院内感染の原因菌:クレブシエラ属とは
病院での用語を教えて
先生、「クレブシエラ属」って細菌の名前らしいんですけど、どんな細菌なんですか?
体の健康研究家
良い質問だね。「クレブシエラ属」は、私たちの腸の中にいる細菌の一種だよ。ただ、いつも悪さをするわけじゃなくて、体の抵抗力が落ちた時に病気の原因になることがあるんだ。
病院での用語を教えて
へえー、そうなんですね。腸の中にいるのに、どうして病気の原因になるんですか?
体の健康研究家
例えば、抗生物質を飲むと、体の中の菌のバランスが崩れることがあるんだ。すると、普段はおとなしい「クレブシエラ属」が増えてしまって、肺炎などを起こすことがあるんだよ。
クレブシエラ属とは。
「クレブシエラ属」は、わたしたちのおなかの中にいる腸内細菌の一種です。この細菌は、空気のある場所でもなし場所でも生きることができ、顕微鏡で見ると、周りの細菌よりも少し大きく、厚い膜で覆われています。また、動くためのしっぽ(鞭毛)はありませんが、短い毛のようなもの(線毛)を持っています。
クレブシエラ属の中には、肺炎などを引き起こすものもありますが、普段は病気を起こす力が弱い菌です。しかし、抗生物質を使うことで、本来いるべき菌のバランスが崩れ、クレブシエラ属が増殖してしまうことがあります。これを「菌交代症」と呼びます。免疫力が低下している人や入院している人などは、この菌交代症によって、思わぬ感染症にかかってしまうことがあります。
クレブシエラ属が炎症を起こしている場合は、顕微鏡検査で、厚い膜を持った大きな細菌が、たくさんの白血球と一緒に確認できます。
クレブシエラ属の特徴
クレブシエラ属は、私たちの腸内に常に住み着いている細菌の一種です。腸内には、体に良い働きをするものから、病気を起こすものまで、様々な種類の細菌がいますが、クレブシエラ属もその一つです。
健康な人では、クレブシエラ属が病気を起こすことはほとんどありません。しかし、病気や高齢などによって免疫力が低下している人や、入院している人などは、クレブシエラ属によって日和見感染症を引き起こすことがあります。日和見感染症とは、健康な人では発症しにくい感染症ですが、免疫力が低下した際に発症しやすくなる感染症のことを指します。
クレブシエラ属は、顕微鏡で観察すると、他の腸内細菌と比べて少し大きく、周りに厚い膜を持っていることが特徴です。この膜は莢膜と呼ばれ、クレブシエラ属が体内の免疫細胞から攻撃されるのを防ぐ、いわば盾のような役割を果たしています。このため、免疫力が低下した人では、クレブシエラ属を排除することが難しく、感染症を引き起こしやすくなってしまうのです。
項目 | 内容 |
---|---|
分類 | 腸内細菌の一種 |
特徴 | – 周りに厚い膜(莢膜)を持つ – 免疫細胞からの攻撃を防ぐ |
健康な人 | – 通常は無害 – 病気を起こすことはほとんどない |
免疫力が低下した人 | – 日和見感染症を引き起こす可能性がある – クレブシエラ属の排除が困難になる |
代表的な菌種
クレブシエラ属は、ヒトの腸内に常在する細菌の一種ですが、中には病気を引き起こす菌も存在します。その中でも、特に代表的な菌種として、クレブシエラ・ニューモニエとクレブシエラ・オキシトーカが挙げられます。
クレブシエラ・ニューモニエは、その名前が示すように、肺炎を引き起こす細菌として知られています。健康な人では、この菌が体内に入っても発症することは稀ですが、免疫力が低下している人や基礎疾患を持つ人では、肺炎を引き起こし、重症化する可能性があります。また、肺炎以外にも、尿路感染症や敗血症などを引き起こすこともあります。
一方、クレブシエラ・オキシトーカは、新生児や免疫不全状態にある人に感染症を引き起こすことで知られています。健康な成人ではほとんど問題となりませんが、抵抗力が弱い新生児や免疫力が低下している患者では、髄膜炎や敗血症などの深刻な感染症を引き起こす可能性があります。
これらの菌は、抗生物質に対して抵抗性を示す場合があり、治療が困難になることがあります。そのため、日頃から手洗いやうがいを徹底し、感染予防に努めることが重要です。
菌種 | 特徴 | 症状 |
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クレブシエラ・ニューモニエ | 肺炎の原因菌として知られる。免疫力が低下した人や基礎疾患を持つ人が感染すると重症化する可能性がある。 | 肺炎、尿路感染症、敗血症 |
クレブシエラ・オキシトーカ | 新生児や免疫不全状態の人に感染しやすい。 | 髄膜炎、敗血症 |
院内感染との関連
クレブシエラ属による感染症は、病院内で発生するケースが多く見られ、院内感染を引き起こす細菌として広く知られています。これは、入院中の患者さんにおいて、免疫力の低下が見られるケースが多いことが要因として挙げられます。免疫力が低下した状態では、クレブシエラ属は容易に感染を引き起こす可能性があります。
クレブシエラ属は、医療器具や病院内の環境表面に付着しやすい性質を持っているため、注意が必要です。医療従事者が、汚染された医療器具や環境表面に触れた後、患者さんに接触してしまうと、その手を介して感染が広がってしまう可能性があります。このような感染経路を防ぐためには、医療従事者による徹底した手洗いと、医療器具の適切な消毒が非常に重要です。
さらに、患者さんの体から排出される体液や排泄物にも、クレブシエラ属が含まれている可能性があります。これらの物質が適切に処理されないと、環境が汚染され、感染拡大のリスクが高まります。そのため、病院内では、体液や排泄物の適切な処理、環境表面の消毒、患者さん同士の接触を減らすための適切な隔離などの対策を講じることが重要です。これらの対策を総合的に実施することで、院内におけるクレブシエラ属の感染拡大を効果的に抑制することができます。
特徴 | 詳細 | 対策 |
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発生場所 | 病院内 | – |
感染リスクが高い人 | 入院患者 (免疫力の低下) | – |
感染経路 | – 医療器具や環境表面への付着 – 汚染された医療器具や環境表面との接触 – 体液や排泄物からの感染 |
– 医療従事者の徹底した手洗い – 医療器具の適切な消毒 – 体液や排泄物の適切な処理 – 環境表面の消毒 – 患者同士の接触を減らすための適切な隔離 |
菌交代症と日和見感染
私たちの体には、たくさんの種類の細菌が常在しており、通常の状態では、お互いにバランスを取り合いながら、健康を保つ役割を担っています。しかし、抗生物質などの薬剤を使用すると、このバランスが崩れてしまい、特定の種類の細菌が過剰に増殖することがあります。このような状態を「菌交代症」と呼びます。
菌交代症は、様々な種類の細菌で起こりますが、中でも「クレブシエラ属」という細菌が増殖すると、注意が必要です。クレブシエラ属は、健康な人の体内にも存在していますが、通常は少数派であるため、病気を引き起こすことは稀です。しかし、菌交代症によってクレブシエラ属が異常に増殖すると、免疫力の低下した人に対して、肺炎、尿路感染症、敗血症といった、重篤な感染症を引き起こすことがあります。
このような、健康な人では発症しにくいものの、免疫力が低下した際に、普段は無害な細菌や、弱い病原性しか持たない細菌によって引き起こされる感染症を「日和見感染」と呼びます。日和見感染は、健康な人では発症することは稀ですが、免疫力が低下した人にとっては、命に関わる危険性もあります。免疫力が低下する原因としては、病気、加齢、栄養状態の悪化、ストレス、過労、薬剤の使用などが挙げられます。
菌交代症とは | 原因 | リスク |
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日和見感染とは | 原因菌 | リスク | 免疫力が低下する原因 |
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検査と診断
– 検査と診断クレブシエラ属による感染症が疑われる場合、医師はまず、患者さんから詳しい症状を聞き取ります。その後に、どの部位で感染が起こっているのかを特定するために、患部から検体を採取して検査を行います。例えば、肺炎が疑われる場合は、患者さんに咳をしていただき、喀痰(かくたん)と呼ばれる痰を採取します。また、尿路感染症が疑われる場合は、患者さんから尿を採取します。その他、血液や創部の膿などを採取する場合もあります。採取した検体は、病院内の検査室に運ばれ、様々な方法で検査が行われます。まず、顕微鏡を用いて検体を観察し、クレブシエラ属と思われる細菌がいないかを確認します。クレブシエラ属は、他の腸内細菌と比べてサイズがやや大きく、周囲を厚い膜で覆われているという特徴があります。次に、採取した検体を栄養豊富な培地で培養し、細菌が増殖するかどうかを観察します。この検査を培養検査といい、クレブシエラ属が増殖しやすい環境かどうかを確認することで、感染の原因がクレブシエラ属であるかを特定します。さらに、近年では、クレブシエラ属の遺伝子を検出する遺伝子検査も用いられるようになり、より正確に菌の種類を特定できるようになりました。これらの検査結果を総合的に判断し、クレブシエラ属による感染症と診断された場合、適切な治療が行われます。
検査 | 方法 | 目的 |
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検体観察 | 顕微鏡を用いて検体を観察 | クレブシエラ属と思われる細菌がいないかを確認(サイズがやや大きく、周囲を厚い膜で覆われている) |
培養検査 | 採取した検体を栄養豊富な培地で培養し、細菌が増殖するかどうかを観察 | クレブシエラ属が増殖しやすい環境かどうかを確認し、感染の原因を特定 |
遺伝子検査 | クレブシエラ属の遺伝子を検出 | より正確に菌の種類を特定 |