先天性股関節脱臼:赤ちゃんの股関節の病気
病院での用語を教えて
先生、この資料に書いてある『先天性股関節脱臼』って、どんな病気のことですか?難しそうな言葉が多くて、よくわからないんです…
体の健康研究家
なるほどね。『先天性股関節脱臼』は、生まれたときから股関節が外れやすい状態になっている病気のことだよ。簡単に言うと、足の骨と骨盤をつなぐ関節が、きちんとハマっていない状態なんだ。
病院での用語を教えて
生まれたときから外れやすいんですか?!じゃあ、生まれた後に無理な体勢にさせたりしたら、なってしまうんですか?
体の健康研究家
そう思ってしまうよね。実は、おむつやお抱っこの仕方で股関節に負担がかかってしまうこともあるけれど、それだけが原因ではないんだ。 赤ちゃんがお腹の中にいるときから、関節の形が違っていたり、関節を支える靭帯が弱かったりすることが原因で起こることが多いんだよ。
先天性股関節脱臼とは。
生まれたときから股関節が外れている状態を「先天性股関節脱臼」といいます。これは、股関節がちゃんと作られない病気で、女の子に多く見られます。おむつの当て方などが原因で起こることもあります。 この病気では、足の付け根のしわが左右で違っていたり、足の関節を大きく開くことができないことがあります。 お医者さんは、足の関節を動かしたときに「コクン」と音がするかどうかや、レントゲン、超音波などで診断します。 生後3ヶ月までは、特別な治療はせずに、生活上の注意だけで様子を見る場合が多いです。それ以降に診断された場合は、関節をもとの位置に戻す治療が必要になります。その治療法として、リーメンビューゲルという装具を使うことが一般的です。装具を使っても関節が戻らない場合は、引っ張ったり手術をしたりして、関節をもとの位置に戻します。
先天性股関節脱臼とは?
– 先天性股関節脱臼とは?生まれたばかりの赤ちゃんの股関節は、骨盤の受け皿となる部分(臼蓋)と太ももの骨(大腿骨)の先端にある丸い骨(大腿骨頭)が組み合わさってできています。先天性股関節脱臼とは、この大腿骨頭が臼蓋から外れてしまっている状態を指します。医学用語では「先天性股関節脱臼」または「発育性股関節形成不全」とも呼ばれます。この状態は、股関節を形成する骨や軟骨が十分に発達していない、または正常な位置にないために起こります。赤ちゃんの骨はやわらかく、成長の過程で形が変わっていくものですが、先天性股関節脱臼の場合、股関節の形が不安定なために、大腿骨頭が臼蓋から外れやすくなっています。先天性股関節脱臼は、女の子に多く見られ、男の子の7~8倍の発生率です。これは、女の子の方が骨盤の成長が遅く、股関節が不安定になりやすいことが理由の一つと考えられています。また、左右どちらかの股関節に起こることもありますが、左側に多い傾向があります。これは、赤ちゃんがお母さんのお腹の中で、左側を下にしていた場合、左の股関節に負担がかかりやすいためと考えられています。先天性股関節脱臼は、早期に発見し、適切な治療を行うことで、ほとんどの場合、後遺症を残さずに治すことができます。そのため、赤ちゃんの股関節に異常がないか、定期的に健診を受けることが重要です。
項目 | 説明 |
---|---|
疾患名 | 先天性股関節脱臼 (発育性股関節形成不全) |
定義 | 大腿骨頭が臼蓋から外れている状態 |
原因 | 股関節を形成する骨や軟骨の未発達、または位置異常 |
症状 | 股関節の不安定さ、大腿骨頭の臼蓋からの脱臼 |
リスク因子 | – 女性 – 左側股関節 – 骨盤の成長の遅延 |
治療の重要性 | 早期発見・治療で後遺症を残さずに治癒可能 |
原因と症状
– 原因と症状
先天性股関節脱臼は、その名前の通り生まれつき股関節が脱臼している状態を指しますが、その原因についてはまだ完全には解明されていません。
考えられる要因としては、まず遺伝的な要素が挙げられます。両親や親族に股関節脱臼の経験者がいる場合、そうでない場合に比べて発症リスクが高くなるというデータがあります。
また、お母さんのお腹の中にいる間の赤ちゃんの姿勢も、発症に関係していると考えられています。特に逆子や骨盤位と呼ばれる、赤ちゃんがお尻や足を下にして子宮内にいる状態は、股関節への負担が大きくなりやすいと言われています。
さらに、生まれてからの環境要因も指摘されています。最近では、赤ちゃんのお尻を包む布であるおむつが、股関節の動きを制限することで発症リスクを高める可能性も示唆されています。
先天性股関節脱臼の症状としては、赤ちゃんの両足の付け根にあるしわ(大腿皮溝)の位置が左右でずれている、股関節を外側に開く動きが硬い、などの特徴が見られます。しかし、生まれたばかりの赤ちゃんは痛みを感じにくいため、新生児期には目立った症状が現れないことがほとんどです。そのため、赤ちゃんの成長に伴って股関節の動きが制限されたり、歩行開始後に歩き方が不安定になるなどの兆候が見られてから、初めて異常に気付くケースも多いです。
要因 | 詳細 |
---|---|
遺伝的要因 | 両親や親族に股関節脱臼の経験者がいる場合、発症リスクが高くなる |
胎児期の姿勢 | 逆子や骨盤位など、股関節への負担が大きくなる姿勢 |
環境要因 | おむつによる股関節の動きの制限 |
症状 | 詳細 |
---|---|
大腿皮溝の左右差 | 赤ちゃんの両足の付け根にあるしわの位置が左右でずれている |
股関節の動きが硬い | 股関節を外側に開く動きが硬い |
新生児期には症状が出にくい | 痛みを感じにくいため、新生児期には目立った症状が現れないことが多い |
成長に伴う症状 | 股関節の動きの制限、歩行開始後の歩き方の不安定さ |
診断方法
– 診断方法先天性股関節脱臼を診断するには、医師による診察と画像検査が欠かせません。赤ちゃんがまだ骨や関節が未発達な時期に発見し、適切な治療を開始することが重要となるからです。診察では、まず医師は赤ちゃんを仰向けに寝かせ、股関節の動きを丁寧に確認します。股関節を開いたり閉じたりする際に、「クリック」と音がするかどうかを調べます。これは「クリックサイン」と呼ばれ、股関節が脱臼している、もしくは脱臼しやすい状態であることを示唆しています。しかし、クリックサインだけで確定診断が下せるわけではありません。音がしない場合でも、股関節に異常がある可能性は残ります。確定診断には、画像検査が不可欠です。生まれて間もない時期、特に生後3ヶ月までは骨が未熟でレントゲン写真に写りにくいため、超音波検査が有効な診断方法となります。超音波検査は人体への負担が少なく、リアルタイムで股関節の状態を観察できるというメリットがあります。生後3ヶ月以降は、骨の成長に伴いレントゲン検査が有効となります。レントゲン写真では、股関節の骨の位置や形を詳しく確認し、脱臼の程度を正確に診断します。これらの検査結果を総合的に判断し、医師は先天性股関節脱臼の診断を下します。早期発見・早期治療が重要となるため、赤ちゃんの定期健診は必ず受けるようにしましょう。
診断方法 | 時期 | 説明 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|
医師による診察 | いつでも可能 | 股関節の動きを確認し、「クリックサイン」の有無を調べる。 | – 赤ちゃんへの負担が少ない – 特別な機器が不要 |
– クリックサインだけで確定診断はできない – 医師の経験や技術に左右される場合がある |
超音波検査 | 生後3ヶ月まで | 骨が未熟な時期に有効。超音波を用いてリアルタイムで股関節の状態を観察する。 | – 赤ちゃんへの負担が少ない – リアルタイムで観察可能 – 骨の成熟度に関わらず診断可能 |
– レントゲン検査に比べて画像の解像度が低い |
レントゲン検査 | 生後3ヶ月以降 | 骨の成長に伴い有効。レントゲン写真で股関節の骨の位置や形を確認する。 | – 骨の状態を詳細に確認できる – 脱臼の程度を正確に診断できる |
– 放射線被曝のリスクがある – 骨が未熟な時期は診断が難しい |
治療方法
– 治療方法
先天性股関節脱臼の治療においては、早期発見と早期治療が極めて重要です。
生後3ヶ月以内の赤ちゃんの場合、多くのケースで特別な治療は行わず、赤ちゃんの自然な発育を促しながら経過を観察します。この時期の赤ちゃんの股関節は、関節を包む袋(関節包)がまだ柔らかい状態であるため、自然に治癒する可能性が高いからです。しかし、定期的な診察は欠かせません。
生後3ヶ月を過ぎても脱臼が続く場合や、自然に治癒しない場合には、治療が必要となります。
治療法としては、股関節を正しい位置に矯正し、その状態を保つために装具を装着する方法が一般的です。
装具には、股関節を開いた状態を保つ「リーメンビューゲル」や、股関節を曲げた状態を保つ「ギプス」など、様々な種類があります。
赤ちゃんの状態や脱臼の程度に応じて、適切な装具が選択されます。
また、装具による治療の効果が不十分な場合や、より重い脱臼の場合には、手術が必要となることもあります。
いずれの治療法を選択する場合でも、赤ちゃんの発育段階や症状に合わせた適切な治療計画を立て、医師と十分に相談することが大切です。
月齢 | 治療法 | 備考 |
---|---|---|
3ヶ月以内 | 経過観察 | 自然治癒の可能性が高いが、定期的な診察は必須 |
3ヶ月以降 & 自然治癒しない場合 | 装具装着による矯正 ・リーメンビューゲル ・ギプス |
赤ちゃんの状態や脱臼の程度に応じて選択 |
装具による治療が不十分な場合 & より重い脱臼の場合 | 手術 |
整復治療
– 整復治療生まれたばかりの赤ちゃんは、骨や関節が未発達なため、股関節が脱臼している場合でも、自然に治ることが期待できます。しかし、生後3ヶ月を過ぎても股関節の脱臼が治らない場合や、発見が遅れた場合には、自然に治癒する可能性が低くなるため、積極的な治療が必要となります。このような場合に行われるのが、「整復治療」です。整復治療とは、脱臼した股関節を正常な位置に戻し、関節の形が正常に発達するように促す治療法です。整復治療の中で、最も一般的な治療法は、「リーメンビューゲル」という装具を使った方法です。リーメンビューゲルは、赤ちゃんの足を「M」字型に開いた状態に保つことで、股関節を正常な位置に誘導し、関節の安定化を図る装具です。この装具は、日常生活の中で常時装着する必要があり、治療期間中は、赤ちゃんのお世話をするご家族の負担も大きくなります。しかし、赤ちゃんの将来のためには、医師の指示に従って、根気強く治療を続けることが大切です。整復治療が成功すれば、ほとんどの赤ちゃんは、後遺症もなく、正常に歩行できるようになります。しかし、治療開始が遅れた場合や、関節の変形が強い場合には、手術が必要となる場合もあります。早期発見・早期治療が重要となるため、赤ちゃんの発育に不安を感じたら、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
治療法 | 概要 | 期間・頻度 | 効果とリスク |
---|---|---|---|
整復治療 (リーメンビューゲル) |
脱臼した股関節を正常な位置に戻し、関節の正常な発達を促す治療。 赤ちゃんの足を「M」字型に開いた状態を保つ装具を用いる。 |
日常生活の中で常時装着。 | 効果:治療が成功すれば、ほとんどの赤ちゃんは後遺症もなく、正常に歩行できる。 リスク:治療開始が遅れた場合や、関節の変形が強い場合には、手術が必要となる場合もある。 |
手術が必要なケース
リーメンビューゲルのような装具による治療では、股関節の脱臼を改善できないケースがあります。これは、股関節の状態や変形の程度が大きく影響します。特に、重度の股関節変形がみられる場合には、装具だけでは十分な効果が得られない可能性が高くなります。このような場合、股関節の状態を根本的に改善するため、手術が選択されることがあります。
手術では、まず脱臼した股関節を本来あるべき正常な位置に戻します。そして、関節を安定させ、再脱臼を防ぐための処置を行います。具体的には、関節周辺の靭帯を調整したり、骨盤や大腿骨の一部を切除して関節の形を整える手術が行われます。
手術後は、股関節の機能回復のためにリハビリテーションが必要となります。リハビリテーションは、関節の動きを改善する運動や筋力トレーニングなど、個々の患者さんの状態に合わせて計画されます。そして、手術とリハビリテーションを通して、股関節の痛みを軽減し、日常生活における歩行や運動能力の向上を目指します。
治療法 | 詳細 | 効果 |
---|---|---|
リーメンビューゲルなどの装具による治療 | 股関節の状態を改善する装具を装着 | 軽度の股関節脱臼に効果あり 重度の股関節脱臼には効果が期待できない場合がある |
手術 | 脱臼した股関節を正常な位置に戻し、関節を安定させる手術 – 関節周辺の靭帯の調整 – 骨盤や大腿骨の一部を切除して関節の形を整える |
股関節の状態を根本的に改善 股関節の痛みを軽減 歩行や運動能力の向上 |