体の重要な一部:直腸の役割と健康
病院での用語を教えて
先生、「直腸」って具体的に体のどこにあるんですか?大腸の一部ってことはわかるんですけど、イメージが掴めなくて…
体の健康研究家
そうだね。「直腸」は大腸の最後の約20cmの部分で、肛門のすぐ上につながっているんだよ。お尻の中にあるイメージかな。座った時にお尻の下に当たる骨があるよね?その骨の少し前にあるんだ。
病院での用語を教えて
ああ、何となくイメージわいてきました!じゃあ、食べ物が消化されて最後に通るところってことですか?
体の健康研究家
その通り!食べ物は口から入って胃、小腸、大腸と進んでいくんだけど、その大腸の最後の部分が直腸で、そこから便として体外に排出されるんだよ。
直腸とは。
「医学・健康に関する用語『直腸』とは、体の中でおしりの穴につながる、およそ20センチほどの大きな腸の最後の部分のことです。
上の方はお腹の中でお腹の壁に覆われていて、後ろ側は腰の骨と尾てい骨のカーブに沿って曲がっています。
そして、下の方はおよそ3センチの肛門という部分につながっています。
直腸と肛門の境目は、腸の内側の壁がギザギザの形になっているため、『歯状線』と呼ばれています。
肛門の外側には、自分の意志で動かすことのできない筋肉と、自分の意志で動かすことのできる筋肉があります。
普段は、これらは便が体外に出るとき以外は縮んでいて、便がもれないようにしています。
■直腸の働き
腸の動きによって便が直腸に送られてくると、直腸が縮んで便を外に出そうとします。
この時、意識的に肛門の外側の筋肉を緩めることで、便を外に出すことができます。
便意を感じても、トイレに行くまでは、肛門の外側の筋肉を意識的に縮めて、便意を我慢することができます。
また、トイレに行けない時に便意を感じた場合でも、肛門の外側の筋肉をさらに強く縮めることで、便意を我慢することができます。
これが数分続くと、便意は消え、便は出なくなります。
このように、直腸は便意と密接に関係しています。
■直腸の不調によって起こる病気と症状
<排便障害>
排便障害は、大きく便秘と便失禁に分けられます。
・便秘
便の回数が少ない(3日に1回未満、週に2回未満など)、便が硬い、いきまないと出ないなど、様々な症状があります。便秘には、便が作られる過程や排便の仕組みに異常があって起こる『機能性便秘』と、腸そのものに病気があるために起こる『器質性便秘』があります。便秘の治療は、食事、運動、便秘薬などを使った治療が中心となります。
・便失禁
便意を我慢できない、または気づかないうちに便が出てしまうことをいいます。
一般的に便失禁は、肛門の筋肉の働きが弱くなることで起こります。これは、出産時の肛門の筋肉の傷、肛門の手術による筋肉の損傷などが原因で起こる『外傷性便失禁』と、出産経験のある女性や高齢が原因で起こる『突発性便失禁』があります。
便失禁の治療には、生活習慣の改善、骨盤の筋肉を鍛える運動、薬物治療などを行い、排便のコントロールを目指します。
<直腸炎>
直腸に炎症が起こった状態です。
原因として、潰瘍性大腸炎、クローン病、感染性のものとして、赤痢、アメーバ性腸炎、カンピロバクター腸炎など、外傷性のものとしては直腸脱、器具によるものなどが挙げられます。
その他に、虚血性腸炎、放射線性直腸炎、薬剤性直腸炎などがあります。
直腸炎の症状として、下痢や血が混じった便などが挙げられます。
症状が進むと、食欲不振、体重減少、貧血などの全身症状を伴うこともあります。
多くの場合、薬物治療や、食事療法(絶食、乳製品を避ける、脂肪分の少ない食事)を行います。
<直腸脱>
直腸脱とは、肛門から直腸が飛び出してしまうことで、直腸の粘膜のみが飛び出す『不完全直腸脱』と直腸のすべての層が飛び出す『完全直腸脱』があります。
骨盤の底にある筋肉を含めた、臓器を支える組織のゆるみと、直腸の固定の異常が原因として挙げられ、便秘や排便時のいきみが原因となって起こることが多いです。
直腸脱は高齢の女性に多く、全体の9割が70~80代の女性です。
治療は手術が基本で、肛門側から行う手術と、お腹の中から行う手術の2種類に分けられます。
<直腸がん>
直腸がんは大腸がんのおよそ40%を占めています。
大腸がんの原因として、生活習慣が大きく関わっているとされており、牛肉や豚肉などの動物性たんぱく質や動物性脂肪の摂り過ぎ、食物繊維の摂取不足、喫煙、過度な飲酒などが挙げられます。
また、一部は遺伝的な要因も考えられています。
直腸がんの症状として、血便、腹痛、便通異常、お腹の張りなどが挙げられます。
現在では早期がんの場合、適切な治療を行えば治ることも多くなっています。
がんが粘膜下層まで入り込んでいないステージ0期は、内視鏡手術で治療を行うことが多いです。
がんが粘膜下層まで入り込んでいるが、筋肉の層までは達していないステージ1期は、ステージ0期と同様に内視鏡手術を行うこともあります。
がんが腸の壁の筋肉の層まで入り込んでいる状態のステージ1期は、がんを広く切り取る手術を行います。
腸の壁の筋肉の層を超えて入り込んでいる、またはリンパ節に転移が認められるステージ2~3期では、リンパ節を切除する手術を行い、再発を防ぐために手術後に抗がん剤治療を行うこともあります。
他の臓器に転移があるステージ4期では、手術が可能な場合は転移した部分も含めて手術を行い、難しい場合は抗がん剤治療を中心とした治療を行います。
直腸の基礎知識
– 直腸の基礎知識私達の体の中で、食べ物は口から入り、胃や小腸で消化・吸収されていきます。そして、最後に残ったものが便として直腸にたどり着きます。直腸は大腸の最終部分を指し、長さは約20cmほどです。直腸は肛門へとつながっており、便が体外へ排出されるまでの重要な役割を担っています。直腸は、単なる便の通り道ではありません。便を一時的に貯蔵する大切な役割を担っています。直腸の壁は伸縮性に優れており、ある程度の量の便が溜まると、その情報は脳に伝わります。すると、私達は便意を感じ、トイレに行くタイミングを判断します。つまり、直腸は排便をコントロールする上でも重要な器官と言えるでしょう。また、直腸は肛門括約筋と連携して、排便を調節しています。肛門括約筋は、肛門を閉じておく筋肉で、便意を感じても、適切なタイミングまで便が漏れるのを防ぎます。そして、トイレに行くと、脳からの指令によって肛門括約筋が緩み、直腸が収縮することで、便は体外へ排出されます。このように、直腸は食べ物の消化・吸収過程において、最後の重要な役割を担っています。直腸の働きを知ることは、自身の健康状態を把握する上でも役立つでしょう。
項目 | 説明 |
---|---|
長さ | 約20cm |
役割1 | 大腸の最終部分として、便を肛門へ送り出す |
役割2 | 便を一時的に貯蔵し、脳に排便を促す |
役割3 | 肛門括約筋と連携し、排便を調節する |
排便の仕組みと直腸の役割
私たちが毎日当たり前のように行っている排便は、体内の老廃物を体外へ排出するために非常に重要な役割を担っています。この排便という行為は、一見単純なように思えますが、実際には複雑なメカニズムによって制御されています。
食物を消化吸収した後、残った不要なものが便として直腸へと送られてきます。直腸は、肛門の直前に位置する袋状の器官で、便を一時的に貯蔵する役割を担っています。直腸に便が溜まると、その内壁に張り付いているセンサーが刺激され、その情報が脳へと伝えられます。脳は、受け取った情報に基づいて便意を生じさせます。
便意を感じたら、私たちはトイレへと向かいます。そして、排便に適した体勢をとると、直腸の筋肉が収縮し始めます。同時に、肛門を閉めている肛門括約筋が緩み、これによって便が体外へと排出されます。
この排便のメカニズムは、自律神経系と体性神経系という2つの神経系によって制御されています。自律神経系は、私たちの意思とは無関係に働く神経系であり、消化や呼吸、循環など生命維持に不可欠な機能をコントロールしています。一方、体性神経系は、私たちの意思に基づいて働く神経系であり、運動や感覚など外界とのやり取りに関わる機能をコントロールしています。排便は、これら2つの神経系が協調して働くことで成り立っているのです。
このように、直腸は便を一時的に貯蔵するだけでなく、脳へ便意を伝える、排便をスムーズに行うなど、排便において中心的な役割を果たしている器官と言えるでしょう。
器官・神経系 | 役割 |
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直腸 |
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自律神経系 |
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体性神経系 |
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直腸の病気:便秘
私たちの体の一部である直腸は、消化管の最終部分であり、便を体外へ排出する重要な役割を担っています。しかし、様々な要因によって直腸の働きが低下すると、便の通過がスムーズに行われなくなり、排便に問題が生じてしまうことがあります。
このような排便トラブルの代表的な例として挙げられるのが便秘です。便秘になると、排便の回数が減り、通常よりも便が硬くなるため、排便時に強い力が必要になります。また、排便後もスッキリとせず、便が残っているような感覚に悩まされることもあります。便秘の原因は多岐にわたり、食生活の乱れや運動不足、ストレスなどが関係していると考えられています。特に、現代社会においては、食物繊維が不足しがちな食生活や、デスクワーク中心の運動不足になりやすい生活習慣によって、便秘に悩む人が増加傾向にあります。
さらに、直腸自身の運動機能が低下することも便秘の原因となります。直腸は、便を肛門まで送り出すために蠕動運動を行っていますが、加齢や生活習慣病などによってこの運動機能が弱まると、便をスムーズに排出することが難しくなってしまうのです。便秘は、放置すると痔や腸閉塞などの病気を引き起こすリスクが高まるため、注意が必要です。日頃からバランスの取れた食事、適度な運動、ストレスを溜めない生活を心がけ、直腸の健康を維持することが大切です。
器官 | 役割 | 問題 | 原因 | リスク | 予防 |
---|---|---|---|---|---|
直腸 | 消化管の最終部分、便を体外へ排出 | 便の通過不良による排便トラブル(例:便秘)
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痔、腸閉塞 |
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直腸の病気:便失禁
便失禁は、直腸や肛門括約筋の働きが低下してしまうことで、便意を我慢できずに漏れてしまう病気です。これは、私たちの生活の質を著しく低下させる深刻な問題です。
便失禁の原因は様々ですが、加齢に伴う筋肉の衰えが大きな要因の一つとして挙げられます。また、出産時に肛門括約筋を傷つけてしまうことで発症するケースも少なくありません。さらに、脳卒中や脊髄損傷などの神経疾患によって、脳からの指令が正しく伝わらなくなることも原因となります。
便失禁の症状が現れると、外出や人付き合いを控えがちになり、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。しかし、諦める必要はありません。便失禁の治療法は近年進歩しており、症状や原因に合わせた様々な方法があります。
例えば、薬物療法では、便を柔らかくしたり、腸の動きを調整したりする薬を使用します。また、骨盤底筋体操は、排便をコントロールする筋肉を鍛えることで、症状の改善を目指します。さらに、これらの治療で効果が得られない場合には、手術によって肛門括約筋を修復する方法も検討されます。
大切なことは、一人で悩まずに、医師に相談することです。適切な治療を受けることで、症状の改善や生活の質の向上を目指せる可能性があります。
原因 | 治療法 |
---|---|
加齢に伴う筋肉の衰え 出産時の肛門括約筋の損傷 脳卒中や脊髄損傷などの神経疾患 |
薬物療法 骨盤底筋体操 手術 |
直腸の病気:直腸炎
– 直腸の病気直腸炎肛門のすぐ上にある直腸は、便を一時的にためておく器官ですが、この直腸に炎症が起こる病気を直腸炎といいます。直腸炎は、様々な原因で起こり、放置すると悪化する可能性もあるため、注意が必要です。直腸炎の原因として最も多いのは、細菌やウイルスなどの感染症です。食中毒の原因となる細菌やウイルスが、直腸に炎症を引き起こすことがあります。また、潰瘍性大腸炎やクローン病といった、免疫の異常によって腸に炎症が起こる病気でも、直腸に炎症が起こることがあります。その他、放射線治療の副作用として直腸炎が起こることもあります。放射線治療はがん細胞を破壊する効果がありますが、正常な細胞にも影響を与えるため、直腸に炎症を起こすことがあります。直腸炎の主な症状としては、腹痛、下痢、血便などが挙げられます。また、発熱や吐き気、嘔吐を伴うこともあります。直腸炎の治療法は、原因や症状によって異なります。細菌感染が原因の場合は、抗生物質を投与します。ウイルス感染の場合は、安静にして水分を十分に摂取することが大切です。潰瘍性大腸炎やクローン病が原因の場合は、炎症を抑える薬や免疫抑制剤を使用します。また、食事療法も重要です。消化の良いものを食べるようにし、刺激物やアルコールは控えましょう。直腸炎は、早期に発見し適切な治療を行えば、多くは改善する病気です。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
項目 | 詳細 |
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定義 | 肛門のすぐ上にある直腸に炎症が起こる病気 |
原因 | – 細菌やウイルスなどの感染症 – 潰瘍性大腸炎やクローン病 – 放射線治療の副作用 |
症状 | – 腹痛 – 下痢 – 血便 – 発熱 – 吐き気 – 嘔吐 |
治療法 | – 原因や症状によって異なる – 細菌感染:抗生物質投与 – ウイルス感染:安静、水分摂取 – 潰瘍性大腸炎やクローン病:炎症を抑える薬や免疫抑制剤 – 食事療法:消化の良いものを摂取、刺激物やアルコールは控える |
直腸の病気:直腸脱
私たちの体の最も下部にある消化器官である直腸。通常は体の中に収まっているこの器官が、何らかの原因で肛門の外に出てきてしまう状態を「直腸脱」と言います。
直腸脱は、特に高齢の女性に多く見られます。これは、加齢に伴い骨盤底筋と呼ばれる、骨盤内で臓器を支えている筋肉が衰え、直腸を支えきれなくなるためです。また、便秘で排便時に強くいきむ習慣がある方も、直腸脱のリスクが高まります。
直腸脱の症状は、肛門から腸の一部が飛び出す、脱出感や痛みなどです。初期は排便時にのみ起こりますが、症状が進行すると、立っているだけでも直腸が脱出するようになります。
治療法は、直腸脱の程度によって異なります。軽度の場合は、食生活の改善や排便習慣の改善、骨盤底筋を鍛える運動などの保存療法が有効です。しかし、重症化し、日常生活に支障が出る場合は、脱出した直腸を元に戻す手術が必要となります。
直腸脱は、適切な治療を行えば改善する病気です。少しでも気になる症状があれば、恥ずかしがらずに医療機関を受診しましょう。
項目 | 説明 |
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定義 | 直腸(消化器官の最下部)が肛門の外に出てしまう状態 |
原因 | 加齢による骨盤底筋の衰え、便秘時のいきみ |
リスクが高い人 | 高齢の女性、便秘で排便時に強くいきむ人 |
症状 |
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治療法 |
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直腸の病気:直腸がん
– 直腸の病気直腸がん直腸がんは、消化管の最も下部に位置する直腸に発生するがんです。近年、食生活の欧米化や喫煙、高齢化などを背景に患者数が増加傾向にあり、日本人の20人に1人が罹患するといわれています。直腸がんは初期段階では自覚症状が現れにくいという特徴があります。しかし、病気が進行すると、血便や下痢、便秘、残便感といった症状が現れることがあります。また、がんが大きくなると、腸閉塞を引き起こす場合もあります。早期に発見できれば、内視鏡を用いた手術でがんを切除できる可能性が高く、体への負担も軽減できます。そのため、定期的な検査で早期発見に努めることが重要です。便潜血検査などの検査で陽性反応が出た場合は、大腸カメラ検査を行い、より詳細な診断を行います。進行がんの場合は、手術、化学療法、放射線療法を組み合わせた集学的治療が行われます。がんの進行度や患者さんの状態に合わせて、最適な治療法が選択されます。直腸がんは早期発見、早期治療が非常に重要です。日頃から食生活の改善や禁煙など、生活習慣に気を配り、定期的な検査を受けるように心がけましょう。また、気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診するようにしてください。
項目 | 説明 |
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病気 | 直腸がん |
定義 | 消化管の最も下部に位置する直腸に発生するがん |
患者数増加の背景 | 食生活の欧米化、喫煙、高齢化 |
罹患率 | 日本人の20人に1人 |
初期症状 | 自覚症状が現れにくい |
進行時の症状 | 血便、下痢、便秘、残便感、腸閉塞 |
早期発見のメリット | 内視鏡手術が可能、体への負担軽減 |
早期発見の方法 | 定期的な検査(便潜血検査など)、陽性反応が出た場合は大腸カメラ検査 |
進行がんの治療 | 手術、化学療法、放射線療法を組み合わせた集学的治療 |
予防 | 食生活の改善、禁煙、定期的な検査、気になる症状がある場合は早めに医療機関を受診 |