潰瘍性大腸炎:原因不明の炎症性腸疾患
病院での用語を教えて
先生、潰瘍性大腸炎ってどんな病気ですか?
体の健康研究家
潰瘍性大腸炎はね、大腸の表面に潰瘍(かいよう)という傷がたくさんできてしまう病気なんだ。主な症状としては、何度も下痢を繰り返したり、血が混ざった便が出たりするんだよ。
病院での用語を教えて
大腸に傷ができるって、なんだか痛そうですね…。
体の健康研究家
そうだね。潰瘍性大腸炎になると、お腹が痛くなったり、熱が出たり、体重が減ったりすることもあるんだ。それに、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す病気で、完全に治すのが難しい病気なんだよ。
潰瘍性大腸炎とは。
「潰瘍性大腸炎」という病気について説明します。この病気は、大腸の表面に傷や炎症が広がり、原因がはっきりとはわかっていない病気です。
病気は大腸だけにみられ、肛門に近い直腸から奥に向かって広がっていく特徴があります。症状が良くなったり悪くなったりを繰り返し、大腸以外の場所に症状が出ることもあります。
10代後半から30代の若い人に多くみられますが、子供や高齢者にも起こることがあります。
主な症状としては、何度も下痢や血が混ざった便が出たり、お腹が痛くなったり、熱が出たり、体重が減ったりします。また、関節の痛み、目が赤くなる、膵臓の炎症、皮膚に赤い斑点や膿が出るなど、大腸以外の場所に症状が出ることもあります。
血液検査では、貧血や炎症反応の値が高くなるのが特徴です。
治療方針を決めるために、症状の程度を「軽い」「中等度」「重い」の3段階に分けて評価します。
潰瘍性大腸炎とは
– 潰瘍性大腸炎とは潰瘍性大腸炎は、大腸の最も内側の層である粘膜に炎症が起こり、びらんや潰瘍といった傷ができてしまう病気です。この炎症は、直腸から始まり、連続的に上行して大腸全体に広がっていくという特徴があります。原因はまだ完全には解明されていませんが、免疫システムの異常が大きく関わっていると考えられています。本来、免疫システムは細菌やウイルスなどの外敵から体を守る働きをしていますが、潰瘍性大腸炎の患者さんの場合、何らかの原因で自分の体の細胞や組織を攻撃してしまうと考えられています。また、遺伝的な要因も指摘されています。家族に潰瘍性大腸炎の方がいる場合、発症するリスクが高くなるというデータがあります。さらに、食生活やストレスなどの環境要因も発症に関与している可能性が示唆されています。潰瘍性大腸炎は、10代後半から20代の若い世代に多く発症する傾向があります。そして、症状がほとんどない寛解期と、下痢や血便、腹痛などの症状が現れる再燃期を繰り返すという経過をたどることが多く、患者さんにとって大きな負担となっています。症状の程度は患者さんによって異なり、日常生活に支障をきたすほどの激しい症状が出る場合もあれば、ほとんど症状を感じない軽症の場合もあります。症状が重い場合は、適切な治療を行わないと、貧血や脱水症状、腸閉塞などの合併症を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。
項目 | 内容 |
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定義 | 大腸の最も内側の層である粘膜に炎症が起こり、びらんや潰瘍といった傷ができてしまう病気 |
特徴 | 炎症は直腸から始まり、連続的に上行して大腸全体に広がっていく |
原因 | ・免疫システムの異常 ・遺伝的な要因 ・食生活やストレスなどの環境要因 |
発症年齢 | 10代後半から20代の若い世代に多い |
経過 | 症状がほとんどない寛解期と、下痢や血便、腹痛などの症状が現れる再燃期を繰り返す |
症状の程度 | 患者さんによって異なり、日常生活に支障をきたすほどの激しい症状が出る場合もあれば、ほとんど症状を感じない軽症の場合もある |
合併症 | 貧血、脱水症状、腸閉塞など |
炎症が起こる場所
私たちの体の一部である大腸は、口から食べたものが最後に到着する消化管の一部です。その大腸に炎症が起こる病気が、潰瘍性大腸炎です。この病気の大きな特徴の一つに、炎症の起こり方があります。 潰瘍性大腸炎では、まず最初に肛門のすぐ上にある直腸という場所に炎症が起こります。そして、この炎症はまるで火が燃え広がるように、直腸から繋がっているS状結腸、下行結腸、横行結腸へと、順番に広がっていく性質があります。つまり、炎症が直腸にとどまっている軽い場合もあれば、大腸全体に広がってしまう重症の場合もあるのです。 炎症の範囲は、病気の症状の重さや、治療方法を決める上で非常に重要になります。そのため、医師は内視鏡検査などを行い、炎症がどこまで広がっているのかを正確に調べます。内視鏡検査では、肛門から細い管状の機器を挿入し、大腸内部の粘膜を直接観察します。これにより、炎症の程度や範囲を視覚的に把握することができます。そして、その結果に基づいて、患者さん一人ひとりに最適な治療方針を決定していくのです。
項目 | 内容 |
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病気 | 潰瘍性大腸炎 |
定義 | 大腸に炎症が起こる病気 |
特徴 | 肛門に近い直腸から炎症が始まり、S状結腸、下行結腸、横行結腸へと炎症が広がっていく |
炎症の範囲 | 直腸だけの場合もあれば、大腸全体に広がる場合もある |
炎症の範囲の重要性 | 症状の重さや治療方法を決める上で重要 |
診断方法 | 内視鏡検査を行い、炎症の程度や範囲を調べる |
代表的な症状
– 代表的な症状
潰瘍性大腸炎は、大腸に炎症が起こることで様々な症状が現れます。ここでは、代表的な症状について詳しく解説します。
最も一般的な症状は、頻回の下痢です。健康な状態では、大腸は食べ物から水分を吸収し、便を固めていきます。しかし、潰瘍性大腸炎によって大腸に炎症が起こると、この水分吸収がうまくいかなくなります。その結果、水分の多い軟らかい便、または水のような便が頻繁に出るようになります。
下痢に加えて、血便も見られることが多い症状です。これは、炎症によって大腸の粘膜が傷つき、そこから出血するために起こります。出血の量が多い場合は、便の色が真っ赤になることもありますが、少量の場合は、便の色が黒っぽく見えることもあります。
腹痛も、潰瘍性大腸炎の患者さんを悩ませる症状の一つです。炎症によって腸がけいれんを起こしたり、ガスが溜まりやすくなることで、お腹に痛みを感じます。痛みの程度や現れ方は人それぞれで、鈍痛や差し込むような痛みなど、様々なケースがあります。
これらの症状は、食事の内容や量、ストレス、疲労、睡眠不足などによって悪化することがあります。また、症状の出方も人によって異なり、常に症状がある場合や、症状が出たり消えたりを繰り返す場合もあります。
症状 | 詳細 |
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頻回の下痢 | 大腸の炎症による水分吸収の低下が原因で、水分の多い軟らかい便や水のような便が頻繁に出る。 |
血便 | 炎症による大腸の粘膜の傷からの出血が原因。出血量が多い場合は真っ赤な便、少量の場合は黒っぽい便になる。 |
腹痛 | 炎症による腸のけいれんやガス貯留が原因。鈍痛や差し込むような痛みなど、程度や現れ方は様々。 |
合併症の可能性
潰瘍性大腸炎は、その名の通り大腸に炎症が起こる病気ですが、時に大腸だけに留まらず、体の他の部分にも影響を及ぼすことがあります。このような状態を合併症と呼びます。合併症として代表的なものは、関節、皮膚、そして目に現れます。
関節では、関節炎を引き起こすことがあります。関節炎になると、手足の関節が腫れて痛みを伴うようになります。特に朝起きた時や、長い時間同じ姿勢を続けていた後に、関節の動きが鈍くなることがあります。
皮膚では、赤い斑点や、少し盛り上がった結節ができることがあります。これらの皮膚症状は、かゆみを感じることもあれば、全く自覚症状がないこともあります。
目では、ぶどう膜炎という炎症が起こることがあります。ぶどう膜炎になると、目が充血したり、痛みを感じたり、視界がぼやけたりすることがあります。
これらの合併症は、潰瘍性大腸炎の炎症が活発になっている時に現れやすく、大腸炎の治療が奏効すると、合併症も軽快することが多いです。ただし、合併症の中には、大腸炎の活動性とは関係なく、症状が続くものもあります。いずれにしても、潰瘍性大腸炎の治療と合わせて、合併症に対する適切な治療を行うことが大切です。
合併症の部位 | 症状 |
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関節 | 関節炎:腫れ、痛み、朝のこわばり |
皮膚 | 赤い斑点、盛り上がった結節(かゆみ、自覚症状なしの場合あり) |
目 | ぶどう膜炎:充血、痛み、視界不良 |
重症度の判断基準
潰瘍性大腸炎の治療方針を決定する上で、疾患の活動性評価、すなわち重症度の判断は非常に重要です。潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症が起こり、潰瘍やびらんが生じることで、下痢や腹痛、血便などの症状が現れる病気です。その症状は患者さんごとに異なり、同じ患者さんでも時期によって変化することがあります。そのため、治療方針を適切に決定し、患者さん一人ひとりに最適な医療を提供するためには、その時の病気の勢い、つまり重症度を正しく評価することが不可欠となります。
重症度は、様々な要素を総合的に判断して決定されます。具体的には、一日に何回トイレに行くかを示す排便回数、便に血が混ざっているかどうか、どの程度の腹痛があるか、発熱を伴っているかどうかといった自覚症状に加え、血液検査の結果なども参考にされます。血液検査では、炎症の程度を示す指標であるCRP値や白血球数などが測定されます。これらの情報をもとに、医師は患者さんの状態を総合的に判断し、一般的には症状が軽い「軽症」、中程度の「中等症」、そして症状が重い「重症」の3段階に分類します。
重症度に応じて、治療法は異なります。軽症の場合には、症状を抑えることを目的とした内服薬が処方されます。中等症の場合には、内服薬に加えて、炎症を抑える効果の高いステロイド薬の服用や、栄養状態を改善するための栄養療法などが検討されます。重症の場合には、入院の上で集中的な治療が行われます。ステロイド薬の点滴や、免疫を抑える薬剤の使用、場合によっては手術が必要となることもあります。このように、重症度を正確に判断することは、適切な治療法を選択し、病気の改善を図る上で非常に重要です。
重症度 | 症状 | 治療法 |
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軽症 | 下痢、腹痛、血便などの症状が軽い | 内服薬による症状の抑制 |
中等症 | 軽症よりも症状が強く、日常生活に支障が出る程度 | 内服薬に加え、ステロイド薬の服用や栄養療法 |
重症 | 激しい下痢、腹痛、発熱などを伴い、入院が必要な状態 | ステロイド薬の点滴、免疫抑制剤、場合によっては手術 |