果 |
---|---|---|
全トランスレチノイン酸(ATRA) | PML-RARαの働きを阻害 | がん細胞を正常な白血球へと変化させ、細胞死を促す |
三酸化ヒ素(ATO) | PML-RARαを分解 | APL細胞の増殖抑制 |
まとめと展望
– まとめと展望急性前骨髄球性白血病(APL)は、血液のがんである急性骨髄性白血病(AML)の一種です。かつては治療が難しく、治癒率も低い病気とされてきました。しかし、近年開発された分子標的薬によって治療成績は劇的に改善し、現在では完治が期待できる病気へと変化しました。
APLの治療には、専門的な知識と豊富な経験が必要となります。そのため、血液疾患を専門とする医師のいる医療機関を受診することが重要です。APLは、他の白血病と比べて患者数が少ないという特徴があります。そのため、最新の治療法や進行中の臨床試験に関する情報を得るためには、専門性の高い医療機関で診療を受けることが重要となります。
APLの治療成績向上には、分子標的薬の開発が大きく貢献しました。そして、APLに対する理解がさらに深まり、より効果的で副作用の少ない新たな治療法の開発が期待されています。APLは、かつては治癒が難しい病気でしたが、医療技術の進歩によって克服可能な病気になりつつあります。今後も研究開発が進み、より多くの患者さんが完治できる未来を目指していくことが重要です。
項目 | 内容 |
---|---|
疾患 | 急性前骨髄球性白血病(APL) – 血液のがんである急性骨髄性白血病(AML)の一種 |
治療の現状 | – かつては治療が難しく、治癒率も低い病気だった – 近年開発された分子標的薬によって治療成績は劇的に改善 – 現在では完治が期待できる病気 |
治療を受ける上での重要事項 | – 専門的な知識と豊富な経験を持つ医師のいる医療機関を受診 – 血液疾患を専門とする医師のいる医療機関を受診 – 最新の治療法や進行中の臨床試験に関する情報を得るためには、専門性の高い医療機関での診療が重要 |
治療成績向上に貢献した要因 | 分子標的薬の開発 |
今後の展望 | – APLに対する理解がさらに深まり、より効果的で副作用の少ない新たな治療法の開発 – 医療技術の進歩によって克服可能な病気になりつつある – 研究開発が進み、より多くの患者さんが完治できる未来 |