子宮内膜症: 女性の体と心に影を落とす病気
病院での用語を教えて
先生、「子宮内膜症」ってよく聞くんですけど、どんな病気なんですか?
体の健康研究家
そうだね。「子宮内膜」は子宮の内側にある膜のことなんだけど、これが子宮の内側じゃない場所で増殖してしまう病気なんだ。
病院での用語を教えて
子宮の内側じゃない場所…って、例えばどこですか?
体の健康研究家
卵巣やお腹の中、腸の表面など、色々なところにできる可能性があるんだ。そして、生理のたびにそこでも出血してしまうので、強い痛みが出たり、酷くなると不妊の原因になることもあるんだよ。
子宮内膜症とは。
『子宮内膜症』っていう病気について説明します。この病気は、子宮の内側にある膜と似た組織が、本来あるべき場所じゃないところにできてしまう病気です。そして、そのせいで、生理痛がひどかったり、赤ちゃんができにくかったりするんです。
子宮内膜症とは
– 子宮内膜症とは子宮内膜症は、本来子宮の内側を覆っている子宮内膜に似た組織が、子宮以外の場所で発生・増殖してしまう病気です。月経時に、この子宮内膜に似た組織からも出血が起こりますが、本来の子宮内膜のように体外へ排出する経路がないため、周囲の組織に炎症や癒着を引き起こし、強い月経痛や性交痛、不妊などの原因となることがあります。子宮内膜症は10代から40代の女性の約10人に1人が罹患すると言われており、決して稀な病気ではありません。子宮内膜症の発生原因は完全には解明されていませんが、月経時に排出される経血が卵管を通って卵巣や腹膜など子宮の外へ逆流してしまう「子宮内膜症逆流説」が最も有力な説とされています。子宮内膜症は、卵巣や腹膜、子宮と直腸の間など、子宮周辺の臓器に発生することが多いですが、膀胱や腸など、子宮から離れた場所に発生することもあります。症状は発生場所や重症度によって異なり、痛みを感じない場合もあれば、日常生活に支障をきたすほどの強い痛みを感じる場合もあります。子宮内膜症は放置すると症状が悪化したり、不妊のリスクが高まったりする可能性があります。そのため、月経痛が重い、性交痛がある、なかなか妊娠できないなどの症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、適切な検査や治療を受けるようにしましょう。
項目 | 説明 |
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定義 | 子宮内膜に似た組織が子宮以外の場所で発生・増殖する病気 |
発生率 | 10代から40代の女性の約10人に1人 |
原因 | 明確な原因は不明だが、子宮内膜症逆流説が有力 |
発生場所 | 子宮周辺の臓器(卵巣、腹膜、子宮と直腸の間など)が多いが、膀胱や腸など子宮から離れた場所に発生することもある。 |
症状 | 発生場所や重症度による。無症状から日常生活に支障が出るほどの強い痛みまで様々。 主な症状:月経痛、性交痛、不妊など。 |
注意点 | 放置すると症状悪化や不妊のリスク増加の可能性あり。早期の医療機関受診と適切な検査・治療が必要。 |
主な症状
– 主な症状
子宮内膜症とは、本来は子宮の内側にあるべき子宮内膜に似た組織が、子宮以外の場所で増殖してしまう病気です。
子宮内膜症になると、月経周期に伴って、本来の子宮内膜と同様に増殖と剥離を繰り返します。その結果、様々な症状が現れることがあります。
子宮内膜症の最も代表的な症状は、月経痛です。これは、子宮内膜に似た組織から分泌される物質が、周囲の組織に炎症を引き起こすために起こると考えられています。
子宮内膜症による月経痛は、一般的に、生理が始まる数日前から始まり、生理が終わる頃に軽くなることが多いです。 また、通常の月経痛よりも痛みが強く、日常生活に支障をきたすこともあります。
月経痛以外にも、子宮内膜症では様々な症状が現れることがあります。
月経不順、性交痛、排便痛なども、よく見られる症状です。 また、子宮内膜症によって卵管が詰まったり、卵巣の働きが低下したりすることで、不妊症になる可能性もあります。
ただし、子宮内膜症の症状は人によって大きく異なります。中には、全く症状が現れない人もいます。そのため、少しでも気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
症状 | 詳細 |
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月経痛 | ・生理が始まる数日前から始まり、生理が終わる頃に軽くなることが多い ・通常の月経痛よりも痛みが強く、日常生活に支障をきたすこともある |
月経不順 | |
性交痛 | |
排便痛 | |
不妊症 | ・子宮内膜症によって卵管が詰まったり、卵巣の働きが低下したりすることで起こる可能性がある |
原因
– 原因子宮内膜症は、本来子宮の内側にのみ存在するはずの子宮内膜に似た組織が、子宮以外の場所で増殖してしまう病気です。その原因は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が考えられています。最も有力な説の一つに「月経血逆流説」があります。これは、月経時に子宮内膜が剥がれ落ちる際に、その一部が卵管を通じてお腹の中に逆流してしまうというものです。通常、体内に異物が入り込むと、免疫細胞が攻撃して排除しますが、何らかの理由でこの働きがうまくいかず、逆流した子宮内膜が卵巣や腹膜などで増殖してしまうのではないかと考えられています。また、免疫機能の異常も原因の一つとして挙げられます。子宮内膜症の患者さんでは、免疫細胞の働きが低下している、あるいは免疫のバランスが崩れているといった報告があり、これが子宮内膜組織の増殖を許してしまう一因となっている可能性があります。さらに、遺伝的要因も指摘されています。子宮内膜症は、母親や姉妹に患者がいる場合に発症リスクが高くなる傾向があり、遺伝的な要素も関与していると考えられています。これらの要因に加えて、近年では環境ホルモンの影響を懸念する声も上がっています。環境ホルモンとは、環境中に存在する化学物質のうち、ホルモンと似た働きをするもののことを指します。身の回りのプラスチック製品などから溶け出す環境ホルモンが、体内のホルモンバランスを乱し、子宮内膜症の発症や悪化に関与している可能性も否定できません。子宮内膜症の原因は、上記のような様々な要因が複雑に絡み合っていると考えられており、現在も研究が進められています。
原因因子宮内膜症の原因 | 詳細 |
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月経血逆流説 | 月経時に子宮内膜の一部が卵管を通じてお腹の中に逆流し、免疫細胞が排除できずに卵巣や腹膜などで増殖する。 |
免疫機能の異常 | 免疫細胞の働き低下や免疫バランスの崩れにより、子宮内膜組織の増殖を許してしまう。 |
遺伝的要因 | 母親や姉妹に患者がいる場合、発症リスクが高くなる。 |
環境ホルモンの影響 | プラスチック製品などから溶け出す環境ホルモンが、体内のホルモンバランスを乱し、発症や悪化に関与する可能性。 |
診断
子宮内膜症と診断するためには、医師による診察と検査が必要です。診察では、患者様から詳しく症状をお伺いします。月経痛の程度や性交痛の有無、月経周期や月経時の出血量、妊娠の希望などについて伺います。
次に、内診と超音波検査を行います。内診では、子宮や卵巣の大きさや形、硬さなどを確認します。超音波検査では、子宮内膜症による卵巣の腫れ(卵巣チョコレート嚢胞)や、子宮内膜症の病変の広がりなどを調べます。これらの検査である程度の診断は可能ですが、子宮内膜症は確定診断が難しい病気としても知られています。
子宮内膜症を確定するためには、腹腔鏡検査が必要です。腹腔鏡検査は、お腹に小さな穴をあけ、そこからカメラを入れて、子宮や卵巣、腹腔内などを直接観察する検査です。この検査によって、子宮内膜症の病変の有無や場所、大きさなどを正確に把握することができます。子宮内膜症は、早期発見、早期治療開始が大切です。月経痛が重い、性交痛があるなど、少しでも気になる症状があれば、我慢せずに早めに医療機関を受診しましょう。
診断方法 | 内容 |
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医師による診察 | 月経痛の程度、性交痛の有無、月経周期や月経時の出血量、妊娠の希望などを確認 |
内診 | 子宮や卵巣の大きさや形、硬さを確認 |
超音波検査 | 卵巣の腫れや子宮内膜症の病変の広がりを確認 |
腹腔鏡検査(確定診断) | お腹に小さな穴をあけ、カメラで子宮や卵巣、腹腔内などを観察し、病変の有無や場所、大きさを確認 |
治療法
子宮内膜症の治療は、一人ひとりの症状や状況に合わせて、最適な方法が選択されます。治療方針を決める上で特に重要な要素となるのが、症状の重さと妊娠の希望の有無です。
強い痛みなどの辛い症状を抑えることを目的とする場合には、薬物療法が中心となります。痛みを抑える薬としては、鎮痛剤などが用いられます。また、ホルモン剤を用いることで、子宮内膜症の原因となるホルモンの分泌を調整し、症状を和らげたり、病巣の成長を抑えたりすることも可能です。
一方、妊娠を希望する場合は、子宮内膜症の病巣を取り除く手術療法や、体外受精などの高度生殖医療が選択されることがあります。手術療法は、子宮内膜症の病巣を直接切除したり、レーザーで焼灼したりする方法です。高度生殖医療は、体外で卵子と精子を授精させて子宮に戻す治療法で、子宮内膜症によって妊娠が難しい場合に有効な選択肢となります。
いずれの治療法を選択するにしても、医師とよく相談し、それぞれのリスクとベネフィットを理解した上で、ご自身に最適な治療法を選択することが重要です。
治療の目的 | 治療法 | 具体的な方法 |
---|---|---|
強い痛みなどの症状を抑える | 薬物療法 | – 鎮痛剤 – ホルモン剤(ホルモン分泌の調整、病巣の成長抑制) |
妊娠を希望する | 手術療法 | – 病巣の切除 – レーザー焼灼 |
高度生殖医療 | – 体外受精など |
日常生活での注意点
子宮内膜症と診断された後、普段の生活で気を付けるべきことはいくつかあります。
まず、食事は栄養バランスを意識しましょう。
具体的には、野菜や果物、海藻、大豆製品などを積極的に摂り入れることが大切です。
インスタント食品や脂っこい食事は控えめにし、規則正しい食生活を心がけましょう。
次に、適度な運動も大切です。
激しい運動は控えるべきですが、ウォーキングやストレッチなど、軽い運動を継続することで、血行促進やストレス軽減に繋がります。
また、十分な睡眠も必要です。
睡眠不足はホルモンバランスを崩し、症状を悪化させる可能性があります。
そして、ストレスを溜め込まないことも重要です。
ストレスは自律神経のバランスを乱し、様々な不調を引き起こす原因となります。
自分の好きなことをする、リラックスできる時間を作るなど、ストレスを解消する方法を見つけましょう。
最後に、禁煙も症状改善に効果が期待できます。
子宮内膜症は、生活習慣を見直すことで症状を和らげることができます。
自分の体と向き合いながら、できることから始めてみましょう。
項目 | 詳細 |
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食事 | – 栄養バランスを意識する – 野菜、果物、海藻、大豆製品などを積極的に摂る – インスタント食品や脂っこい食事は控えめにする – 規則正しい食生活を心がける |
運動 | – 適度な運動をする – 激しい運動は控える – ウォーキングやストレッチなど、軽い運動を継続する |
睡眠 | – 十分な睡眠をとる – 睡眠不足はホルモンバランスを崩し、症状を悪化させる可能性がある |
ストレス | – ストレスを溜め込まない – 自分の好きなことをする – リラックスできる時間を作る |
その他 | – 禁煙する |