医療の転換点:疾患中心から患者中心へ
病院での用語を教えて
先生、DOSってどういう意味ですか?
体の健康研究家
DOSは、病気中心の医療システムのことだよ。昔は、お医者さんが中心になって、病気を治すことに重点が置かれていたんだ。
病院での用語を教えて
なるほど。じゃあ、今は違うんですか?
体の健康研究家
そうなんだ。今は、患者さん一人ひとりの立場に立った医療が大切になってきているんだ。DOSのような病気中心の考え方だけでなく、患者さんの生活や気持ちを考えた医療が求められているんだよ。
DOSとは。
「病気や健康に関する言葉で『DOS』というものがあります。これは、『病気中心の仕組み』または『医者中心の仕組み』という意味です。これまでの医療は、お医者さんが中心となって、看護師さんなどの医療スタッフの助けを借りながら、患者さんの病気を突き止めて、治療するというものでした。しかし、最近は、患者さん一人ひとりに合わせた医療を提供する『POS(問題解決型の仕組み、患者さん中心の仕組み)』に変わってきていると言われています。
従来の医療:疾患中心システムとは
これまで長い間、医療の世界では、「疾患中心システム(Disease Oriented System DOS)」と呼ばれる考え方が一般的でした。これは、医師が医療の中心に立ち、患者の訴える体の不調や病気に対して、その原因を突き止め、治療を行うというものです。
医師は、医学の専門家として、長年の研鑽によって得られた豊富な知識と経験を駆使し、患者を診察します。そして、患者の訴えや診察所見から病気を特定し、薬物療法や手術療法など、その病気に最適な治療法を選択します。
このシステムの中で、看護師は医師の指示に従って患者のケアを行い、薬剤師は処方された薬を調剤し、リハビリテーションを専門とする理学療法士は医師の指示の下で患者の運動機能回復を支援します。このように、医師の指示を軸に、それぞれの専門性を生かして、医療従事者が協力して患者の治療にあたってきました。
項目 | 内容 |
---|---|
中心的考え方 | 疾患中心システム(Disease Oriented System DOS) |
特徴 | 医師が中心となり、患者の訴える体の不調や病気の原因を突き止め、治療を行う |
医師の役割 | 医学の専門知識と経験を駆使し、患者を診察し、病気の特定、治療法の選択を行う |
その他の医療従事者の役割 | 医師の指示に従い、それぞれの専門性を生かして患者の治療を支援 – 看護師: 患者のケア – 薬剤師: 薬の調剤 – 理学療法士: 患者の運動機能回復支援 |
変化する医療現場
近年、医療の現場は、これまでとは大きく姿を変えつつあります。
医療技術が目覚ましい進歩を遂げ、人々の寿命が延びて高齢化が進み、医療費が膨らみ続けているなど、様々な要因が複雑に絡み合い、従来の病気のことだけを考えた医療体制では、対応しきれなくなってきています。
特に、食生活の変化や運動不足によって、生活習慣病を抱える人が増えていることに加え、患者さんの高齢化が進むことで、複数の病気を抱えるケースも増加しています。
このような状況下では、それぞれの病気を個別に治療するだけでなく、患者さん一人ひとりの生活習慣や大切にしている価値観、社会的な背景などを考慮した医療を提供することが、ますます重要になってきています。
患者さんの生活の質を高め、その人らしい生き方を支えるためには、医療従事者がそれぞれの専門性を活かしながら連携し、患者さんと積極的にコミュニケーションを図りながら、最善の医療を提供していくことが求められています。
患者中心システムの台頭
近年、医療現場において、患者を主体的にと捉え、その人らしい生き方を尊重する医療への転換が求められています。従来型の医療は、医師中心的な側面が強く、患者は医師の指示に従うだけの存在になりがちでした。しかし、真に患者にとって良い医療を提供するためには、患者一人ひとりの価値観や生活背景、そして治療に対する希望を理解し、共に治療方針を決定していくことが重要です。
そこで注目されているのが、患者中心システム(Patient Oriented System POS)です。POSは、患者を医療の中心に据え、患者の価値観や生活、希望を尊重しながら、医師をはじめとする多職種が連携して医療を提供するシステムです。医師は、検査結果や診断内容だけでなく、患者の抱える不安や疑問、生活上の制約などを共有し、それぞれの専門性を活かしながら、患者と一緒に最善の治療方針を決定していきます。
患者は、自身の健康状態や治療に関する情報を得るだけでなく、治療方針の決定プロセスにも積極的に参加することで、自身の価値観や希望を反映した医療を受けることができます。また、医療者との信頼関係を築き、治療に対する主体性を高めることで、治療効果の向上や生活の質の維持・改善にも繋がると期待されています。POSは、医療現場に患者と医療者の新たな関係性を築き、より質の高い医療を提供するための重要なシステムと言えるでしょう。
項目 | 説明 |
---|---|
従来型の医療 | 医師中心的な側面が強く、患者は医師の指示に従うだけの存在になりがちだった。 |
患者中心システム(POS) | 患者を医療の中心に据え、患者の価値観や生活、希望を尊重しながら、医師をはじめとする多職種が連携して医療を提供するシステム。 患者は治療方針の決定プロセスにも積極的に参加することで、自身の価値観や希望を反映した医療を受けることができる。 |
POSのメリット |
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患者中心システムの実践
– 患者中心システムの実践患者中心の医療システムを実際に運用するには、医療従事者と患者間における信頼関係の構築、円滑な情報共有の推進、そして多職種連携の強化が欠かせません。まず、患者との信頼関係を築くためには、患者と向き合う時間を十分に確保し、患者の訴えに耳を傾けることが重要です。 患者はそれぞれ異なる背景や価値観、そして希望を持っているため、じっくりと話を聞くことで、初めて患者の個別具体的な状況を理解することができます。例えば、診察時間を十分に確保することで、患者は自身の症状や不安を伝えることができ、医師は患者の言葉に耳を傾け共感することで、信頼関係を築くことができます。また、円滑な情報共有を実現するためには、電子カルテなどの情報共有システムの活用が有効です。 従来の紙カルテでは、情報の共有に時間がかかったり、情報が散逸してしまうリスクがありました。しかし、電子カルテシステムを導入することで、患者の診療情報や検査データなどを一元管理し、関係者間でリアルタイムに共有することが可能となります。これにより、多職種が迅速かつ正確に情報を共有し、患者一人ひとりに最適な医療を提供することができます。さらに、多職種連携を強化するためには、チーム医療の重要性を認識し、共通の目標に向かって協働していく必要があります。 医師や看護師だけでなく、薬剤師、理学療法士、ソーシャルワーカーなど、様々な専門職がそれぞれの専門性を活かし、連携を密にすることで、包括的で質の高い医療を提供することができます。例えば、定期的なカンファレンスを開催し、患者の状況や治療方針について議論することで、多職種が共通認識を持つことができます。このように、患者中心の医療システムを実践するためには、多角的な取り組みが必要となります。医療従事者は、患者との信頼関係構築、情報共有の推進、そして多職種連携の強化を常に意識し、患者中心の医療の実現を目指していく必要があります。
項目 | 内容 | 具体例 |
---|---|---|
信頼関係構築 | 患者と向き合う時間を持ち、訴えに耳を傾ける | 診察時間を十分に確保し、患者の言葉に共感する |
情報共有の推進 | 電子カルテなどを活用し、診療情報や検査データを一元管理する | 関係者間でリアルタイムに情報を共有し、迅速かつ正確な医療提供を実現 |
多職種連携の強化 | チーム医療の重要性を認識し、共通の目標に向かって協働する | 定期的なカンファレンスで患者の状況や治療方針を議論し、共通認識を持つ |
これからの医療に向けて
これからの医療は、病気そのものだけを見るのではなく、患者一人ひとりの背景や価値観を重視した、より個別化された医療、すなわち患者中心の医療へと変化していくことが求められています。
従来の医療は、病気の原因究明と治療に重点が置かれていました。しかし、同じ病気であっても、患者によって生活習慣や抱えている事情、治療に対する希望は異なります。そのため、画一的な治療ではなく、患者の個別性に配慮した医療を提供することが重要視されています。
患者中心の医療を実現するためには、医療者と患者の信頼関係が不可欠です。医療者は、患者の話を丁寧に聞き取り、分かりやすい言葉で病気の説明や治療方針を伝えることが求められます。また、患者は自身の症状や不安を積極的に医療者に伝えることで、より良い医療を受けることができます。
患者中心の医療への転換は、医療現場にとって大きな挑戦です。しかし、患者一人ひとりのニーズに寄り添った、より質の高い医療を提供するためには、医療者と患者が共に協力し、より良い関係を築いていくことが重要です。
従来の医療 | これからの医療 |
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病気の原因究明と治療に重点 | 患者一人ひとりの背景や価値観を重視した個別化医療 |
画一的な治療 | 患者の個別性に配慮した治療 |
医療者と患者の信頼関係が不可欠 |