慢性GVHD:移植後の闘い

血液

慢性GVHD:移植後の闘い

病院での用語を教えて

『慢性GVHD』って、どういう意味ですか?漢字が多いし、難しくてよくわかりません。

体の健康研究家

そうだね。「慢性GVHD」は簡単に言うと、臓器移植の後で、移植された臓器に対する拒絶反応が長く続く病気のことだよ。

病院での用語を教えて

拒絶反応が続くっていうと、体に悪いことが起きるんですか?

体の健康研究家

そうなんだ。移植された臓器を攻撃してしまうから、色々な臓器に炎症が起きたり、うまく動かなくなったりする可能性があるんだ。だから、慢性GVHDにならないように、そしてもしなってしまっても症状を抑えられるように、医師は注意深く治療をしているんだよ。

慢性GVHDとは。

「慢性GVHD」とは、骨髄移植などを受けた後、時間がたってから起こる病気です。これは、移植された細胞の中にある、体を守る働きをする細胞が、移植を受けた人の体の一部を、自分とは違うものと認識して攻撃してしまうために起こります。 別の名前として、慢性移植片対宿主病とも呼ばれます。

慢性GVHDとは

慢性GVHDとは

– 慢性GVHDとは慢性GVHD(まんせいじーぶいえいちでぃー)は、骨髄移植などを受けた後に起こる病気です。骨髄移植は、血液のがんや一部の難病の治療法として行われます。骨髄移植では、健康な人(ドナー)から提供された血液細胞を、患者さん(レシピエント)の体内に移植します。移植された血液細胞には、免疫細胞が含まれています。免疫細胞は、本来は体内に侵入してきた細菌やウイルスなどを攻撃して、体を守る働きをしています。しかし、骨髄移植の場合、提供されたドナーの免疫細胞が、レシピエントの体を「異物」と認識してしまうことがあります。その結果、ドナーの免疫細胞が、レシピエント自身の正常な細胞や組織を攻撃してしまうのです。これが、慢性GVHDと呼ばれる病気です。慢性GVHDでは、皮膚、口腔、消化管、肝臓、肺、眼、関節など、体の様々な部位が攻撃対象となる可能性があります。そのため、皮膚の発疹やかゆみ、口内炎、下痢、腹痛、呼吸困難、視力低下、関節痛など、多岐にわたる症状が現れます。慢性GVHDは、移植後3ヶ月以降に発症することが多く、長期にわたる経過をたどることが特徴です。症状の程度は患者さんによって異なり、軽い場合は経過観察のみで済むこともありますが、重症化すると生命に関わることもあります。

項目 説明
定義 骨髄移植後に、ドナーの免疫細胞がレシピエントの正常な細胞や組織を攻撃してしまう病気
原因 ドナーの免疫細胞が、レシピエントの体を「異物」と認識し攻撃してしまうため
症状 皮膚、口腔、消化管、肝臓、肺、眼、関節など様々な部位に症状が現れる
例:皮膚の発疹やかゆみ、口内炎、下痢、腹痛、呼吸困難、視力低下、関節痛など
発症時期 移植後3ヶ月以降
経過 長期にわたる
重症度 軽度から重症まで様々

症状は?

症状は?

慢性移植片対宿主病は、移植されたドナーの免疫細胞が、患者自身の細胞を「異物」と認識して攻撃してしまうことで起こる病気です。症状は実にさまざまで、皮膚や粘膜、目、消化管、肺、肝臓、筋肉、関節など、体のあらゆる部位に現れることがあります。

皮膚では、乾燥やかゆみを伴う湿疹や、赤みのある発疹が現れることがあります。ひどくなると、皮膚が硬くなって動きにくくなることもあります。また、口の中では、乾燥や痛みを伴う口内炎や、食べ物が飲み込みにくくなる症状が出ることもあります。

目が乾燥して、異物感やかゆみを感じたり、視界がぼやけたりすることもあります。さらに、関節の痛みやこわばりが生じ、日常生活に支障が出ることもあります。

消化管では、食欲不振や吐き気、下痢や便秘、腹痛などがみられます。また、肺では、息切れや咳が出ることがあります。肝臓では、肝機能障害が起こることがあります。

これらの症状は、慢性移植片対宿主病以外にも、さまざまな病気が原因で起こる可能性があります。そのため、他の病気との見分けが非常に重要になります。慢性移植片対宿主病は、患者さんの生活の質を著しく低下させる可能性があります。例えば、皮膚の硬化や関節の拘縮によって体の動きが制限されたり、口内炎の痛みによって食事が困難になったりすることがあります。そのため、早期に診断し、適切な治療を開始することが重要です。

部位 症状
皮膚 湿疹、発疹、皮膚の硬化、かゆみ、乾燥
粘膜(例:口の中) 口内炎、乾燥、痛み、嚥下困難
乾燥、異物感、かゆみ、視界不良
関節 痛み、こわばり、運動制限
消化管 食欲不振、吐き気、下痢、便秘、腹痛
息切れ、咳
肝臓 肝機能障害

原因

原因

慢性GVHDは、移植されたドナーの免疫細胞が、患者の体を「自分以外」のものと認識し攻撃してしまうことで起こります。
特に、免疫細胞の中でもTリンパ球と呼ばれる細胞が、患者の臓器を攻撃することが主な原因です。

本来、私たちの体は、細菌やウイルスなどの異物が入ってくると、それらを攻撃し排除しようとします。これが免疫反応です。移植された細胞は、患者にとっては「異物」であるため、本来であれば免疫反応によって排除されてしまいます。

しかし、移植を成功させるためには、移植された細胞が患者の体内で正常に機能し、根付いてくれる必要があります。そのため、移植の前後には、患者の免疫の働きを抑える治療が行われます。

免疫寛容とは、本来であれば攻撃されるはずの移植細胞に対して、患者の免疫系が反応しなくなる状態を指します。免疫寛容が成立すれば、移植された細胞は患者の体内で安定して機能し、拒絶反応も起こりません。

しかし、様々な要因によって免疫寛容がうまく成立せず、ドナーの免疫細胞が患者の臓器を攻撃し続けることで、慢性GVHDが発症します。

慢性GVHDの発症には、ドナーと患者の間で、HLA(ヒト白血球抗原)と呼ばれる白血球の型が完全に一致していないことや、移植前の治療による免疫抑制状態、感染症などが関係していると考えられています。

慢性GVHDの原因 詳細
免疫細胞の攻撃 移植されたドナーの免疫細胞(特にTリンパ球)が、患者の体を「自分以外」のものと認識し、臓器を攻撃する。
免疫寛容の不成立 様々な要因(HLAの不一致、免疫抑制状態、感染症など)により、患者の免疫系が移植細胞への攻撃を停止できない。

治療法

治療法

– 治療法慢性GVHDの治療では、過剰に活性化した免疫細胞の働きを抑え、症状を和らげることを目標とします。そのために、ステロイド薬やカルシニューリン阻害薬といった免疫抑制剤が一般的に用いられます。これらの薬は、免疫細胞の働きを抑えることで、移植された細胞が正常な組織を攻撃することを防ぎます。症状が重い場合には、免疫抑制効果の高い治療法が選択されることもあります。例えば、抗体製剤や免疫グロブリン製剤などが用いられます。これらの治療法は、より強力に免疫細胞の働きを抑えることができますが、その反面、感染症などの副作用のリスクも高まります。慢性GVHDの治療は、長期にわたることが多く、患者さんにとって大きな負担となる可能性があります。そのため、治療方針を決定する際には、医師は患者さんとその家族に対して、治療の効果とリスクについて十分に説明し、納得を得ることが重要です。また、治療中は、定期的に検査を行いながら、副作用の出現や症状の変化に注意深く対応していく必要があります。慢性GVHDは、患者さんにとって辛い病気ではありますが、適切な治療とケアによって、症状をコントロールし、日常生活を送ることができる場合も少なくありません。医師や看護師、薬剤師などの医療従事者と連携し、患者さん自身が病気と向き合いながら、治療を継続していくことが大切です。

治療法 目的 使用薬剤 効果 副作用
慢性GVHD治療 過剰に活性化した免疫細胞の働きを抑え、症状を和らげる ステロイド薬、カルシニューリン阻害薬
(症状が重い場合: 抗体製剤、免疫グロブリン製剤)
免疫細胞の働きを抑制し、移植された細胞が正常な組織を攻撃することを防ぐ 感染症などのリスク (特に免疫抑制効果の高い治療法)

慢性GVHDと向き合うために

慢性GVHDと向き合うために

慢性移植片対宿主病は、骨髄移植後、他人から提供された細胞が患者の体に対して免疫反応を起こし、皮膚、口、目、消化管など様々な臓器に症状が現れる病気です。移植後に起こる合併症の一つであり、患者さんの生活の質を大きく損なう可能性があります。
慢性移植片対宿主病は、慢性の経過をたどるため、長期にわたる治療や生活管理が必要となります。症状は患者さんによって異なり、皮膚のかゆみ、発疹、乾燥、口の渇き、味覚異常、目の乾燥、視力低下、消化不良、下痢、腹痛など、多岐にわたります。
そのため、医師や看護師など医療スタッフと積極的にコミュニケーションをとり、症状や治療に関する情報を共有することが非常に大切です。患者さん自身も、病気に対する正しい知識を身につけ、治療の意味や方法を理解し、積極的に治療に参加していくことが重要です。
慢性移植片対宿主病は、患者さんにとって大きな負担となる病気ですが、適切な治療と患者さん自身のセルフケア、そして周囲の理解とサポートがあれば、症状をコントロールし、社会生活を送りながら、生活の質を維持していくことが可能です。

慢性移植片対宿主病とは 症状 治療と生活管理
骨髄移植後、提供された細胞が患者の体に対して免疫反応を起こし、様々な臓器に症状が現れる病気。
患者の生活の質を大きく損なう可能性がある。
皮膚:かゆみ、発疹、乾燥
口:渇き、味覚異常
目:乾燥、視力低下
消化管:消化不良、下痢、腹痛 など
長期にわたる治療と生活管理が必要。
医師や看護師と積極的にコミュニケーションをとり、症状や治療に関する情報を共有することが大切。
患者自身が病気に対する正しい知識を身につけ、治療の意味や方法を理解し、積極的に治療に参加していくことが重要。

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